「対外広報なんて、やる必要なくない?」―――。
某大手経営コンサルティング会社に勤める
筆者の知人から、言われたことです。
(突然の切り出しを、お許しください)
話の発端は、ソニー創業者の井深大さんの発案で1959年に始まった、
ソニーで働く社員の子供が、小学校に入学する時に
会社からランドセルをプレゼントするというランドセル贈呈式。
(ご参照URL:
http://www.sony.co.jp/SonyInfo/csr/ForTheNextGeneration/ransel/#block4)
知人によると、この贈呈式において井深さんが社員に対して、
「対外的には非公開にするように」と言われたそうです。
(ただ、この発言の有無については、様々な諸説があるとのこと)
この発言が有ったとした場合、発言の真意は、
贈呈式が、対外へのイメージアップ施策の一環ではなく、
「あくまで、社員のために実施した」ということを、
社員に感じてほしかったからだと推測します。
井深さんの一連の言動を元に、その知人は下記のように結論付けました。
1.(ご本人が何を意図したかはわからないが)対外的に非公開としたことについて、
社員は「対外的なアピールではなく、自分たちのためにしてくれたんだ」
と好意的に捉えたのではないか
2.「1」の仮説が正しければ、社内のこと(例:福利厚生の充実)を
社外に過度にアピールすることについて、
社員から「結局、対外へのイメージアップ施策の一環かよ」と思われ、
逆効果となってしまうのでないか
以上のように、対外広報の効果に疑問符をつけた知人は、
まさに対外広報を支援する筆者を、痛烈に批判してきたのです。
知人とは逆に、社内の取り組みの対外への広報の必要性を声高に発している
筆者にとっては、考えさせられる事件となったのでした。
ただ、このソニーの事例について考えた挙句、最終的にはこう思いました。
「結果的に、対外広報(PR)になってるじゃん」。
「井深ファン」の知人によると、前述の井深さんの一連の行動は、
井深さんを敬愛してやまない「井深ファン」の間では、
ちょっとした語り草となっているとのことです。
ソニーとしては、対外的に発信するつもりがなかったことが、
結果的に、外部からの好意的な認知獲得につながっていることになります。
このように、自社を宣伝(PR)するつもりがなかったのに、
結果的に宣伝(PR)となった事例があることに、最近気が付きました。
その一例して、日経レストランなどの飲食店向け媒体や、
拠点地域の主要マスメディアで紹介されるなど、
静岡県で人気の居酒屋チェーン店が当てはまります。
その居酒屋チェーンでは、店の宣伝をせず、看板もないなど、
「宣伝(PR)を一切していないにもかかわらず、宣伝(PR)ができている」
というのです。
◆ 東京新聞など、地域の主要マスメディアで紹介
~ PRしないことが、PRになっている人気居酒屋チェーン店 ~
その居酒屋とは、静岡県藤枝市や焼津市が拠点の
居酒屋チェーン店である「岡むら浪漫」。
http://www.okamura-wa.com/
代表の岡村佳明さんは、母親が経営していた店舗を引き継いだ際に、
母親のお客さん(近所のおじちゃん系)だけではなく、
岡村さんのお客さん(若い女性・カップル系)も来てほしいと思い、
「若者ウケしそうな」様々な施策を展開。
その施策とは、
・宣伝(PR)は一切しない(外観に看板を出さない・広告出さないなど)
・最寄駅から店までの距離を「スキップで50歩」で表すなど、表現を工夫
・メニューブックのフードメニュー欄のほとんどに価格を書かない
など、物珍しいものとなります。
その結果、若い人たちから「面白い」などの口コミが広まり、
今では7店ある店はどれも月商600万~1300万円を稼ぎ出すなどで、
「繁盛店となった」と、日経レストランなどが紹介しています。
とまあ、ここまでは良く聞く飲食店の成功物語ですね。
着目すべきは、岡村さんの「宣伝は一切しない」という姿勢を、
静岡県域の主要マスメディアが、好意的に取り上げているということです。
例えば、東京新聞の神谷円香記者は、岡村さんについて、
下記のように好意的に紹介しています。
(以下、神谷記者の記事を引用)
・〈今春、焼津市に転勤してきて、友人に教えてもらったJR焼津駅前のチェーンの
一店。
(中略)以来、焼津に来てくれた人を連れて行っては反応を楽しんでいる。〉
・〈人を楽しませ、喜ばせるもてなしの心。それさえあれば派手な広告も呼び込みも
必要ない。
言われてみれば単純で、当たり前で、一番大切なことだ〉
・〈(夢がないと悩んでいる人に対して)夢を掲げる看板がなくてもいい。そう言っ
てもらえて、
将来をあれこれ悩んでいた私の気持ちがすっと晴れた。〉
※ 2013/10/06 東京新聞朝刊 12ページから引用
前述のソニーも岡村さんも、宣伝をするつもりがないのに、
周り(マスメディア・お客さん)が、宣伝(PR)をしてくれています。
さらにいうと、宣伝(PR)費を掛けてないのに、
宣伝(PR)ができているという、逆説的な現象が起こっているのです。
このように、「PRをしないこと」が、人々の興味を引き付け
口コミやメディア露出に繋がっていると言えるのです。
以上から、PR成功の切り口の一つとして、
「あえてPRをしないこと」を、考えてみても良いのではないでしょうか。
◆ 「宣伝(PR)を極力せずに、宣伝(PR)をする」ためには?
答えは簡単。当社にご相談いただくことです(笑)
PR会社の立場上、これを手間なく実現されてしまっては、
商売あがったりなのです。
もちろん、前述の事例を通じて考察できることはあります。
例えば、
・口コミを発生させる
・宣伝をしない(または重視しないと)という立場を取ること
などですが、「言うは易く行うは難し」なのです。
ただあえて、ご参考となる書籍を挙げるとすれば、
当社代表・玉木の書籍だと思います。
(タイトルが、このメルマガの内容に多少なりとも通じるものがあります)
全部無料でもっと宣伝してもらう、対マスコミPR術:
http://books.shoeisha.co.jp/book/b76854.html
「自社の社長の本を祀り上げるなよ」との意見が出そうですが、
ご安心ください、そんな私もこの書籍をチラッとしか読んだことはありませんでし
た!
発売開始の2002年9月から、ロングセラー(!)の本となっております。