筆者は動画制作をふくむPRコンテンツの企画、制作を行っています。
そこでよく聞くのが動画マーケティングを始めてみたいけれど、どうしたらいいのかわからないという話をよく聞きます。たしかに映像というと敷居が高いような気がするかもしれません。しかし実際はそれほど複雑なものではありません。
紙やWEBなどの制作と同じように進めていきます。今回は動画の制作の流れを追いつつ、発注のコツをご紹介していきます。
この記事の目次
PR動画の制作の流れをつかむ
細かくは制作会社で異なりますが、動画制作は主に次のような工程で行います。
- 打ち合わせ(ヒアリング)
- 企画・構成の決定
- 撮影準備
- 撮影
- 編集
- プレビュー(チェック)
- 納品
制作の期間は、動画の内容に異なりますが、短くて2週間から長くて2ヶ月以上の時間がかかることもあります。
準備の時間が足りなくてやりたいことが実現できなかったということもよくあります。
発注側は動画作成には一定の時間がかかることを理解し、PRの公開日から前もって余裕のある日程設定を行うとトラブルなく制作が行えます。
適切なターゲットとアウトプットを考える
PR動画を誰に(ターゲット)、どのように(アウトプット)を考えておくとスムーズに制作に入ることができます。
他のPR同様に、訴求したいターゲットを明確にし、それを打ち合わせで制作会社に伝えることで、より効果のあるPR動画の企画、制作を行うこができます。
またアウトプットするメディアを事前に決めておくことも効果的です。
PR動画の主軸は現在、Web動画になりつつありますが、他にもテレビ、デジタルサイネージ、店頭ディスプレイなど様々なメディア媒体があり、媒体に合わせた制作を行う必要があります。
またWeb動画の中にも、YouTubeのような動画配信サイトからSNSなど様々な配信方法があり、ターゲットやPR内容に合わせた適切なメディアを選ぶと良いでしょう。
先ずはPR内容とともに訴求したいターゲットを制作会社に伝え、一緒により効果的なメディアを検討することからはじめてください。
撮影予算は納得できるまで確認しよう
最も気になるのが予算のことだと思います。
動画制作の場合、企画内容が固まってから見積もりを行います。もし初めから全体の予算が決まっている場合は、その予算内で実現可能な企画を制作会社は提案してもらいましょう。
現在、格安で動画制作を行う制作会社も増えてきましたが、一定のクオリティを求める場合は、ある程度の予算を想定しておいた方が良いでしょう。
見積もりには、ディレクション費、撮影費、機材費、出演費といった項目があります。撮影するものによって予算はまったく変わってきますが、一般的なWeb動画(3分以内の実写)の場合で、項目ごとに5万〜10万程度の予算がかかることがおおよその相場と考えるといいでしょう。
見積りを制作会社に依頼する場合は、なるべく詳細な見積もりを出してもらい、どれくらいの項目があり、どれくらいの人が関わるのかを確認して下さい。
例えば、見積もりにディレクション、編集、撮影、録音、撮影機材、音楽という項目がある場合は、6項目なのでweb動画の場合、安くても30万円程度、高くて60万円程度は予算が必要になると思います。
制作会社は企画応じて、必要なスタッフや機材を見積もっています。なので、各項目がなぜ必要なのか制作会社側に聞いてみることをオススメします。そうすることで、別の制作の機会でも役立つはずです。
撮影準備:リクエストはどんどん伝えよう!
企画と構成が決まると、撮影に向けて撮影準備を行います。
撮影準備では、ロケーション(撮影場所)を決定したり、美術を選んだり、キャスティングをしたりなど実際に動画に映り込むものを準備して行きます。
この時に、制作会社側に任せきりにしておくと、実際の撮影現場で思っていたのは違ったといったトラブルの元になってしまいます。
発注者は臆することなく、制作側のクリエーターに自分や会社の意見を伝えて、しっかりとコンセンサスをとってから撮影に臨みましょう。
また、PR動画では発注者の会社の会議室や関係会社の店舗などのロケーションを使用することが多くあります。この場合、次の点に気をつけて下さい。
1.思ったより撮影は時間がかかる
TV CMの場合、30秒のCMを撮影する為に1日かかるなんてことは当たり前に生じます。
PR動画の場合、流石にそこまではありませんが、やはり一般の方が思う以上に時間がかかってしまいます。
PR動画の内容によりますが、例えば1分間の商品PR動画を撮影する場合は、搬入と撤収作業で1時間、撮影セッティングに1時間、撮影に3時間で、少なくとも5時間はかかると予想されます。
また、撮影する商材や主演者の数によってはそれ以上の時間がかかることもあります。撮影準備にあたり、制作会社からどれくらい時間が必要か聞いた上で、ロケーションの選定を行いましょう。
2.思ったより動画の撮影機材は大きい
現在、一眼レフでの動画撮影が可能になるなど動画撮影機材のコンパクト化が進んでいます。
それでも、やはり写真撮影などに比べて動画撮影の機材は大きく、また撮影スタッフも多くなります。その為、あまりに狭いロケーションを想定していると、実際には撮影できない可能性があります。
ロケーションを探す場合は、例えば、一時的に使わない機材やカメラケースなどを置いておける空間があるとスムーズに撮影することができます。
撮影当日;現場では自分のセンスを大切に
実際に撮影が始まると、撮影現場の雰囲気に押されて意見を言えないクライアントを見かけることがあります。
撮影現場はタイトなスケジュールでピリピリした空気になりがち。加えて、よくわからない専門用語が飛び交っているので、自分の意見を素直に制作サイドに伝えるのを難しく感じるかもしれません。
しかし、動画は一度撮影を終えてしまうと撮り直すことは簡単ではありません。撮影後に不満が残らないよう、撮影内容に目を光らせましょう。予算があるならば、制作会社側に撮影現場にモニターを出してもらい、どんな風に撮影されているかチェックすることをオススメします。最終的にPRの内容に責任を持つのが発注者になります。
ご自身がセンスを信じ、納得できるようにクリエーターと話し合いながら撮影を進めましょう。
編集チェックの回数は事前に決めておく
撮影が終われば、編集作業に入ります。編集作業で重要なことは、編集の経過を確認するチェック作業(プレビュー)の回数を事前に決めておくことです。
編集は一定の時間が必要になる作業です。あまり頻繁にチェックしていると、お互い疲弊しています。編集作業に入る前に、制作会社側と打ち合わせをして、編集スケジュールに見合ったプレビュー回数を決めておきましょう。
納品までに2回、3回。1週間に1回ぐらいを目安に設定するのが良いと思います。後、プレビュー時は、なるべく具体的な修正指示をクリエーター伝えると編集作業がスムーズ進みます。
アップしたら終わりじゃない。しっかりと効果を測定する
編集作業が終われば、ようやく納品作業になります。
アウトプットに合わせたファイル形式やサイズで、制作会社からデータをもらいます。複数のメディアでの展開を予定している場合は、いくつか複数のファイル形式、サイズでデータをもらうことをオススメします。
制作会社によっては、YouTubeなど動画配信サイトにアップするまでやってくれる会社もありますが、問題が生じた場合や変更が必要になった場合にすぐに対処できるように、発注者側が管理しておくとよいでしょう。
またWeb動画は、現在、リーチ率など比較的簡単に効果を測定することができます。アップするだけで終わらず、効果を測定し、分析を行い、次のPRに繋げることがとても重要になります。PR動画は、それ単体ではなかなか希望した訴求効果を得られない場合が多くあります。
逆に、WebページやSNSなど他のPRと組み合わせることで、相乗的な効果を得られるPRツールでもあります。
最近では設立記念などで動画制作のご相談が増えています。
当初は社内の式典用に使用する目的でお打ち合わせをスタートするのですが、周年記念動画は企業ブランディング動画、リクルート用としても活用することができますとお伝えすると大変喜ばれます。
一度丁寧に撮影すれば編集次第で使い勝手は無限です。取引先、お客様、自社社員など全てのステークホルダーに企業理念やこれからのビジョンをプレゼンテーションする機会になりまし、展示会などで放映することも可能です。
ネット上で話題を生み出すことを目的としたバイラルムービーを狙うのもよいですが、実際には狙い通りに当てるのは至難の業です。
まずは1発を狙うより映像でWebサイトやパンフレットでは伝わらないことを伝えてみてはいかがでしょうか。
ぜひPR戦略の中で上手く動画を活用してください。
高校から映像制作を始め、大学院卒業後はテレビ制作会社で経験を積み、2014年より独立。動画を使ったPRのプランニング、撮影ディレクションから編集、グラフィックまでをこなす