美大で培った情報をデザインする力、職人的なパワーポイントとイラストの画力でメディアや他社広報までも惹きつける! —「よりそう」広報・髙田綾佳さん

今回は、全国約4000斎場と提携し「よりそうお葬式」、「よりそうお坊さん便」など、高齢化や核家族化による葬儀・供養の価値観の変化等を取り入れたサービス内容を展開する、株式会社よりそうの髙田綾佳さんに、広報・PRパーソンならではのリアルな企業広報のお話を伺った。
(インタビュー:編集部 若林)

広報の面白さに気づき、異業種からキャリアチェンジ

髙田さんは武蔵野美術大学、造形学部デザイン情報学科のご出身。

髙田さんは武蔵野美術大学、造形学部デザイン情報学科のご出身。

若林:もともと、髙田さんのTwitterをフォローさせていただいたんです。昨年の5月くらいにnoteに書かれて広報界隈ですごく拡散された、「広報がリモートでも報道番組で紹介してもらうための映像撮影ノウハウ」という記事を私も拝見していて、すごく素晴らしい内容だったので取材させていただきたいなと思ったものの、どこの会社に所属されている方なのかわからなかったんです。

でも、先日、ヘイの上野さんを取材した時に髙田さんのことをご紹介いただき、「まさに、取材させていただきたかった方です!」という経緯で、今回取材させていただきました。1年越しで願いが叶った感じで、ヘイの上野さんにも感謝です!

髙田さん:そうなんですね! ご覧いただきまして、ありがとうございます!

若林:あのnoteの記事は、めちゃくちゃ反響があったんじゃないんですか?

髙田さん:はい! 結構じわじわと伸びて、今は200スキくらいまで伸びている感じですね。

若林:へえ、すごい!イラストがお上手だと思ったら、武蔵野美術大学の造形学部デザイン情報学科のご出身なのですね。でもイラストとかを描く学科ではないですよね。

髙田さん:グラフィックデザインやWEBサイト制作などを幅広く学ぶ学科でしたが、私自身イラストが好きで、こういうところで生かせるかなと試しにやってみたら、すごく反響いただいた感じですね。

若林:そうだったんですね。大学を卒業されてから、印刷作業員を2年半、デザイン事務所でパワーポイントのデザイナーを3年されて、2017年6月によりそうに入社されたということですが、入社されたきっかけをお聞きできますか。

髙田さん:キャリアチェンジをしたいと活動している中で、広報という職種のおもしろさに気づきまして、未経験でも可能な会社を探していて出逢いました。事業内容がすごく魅力的だなと思い、こういう会社のステキなところを伝えていきたいなと飛び込みました。

若林:すぐに広報に配属された感じですか?

髙田さん:そうですね、先輩の広報さんに手取り足取り習いながら、半年ほど実務を学ばせていただいた感じです。今はCMO直轄の広報として動いてまして、1年半くらいひとりで広報をしています。

社会との接点を増やすために調査を実施~自社が発信したいことと世の中の関心を掛け合わせ設計

テレビ東京を見学した時の記念写真。

テレビ東京を見学した時の記念写真。

若林:事前にいただいたプロフィールを拝見して、広報としての業務の中で、あれ?と思ったのがESSEオンラインの連載記事の執筆でした。数ヶ月毎くらいのペースで、御社の事業にかかわる話を執筆されてますが、こちらはどういう経緯で連載することになったのでしょうか。

髙田さん:先ほどお話した先輩広報が、複数社合同でメディア懇談会を開いたんです。そこに、ESSEオンラインの方がいらっしゃって、先輩が「葬儀の話は主婦の方も関心があるのではないか」とお話しくださり、その話を私が引き継ぐ形で3年くらい書かせていただいています。

若林:いやあ、広報が媒体で連載を持って、ケーススタディを出しながら、今の葬儀のトレンドなどを伝えているのって、すごく新しい形の広報活動だなと思いました。

髙田さん:ありがとうございます! やはり葬儀って、知ってもらうことから始まりますから、記事を書くにあたって、私どもだから伝えられることや情報に触れていただきたい想いで書かせていただいています。ですので、原稿を書く際は、ものすごく勉強しながら書いています。

若林:全部ご自身で書かれてるんですよね、文章がお上手ですよね。これまでの掲載記事やHPをいろいろ拝見し、2021年5月や2020年10月に、家族葬のイメージや、コロナ禍の葬儀に関する意識調査を実施さられていて、アンケートをきっかけにメディア露出をはかられてるイメージがありますが、やはりそこを重視されているのでしょうか。

髙田さん:そうですね。葬儀は、口コミなど、なかなか情報が出てきにくい業界でもあるので、みなさん、情報を求めていらっしゃるんですよね。また、調査リリースを出すと、メディアからも非常に多くお問い合わせをいただきます。弊社が継続的に社会と接点をとっていくという意味で、葬儀に関する情報をアンケート調査という形で伝えていくことに、とても力を入れています。

若林:設計や調査などの一連の作業は、髙田さんが全部されているのでしょうか?またPR調査ということで、テーマと結果の予測を立ててから、調査をとられているという感じでしょうか。

髙田さん:私が全部やる場合もあります。特に葬儀社さん向けは、設計から実行までやっております。
調査については、社会が必要としている情報を常に念頭に置いてはいますが、弊社が訴求したいサービスとベクトルが異なるケースも多々あるので、折衷案を考えながら設計しています。
その他のアンケートは、同じマーケティング部の中で、別の担当者が別の目的で調査を行ったものです。ただ、結果をみて、広報として発表できる結果があれば、リリースにもしています。

若林:社会が求めていることでいうと、今回のコロナのように長期的にテーマとなっているものもあれば、急がないと乗り遅れてしまうようなものもあると思うのですが、どのくらいの期間でテーマを決めて、調査をとり、リリースを出されているのでしょうか。

髙田さん:設計から入る時は、一週間で設計して、一週間くらいで回答を回収し、それをまとめて社内に通すまでが一ヶ月くらいです。そこからリリースを作成するので、合計一ヶ月半くらいですかね。かなり最短でゴリゴリでやってます(笑)。

コロナ禍での葬儀問題~戦略的な情報発信で、メディアからの問い合わせが殺到

社員とラジオ出演のために打ち合わせをする様子。

社員とラジオ出演のために打ち合わせをする様子。

若林:葬儀は、結婚式と違い、準備できる期間が限られていますよね。そのため、必要な情報を必要な方に届くようにアウトプットを増やすのが広報のミッションなのかなと思ったのですが、いかがでしょうか。

髙田さん:CMOからは、よりそうのファンを増やして欲しいと言われていますので、いざ必要な時に、頼ってもらえる存在になりたいというのが大きいです。その一環として、メディア露出も増やしたいですし、調査リリースを多く出しているという状況です。

若林:確かに、コロナ禍での葬儀の意識調査などは、「日経新聞」や「なないろ日和!」など、いろんなメディアに露出してますよね。実際、髙田さんのコメントも結構掲載されていますが、調査の状況を一番把握してるので、スポークスパーソンとして対応もするスタンスなんですか。

髙田さん:状況によりますが、データに関してのみのご質問には私が対応していますが、より深堀りした内容のインタビュー取材などはCMO、事業全体に関する話は経営陣、と対応者を分けています。

若林: 2020年3月に出された、「よりそうの後葬(あとそう)サポート」は、かなり綿密に戦略を立ててPRした事例かと思ったのですが、いかがですか。

髙田さん:確かに、スピードも戦略もうまくいった事例だと思っています。実は、後葬サポートの開始が決まる前、2月の終わりくらいに、葬儀社向けのアンケート調査を始めていました。その後、「後葬」という名前で、その時コロナで葬儀がなかなかできない状況だったので、故人さまを荼毘に付したあとにはなりますが、コロナが開けたらもう一回お葬式を、というサービスのローンチが決定し、リリースを出すことになりました。情報の出し方として、まずは「今、コロナで従来のような葬儀があげにくい状況になっている」という状況を理解してもらうため、調査を先に出し、次に、問題提起と弊社なりのソリューションとして後葬サポートを出そうと思い、なるべく最短ルートでスピード感を持って進めていきました。

参考資料「後葬サポート」
※クリックで拡大できます。

参考資料01
参考資料02
参考資料03

若林:確かに、両方の話題を一緒のリリースに書いてしまうと、そのための調査なのかと思われてしまう可能性もあるので、アンケートを先に出して、問い合わせをしてくれたメディアに対して、ソリューションとサービスのご紹介をしたということですね。結果、セットで取り上げてくれたところが結構あったということでしょうか。

髙田さん:まさに、「news every. 」と「スーパーJチャンネル」は、そのセットで獲得できました。特に、「news every. 」はすごい反響がありましたね。

若林:サービスサイトにアクセスが集中して、ダウン一歩手前だったそうですね。「news every. 」も「スーパーJチャンネル」も夕方帯で、主婦の方や、50〜60代の方も多く視聴されているということもあったのでしょうか。

髙田さん:おそらく、そうだと思います。「スーパーJチャンネル」に関しては、ご遺族さまの声も放映されました。ご遺族さまのインタビューは、取材を申し入れること自体がはばかれる難しさがありますが、たまたまお伺いした葬儀社さんに弊社のお客様がいらっしゃり、応じてくださったんです。それで、「コロナで葬儀がなかなか難しくなってきて、参列者を募りにくい状況ですけどいかがですか」というインタビューに、「コロナがなければ…」というコメントをいただきました。それをすごく他の媒体さんも見られていて、葬儀問題に気づいてくださったんです。

若林:40媒体以上で取り上げられていますが、その報道をきっかけに、色々なメディアからの取材が入ってきた感じでしょうか。

髙田さん:転載とかも含めると50以上掲載されていますね。ある地方局はまさに「Jチャンネルを観ました」と仰っていただいて、こういう波及の仕方もあるんだなと身をもって勉強させていただいた事例でした。

若林:アンケート調査を送る媒体と、次の日にサービスのリリースを送る媒体って、どうしても重複してきますよね。アプローチの仕方が難しかったのではと思うのですが、いかがでしょうか。

髙田さん:被ってはしまいますが、こればかりはスピード感をもって、とにかく広く知らせねばいけないと思い、同じ媒体を担当してる記者さんでも、「見てください!」という気持ちで、多くのメディアに送りました。

若林:アンケートは全国に流したんでしょうか。「よりそうの後葬サービス」もですか?

髙田さん:その際、葬儀の問題は首都圏が多かったのですが、将来的には絶対全国で問題になると思っていましたので、先にそういうリリースを送っておけば、後から「ああこういうことか」とお声がけが来るかもと、「PR TIMES」でも全国のメディアに配信しました。

若林:なるほど。アプローチの仕方として、重要媒体にプッシュで電話されたりはしたんですか?

髙田さん:これに関しては、電話をする間もなく、まずはアンケートに大変多くのメディアから問い合わせをいただきました。そのお問い合わせに対して「実は、後葬サポートというリリースも出してまして」と加えましたら、結構取り上げていただいて、その報道を観た方々からまた連絡が来て…という連鎖で、3月半ばから5月頭くらいまでは、こちらからアプローチしなくてもすごい量の取材が来ていました。

若林:すごいですね! 戦略勝ちというか、アンケートを先に出したことで、ちゃんとサービスにも紐付くPRが出来たということですよね。

髙田さん:このアンケートが、おそらく葬儀業界で初めてのコロナ関連のリリースでしたので、スピード勝ちの部分もあったと思います。

若林:葬儀業界って、こういう情報をあまり出さないんですか?

髙田さん:情報を出さないというよりかは、弊社がベンチャーなので、最初に情報を出しやすい環境にはあったということだと思います。特に弊社は、何百社もの提携の葬儀社さんにすぐアンケートを出せる体勢ですので、結果的に、弊社が一番早く、葬儀×コロナの情報を出せたという形です。

若林:アンケートは2020年3月9日、翌日10日に後葬リリースを出しているので、すごく早いですよね。

髙田さん:そうですね、アンケート自体は確か、2月28日にとり終わってたので、設計して、調査を実施して、分析、リリースまで、営業日にすると6〜7日くらいでリリースにまとめて出したというスピード感です。アンケートの取りおわりと同時に後葬サービスのリリースも書いていましたので、2本同時進行で書いていました。

様々な切り口で注目を集める「よりそうお坊さん便」~ネガティブな反応にも、経営判断の真意を伝えられるメディア戦略で状況が好転

お坊さん便ラボ、ポップアップイベント「改元寺」の様子。

お坊さん便ラボ、ポップアップイベント「改元寺」の様子。

若林:大きく話題になった「よりそうお坊さん便」についてもお聞きしたいですが、2013年のスタートから2019年に至るまで、結構コンスタントに話題化されてますよね。新サービスを出した時は取り上げられやすいですが、既存のサービスって、難しいですよね。
特に、「よりそうお坊さん便」は、2019年に宗教的な行為のサービス化という批判もあり、大手ECでの取り扱いを終了されましたよね。その際、取り扱いを終了した会社の方針や想いを全部出せるような取材を獲得して欲しいという話が髙田さんのところに来たということですが、正直難しいなって思われませんでしたか。

髙田さん:もうすごく難しかったです、ほんとに。一番難しかったのは、批判があったからやめたのではなく、実は、さまざまな関係各所と話し合いをした結果、自分たちの判断で出品を終了し、取り扱いをサービスサイトに集約していく選択をしたということを、きちんと伝えることがミッションとしてありました。その難しい文脈をさらに、きちんと語れる場所で事業責任者が話すという形での取材を獲得するというミッションと、ふたつを両立させるのが、その当時は難しい舵取りを任されたと感じましたね。

若林:そうですよね。ストレートニュースでは結構露出すると思いますが、御社の想いや経緯はそこまで詳しく語られないですよね。そこをどうやってメディアに興味を持っていただくのかが結構大変で、でも結果的に、日経ビジネス等でかなり深掘りした内容の露出に成功されていましたよね。どうやって進めていかれたのでしょうか。

髙田さん:日経ビジネスは、「よりそうお坊さん便」のECサイト出品取り下げのリリースを見てお声がけいただきました。取り下げに関してのお知らせを、2020年の10月24日に載せ、そのタイミングでプレジデントオンラインに掲載いただいたので、もしかしたら、そちらも見てご連絡をいただいたのではと思います。

若林:取り下げに関する発表と同時に、プレジデントオンラインで記事化されていたのですね。

髙田さん:プレジデントオンラインでは、かなり細かく書いていただいてました。また翌月には、「よりそうお坊さん便」に関する新しいサービスも発表することになっていたので、「発表会をするので、良かったらぜひ来てください」と同時にアプローチをしていました。もともと、「よりそうお坊さん便」は、2015年の大手EC出品時に、かなり社会現象化していたこともあり、注目度自体は高いという状況だったのです。

若林:確かに、大手EC出品時は、国内外で560ものメディアに紹介されたと書かれてましたよね。

髙田さん:そうなんです。私が在籍する前の話ではありますが、かなりすごい量だったらしく、それで多くのメディアが「よりそうお坊さん便」を覚えていてくださっていました。ですので、出品停止だけでも結構お問い合わせはあったのですが、そのリリースと合わせて、新しいサービスのコンセプトや詳細を直接お話する機会として記者発表会のご案内もさせていただいたところ、さらに露出が増えたという感じです。

若林:どのような新サービスの発表だったんですか?

髙田さん:この時は、決まった費用以上にお気持ちを包めるという「おきもち後払い」というお布施のような支払い方法と、業務効率をアップする仕組みを開発したという発表です。15媒体くらいに参加いただきました。

若林:2019年は、ポジティブな話題でも「よりそうお坊さん便」が、NHKや民放各局に取り上げられていましたよね。

髙田さん「お坊さん便ラボ」という、一連のPR施策をやっていたんです。平成から令和に変わるタイミングで、平成に感謝して令和に進もうというコンセプトで、「改元寺」というポップアップイベントをやりまして、そこで、平成の想い出をお坊さんに供養してもらおうというイベントを開き、各局に取り上げていただきました。

若林:広報発の企画ですか? お坊さんの手配など、結構大変だったんじゃないでしょうか。

髙田さん
:そうですね、プロモートや施設の設置などはPR会社さんにお願いしましたが、お坊さんの手配は確かに、大変でした。主旨のご説明や取材のアテンドなどは広報でさせていただきました。

若林:「カンブリア宮殿」でも、元銀行マンの築地本願寺宗務長の安永雄玄さんが出た回で取り上げられてましたよね。

髙田さん:あれも、私どもからのアプローチではないのですが、さまざまな施策を「よりそうお坊さん便」で継続していたからご注目いただいたのかなと思っています。取り上げられ方としては、檀家離れの急速な広まりの打開策として「お坊さん便」をご紹介いただいた形です。

若林:最初、葬儀会社と聞いた時に、人の死に関わるテーマって、なかなかメディア露出が難しいイメージがありましたが、御社の場合は、調査や、「よりそうお坊さん便」、広報のクリエイティブ的な企画など、新しいサービスを定期的に出していくことでコンスタントに露出を図っているのがすごいなと思いました。「お坊さん便ラボ」以外にも、反響のあった施策や取り組みはありますか?

髙田さん:それでいうとLINE Clovaに「よりそうお坊さん便」がスキルを提供したときですね。LINE FRIENDSのひよこちゃんやクマちゃんの形をした可愛い機体があるんですけど、それに袈裟を着せたり、ビジュアルを作りまして、「ねえClova、3分法話を聞かせて」と言うと、お坊さんが3分法話をしてくれるという企画でした。ストレースニュース中心でしたが、仏教×AIという文脈を面白がっていただき、見た目のインパクトもあり、結構反響ありましたね。

■【お坊さん便】僧侶手配のお坊さん便が「LINE Clova」に登場 (株式会社よりそう)
https://www.yoriso.com/corp/news/news-180628/

広報目標「ファンづくり」を測るKPI~そして、広報活動で重視していくnote活用戦略とは

髙田さん「とにかくタスクを自分の中で可視化していっています。」ひとり広報は大変である。

髙田さん「とにかくタスクを自分の中で可視化していっています。」ひとり広報は大変である。

若林:たまにPR会社の手を借りているとは仰ってましたが、それでも、リリースの本数も結構多いし、ESSEでの連載やnoteの執筆など、結構大変だと思うのですが、ひとり広報でどうやってやりくりされているんですか。

髙田さん:とにかく、タスクを自分の中で可視化していっています。確かにリリースは常に何本も走ってます。昨日もリリースを出したばかりなんですけど、同時に、コーポレートサイト改修のプロジェクトマネージメントもしています。それは、私が、プロダクトとコーポレートの両方の広報を担当しているので、メッセージングやディレクションの部分も任せていただいているという流れです。スケジュール管理の面では、タスク管理ツールをめちゃめちゃ活用しています。

若林:タスク管理ツールを使うとこなせていけますか?(笑)当面はひとりで広報を続ける感じでしょうか。

髙田さん:当面ひとりということは、各方面から言われてます(笑)。タスクが可視化されると、パンクしそうだから相談しようとか、まだこれだったらいけるなとか、結構そういう状況が見えて落ち着きますね(笑)。

若林:そうなんですね。今、広報PRの業務では、何に一番時間を使われてますか。

髙田さん:今がちょっとイレギュラーで、コーポレートサイトのところに一番時間を使ってますが、それ以外ですとリリースの企画や社内外の情報収集ですかね。

若林:確かに、世の中の関心事と御社が発信できることを、どうやってすり合わせるかを非常に重視されている印象があるので、社内はもちろん、社外にもアンテナを張られているということですよね。

髙田さん:そうですね、葬儀に関するトピックは、Googleアラートとかで絶対見逃さないようにしてますし、葬儀の業界の方が何を思っているか、葬儀に関して一般の方が何を思っているかは、Twitterも結構見ていまして、話題になっている葬儀や、終活に関するブログとかニュースがあれば、なるべく見逃さないようにしています。

若林:なるほど…勉強になります。ちなみに、最初CMOから、よりそうのファンになってもらい、“頼ってもらえる存在”になるために広報PRを展開してほしいということでしたが、効果測定にどんな指標を設けていますか?

髙田さん:正直、CMOとは「ファンづくりって、計れないよね(笑)」と合意形成ができていまして、計測方法などは模索中の部分はあります。今は、評価の指標を置いてはおらず、定量的に自分で努力できる部分、例えばリリースを出すとか、広報のnoteを何本書くといったところで評価をしています。ただ、今後は、noteの反響などに軸足を置いていくと思います。お見せできる状況ではないので恥ずかしいのですが、公開してるのでお見せしますね。まだテーマとか迷走中で、設計したけどうまく数字が回らないなと…。(笑)

■よりそう広報の「よりそいたいnote」 (note)
https://note.com/yoriso_pr_note

若林:これは、よりサービスを伝えるためのnoteという位置づけですかね。

髙田さん:そうですね、現状のターゲットは、記者さんに読んでいただいて深掘りしてもらい、良い記事をとっていけるものに、という設計で作っていたのですが、そうするとなかなかPVに繋がらないことが発覚しまして…。そのための情報線をどう作っていくかという話と、そもそも、拡散してないと記者さんの目に届かないので、内容について上司ともんでるところです。

過去のキャリアで身に付けた「表現力」が、さまざまなフェーズで反響を巻き起こす!

五反田バレーでの勉強会の様子。

五反田バレーでの勉強会の様子。

若林:取材の獲得のためにnoteを立ち上げたんですね!新しいですね。ちなみに、髙田さんご自身のnoteは、何のために始めたんですか?

髙田さん本当に自分が書きたいことを書くための場所です。たとえば、さっきの取材の撮影ノウハウの話は、会社のnoteで発信する内容ではないなと思ってまして。広報さんのために記事を書いてるかというとまた違って、結構いろんな要素のために、あのアカウントは作っています。

若林:すごいですね。私も仕事柄、文章をいろいろ書いてますが、だからこそなのか、自分のために書くってめんどくさくって。(笑)
髙田さんは、普段の仕事でもたくさん文章書くのに、プラスしてnoteまで書かれてるのは何のためなのか、すごい興味深いです。

髙田さん:そうですね…根本から表現が好きなんだと思います。ご覧いただいた撮影ノウハウの話とかも、最初は自分のためにディレクターさんに、どうやったら「素材がない」と言われないようにリモートで撮影したらいいかを聞いたのがはじまりなんですけど、聞いてるうちに、「あ、これ、ほかの人にも知って欲しい内容だな」と思って自己満足で作ったんですよ。

若林:いやあ、自己満足で、あそこまでできたらすごいです! ある意味、広報界隈にすごく貢献されている記事だなと。

髙田さん:ありがとうございます! 気づいたらTwitterで26RTとか75いいね!とか、かなり反響があってびっくりしました。しかもnoteって、SmartNewsと連携しているのをご存知ですか? SmartNewsに「note」というタグがあり、そこにさっきのノウハウの記事が掲載されまして。

若林:うそっ! いつの間にそんなタグが出来ていたんですか!? すごい!

髙田さん:あれって恐らくnoteの方がキュレーションしてるので、おそらく、何らかの選定基準をクリアしたのかなと思いました。

若林:じゃあ、なおさら、個人で利用しているnoteにも、会社名を入れておいたら良かったと思いませんでしたか。(笑)

髙田さん:ちょっと思いましたね。いろんな人から言われました(笑)。本当に自己満足で作ったので、こんなに拡がると思わなくて…。

若林:PRマガジンのスタッフにも、「記事にイラスト入れればわかりやすいから描いたら」と言われたことがありまして。でも、イラストってひとつの才能だから、そんなにすぐ描けないですよ!と話してたんですけど、やっぱりわかりやすいですよね。内容ももちろんすごく良かったので、そりゃあ確かにいっぱいいいね!がつくだろうと思いました。この内容はどれくらいで書いたんですか。

髙田さん:ありがとうございます。テキスト自体は2時間くらいですかね。イラストつくるのに2時間くらい。そのあと、この話をお聞きしたディレクターさんにも「描いちゃいました〜」って見ていただいて(笑)。翌日OKのご連絡をいただいて出したという感じです。今では普通にお友達みたいに親しくなり、番組の質問も友達のように聞いたりしています。

若林:ディレクターさんも巻き込んでいるんですね、すごい! 人の心を開くのもお上手なんですね。そういうやりとりで、リレーションも深まりますよね。noteの記事もですけど、美大で学んだことや、デザイン事務所でパワポを作られたこととかが全部生きてますよね。

髙田さん:そうですね、パワポ推しで入社したのもあって、なんとか社会に還元していかないと、と思ってまして。実は、広報で勉強会をさせていただいたことがきっかけで、パワーポイントのnoteも1本書いています。

■パワポ作成の苦しさから解放される、構成とデザインにまつわる6つのルール (note)
https://note.com/ayaka_takada/n/nc599f70b2705

若林:もちろん、なるほど!なるほど!と思って見させてもらいましたー! 私がそのnoteを拝見してへーっと思ったのが、パワポで作ってメディアに紹介した資料がそのまま報道されたこともあると。髙田さんならではだなって拝見してました。

髙田さん:そうですね、具体例でいうと、2018年に弊社は「よりそう」というエンディングブランドのリリースをさせていただいたのですが、その中でつくった資料をそのままWBSさんのテロップで使っていただきました。ほか、2019年2月、「現代マネー」で取材していただいた時にもスライドをそのまま記事に掲載いただきました。

■Amazonから「お坊さん便」撤退を決めた「よりそう」の信念 (マネー現代)
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/69289

そのまま報道される事となったパワーポイントの資料

そのまま報道される事となったパワーポイントの資料

若林:私も今回、記事に挿入するようにパワポ欲しいです!と相談させていただいたので、掲載されたメディアの方の気持ちがすごくわかります!

髙田さん:いかに弊社のことをわかっていただくかに、図解はすごく大事だと思っていて、パワポをつくると決めたらかなりがんばります。

若林:だからこそ、すごくわかりやすいです。ちなみに髙田さんは、五反田バレーの立ち上げにも携わっていらっしゃいますよね。ココナラの柳澤さんとかも懇意にされてますか?

髙田さん:はい! 2018年の時からだいぶ仲良くさせていただいています。立ち上げの時から、企画案や資料を一緒に作ったり、数字を調べたりというところから一緒にしていて、実際にイベントや勉強会も登壇させていただいています。

髙田さんはお酒を飲むこともすごく好きだそう。

髙田さんはお酒を飲むこともすごく好きだそう。

若林:やっぱり広報の方って、いろんなところで繋がっていますね。最後にちょこっとプライベートもお聞きしていいですか?

髙田さん:休日はなるべく、家事をまとめてやったり、友達とゲームしたり、Clubhouseで、仲良くなった人たちともLINEでグループを組んで、モンスターハンターをやったりですとか、仕事に触れないようにはしてます。

若林:交友関係が広そうですね。イメージでは、noteとかも休日に頑張ってらっしゃると思ったんですけど、ちゃんと切り離すんですね。

髙田さん:そうですね、平日はもちろんすごい仕事にコミットするんですけど、休日はインプット/アウトプットのバランスをとってないとダメかなと思って。休日に、仕事関係の本も読みますが、友達との時間に使ったり、自分の中身を充実させるためにカフェで本を読んだりしています。

PRマガジン編集部の「編集後記」

編集後記:編集部 若林

1年越しで、「会いたい!」が実現

Zoom取材中の髙田さん

Zoom取材中の髙田さん

2020年5月に一つの記事が広報界隈で話題になった。それが、タカダさんが書いたnote 「広報がリモートでも報道番組で紹介してもらうための映像撮影ノウハウ」だ。

イラストつきで非常にわかりやすく解説されている。これを見て、どこの会社の広報なんだろう??と思ったが、社名が出ておらず、一旦は取材を断念。

しかし、前回取材したheyの上野さんに、「この広報すごいな~と思う方いますか?」と聞いた際、髙田さんのお名前と例のnoteを送ってくれたのだ。

■広報がリモートでも報道番組で紹介してもらうための映像撮影ノウハウ (note)
https://note.com/ayaka_takada/n/n914c49a2dfd8

これまでのキャリアがすべて広報に生きている

武蔵野美術大学造形学部デザイン情報学科を卒業している髙田さん。母校で講演されたときに、広報との共通点を 「何かを伝えるとき、要素の一つひとつを情報としてとらえることで、社会とより良くつながる」こととお話しされていた。

卒業後、プロダクトのデザイナーになる方も多いようだが、髙田さんは情報のデザイナーになったということだ。そして、広報にこういった視点を持てているからこそ上手に情報をデザインできているのだなと納得した。また、前職ではパワポデザイナーとし活躍されていたことから、とにかく資料が見やすいし、情報が頭に入ってきやすい。

パワポで作成した資料を武器にメディアリレーションをすることもあるそうで、そこから記事化につながったり、報道の中でそのままパワポが使われることもあるそう。これも納得。私も取材中にパワポくださいっていいましたし…。だって、パワポがあったほうが記事の内容の理解も進みそうと思ったんですもん!

広報としてひたすらキャリアを極めるのも素晴らしいが、こうやって自分の得意なことや別の職種で身に付けたスキルを存分に活かせるのも広報の魅力の一つかもしれない。髙田さんを見ていて、そう感じた。

今回のPRパーソン紹介

髙田 綾佳(たかだ・あやか)

1988年生まれ。武蔵野美術大学造形学部デザイン情報学科卒。非正規雇用の印刷作業員(2年半)、デザイン事務所でのPowerPointデザイナー(3年)を経て、葬儀領域のITベンチャー・株式会社よりそうに入社。広報担当としてメディアリレーション・プレスリリース執筆・イベント企画・連載記事の執筆およびイラスト制作など幅広く担当。
2020年5月13日にnoteで公開した「広報がリモートでも報道番組で紹介してもらうための映像撮影ノウハウ」は広報界隈で大きな反響を得る。

株式会社よりそう (https://www.yoriso.com/corp/

2009年3月設立。全国約4000斎場と提携し「よりそうお葬式」、「よりそうお坊さん便」などのサービスを提供。 高齢化や核家族化による葬儀・供養の価値観の変化等を取り入れたサービス内容が支持されている。
2016年には「Global Brain Five-Star Startup Awards」で最も成長した企業として表彰されるなど ビジネスへの注目が集まっている。