テレビPRにおいてアプローチする機会が多い報道番組。
一体どのようにして取り上げるニュースを決めているのでしょうか?
業界歴18年の現役報道ディレクターに、ネタ決めのシステムや情報を提供する際のポイントなどを伺ってみました。
この記事の目次
担当番組と業務
A.夕方の報道番組でニュース班のディレクターを務めています。
業界歴は17年、現在38歳なので中堅ディレクターというところでしょうか。
取材先の仕込み、取材、原稿作成、VTR編集がディレクターの主な業務なのですが、取材に出てVTR編集を行う「OA(オンエア)担当の日」と翌日のネタをリサーチして取材先を決める「仕込みの日」を一日ごとにこなしています。
報道番組はどれくらいの人数で制作しているのか
A.私の担当している番組には80人くらいのスタッフがいます。
コーナーごとに班が分かれていて、ニュース班40人、特集班15人、エンタメ班10人、天気班5人、あと生放送のスタジオを仕切るフロア班が10人くらいですかね。
ニュース班には一番上に責任者であるニュースデスクが3人いて、その下にネタをまとめるベテランクラスのチーフディレクターが8人、中堅から若手の普通のディレクターが20人、さらにその下にディレクターをサポートするAD(アシスタントディレクター)が8人います。
私は普通のディレクターの一人ですね。ニュースデスクは数あるニュースの中からその日取り上げるネタを決めたり、ディレクターが書いた原稿に誤りが無いかチェックをするのが主な仕事で、メイン・サブ・翌日の放送の仕込みを3人で順番に回しています。
ニュースは毎回5,6ネタくらい取り上げるのですが、1ネタごとにチーフディレクター1人、普通のディレクター2人、ADが1人付いてチーム体制で制作しています。
チーフディレクターはまとめ役となってネタの構成を考え、取材先を決めてVTRの原稿を執筆。中堅から若手の普通のディレクターは午前中から取材に行き、戻ってきたらチーフディレクターが書いた原稿を元にVTRを編集。
ADは全てのサポート役として、放送時間までにVTRが間に合うよう朝から夕方まで局内を動きまわっています。
報道番組のネタはどのような流れで決めていくのか?
A.基本的には仕込み担当のニュースデスクが放送前日からネタの選定を進めていきます。
報道局の中には各報道番組の他に、社会部・政治部・経済部・国際部という部署があり、社会部であれば事件・事故・災害、政治部であれば政治、経済部であれば企業の動向や株式・為替、国際部であれば海外情勢というようにそれぞれのジャンルに特化した情報を集め、取材を行っています。
各部から集まった情報は報道・情報番組のプロデューサーと各部のデスクが集まって1日に2回開かれる会議で共有されるほか、各番組・部署に設置されているPCでチェックできるようになっています。
このPCには、何月何日にどの企業が記者発表会を開催するといった今後の予定や誰がどこに取材に行くかという情報も載っていて、先々のニュースを事前に把握するのに非常に役立っています。
あとは新聞も全紙チェックしますし、ネットニュースや週刊誌から暇ネタを拾ってくることもあります。
例えば「いまSNSでこんな動画が話題になっている」なんて情報は社会部や政治部から出てこないですからね。ネタはニュースデスクだけでなく、ディレクターが「こんな面白いネタありましたよ」と提案して採用されることもあります。
このようにして放送前日から情報収集をはじめてネタのラインナップを固めていくのですが、新たなニュースが入ってくるたびにネタを差し替えていくので、放送の頃にはラインナップが大幅に変わってしまい、前日から一生懸命仕込んだネタがパーになってしまうことも日常茶飯事です。
採用されやすい報道番組のネタの傾向
A.やはり報道番組なので、事件や政治、社会情勢など重要なニュースが優先的にラインナップに入ります。
ニュース性の高いネタというとPR的にはあまり縁が無いように感じるかもしれませんが、意外とそんなことはありません。
いま私たちの生活に大きな影響を及ぼしている「新型コロナウイルス」。
連日どこの報道番組もトップニュースとして時間を掛けて取り上げていますが、「この企業では感染防止策としてこんなことをしている」とか「あの団体では医療従事者のために支援物資を送っている」など、企業や団体の取り組みを紹介しているのを目にしたことはないでしょうか?
このような関連ニュースも十分に取材の対象となり得るのです。
ただ、このような取り組みはある一企業だけが行っているわけではなく、他にも似たようなことをしている企業はあると思います。取材される企業と取材されない企業にはどのような違いがあるのか?それは「他社に先駆けていち早く情報発信をしているかどうか」だと思います。
企業や団体に関する情報は、自動的にメディアの元に集まるわけではありません。プレスリリースなど情報を発信することで初めてメディアはその情報を知ることができますし、他社が同じようなリリースを出した後では二番煎じ感があり、取材に繋がりにくくなってしまいます。
私の感覚的には、前述のようなニュース性の高いネタが7,8割、残りの2,3割でニュース性があまり高くない暇ネタが入る感じです。
暇ネタは雑誌やネットニュースから探すことが多いですが、ここ数年は特にSNSでバズっている話題を取り上げることが増えていると思います。
プレスリリースはどれくらい報道番組のネタ決めに活用されているか
A.企業から送っていただくプレスリリースも重要な情報源ではあるのですが、他社にもありそうな情報や宣伝感が強い情報が多く、ニュースとしては取り上げにくいものが多い印象です。
そういった経験上、プレスリリースのチェックはどうしても後回しになってしまっていると思います。
あとプレスリリースは届く量も多いので捌き切れていない、というのもあると思います。中にはネタになるような面白いものもあると思うのですが、どうしても他のリリースに埋もれてしまいがちです。「あ、面白そうなイベントの情報がある!」と思ったらもう終わってた、なんて経験も何度かあります。
プレスリリースを確実に見てもらうにはどうすればいいか
A.一番いいのは直接持ってきてもらうことですかね。
スタッフも忙しいのでアポイントを取るのは難しいかもしれませんが、直接渡してもらえれば間違いなくチェックはできると思います。
訪問が難しい場合は、FAXやメールで送ってもらった後に確認の電話を入れるのも有効ではないでしょうか?放送中や直前には対応できないこともありますが、空いている時間であれば届いているかの確認は可能だと思います。
またデスク宛てに郵送するのも一つの手かもしれません。届くまでに時間はかかりますが、少なくともFAXのように埋もれる心配はないと思います。面白い情報はいつでも歓迎ですのでよろしくお願いします。
以上、報道番組のニュースコーナーのネタ決めと情報提供方法について話を伺いましたが、参考になりましたでしょうか?また次の機会に別のテーマで話を伺ってみたいと思います。
【これまで担当した業界】 食品・医療・自治体関連・出版
【趣味】・夜の散歩・温泉めぐり
<個人的おすすめ温泉BEST3>
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【プチ自慢】
レオナルド・ディカプリオやミラ・ジョヴォヴィッチなどハリウッドスターのインタビュー取材をしたこと