【元キー局ディレクターが解説】災害報道でテレビ局が企業に求める情報とは?

この夏、熊本県で発生した最大震度7の地震や、千葉県を襲った記録的な豪雨は記憶に新しいところです。台風や豪雨、地震など大きな災害が発生すると、テレビでは長時間にわたって災害報道が続きます。被害状況はもちろん、交通機関への影響、停電や断水、店舗の営業状況など、刻一刻と変わる情報が次々と伝えられます。

私は民放キー局の報道・情報番組で10年以上、ディレクターとして取材や番組制作に携わってきました。災害時のテレビ局は、普段とはまったく違うスピードで情報を集めています。

その際に、自治体や警察、消防などと並んで重要な情報源になるのが「企業」です。ただし、災害時の広報で求められるのは、自社を目立たせることではありません。被災者や地域住民、視聴者に必要な情報を、正確かつ迅速に届けることです。

では、テレビ局は企業のどこを見て、どんな情報を求めているのでしょうか?
テレビ報道の現場を経験してきた立場から、企業の広報担当者が知っておきたいポイントを解説します。

災害発生時、テレビ局はどのように情報を集めているのか

大きな災害が発生すると、テレビ局の報道現場は一気に慌ただしくなります。記者やディレクターは、自治体や警察、消防、気象台などへの取材と並行して、鉄道会社、電力会社、通信会社、小売店、メーカーなど、生活への影響を把握するためにさまざまな企業から情報を集めます。

現在では、企業や自治体の公式サイト、SNSも重要な情報源です。例えばSNS上で「駅前が冠水している」「店舗が停電している」といった情報を見つければ、周辺の企業や店舗へ直接連絡し、本当にその状況が起きているのか確認することもあります。

テレビ局が知りたいのは、何よりも「現場でいま何が起きているのか」です。豪雨であれば、どこまで浸水しているのか、店舗や工場にどの程度の被害があるのか、物流や商品供給に影響は出ているのか。そうした具体的な情報を次々と確認していきます。

災害報道では状況が刻一刻と変わるため、「昨日どうだったか」よりも「いまどうなっているか」が重要です。災害が起きてから「どの部署に聞けばいいのか」「誰がメディア対応をするのか」と調整を始めていては、テレビ局が求めるスピードについていけません。

テレビ局が求めるのは「現場・数字・映像」

災害時にテレビ局が企業から知りたいのは、単なる「被害の有無」ではありません。ニュースとして重要なのは、災害によって何が変わったのか、その変化はどの程度なのか、そして視聴者にどう伝えられるのかです。

① 店舗・物流・宿泊・交通など、災害による「現場の変化」

まず重要なのが、現場で実際に起きている「変化」です。

小売店であれば、「水や非常食を求める人が増えている」「特定の商品が品薄になっている」。物流会社であれば、「高速道路の通行止めで配送ルートを変更している」「特定地域への配送に遅れが出ている」といった情報です。

宿泊施設なら、「鉄道の運休で当日予約が増えている」「帰宅できなくなった人から問い合わせが相次いでいる」。交通事業者なら、「一部区間で運休している」「通常とは異なるルートで運行している」といった変化もニュースの材料になります。

ポイントは、「自社が被害を受けた」で終わらせないことです。災害によって普段と何が変わり、その変化が地域住民や利用者の生活にどう影響しているのか。そこまで分かると、テレビ局側もニュースとして扱う意味を判断しやすくなります。

② 「問い合わせが通常の3倍」など、状況を伝える「数字」

次に重要なのが、変化の大きさを示す数字です。

「問い合わせが増えています」「多くの店舗で影響が出ています」だけでは、実際にどの程度の変化なのか分かりません。

一方で、「宿泊予約の問い合わせが通常の3倍」「20店舗中5店舗が臨時休業」「配送件数の約3割に遅れ」「水の販売量が通常の2倍」といった数字があれば、状況の大きさが一気に具体的になります。

テレビでは限られた時間で視聴者に状況を伝える必要があります。そのため、「普段の何倍なのか」「全体のうち何割に影響が出ているのか」といった比較できる数字は非常に有効です。

ただし、速報段階では数字が確定していないケースもあります。無理に断定せず、「午後3時時点」「現時点で確認できている範囲では」など、いつの時点の情報かを明確にすることも重要です。

③ テレビならではの「画になる現場」「変化が伝わる映像」

そして、テレビならではの大きなポイントが「映像」です。

テレビは「画」で伝えるメディアです。スーパーで水や非常食の商品棚が空いている様子、ホテルのフロントに問い合わせが相次ぐ様子、物流拠点で荷物が滞留している様子、店舗前で浸水が進んでいる様子など、ひと目で変化が分かる映像は、視聴者に状況を直感的に伝えてくれます。

重要なのは、単に「映像があるか」ではありません。「普段との違いが伝わるか」です。テレビ局が求めているのは企業PR用のきれいな映像ではなく、その場所で何が起き、普段と何が違うのかが分かる映像です。

もちろん、撮影のために社員を危険な場所へ向かわせてはいけません。社員や顧客の安全を最優先にしながら、業務上の記録として撮影した写真や動画があれば、必要に応じて報道機関へ提供できるよう整理しておくとよいでしょう。

つまり、災害時のテレビ対応では、「現場で何が変わったか」「その変化を示す数字はあるか」「その状況を映像で伝えられるか」という3つの視点で情報を整理しておくことが重要です。

取材依頼に備えて、平時から準備しておくべきこと

災害時のメディア対応で差がつくのは、災害が起きた後ではありません。むしろ重要なのは、平時にどこまで準備できているかです。

まず整えておきたいのが、社内の情報をすばやく集約できる仕組みです。複数の店舗や拠点を持つ企業なら、「どの店舗が営業しているのか」「社員に被害はないか」「物流や商品供給への影響はあるか」といった情報を、本社の広報担当者が短時間で把握できる状態にしておく必要があります。

人的被害、施設被害、営業状況、物流への影響、復旧見込みなど、各拠点から報告する項目をあらかじめ統一しておくだけでも、情報収集のスピードは変わります。

同時に、メディア対応の窓口も明確にしておきましょう。テレビ局から代表電話へ問い合わせが入った際、「担当部署が分からない」と社内をたらい回しにしているうちに、取材のタイミングを逃してしまうこともあります。

「報道機関から連絡があったら誰につなぐのか」「担当者が不在なら誰が代わるのか」まで、代表電話の担当者や各拠点の責任者と共有しておくことが大切です。

また、「人的被害はあるか」「営業への影響はあるか」「復旧の見通しはどうか」といった想定質問も整理しておくとよいでしょう。広報担当者が現場のすべてを把握する必要はありません。大切なのは、「この情報なら誰に聞けば分かるか」を把握していることです。

災害時の広報で最も大切なのは「宣伝しない」こと

企業広報に携わっていると、普段は「どうすれば自社の取り組みをメディアに取り上げてもらえるか」を考える機会が多いと思います。しかし、災害時はその発想をいったん脇に置く必要があります。

災害報道の主役は企業ではなく、被災した人や、その地域で生活する人たちだからです。

災害発生直後に、「当社では防災商品を販売しています」「当社のサービスなら災害対策ができます」と積極的に売り込めば、社会的な意義のある商品やサービスであっても、「災害を宣伝に利用している」と受け取られかねません。

報道機関も、災害時に企業の宣伝材料を探しているわけではありません。探しているのは、「視聴者がいま知るべき情報」です。だからこそ企業側も「何をPRできるか」ではなく、「いま自社だからこそ提供できる情報は何か」と考える必要があります。

店舗の営業状況、交通や物流への影響、商品の供給状況、施設の開放情報など、困っている人にとって役立つ情報を届ける。その結果としてニュースで紹介されることはあっても、それは目的ではなく、あくまで結果です。

災害時の企業広報で大切なのは、企業自身が主役になろうとしないことです。「正確な情報を、必要なタイミングで、必要な人に届ける」。そのための準備を平時からどこまでできるかが、いざというときの広報対応を左右するのです。

株式会社コミュニケーションデザイン PRコンサルタント

【ニックネーム】 ナイトウォーカー
【これまで担当した業界】 食品・飲料・医療・美容・自治体関連・出版社
【趣味】 夜の散歩、温泉めぐり
<個人的おすすめ温泉BEST3>
1、宝川温泉(群馬) 川沿いの絶景露天、紅葉や雪の時期が最高です
2、ほったらかし温泉(山梨) 眼下に甲府盆地が広がり富士山も見えます
3、西の河原温泉(群馬) 山に囲まれた日本有数の巨大露天風呂です
【プチ自慢】
テレビディレクター時代に、レオナルド・ディカプリオやミラ・ジョヴォヴィッチなどハリウッドスターのインタビュー取材をしたこと

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