ローカル駅を一気にメジャー駅に躍進させたPR施策

まだまだ寒い日が続きますが、オリンピックも開幕し、連日ニュースをにぎやかすようになりました。日本選手の活躍はうれしいもので、競技を観ていても力が入ります。この時期、出場選手ゆかりの地やお店が紹介され、一躍有名になるスポットも出てきます。思わぬところで、地域の活性にもつながったりします。

ローカル駅を一気にメジャー駅に

JR日南線の油津駅(宮崎県日南市)、通称「カープ油津駅」

最近、地方によっては赤字路線を削減したり、人口減少で車両の数を減らすなど、寂しいニュースも流れることもありますが、そんな中、とても元気な駅が登場しました。
JR日南線の油津駅(宮崎県日南市)、通称「カープ油津駅」です。プロ野球球団の広島カープは、毎年宮崎県日南市で冬のキャンプを迎えています。このキャンプ地で、カープや街全体を盛り上げるため、球場から最寄りの油津駅舎の“カープ化”が進められました。

企画したのは、日南市油津の住民が中心となって結成した「日本一のカープ駅をつくる会」。地元企業やJR九州宮崎総合鉄道事業部などが参加し、日南市長が顧問を務めています。
この取り組みは、今まで白を基調としていた駅舎を赤色(カープレッド)に塗り替え、さらに広島東洋カープのロゴやキャラクター「カープ坊や」も大きく配置するなど、地方の目立たない駅を一転させ、“カープ油津駅”に変えるものでした。

「クラウドファンディング」で全国各地から支援を集め、目標の200万円を募った

動き出したのは昨年の11月初旬。JR九州に快諾を得た上で、発起人は自ら広島に赴き、 球団にロゴなどの使用許可を得ます。改装への資金は、インターネットを通じて出資し支援する「クラウドファンディング」で全国各地から支援を集め、目標の200万円を募ったとのこと。

「去年2連覇したけどCSで負けてしまって、ここからカープを応援しようという声も高まっていた。日本一のカープ駅にすれば町も盛り上がる。JR日南線も乗客が少なく赤字になっていて、みんなが注目して乗り降りする人が増えるようにというのもある」

代表発起人はこのように語っており、とにかく熱い思いが込められたプロジェクトでした。実際に行われたPR企画を抜粋します。

実際に行われたPR企画

■1月13、14日。地元の中学生など市民200名が参加し、駅舎を塗装するイベントを開催。ロゴのほか、マスコットキャラクターの「カープ坊や」も登場。

■2月4日、駅舎のお披露目式を開催。

ユニフォームなどをまとったファンら約1000人が見守る中、 広島カープの緒方孝市監督が、駅舎に赤いペンキの最後の一塗りを行い「カープ油津駅」を完成させる。また、JR九州は同日、臨時列車「日本一のカープ“油津”号」(宮崎-油津)を走らせ、女性カープファン「カープ女子」やお笑い芸人が乗車。
これらの様子は、プロ野球のキャンプの話題とは別枠で大々的にメディアに紹介され、スポーツニュースの枠を超え、地域活性の良き取り組み事例として好意的に取り上げられました。駅の自動販売機や駅員さんのユニフォームも赤に統一するなど、徹底的にこだわった施策は大きな反響を呼びました。

今年の日南市は、このプロジェクトにより大きな活性化が期待されます。地方PRの好例として、是非、参考にされることをお勧めします!

カープ油津駅 PR成功のポイント

カープ油津駅 PR成功のポイント
・プロ野球チームの駅の誕生は全国初!というニュース性
・地方発ながら、自治体と地元企業、プロ野球球団を巻き込んだ豊富なストーリー性
・地元の中学生らが駅舎にメッセージを書く、赤く塗るといった工程を盛り込む過程を公開
・駅完成セレモニーで、カープの監督が最後の一塗りを行う貴重なフォトセッションを設定
・臨時列車を走らせカープ女子を乗車させるなど、メディアの好む場面を数多く提供