メディア向けの「画」が撮れない企業が、報道番組に取り上げてもらえるには?

初めまして!
株式会社ヤプリのコーポレートPRの荒川萌です。

スタートアップ企業から上場企業まで、幅広く広報活動のお手伝いをしているPR会社での広報コンサルタントマネージャーを経て、ヤプリの企業広報として活動しています。

私たちは、ノーコード(プログラミング不要)でアプリの開発・運用・分析ができるアプリプラットフォーム「Yappli」を運営しています。導入企業は550社を超え、小売店舗やECなどのマーケティング支援から、社内や取引先とのコミュニケーションをモバイルで刷新する社内DX(デジタルトランスフォーメーション)、バックオフィスや学校法人の支援まで、幅広い業界の課題解決に活用されています。

実は、2022年1月に「Yappliを活用し開発したアプリ」が累計1億ダウンロードを突破しました!きっと今この記事を読んでくださっているあなたのスマホにも、Yappliで作られたアプリが入っているはずです。(そのアプリがYappliで作られているかは、パッと見ただけではわからない仕組みになっています。)

今回は会社としての節目「1億ダウンロード(以下DL)」を切り口に、BtoB企業が報道番組に出ることができた背景や、広報が旗振り役となりプロジェクトを企画進行していくメリットを紐解いていきます。

プロジェクトのゴールをどこに設定するか

ヤプリは2020年12月のマザーズ上場後、次なる大きなビジネスマイルストーンに「累計1億DL突破」を掲げ、事業を推進しておりました。

会社設立前から実質10年ほどサービスを育ててきた創業メンバーにとっては思い入れのある節目のため、社長の庵原さんからは「インナーコミュニケーションとして、社内が盛り上げて欲しい!」というオーダーが。

しかし、社内からは「アプリが1億回DLされるって凄いの?」という声も多々あるという状況。長引くリモート環境下、日常的にオンラインで密にコミュニケーションを取っているとはいえコロナ以降に入社したメンバーも多く、どうしても一つの情報に対する受け取り方には温度差が生まれてしまっていました。

また、弊社はスマホアプリを簡単に作れるというメディアにとって「画が撮りにくい」事業を展開する企業です。BtoB企業なので、アプリをご利用いただいているお客様(小売店舗、メーカー企業)にご協力いただければ「画を撮ること」は可能ですが、報道番組の「今から撮影行ってもいいですか?」にはなかなか対応しきれない部分もあり、普段は広報文脈でのテレビ露出が難しいという課題も抱えております。

そこで、今回の広報チーム主導で動ける「1億DLお祝いプロジェクト」が達成したいゴールに以下の2点を掲げました!

①全社員で、1億DL達成を喜ぶ!
②(あわよくば)テレビ露出の実現!

判断に迷いそうな時は、常にゴールに立ち返るように心がけていました。

1か月弱で「社内の温度感」をあげるためにしたこと

1億DLを祝う大きなストーリーとしては「全社員でカウントダウンしながら、1億の瞬間を祝う」を最優先としていました。しかし、ピッタリ1億番目を迎えるのは、休日や業務時間外かもしれません。(実際1月1日の朝6時に1億DLの瞬間を迎えました。)

ピッタリの瞬間とは別で「祝賀会」を開けば、喜びを分かち合うことはできるのではないか?ということで、達成予測時期の1月で、社員が多く集まるきっかけのある「仕事始め日」に総務チームが主導で運営している新年会と合同で「新年会&1億お祝い会」を開催する設計で準備をはじめました。

1億DLを喜ぶためには、楽しみに待つ気持ちを作り出すことが重要です。イメージとしては、クリスマスの喜びを増幅させる、アドベントカレンダーのような効果を作り出すこと。社員の温度感をあげることが大切だと考えました。

そこで、現状DL数とカウントダウン情報をSlackで毎日お知らせ・毎週1回ある全社会議で進捗状況を共有・Zoom壁紙を配布しお祭り感を演出するなど小さな施策を複数行い、しつこい程に「もうすぐ祭りだぞ!」を伝え続ける活動を実施しました。

12月初旬に社内へ向けて1億DLのお知らせを展開した直後は、いまひとつピンと来ていなかった社員たちも、年末には全社員(約220名)が認知+1億DL達成を楽しみにしている状況を構築できました。

溢れるハッピー感
(背景の利用は強制ではありませんでしたが、社外の方との打ち合わせでもアイスブレイクになったと好評!溢れるハッピー感!)

テレビ露出を目指した広報文脈「落ち着かないコロナ禍の、新しい初詣スタイル」

広報として達成したいテレビ露出を目指した施策は、1億DLお祝いと時流を絡めて考える必要があります。お祝い日前後に取材いただけたら嬉しいという逆算から「新しい初詣スタイルの提案」を行うことにしました。

まだまだ新型コロナウイルスの感染が落ち着かない状況で、社員を不特定多数の人が集まる神社に連れて行き参拝をするのは不安だが、新年のスタートダッシュを全社員で切りたい。それなら、オフィスに神社を立て社員同士で新年祈願をしよう!という立て付けで「オフィス de 神社」を設置する計画で動き始めました。

社内メンバーからはオフィスに神社を立てるという発想自体が突拍子もなさすぎると思われており、当初は「面白そうだけど、どうゆうこと??」と質問が続く状況でした。

広報はムーブメントを作ることも、大切な仕事の一つだと思っています。誰になんと言われようと絶対成功すると広報チームが覚悟を決めて、意見が寄せられても信じぬくことが成功に繋がります。一時期SNSで流行っていた「1人が本気で踊り始めると、2人・3人と一緒に踊る人が増え、最終的にはお祭り状態になる」、あの動画と同じです。

「2mある神社をラウンジに飾るんです!そこで参拝したり、おみくじ引いたり、絵馬が書けるんです!!めっちゃ、楽しそうじゃないですか?」

もちろん懸念点やネガティブな意見もゼロではありません。しかし、その瞬間を一番描けている広報チームが楽しみにしている気持ちを150%出し、周囲を巻き込んでいくことが社内の温度感をあげることにも直結します。

ありがたいことに、実際「新年の初詣事情」として1月4日に報道番組さんで放映いただきました。話題のフックとして「オフィス de 神社」を取り上げていただき、その後はYappliが1億DLされたこと・多くの方の生活を変えているということにも触れていただきました。

新年早々、社員のモチベーションをあげることができ、事業推進に寄与できたのではないかと思っております。

「新年の抱負」をカメラに向かって
(神社で参拝し、おみくじを引く社員たち。その後「新年の抱負」をカメラに向かって話してもらいました。)

PR施策と気が付かれないほど、全力で社員に目線を合わせた施策に仕上げる

今回のプロジェクトを進める上で、とにかく意識したことは「広報施策感を出さないこと」です。

どの企業さんもそうだと思いますが、本来の広報活動は事業・自社の魅力を引き出し、世の中に伝えるための活動です。その手法の一つが、メディアに掲載・取材してもらうための活動ですが、どうしても日々の業務においては「広報活動=メディア掲載」思考回路になってしまいがち。

一番の目的は「全社員で、1億DL達成を喜びたい」であり、「テレビ露出したい」という願望は、あくまで広報チームの裏目標です。そのため1億達成を祝うストーリーに、「撮れる画作りのための施策」を紛れ込ませるという手法を取りました。

結果、複数メディアさんで取り上げていただいたり、社員が自分ごととして語れるようになったため、営業活動やリファラル採用の場でもポジティブな効果が生まれていると感じています。

より詳細な施策は、こちらのオープン社内報「#times_yappli」で公開しておりますので、ご興味ある方は是非ご覧ください。

■オープン社内報「#times_yappli」
https://note.com/times_yappli/n/nb764364a0e99

広報がプロジェクトオーナーを担うと、外部への広がりを最大化することができる

広報の仕事をしていると、事業部や経営層が決定したことを発信する部分から担当することが多いと思います。

今回の1億DLは広報チーム(2名体制)がプロジェクトマネージャーとなり、ほぼ全ての部署と連携しプロジェクトを運営していました。もちろん広報が40名もの関係者がいるプロジェクト運営が得意なわけでもなく、普段関わりの無いメンバー同士のチーム横断プロジェクトのため、意思疎通が上手くいかないことや足並みが揃わないことも多々ありました。

その分、各立場からの様々な視点やアイディアを盛り込むことができただけでなく、広報が得意としている発信部分まで一括で設計することができる機会となります。

情報を調理する手前の素材作りから広報が担えると、外部への広がりも生みやすくなるので、プロジェクトオーナーになる広報さんが増えると嬉しいなと思っております!

執筆者プロフィール

株式会社ヤプリ コーポレートPR室・広報 荒川萌(ちみん)

株式会社ヤプリ コーポレートPR室・広報
荒川萌(ちみん)

Webサービスディレクター、食品ECバイヤーを経て、27歳で天職・広報に出会う。その後PR会社フロントステージにて広報コンサルに従事、2021年7月に一人目専属広報としてヤプリに入社。社内からも「ちみん」という愛称で呼ばれています。

ヤプリ:https://yappli.co.jp/
荒川SNS:https://twitter.com/chimiiiiin