生誕50周年を迎えた

こんにちは。
9月も残りわずかとなり、“食欲の秋”もいよいよ本番を迎えます。
しかし、最近の“食”に関する話題といえば、汚染米事件を
はじめとした、相変わらずネガティブなニュースばかりです。
ここ数年食品業界は、偽装問題の事件が途切れることなく発覚し、
社会的な信用を失ってしまっているように感じます。
ところが、ちょうど一か月前の8月25日に
久しぶりとも言える明るい話題がありました。
チキンラーメン生誕50周年の話です。
単に一企業の一商品のメモリアルデーとして注目されただけではなく、
業界を超えて大きな話題となりました。
みなさんもご存知の通り、50年前の発売当初から「変わらぬ味」で多くの
人々を魅了しているチキンラーメンですが、その変わらぬ味とは対照的に、
ブランド価値を向上させるために「常に新たなチャレンジ」を繰り返して
いたのです。
今回はこの50年も続くロングセラーブランドの秘訣について、
探っていきたいと思います。


チキンラーメンが発売されて50年、その間競合製品も多数発売されたにも
関わらず、圧倒的なブランド力で他の追随を許さなかったチキンラーメン。
その成功の秘訣はどこにあるのでしょうか?
1.商品クオリティーの高さ
チキンラーメン開発の秘話や苦労話は、今や多くのメディアで何度も
取り上げられているほどです。
要は、食の仕事に携わるものとして、一切の妥協を許さない徹底した仕事ぶりが
評価され、「美味い」「安い」「早い、便利」そして「安全」という、
価値の高い商品を50年もの間、世に送り出すことが出来たといえます。
商品認知度云々の前に、まずは製品そのものの品質にこだわりをもつことで、
類似商品を寄せ付けないブランド力を内在していたと言えるかもしれません。
2.話題喚起のための絶え間ない商品開発
しかし、いくら高品質の優秀な商品を開発できたとしても、50年という長い間、
廃ることなくトップブランドに君臨するということは、新商品が続々と登場する
昨今の市場環境からしても非常に厳しいでしょう。
そこで注目したいのが、日清食品の商品開発力。
製品そのものをほぼ変えずして、外袋の「キャラクター」に光を当てる
ことで注目を集め、「どんぶりカップ」の導入やサイズを工夫した
「ミニタイプ」の発売、さらには「たまごポケット」を付加するなど、
食べ方や機能性の充実を図ることで、話題を喚起し、商品鮮度と価値を
高めることに成功してきました。
また、「すぐおいしいぃ~、すごくおいしいぃ~♪」でおなじみの
CMソングは、思わず口ずさんでしまうほどの名曲。
話題喚起、ブランド力向上に貢献した“立役者”とも言えます。
この曲が市民権を得たことによって、チキンラーメンは
グッと身近な存在になり、人々に安心感を与えるまでに
成長していったのではないでしょうか。
3.食品業界を飛び越えた他業界巻き込み力
チキンラーメンのブランド戦略を分析していくと、面白い共通点を
発見することができます。前述のとおり、ラーメン自体のクオリティーに
とことんこだわり、常に高品質を追い求め、50年間努力を重ねてきました。
一方で、同時に「食品分野」以外の力もうまく活用して
ブランド力強化を推進してきたようです。
その例のひとつに、「器」とのコラボレーションがあります。
発泡スチロールカップ容器に入った「チキンラーメンどんぶり」はもとより、
マグカップや土鍋をセットにして商品化することで、「食」という分野に
付随する製品を積極的に巻き込んできました。
また、チキンラーメン発売50周年を記念して、8月25日に都内で開かれた
パーティーでは、有田焼のヒット商品「究極のラーメン鉢」を
特別にカスタマイズして「千金(ちきん)どんぶり」とし、参加者の
引き出物用として採用したほどです。
こういった他業界を巻き込んだブランド戦略は、同社の企業理念である、
“食足世平”“美健賢食”“食創為世”という考え方に基づいたものなの
かもしれません。
つまり、食とは生命を維持するために必要なものであり、芸術、文化、
思想、全ては食が足りて健康であることで語れるものである。そういう
意味で「食をつくり世のためにつくす」という考え方です。
このように企業理念が一貫してブランド戦略にまで落としこまれている
からこそ、チキンラーメンは50年もの間、インスタントラーメンの
トップブランドとして君臨し続けることが出来たのかもしれません。
一方で、自社では真面目に取り組んできたつもりでも、他社での不祥事が
業界全体のイメージを悪くすることも少なくありません。
そんな時、どのようにブランドを構築(または再構築)していく
べきでしょうか?
チキンラーメンの例を参考にしてみると、ヒントは、意外と身近な、
「企業理念」に眠っているかもしれません。
ある有名な企業経営者がこんなことを言っていたことがあります。
「一」に「止まる」と書いて「正しい」となります。
迷った時は、初めの一歩、つまり初心に
戻ることで本質が見えてくる、ということでした。
企業にとっての初心、それこそ創業者の想いが込められた
「企業理念」に当たるのではないかと思います。
ブランド力が企業の推進力を左右すると言われている時代です。
ブランドの方向性に迷った時、初心に戻り本質を見つめ直すことで
推進力の種となるものが見つかるかもしれません。

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