新年度が始まりましたね。この春から初めて広報業務を任されることになった!という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
2年前の夏、それまで営業畑一筋だった私は、広報への異動を提案されました。未経験かつ「一人広報」という過酷な状況でのスタートだったため、着任当初は不安でいっぱいでした。今では広報チームとして運営するまでに成長することができましたが、ここまでにはたくさんの失敗やつまづきもありました。
今回は、未経験広報が業務を始めるにあたって取り組んだことなどを、そのときにヒントをくれた書籍をご紹介しながらお伝えします。
この記事の目次
まずはとにかくインプット。信頼できる一冊を見極めよ!
私が右も左もわからない広報に着任した当初、まず取り掛かったのは、とにかくインプットをすることでした。当時Amazonで購入することができた広報やHRに関するあらゆる書籍を読み漁りました。とは言っても、広報・PRの基礎が書かれている本はあまりたくさんあるわけではなく、その数20〜30冊でしょうか。
そこで気づいたのは、本によって主張がまったく違うということです。例えば、ある本では「プレスリリースは短く1枚に。絵は使わない」と書いてあるにも関わらず、別のものには「プレスリリースは長さは気にしなくてよい。絵や写真をたくさん使って目立たせる」と、正反対とも言えるようなことが書いてあるのです。
それもそのはずです。広報の世界に「これこそが正解」と言えるものなどはないため、本によって内容が違って当然とも言えます。だからこそ、まずは多くの書籍の中から、「この人の言葉は信頼できる」と感じた著書を探し、それを元に、試行錯誤を重ねながら自分流を確立していけばいいと思います。
広報の基本書として、私が現在でも参考にしているのは、栗田朋一氏『新しい広報の教科書』(朝日新聞出版)です。メディアごとの特徴を赤裸々にまとめつつ、社内と社外両方に対する広報のあり方やノウハウが書かれています。特に、敏腕広報の方々の事例は「これを実践してみよう」というモチベーションにもつながり、いい刺激になっています。
いざ実践! まずは地道に下地を整える
さて、インプットをしたら次は実践あるのみです。当時の私は、メディアと言えばテレビや新聞への露出が何よりも重要だと思っていました。ところが、実際にはテレビや新聞などの大手メディア相手に、無名のベンチャー企業が突然アタックをしたところで、まったく興味を持ってもらえず、惨敗を喫する結果に。これが、広報になってすぐに私が直面した困難でした。
そこで私は、PR会社の友人にメディアアプローチのイロハを教わったり、様々なオンライン勉強会に参加したり、書籍と並行してさらに知識をためていきました。広報コミュニティに参加して広報のつながりを広げ、得た手法はすぐに実行するなど、とにかく実践を繰り返しながら、当社にマッチする方法を探っていきました。
その中で、当社の企業規模や特徴から、まずはメディアに載るための下地を整えることに注力することから始めました。具体的に何をしたのかというと、①実績を作ることと、②自社発信をすること。この2つを同時に進めるべく、当社の「創業時からフルリモートで事業運営をしている」という実績を積極的にアピールしていきました。
メディアアタックとそのコツ
その一環として、メディアへの寄稿を通して自社をアピールすることを目指します。その際のアタック対象も段階的に広げていきます。まずは「認知度は高くないが、業界特化しているメディア」から、次に「認知度はそこまで高くはないが、影響力があるメディア」へと開拓を広げていきました。そして、それらの実績とともに、さらにアピールを続けメディア露出を増やしていきました。
アタックを繰り返すうちに、商談の進め方のコツも掴んでいきました。いつも意識していることは、商談は下調べからすでに始まっているということ。そのメディアの運営会社の理念や特徴などから、私たちはそのメディアに対してどのような新しい価値を提供できるのかをあらかじめ考え、対策を練っておきます。そして、話が進んだ段階で「そのスキマ、私たちが埋められますよ!」と提案します。このようにして、徐々にメディアとの関係性を築いていったのです。
ここで参考になったのが、野澤直人氏『【小さな会社】逆襲の広報PR術』(すばる舎)です。特に「秘蔵ノウハウ50連発!」という章の「マスコミ関係者に会ったときの『15の質問』」の具体例からは、広報になりたての頃から現在も、多くのことを吸収しています。私の広報活動の基礎を作ってもらった書籍と言っても過言ではありません。今まで信じられてきたセオリーを覆した新しい手法が提示されており、特に型に捉われない広報の形を目指しているベンチャー企業の広報の方は、読んで損はないでしょう。
広報の肝であるSNS活用。ヒントとなる書籍
ベンチャー企業の広報・PRとして、今やSNSを使わない手はありません。私もメディアへのアタックと並行し、Twitter発信も始めました。個人アカウントを使用し、「小澤=テレワーク専門家」を確立するべく、できるだけ多くの方が自分のファンとなっていただけるようなツイートを心がけました。
発信内容などの参考になる書籍としてご紹介したいのが、日経トレンディ『自由すぎる公式SNS「中の人」が明かす 企業ファンのつくり方』(日経BP)です。セガ、キングジム、タカラトミーなどの有名企業アカウントの運用事例が豊富に掲載された、事例集のような内容となっており、企業アカウントをもっと効果的に運用したい方に特におすすめです。
また、個人アカウントでのファンづくりの参考になったのが、トライバルメディアハウス 高橋遼氏『熱狂顧客戦略(MarkeZine BOOKS)「いいね」の先にある熱が伝わるマーケティング・コミュニケーション』(翔泳社)と、佐藤尚之氏『ファンベース』(筑摩書房)です。これまでは、顧客インサイトから「どうやったら売れるのか」を思考することが主流でした。しかしこの書籍からは、顧客にファンになってもらい、顧客と共に会社・サービスを共創・PRしていくことが大事なのだということを教わりました。愛される会社・サービスを創っていくにあたって、勇気をもらえる一冊です。
Twitterのフォロワーが1万人を超えようとしていた頃、転機が訪れます。私のTwitterの師匠とも言えるアースメディア代表の松本淳氏(https://twitter.com/Jn_Matsumoto)より、「フォロワーが1万人を超えたら、『小澤=ニット広報』としてやっていけばいいですよ」とアドバイスをいただいたのです。その助言通り、フォロワー数が1万を超えてからは、発信内容を変えていきました。テレワークのことも”会社の情報”として発信し、企業ブランディングの構築をしていったのです。今では3万人以上の方からフォローをしていただいており、現在当社のブランディングに欠かせないツールとなっています。
ブランディングは自己流で
ブランディングに関する書籍を複数読みました。中でも特に参考になったのは、中村正道氏『ブランディング (日経文庫)』(日本経済新聞出版)です。「ブランドとはシンプルなこと、信頼です」というスティーブ・ジョブズの言葉を用いながら、顧客の行動を細かく設計していく様子が描かれています。BMW、P&G、SONY、スターバックスなどの企業事例もあり、イメージが掴みやすい一冊です。
しかし、多くのブランディング系の本を読んでみてわかったことは、事例は【BtoC×大手×商品】ばかりだということ。結局のところ、【BtoB×ベンチャー×会社】のブランディングは自分で作っていくしかないのだと思います。これらの本やフレームを参考にしながら、最終的には自己流で進めています。この自己ブランディングによって、Twitter経由で登壇依頼や取材依頼をいただくことも増えてきています。会社のブランディングと個人のブランディングはつながっていると感じています。
読んだら試して、読書を実りにつなげよう
私が広報に着任し、つまずいたときや困ったとき、また勇気を与えてくれた書籍をいくつか紹介しました。初めての広報で不安な方の参考になれば幸いです。
ただし、これらはあくまでも「取扱説明書」のようなものであると考えています。実際に第一歩を踏み出すのも、上手く実践へとつなげることができるかどうかも、すべては自分次第ですよね。書籍を読むだけで満足することなく、実際に自分で試すことが大切です。ぜひ、読書を実りにつなげていきましょう!
執筆者プロフィール
株式会社ニット(https://knit-inc.com/)
小澤 美佳
Twitter:@mica823