ヘルスケア領域の広報活動で要注意!「エビデンス情報」の扱い方

コロナ禍の終息がなかなか見えない状況ですが、雨の多い時期になってきました。
今年は例年に比べ、全国的に梅雨入りが早いと言われています。梅雨時は体調の維持や管理といった“健康面”にも気を付けたい時期ですね。

いまはコロナ禍でもあり、ますます健康意識が高まっていく環境ではありますが、同時に企業の広報活動でも「ヘルスケア」を訴求する傾向が年々高まっています。

このようなヘルスケア(健康や医療、それにまつわる食品・飲料情報など)に関する広報活動では、その対象商材に関連する科学的根拠(エビデンス)を示した活動が求められます。特に、薬事法・薬機法の絡みもあり、効果効能を謳う内容は制約・制限され、限られた表現を発信することが大事になります。今回は、エビデンスを活用した広報活動の注意点を記します。

最重要!「必要十分で正確なエビデンス」の収集と整理

エビデンス
学術情報や研究論文に基づいた科学的根拠、健康機能性の根拠がエビデンスの幹となります。
これには、大学や医療機関との共同研究も含まれます。特に、特定保健用食品、機能性表示食品、健康成分のエビデンスを活用したPRといった場合には、“専門性が高く、正確な情報”が必須となりますので、慎重かつ、入念な検証が必要となります。

余談ですが、消費者庁の「健康食品表示法及び健康増進法上の留意事項について」によると、商品名を広告等において表示しない場合であっても、広告等における説明などによって特定の商品に誘引するような事情が認められるときは、景品表示法及び健康増進法上の「表示」に該当する、とされています。
実際に、ヨーグルトやクロレラといった製品での機能(効能)訴求表現に対し、NGという判定が最高裁で下された事例があるなど、広報活動での訴求方法には十分な注意が必要です。

特に、特定の効果効能を訴求(PR)する場合は、そのエビデンス情報に基づいた情報発信が、“効能外訴求”になっていないか、慎重に検証する必要があります。広報活動を前向きに進めたいがゆえ、検証不十分なエビデンス情報で機能訴求を行ってしまうと、「消費者に過ちを誘引する強引な表現・手法」と受け取られ、広報活動そのものがコンプライアンス違反になりかねませんので、十分に注意してください。

また、インターネットでの検索により様々なエビデンス情報を入手することが可能になっていますが、ヘルスケアの分野においては、他分野に比べ、特に正確な情報が必要とされることもあり、メディア側も内容の取り扱いに慎重になっているため、豊富な実証実験に基づいた研究成果や最新の研究結果など、正確で説得力のあるデータが必要になります。

どこの誰が、いつ研究し発表したデータなのか、専門誌にも掲載された論文や研究成果なのか、という情報も含め、正しい出典元の確認が必須となります。

一方で、エビデンスの補足として、その分野の専門家や権威者をキーオピニオンリーダー(KOL)として起用するケースもあります。信頼のおける第三者として、その特性上、医師や大学の教授といった肩書の方が多くなりますが、その人物選定にも十分な検証が必要です。

KOLの方には、特定の専門分野での信ぴょう性が求められるので、協力を要請する権威者がどのような専門性に長けていて、どのようなメディア対応が可能になるのか、例えば書籍を出版されている場合にはその内容も調べるなど、事前にヒアリングし詳細を確認しておく必要があります。

エビデンスの補足に不十分な要素がある場合は、より適した人物を選定することが求められます。

エビデンスに基づいた「報道資料」の作成ポイント

報道資料
エビデンスを活用して広報活動を行うにあたり、次に準備することは、メディアに提供する報道資料の作成です。新たな情報であれば「プレスリリース」として発信することもできますし、それ以外の場合は、「報道資料」や「ニュースレター」として情報を整理し、発信することが可能になります。

資料作成で注意したいポイントは、「時流に沿った、分かりやすい資料」にすることです。

論文や研究成果を整理したエビデンス情報は、どうしても堅い、難しい資料になりがちです。多くの専門用語が並べられ、専門性の高い特殊なグラフや英語表記のデータがそのまま表記されたような資料では、メディアにささらない難解な情報提供となってしまいます。

それを避けるためにも、極力、①分かりにくい表現を避け、②専門用語には説明を加え、③分かりやすいタイトル表記を工夫し、④時流に沿った内容を加味して発信する、というポイントが重要になります。

特にヘルスケア領域の広報活動では、「正確なエビデンスに基づいた情報発信」を行うことが極めて重要です。エビデンスの検証と準備を十分に行って、隙のない広報活動を進ませていただければと思います。

株式会社コミュニケーションデザイン PRコンサルタント

【ニックネーム】カープマニア
【これまで担当した業界】IT、自動車、食品メーカー、飲料メーカー、自治体、
            医療、家電メーカー、レジャー施設、金融、教育、他多数
【趣味】高校野球、広島カープ、川崎フロンターレ、ハワイ
【プチ自慢】両利き。お箸も野球もサッカーも、手足を左右同レベルで扱えます