先日、在京キー局の2023年度の決算が発表されました。その結果、2021年度には8401億円だった在京キー局の放送収入は、2023年度には7623億円と右肩下がりになっており、放送収入が厳しくなっていることが明らかになりました。
数年前から「テレビ業界はもうオワコン(=終わったコンテンツ)」だと揶揄されていましたが、テレビは本当に影響力を失い、オワコンになってしまったのでしょうか?
元TVディレクターの目線で考えてみたいと思います。
1. 多様化する動画メディア
そもそもテレビ業界がオワコンと言われ始めたのはいつ頃のことでしょうか?
私は2003年から10年間TVディレクターとして業界に携わってきましたが、2000年代には「テレビはオワコンだ」という話はほとんど聞いたことがなかったと思います。
その状況が変わった直接的な出来事なのかはわかりませんが、2011年の韓流偏重騒動によってテレビ局に対して厳しい目が向けられるようになりました。
また2011年といえば東日本大震災という大きな出来事があった中で、テレビ番組の在り方が改めて考えられるようになり、面白いかどうかを重視した番組制作からコンプライアンスを重視した番組制作に変化していきました。
テレビを見なくなった原因として、コンプライアンスが厳しくなったことで昔のような面白いバラエティー番組が無くなってしまったことを挙げる方はとても多いと思います。
こうした出来事が一定の層のテレビ離れに繋がったことは間違いないですが、それ以上に、動画メディアが多様化したことが大きな原因であるように私は感じています。
2010年代の前半くらいまでは動画メディアといえばテレビ一択しかない状況でしたが、2015年くらいからはYouTubeやAbemaといった新しい動画メディアが人気になり、動画は家族みんなでテレビで見るものではなく、スマートフォンで好きな動画を自分の好きな時に見るものへと変わっていきました。
また近年では、コロナ禍でNetflixやHuluなどの動画配信サービスが普及したことで、動画の視聴習慣が大きく変化し、見るものの選択肢が広がったことで結果的にテレビ離れと言われる状況に繋がっていったように思います。
2. 見逃し配信サービス「TVer」は好調
冒頭でテレビ局の放送事業による収入が右肩下がりになっている状況について触れましたが、実はその一方でTVerは好調という現象が起きています。
TVerとは、在京民放キー局5社、在阪民放5社、広告代理店が共同出資した見逃し動画配信サービスで、各テレビ局が制作したドラマ、バラエティ、アニメ、報道・ドキュメンタリー、スポーツなどの人気番組を無料で好きな時に見ることができるサービスです。
テレビ局の放送収入や平均視聴率が下がっているにも関わらず、その見逃し配信であるTVerが好調であるということは、テレビ自体が見られなくなったというよりも、リアルタイムでテレビを見る習慣が無くなったということではないでしょうか?
もちろんテレビ局にとって番組をリアルタイムで見てもらえないことは視聴率の低下、ひいては広告収入の減少に繋がるので大きな課題なのですが、テレビがリアルタイムで見られなくなったからといって、テレビ自体が見られなくなったとは言い切れない部分があります。
動画メディアの多様化や視聴スタイルの変化によって、テレビの一極体制の時代ではなくなったものの、テレビはオワコンと言い切ってしまうのもどうでしょうか?
3. 変化するテレビの役割
動画の視聴方法が多様化したことによって、テレビの役割はこれから大きく変わっていくと思います。
特にドラマやバラエティーのようなエンタメコンテンツとしては、ABEMAやYouTube、Netflix、Huluなどの様々な動画メディアと常に比較されながら、他より面白いコンテンツを作り出していかなければ、視聴率の復活は難しいかもしれません。
一方でテレビが今後も大きな影響力を残すのは、報道コンテンツとしての役割だと思います。
インターネットの普及によって様々なニュースメディアが誕生していますが、24時間365日、世界中で起きている様々なニュースにいち早く対応して取材できるのはテレビの強みではないでしょうか?
これまでにも震災が発生した際や新型コロナウイルスが流行した際に報道コンテンツとしてテレビがいかに重要な役割を担っていたかは説明しなくてもおわかりになるかと思います。
4.まとめ
いかがだったでしょうか?今回は「テレビは本当にオワコンになってしまったのか」というテーマについて考えてみました。
ここ数年で動画メディアが多様化し、テレビ業界の状況も10年前からは想像もできないくらいに大きく変化しました。「テレビはオワコンだ」と一言で片付けてしまうのは簡単ですが、今までテレビしか無かった動画視聴の選択肢がここ数年で大幅に増えたわけですから、テレビ番組の視聴時間が短くなるのは当然といえば当然のことでもあります。
そんな中でもテレビにはテレビにしかできない役割があり、今後も大きな影響力は維持していくのではないでしょうか。
PRにおいてもテレビをはじめ様々な動画メディアへのアプローチはとても重要になっています。お困りのことがあればお気軽に弊社までお問合せください。
【これまで担当した業界】 食品・飲料・医療・美容・自治体関連・出版社
【趣味】 夜の散歩、温泉めぐり
<個人的おすすめ温泉BEST3>
1、宝川温泉(群馬) 川沿いの絶景露天、紅葉や雪の時期が最高です
2、ほったらかし温泉(山梨) 眼下に甲府盆地が広がり富士山も見えます
3、西の河原温泉(群馬) 山に囲まれた日本有数の巨大露天風呂です
【プチ自慢】
テレビディレクター時代に、レオナルド・ディカプリオやミラ・ジョヴォヴィッチなどハリウッドスターのインタビュー取材をしたこと
多くご相談いただく内容とその解決方法をホワイトペーパーにまとめました。
PR切り口の考え方|メディアリレーション方法|広報KPIの考え方【無料ホワイトペーパー】
当社では新たなメンバーを募集しています!
PRコンサルタントとして活躍したい方はぜひご応募ください。
採用情報|PRの力で「社会問題」を解決する