社長のプロデュースは広報の重要なミッション!担当者が配慮すべきポイント(1)

企業の認知度を高め、ブランディング戦略を図ることは、広報活動の使命と言っても過言ではありません。それは、企業としてのメッセージを世の中に向けて発信することから始まります。「何を」「どのように」発信するのかはもちろんのこと、「誰が」発信するのかも効果を左右する重要なポイントです。例えば、会社の社長が、自身の言葉で企業としての考えや想いを語ることで世の中からの共感や理解を得ることは、認知拡大において大きな役割を果たします。

そこで本記事では、企業の認知拡大およびブランディングの一環として、社長自らの発信が効果を現す具体的場面や、広報担当者として意識すべきポイントをご紹介します。

社長の発信がなぜ重要なのか

先述の通り、メディアやイベントなどに、企業の社長が登壇することは、広報活動において重要な役割を担います。企業の中枢である社長が、自らの言葉でサービスや商品について語ることで、人々へより想いが届き、心に響くものになると考えられるからです。

採用イベントについても同様に、企業の社長自らがスピーカーとして出席することで、他社との差別化を図ることができるでしょう。このような理由から、社長の顔や考え方、パーソナリティを広めることは、企業の認知度向上の第一歩になると考えています。

さて、ここからが広報の腕の見せ所です。世の中に対して自社の社長の発信をいかに広めるのか、どのように見せていくのか、というプロデュース力が広報担当者には問われています。

社長の露出が効果的とされる場面3つ

社長が前面に出るべきケースとして、以下の3つが挙げられます。

①メディアによる取材依頼の対応
②イベントへの登壇
③社外・社内イベントへの参加

①メディアの取材対応や②イベント登壇など、外部への発信は言うまでもなく、それに加え、③社内へ向けた発信においても社長自らが企業としての考えを伝えることは、社内ブランディングの観点において重要であるということを意識しておくと良いでしょう。社長のパーソナリティや考えを知ることで、組織としての一体感の醸成が期待できるからです。

広報担当者に求められることは、これら3つの機会を積極的に創出することです。受け身の姿勢ではなく、自ら話題を作り出し、世の中に向けてアピールしていく姿勢が必要です。そのために、TwitterなどのSNSを活用するのもおすすめです。

社長プロデュースのポイント

では、広報担当者が社長をどのようにプロデュースしていけばいいのか、その方法を順を追って詳しく説明します。

【1】社長像を設計する

まずは、自社の社長を世の中の人に「どう見られたいのか」を、広報担当者自身が具体的にイメージしてみてください。その思い描いた社長像を元に、広報戦略を立てていきましょう。

「新進気鋭」で「クレバー」なイメージを持ってもらいたいでしょうか。もしくは「やわらかい」「親しみやすい」イメージを持ってもらいたいでしょうか。さまざまな社長像が考えられますが、どうしてもイメージできない場合は、企業理念や展開するサービスから、社長像を設計するのも良いでしょう。例えば、「人」や「くらし」にフォーカスした事業を展開している企業の場合、その会社の社長は「クール」より「温かい」印象の方が適しているといった具合です。

具体的にイメージができたら、それをベースに、見た目から話し方までを細かくプロデュースしていきます。

【2】ファッションなどビジュアルにこだわる

「服装までプロデュースするの!?」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。しかし社長のファッションをコーディネートすることは、意図した通りのイメージを世の中に定着させるために重要なポイントです。視覚的な情報が人々のイメージ形成に与える影響は絶大です。服装にこだわらない社長であればなおのこと、企業のブランドイメージを守る上でも広報担当者がサポートすることをおすすめします。

例えば、「親しみやすい」「爽やかな」イメージを与えたい場合は、カジュアルかつ清潔感のあるスタイルがおすすめです。丸首の襟付きシャツにジャケット、下はきれいめのジーンズなどです。反対に「クレバー」で「スマート」な社長社長像を目指す場合は、シックなスーツスタイルでまとめるのも良いでしょう。

シーンに応じて、服装のフォーマル度合いを調整することも必要です。当社・株式会社ニットの例を挙げると、2020年、政府主催の「テレワーク先駆者企業」総務大臣賞に選ばれた際の授賞式での社長の装いは、ダークネイビーのスーツにブルーのネクタイと、爽やかさを意識したものでした。

【3】原稿は社長と一緒に作り込む

設計した社長像を元に、世の中への発信の仕方を考えることも、広報担当者の重要なミッションの一つです。例えば、イベント登壇の際には、スピーチ原稿を一緒に考えるなどのサポートが必要です。

まず、広報担当者がスピーチの大枠を作成します。詳細部分については社長とディスカッションを重ねながらブラッシュアップしていくのが理想です。ここで注意したいのは、広報担当者が原稿を作り込みすぎないことです。誰かの考えた原稿を読むだけでは、聴衆を惹きこむことは難しいでしょう。そのため、必ず社長自身の考えや言葉を盛り込む必要があるのです。

また、当日使用するパワーポイント資料については、広報担当者が作成するのも良いですが、「ここぞ」という重要なイベントの際には、資料作成のプロフェッショナルやデザイナーに依頼することも検討すると良いでしょう。

【4】スピーチの練習は念入りに

ここまで来たらあと一息です。社長が自信を持って本番を迎えるためにも、またより多くの人々へ想いが伝わるパフォーマンスにするためにも、事前準備は欠かせません。

登壇資料のメモ欄には、スライドごとの話し方の注意ポイントを記載しておくと便利です。例えば、重要な箇所には「ゆっくりと大きな声で」などのメモを残しておくと、当日も落ち着いて話せます。

会社にとって重要なプレゼンテーションである場合などは、リハーサルを実施するとさらに安心です。その際には社長のスピーチを録画するのがおすすめです。広報担当者のフィードバックだけではなく、スピーカー本人が客観的に自らを振り返ることができるためです。

【5】メディアの取材は積極的な姿勢で臨む

メディアの取材対応があるときには、事前に社長に話してほしい内容をまとめて共有するのが良いでしょう。イベント登壇の際と同じく、広報担当者が原稿を作り込みすぎないことが大切です。

メディアからの質問項目の指定がない場合には、企業としてアピールしたいポイントを元に、広報担当者が質問項目を作成し、ライターの方と事前に共有しておきましょう。相手からの質問を待つだけではなく、メディアと一緒に取材現場を作るという姿勢で臨むことが大切です。

社長のイメージは企業ブランディングに直結する

今回は、社長のプロデュースについて、その重要性、担当者が配慮すべきポイントを具体例を交えながらご説明しました。次回は、社長が積極的に広報活動に参加できるよう、担当者が意識するべきことについて、依頼から本番までのフェーズごとに詳しくご紹介します。

企業の顔である社長のイメージを創出することは、企業ブランディングの構築にもつながる、広報の重大なミッションです。ぜひご参考にしていただけたら幸いに思います。

執筆者プロフィール

株式会社ニット(https://knit-inc.com/
小澤 美佳

リクルートで10年間、営業マネージャーやリクナビ副編集長として勤務した後、中米ベリーズへ移住し起業。2019年に株式会社ニットに転職し、2020年7月より広報担当となる。副業で大学の非常勤講師として、キャリアや就職の授業を担当。
Twitter:@mica823