広報予算を効果的に使うための二つ課題

こんにちは。
4月1日、ガソリン税などの暫定税率が期限切れを迎えました。
それに伴い、ガソリン価格が世間の関心を集めています。


そして、4日の全国紙夕刊には次のような記事が載りました。
「道路広報、29億円ムダ 改革本部発表「費用、半減目指す」」。
(朝日新聞2008年4月4日夕刊より)
今話題の道路特定財源を原資とする「道路整備特別会計」に関する記事です。
この中から国土交通省は、06年度に広報費として支出した計約96億円
のうち、3割にあたる約29億円分を「効果が見込めない」、あるいは
「道路行政との関係が疑わしい」と認め、発表したのです。
冬柴国交相は4日に記者会見を開き、
今後、広報費の支出を半減させる方針を打ち出しました。
「効果が見込めない」とされた約4億円の中身は、
道路整備に理解を求めるミュージカルの上演費(約9000万円)、
コンサート・祭りの開催費(約4000万円)、
「道の資料館」の運営費(約1億7000万円)など。

「関係が疑わしい」とされた約25億円の内訳は、
各種シンポジウム・座談会費用(8億3000万円)
8月の道路ふれあい月間に関するイベント(3億5000万円)
環境運動「エコロード・キャンペーン」PR活動(2億2000万円)など。
このニュースを知り、私は広報の仕事に携わる者として、
広報予算がムダに使われた使われたことを残念に思いました。
仮に29億円もの予算を使ってPRをしたなら、
どんなことができたでしょう。想像できないほどです。

それにしても、なぜ29億円もの予算がムダに使われたのでしょうか。
朝日新聞は、チェックが十分働かなかったことが要因だと指摘しています。
朝日新聞(4日夕刊)を引用します。
「道路特別会計の中に広報費用としての支出費目はなく
「道路調査費」や「国道改修費」などとして支出されていた。(中略)
各地の国道事務所長の決裁権限で支出でき、本省や地方整備局の
チェックが十分に働いていなかったことが過剰な支出の一因とみられ…」
同省はこの対策として、今後は本庁や地方整備局が支出のチェック体制を強化し、
また具体的な支出内容をホームページで公開するという方針を発表しました。
しかし、広報予算を効果的に使うことを考えると、
私はこの対策だけでは不十分だと思います。
ここで二つの課題を提起したいと思います。
一つ目は、広報活動を道路行政全体として管理すること。
二つ目は、広報の費用対効果を説明することです。
さきほど、広報予算を効果的に使うための二つの課題を提起しました。
一つ目、広報活動を道路行政全体で管理する。
二つ目、広報の費用対効果を説明する。
一つ目の、広報活動を道路行政全体で管理する、について。
従来は「道路調査費」や「国道改修費」など、
異なる費目の中で広報予算が管理されていました。
つまり、イベント、パブリシティ、広告、資料館など、
様々な広報活動の予算がバラバラに管理されていたのです。
この予算管理のやり方では、予算を最適に使うことができません。
もし全体で予算を管理したなら、
例えば一貫性なく複数の広告でバラバラに伝えていたことも、
一つにまとめてたくさんの広告を出稿することができたでしょう。
まとめることで、情報発信の矛盾も回避できます。
さらには、予算をまとめて使えることで、
数億円単位でテレビCMを出稿することもできるようになります。
予算内で最大の効果を生み出すコミュニケーション手段を選ぶためには、
道路行政全体で広報予算を管理する必要があるのではないでしょうか。
二つ目の、広報の費用対効果を説明する、について。
広報予算のチェックが甘かったことについて、
そもそも道路特別会計は国会のチェックを受けない予算として、
従来から問題視されていました。
そのことについては、ここで触れるのは避けたいと思います。
チェックが甘かったもう一つの要因として、
広報活動の効果が投入した費用に見合っていたかどうか、
すなわち「費用対効果」を評価する基準が不明確だったことを
指摘したいと思います。
評価基準が不明確であれば、予算が適切かどうか判断できないため、
「見直す」という判断は難しくなります。
国土交通省は今後、各地の国道事務所長の判断を
本省や地方整備局がチェックする方針を発表しています。
ここで、費用対効果を評価する基準がないままであれば、
甘いチェックを繰り返してしまう可能性があります。
また、国土交通省は今後、支出内容を公開すると発表しています。
ここでも費用対効果を説明できなければ、
予算の使い方が適切だったかどうかを判断することができません。
実は国土交通省も、特別会計ではなく、通常の予算内の
施策や事業については、費用対効果を評価して公開しています。
「国土交通省の政策評価」 http://www.mlit.go.jp/hyouka/
の「政策チェックアップ」によると、
「インプット指標(どれだけ予算を使ったか)」、
「アウトプット指標(予算をどれだけ使ったか)」、
「アウトカム指標(国民にとっての成果)」
の3点で達成状況を評価し、
達成状況が思わしくない場合には、要因や対策を検討するとしています。
広報活動についても、このような評価ができるのではないでしょうか。
さて、今回は国土交通省の発表を元に、
「広報活動を全体で管理すること」と
「広報活動の費用対効果を説明すること」の二点について触れました。
実は、この2点は民間企業にも共通する課題です。
事業・商品によって別々に広報活動を行っている企業もあります。
また、広告やPRの費用対効果を検証していない企業もあります。
むしろ、これらをきちんとできている企業の方が少ないかもしれません。
これらは官民問わず、広報予算を効果的に使うための課題と言えそうです。

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