企業アカウントはもちろん、個人名で運用されている方も多いSNSですが、近年では炎上トラブルが増加傾向にあります。その恐怖に怯えながらSNS運用を行っているという方も多いのではないでしょうか。
かくいう私も、広報としてSNS運用をする一人です。SNSの有効性は実感する一方で、社内メンバーの投稿が炎上しないか/巻き込まれないかということに対しては敏感になることもあります。今回は、SNSにおける炎上トラブルについて、そのメカニズムを理解した上で、それを避けるためにはどのように運用していけばいいのかを、私なりの見解でお伝えします。
この記事の目次
ソーシャルメディアとは?
そもそもソーシャルメディアとは、「インターネット上で展開される情報メディアのあり方で、個人による情報発信や個人間のコミュニケーション、人の結びつきを利用した情報流通などといった社会的な要素を含んだメディアのこと」(出典:IT用語辞典 e-Words)です。TwitterやFacebookなどのSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)を思い浮かべる方が多いと思いますが、それ以外にも、ブログ、動画共有サイトなど、利用者が情報を発信し、形成する場所全般のことを指します。
画像参照元:https://snaplace.jp/varioussnsbae/
ソーシャルメディアのメリット6つ
皆さまもご存知のように、ソーシャルメディアには多くの魅力があります。
ソーシャルメディアを利用するメリット
- 新しい人と知り合うことができる
→企業にとっては、採用につながったり、お客様になっていただける可能性もある - 結びつきが深まる
- 旧友と連絡が取りあえる
- 最新のニュースや情報が得られる
- 自分の興味/関心に合った情報が集められる
- 発信することで、自分の表現力・言語化能力が鍛えられる
特に、1の「新しい人と知り合うことができる」というのはソーシャルメディアならではの魅力でしょう。対面とは違い、不特定多数の人とつながれるソーシャルメディアにおいては、知り合いをどんどん増やすことができます。私自身も、Twitter経由で採用に至ったケース、お客様になっていただいたケースもあり、SNS活用には確実なメリットがあることを実感しています。
ソーシャルメディアによるトラブル
このようにメリットが多くある一方で、起こり得るトラブルについても常に意識する必要があるでしょう。総務省による「ソーシャルメディア利用のデメリット」の調査によると、「ソーシャルメディアの情報発信者が経験したトラブル」として、以下の点が挙げられています。
- 自分の発言が自分の意図とは異なる意味で他人に受け取られてしまう
- ネット上で他人と言い合いになる
- 自分は軽い冗談のつもりが、他人を傷つけてしまう
- 自分の意志とは関係なく、自分の個人情報や写真を他人に公開されてしまう
- 自分は匿名のつもりだったが、他人から自分の名前等を公開される
- 他人が自分になりすまして発信する
- 自分のアカウントが乗っ取られ、他人に不審なメッセージを送信してしまう
- 自分の投稿内容に複数の批判的な反応が発生(炎上)
今や、個人が簡単に情報を発信することができる時代です。その発信の手軽さの裏には、デジタルタトゥーという言葉があるように、「一度ネットに晒された情報は、消すことができない」ということを念頭に置いておく必要があるでしょう。発信した後に、「そんなつもりじゃなかった…」と言っても、情報はどんどん拡散され、本人ではもはや止めようがない状態になるケースも頻発しているからです。
炎上が起こるまでの流れ
では、炎上は一体どのようにして起きるのでしょうか。そのメカニズムを段階ごとに見ていきましょう。
炎上までのフェーズ
┗この時点では、炎上していない
【2】最初の拡散
┗違和感を持った少数の人が拡散する
【3】最初の炎上
┗同調した人たちが、更に拡散する
【4】メディアが注目
┗炎上をメディアが取り上げる
【5】メディアを発端に炎上
┗投稿を知らなかった人も検索、拡散する
┗個人情報の追求が始まる
【6】マスブロガーも言及
┗著名人が取り上げることで、更に拡散される
【7】各方面から注目
┗ソーシャルだけではなく、リアルにも影響を及ぼす
最初の火種は、ごく小さなものがほとんどです。また、本人に悪意はなく、「うっかり」というケースも多いのではないかと思います。ただ、【2】の違和感を持った人たちが拡散し、【5】にまで広がると、同調圧力が働き、当初は何も感じていなかった人たちまでもが「確かに酷い…」と感じる状態になってしまうのです。人を攻撃したり、貶めたりすることは、私個人的には悲しいことだと感じますが、これが炎上の現実なのだと痛感します。
リスクと隣り合わせだからこそ責任感を持った運用を
ここまでは、炎上の危険性について考えてきました。ここからは、それを踏まえた上で、Twitter運用者である私自身がどのようにSNSと向き合っているのかについてお伝えしていきます。
私がTwitterで発信をする目的は「会社の広報・ブランディング」です。BtoBのベンチャー企業は社名の認知度が上がりにくいため、まずは個人アカウントで露出をしていき、そこから会社の認知度につなげていく流れをたどっています。
こちらは私のプロフィール画像です。私のように、個人アカウントで企業ブランディングをする場合には、「会社の人」という信頼性の担保が必要であるため、以下の3つの露出が大事だと思っています。
①名前出し
②顔出し
③社名出し
これらの露出には、当然、個人としても会社としても、どちらのリスクも孕んでいます。だからこそ、「会社の看板を背負っている」という責任感を持って運用しています。
炎上回避のポイントと企業としてやるべきこと
最後に、炎上しないために気をつけるべきポイントをチェックしましょう。
炎上しないためのチェックポイント
- 自分や他人の個人情報をむやみに公開しない
- 機密情報や不確かな情報を露出しない
- 差別/誹謗中傷をしない
- 社会/誹謗中傷をしない
これらは、改めて言うまでもなく、当然のことばかりですよね。おそらく、炎上する最初の火種は、ほとんどが「うっかり」という悪意のない発信なのだと思います。だからこそ、投稿をする前に一呼吸おいて、「これを発信することで、誰かを傷つけることはないか?」と思考してから発信することが大切だと思うのです。
炎上トラブルに備えて企業がするべきこと
炎上による被害は、本人のみならず、周囲の人間関係や会社にまでも影響を及ぼしかねません。例えば、本名や顔写真、住所や勤務先などの個人情報が流出されれば、家族や所属企業/団体への嫌がらせが起こるかもしれません。企業名が知られれば、企業としての信用失墜・ブランドイメージの低下、それによる求人応募者の減少なども考えられます。
このような最悪の事態を招かないために、企業としては、ソーシャルメディアにおけるガイドライン、社員のソーシャルメディアリテラシーを上げる教育、炎上が起こってしまった際の社内レギュレーションなどを策定しておくのがいいと思います。SNSを通じた個人の発信がますます加速することが予想されることを鑑み、企業として早急に取り組むべきでしょう。
結局、大事なのは「愛」を持つこと
今回は、SNS運用におけるリスクを中心に述べてきました。実際に、炎上リスク回避のために、社名を出したSNS運用を禁止する企業も多くあります。しかし、先述の通り、SNSを活用するメリットはたくさんあります。それを実感している私は、リスクを恐れてSNS発信を止めるのではなく、リスクを理解した上で、「関わる人への愛」を持った投稿で、SNSを有効に活用する人が増えていくことを願っています。
執筆者プロフィール
株式会社ニット(https://knit-inc.com/)
小澤 美佳
Twitter:@mica823