本業は塾講師なのに…なぜ『カリスマ講師』は生まれるのか?【元塾講師が考察する】

塾講師が“カリスマ化”する背景には、“PR戦略”がありました。
メディア化する教育現場の真相を、元塾講師の視点から、解き明かします。

映像授業の登場

1980〜90年代、衛星放送やビデオ教材を活用した「映像授業」の登場は、講師の在り方を一変させました。それまでの講師は、生徒の前でリアルに授業をする存在でした。しかし、カメラを通して全国の生徒に「見られる存在」となった瞬間、求められる資質が変わっていきます。

板書の美しさや説明のわかりやすさ以上に、テンポの良さ、声の抑揚、独自の話術、表情の豊かさといった“タレント性”が重視されるようになっていきました。
画面の向こうで心をつかむ講師は、まさに教育界のエンターテイナーへと進化していったのです。

競争が生んだ「講師=ブランド」の発想

一方で、少子化の進行により、塾業界はかつてない競争に直面していました。
「どの塾に通わせるか」は、保護者にとってより慎重な選択になり、塾側には他社との差別化が求められました。
私自身、自らが務める塾に入塾してもらうため、大変な思いをして営業をしていた過去があります。

保護者と話をしていて、強く感じたことの一つとしてですが、塾を決めるきっかけのひとつが「講師個人のブランド」でもありました。
生徒を惹きつける強烈な個性を持った講師は、塾の“顔”となり、広告塔となり、結果的に集客力の中核を担う存在となっていきました。

こうして、“カリスマ講師”は偶然ではなく、

・メディアの進化(=映像授業の台頭)

・市場環境の変化(=競争と差別化)

という2つの文脈から「必然的に」生まれたと言えるのではないかと推測します。

カリスマ講師を創り出すPR戦略の解剖

それでは、PR戦略を実際にひもといていきましょう。

① 強烈な「キャラクター設定」

まず鍵となるのが、講師に対する“キャラクターの演出”です。
「情熱的で叫ぶタイプ」「論理的に淡々と語る知性派」「柔らかい口調の癒し系」など、キャラが明確なほど印象に残ります。

私が学生時代に大好きだったのは、90分の映像授業で、毎回30分を雑談に使う英語の講師でした。おかげで英語への抵抗は少なくなり、成績も格段に伸びたことを思いだします。

他にも、「話すとき、初めに必ず『いいか、』とつける」「トレードマークのサングラスを着用する」などといった記号性は、記憶に残りやすく、口コミやSNSでの拡散力も高まります。

② メディア露出による知名度向上

キャラクターが定まった後は、露出の場を広げることが不可欠です。テレビCM、新聞や雑誌のインタビュー、YouTubeチャンネルの開設、書籍の出版…など、あらゆるメディアを横断することで、講師の顔と名前は全国に浸透します。

これにより、「この先生の授業が受けたい」と指名で選ばれるようになり、それが塾への強力な集客導線となるのです。
実際に、2010年代に突入し、とある塾が各科目の講師を前面に押し出すCMを打ったことで、2025年現在もなお、テレビにて露出を続ける講師を生み出す結果となっています。

塾自体のCMや番組による宣伝は昔からありましたが、さらにブランド化が進んだ事象であったと言えるでしょう。

③ ストーリーテリングによる共感の醸成

加えて重要なのが、「講師の人生そのもの」を語らせるストーリーテリング戦略です。
「元はヤンキーだったが、恩師との出会いで変わった」「浪人時代に苦しんだ経験が今の指導に活きている」などといった物語は、人の心を動かします。

講師の成功体験や挫折の乗り越え方に共感した生徒や保護者は、単なる“教える人”ではなく“憧れのロールモデル”として講師を受け止めるようになります。

これらはすべて、”PR戦略”の一部と捉えることが出来るのではないでしょうか。

今後の展望~SNS時代の新たなカリスマ像~

今や、講師はテレビのみならず、YouTubeやTikTokで発信する時代です。
YouTubeなど、SNSを活用することで、塾に所属しない“個人発信型”の教育インフルエンサーも登場し、「カリスマ講師」の定義はさらに多様化しています。チャンネル登録者数が10万人を超え、書籍を複数出している数学系YouTuberや、いまや登録者数100万人を超える教育系YouTuberもいます。
「カリスマ講師」は、もはや塾でのみ誕生するものではないのです。

カリスマ講師は「創られた存在」である

さて、カリスマ講師とは、生まれ持った才能だけではなく、塾業界の競争、メディア技術の進化、そして入念に設計されたPR戦略によって「創り出された存在」であることが以上からわかるかと思います。
講師という“人”を、社会に届ける“ブランド”へと昇華させる…それは、もはや“講師”だけに留まらない普遍的なメッセージを含んでいるのではないでしょうか。

あなたも、“語られる存在”になれる

情報があふれるこの時代、「何を伝えるか」よりも「誰が伝えるか」が問われる時代になりました。教育に限らず、専門性や信頼を“個人ブランド”に変える視点は、すべてのビジネスパーソンにとって武器になります。
もしあなたが、

• 自分の専門性をもっと社会に届けたい

• 信頼される発信者になりたい

• “ 選ばれる存在 ” としてブランド化されたい

そう感じているなら、まずは一歩踏み出してみてはいかがでしょうか。

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株式会社コミュニケーションデザイン PRコンサルタント

【ニックネーム】らめにき
【これまで担当した業界】コンサルタント・健康・教育・DX・企業PR
【趣味】音楽鑑賞・野球観戦・バンド・ライブハウス・数学・ラーメン・カラオケ
【プチ自慢】「イントロドン」で半分以上0.5秒以内に正答できること

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