PRマンが”現代のバンド”から見る『人』『物語』を売る戦術

あなたが何かをPRしようとしているとしましょう。
今回は例として、ぽっと出の企業の新商品のお茶をPRしようとしているとします。

このとき、お茶そのものにフォーカスして(お茶の効能など、特筆すべき特徴を)PRしていく、というのもひとつの手としてあります。
しかし、また多く知られている手としては、開発に至るまでの『エピソード、物語』や『開発者の声、人柄など』を周知させるという手もあります。

ただ、これについて今回は述べず、直近の音楽フェスなどによく出る「現代のバンド」に焦点をあて、上述したPRの手法との共通点を探ってみようと思い、筆を執っています。どうぞお付き合いください。

1. 現代のバンドの『人柄』を売る戦術(SNS編)

バンドマンの方々は戦術だと思って行っていないかもしれませんが、私がよくできているな、と感じるのは「SNSの使い方」です。最近では、X(旧Twitter)や、Instagram、TikTokなど、バンドマンは自身の考えなどを容易にSNSにて発信し、容易に世の中の人に届けることが出来るようになっています(それがゆえにポストの内容には注意を払う必要があると言えますが)。

例えば、ロックバンドであれば、人々の心に勇気を与えるような、元気を与えるようなポストをしていたり。また、元気を与え、「この人の言ってることカッコいいな」と感じさせたかと思えば、ちょっとギャップを感じさせるような「おとぼけ」な内容のポストをしてみたり。

ポストをすればするほど、その人の人柄が周囲に浸透して行き、「この人の、このアーティストの曲、聞いてみようかな」という新規ファンの獲得に繋がることもありますし、また「やっぱりこの人、アーティスト、最高だわ」といった形でファン層を更に固定することにも繋がっています。
人気のアーティストを見ていると、ライブの宣伝ばかりポストしている人はあまり見かけませんね。

2. 現代のバンドの『人柄』を売る戦術(MC編)

バンドを好きになってくると、そのバンドのライブに行ってみたくなるものです。
そのライブにおける「MC(数曲演奏し終え、バンドマンがステージにて喋る時間)」も、『人柄』を売る絶好のチャンスです。

例えば、比較的POP寄りの曲を演奏するバンドがMCにて喋るとします。そこで、「今日は来てくれてありがとう」「今日はなんて最高な日だ」「みんなの前で演奏できて幸せだ」などといったポジティブな言葉をニコニコ笑顔で喋るのです。ファンは、そのアーティストの曲のみならず、さらにその『アーティストの人柄、その人自身』に惚れこむこととなり、一気にそのバンドのファン度が増す、などといったケースも少なくありません。

逆に、激しいタイプの曲を演奏するバンドが、「今日はみんなの体力をゼロにするつもりで来ました」「最後までついて来いよ」「本当にラストまで楽しめるのは俺たちか、お前らか、勝負しようぜ」などといった言葉をかけると、激しい曲だけでなくその『”気性の荒そうな”人柄』にも惚れこむこともあります。『人柄を売る戦術』において、MCは大きな役割を果たしていると感じます。

3. 現代のバンドの『エピソード、物語』を売る戦術

これは、そのバンド自体にも、バンドの作る曲にも適用できる話です。
バンドの世界には、”売れる”状態に至るまで、想像を絶する苦難を乗り越えて来ている方々で溢れています。

最近では、そういった”売れている現在”に至るまでのエピソード、苦労話をMCにて語ったり、または書籍にまでしてしまうアーティストも少なくありません。「今日に至るまでに出会ってきた困難」についてMCで語った後に、その時に作った曲を演奏するのです。
聴衆側は、「困難」と「曲の中身」とがマッチし、心を動かされることもあれば、そのアーティストの「困難」が自分の境遇と似る部分があって、「曲の中身」と自分を照らし合わせて心が動かされる、といったこともあります。

これは前述の『人柄を売る戦術』に通ずるところもあり、「こんな困難があって、乗り越えて今この人は、こんなに素敵な曲を書いているんだ」と感動し、さらにそのバンドを応援したくなったり(=ファン度が高くなったり)、そのMCを一回聞いているからこそ、その後リリースする楽曲が今までと違った視点で見えてきて、さらに曲を聞き込むようになったりします。
 

さて、ここまでPRにおける『人』『物語』を売る戦術、を現代のバンドに当てはめて考察してみました。繰り返しにはなりますが、これらはみんながみんな『戦術』と思ってやっていることではなく、バンドマンはただひたすらに「自らの抱え込んだ想い」などを楽曲やライブなどにて昇華しようとしているだけ、という人が多いです。

これらが結果としてPRにおける『戦術』と重なって捉えることができる、というお話ですので、これらをご承知いただければ幸いです。

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株式会社コミュニケーションデザイン PRコンサルタント

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