【元新聞記者が教える】イベントや記者発表のニュース価値を上げる3つのコツ

こんにちは。
少し前まで蒸し暑い日々が続いていましたが、気付けばクリスマスや年越しなどイベントが多い師走がすぐそこまで近づいてきましたね。広報業務を行うみなさんは、毎年行う恒例イベントやニュースになりにくそうな記者発表の前、どうしたら多くの記者を誘致できるか頭を悩ませることも多いことでしょう。
そこで今日は、元新聞記者で現役PRコンサルタントの私が、催しや記者発表のニュース価値を少しでも上げたいときにできることを3つ、ご紹介したいと思います。

①「〇〇初」といえることをつくる!

毎年恒例のイベントはいつもと違う要素を

例えば企業がクリスマスシーズンにあわせて本社ビル周辺でイルミネーションを行い、毎年恒例となっているがこれまで取材されていない、といった場合を考えましょう。企業のネームバリューやイルミネーションの規模によりますが、これまでと同じことを繰り返すだけの行事を記者は取材しようと思うでしょうか。

「今年だけなぜ取り上げたのだろうか」「いつもと違うイベントなのだろうか」と読者が混乱し、誤解するのを避けるため新聞の場合は特に、取材の候補から外すケースが多いといえるでしょう。

今年からは大きくライトアップする動物をトナカイではなく翌年の干支にする、など新しく年末行事らしさを加えることで、「今年初 干支のイルミネーション」ということができて、見出しのイメージも湧くので記者のも取材を検討しやすくなります。

「業界初」「非上場では初」…

また企業が「国から〇〇賞に選ばれ表彰された」といったことで記者発表をする場合、毎年多くの企業が表彰されるようなものですと、自社をメインにした記事の露出は難しくなりますよね。しかし「〇業界では初」「非上場企業では初」「スタートアップ企業では初」など、何かしら「初」といえるものを前面に打ち出すとニュース価値が高まり、ほかの企業を紹介していなくてもこの企業を取材する理由付けができます。

②専門家など権威や消費者のコメントを用意する!

理系分野は特に記者が慎重に

続いて、医療系など専門性が高い内容の記者発表を行う場合で考えてみましょう。
健康効果が期待できる商品を発売する、特定の病気の患者にとって治療の効果が期待できる成分を発見した、といった内容の発表はiPS細胞の臨床研究虚偽発表(2012年)やSTAP細胞騒動(2014年)以降さらに、記者側のリテラシーが問われる取材となってきました。部署異動が多く専門知識を深められない一般紙の記者は、こうした発表のたびににわかで勉強をすることになり、しかも記者のほとんどは文系ですので、理系分野だと発表内容を疑うことが難しく記事化に慎重にならざるを得ません。

発表内容に信ぴょう性と客観性を

そこで、その分野の権威である大学教授など専門家に依頼し、記者会見で「こういう点で意義のある発見」「〇〇病の予防で効果が期待できる」というコメントをしてもらえると、発表内容に一定の信ぴょう性を担保することができます。ある病気の患者向けの食品であれば記者会見の場で、患者に食べてもらった感想を言ってもらうなど裏付けもあるとさらにニュースの客観性が増します。

できれば発表者の息がかかっていない教授や患者の方が良いのですが、記者が一からコメントしてもらえる人を探すのは大変で、あらかじめ取材できる候補者を用意してもらえると助かる、という記者もいるのでこうした準備は有効かと思います。

裏が取れず記事化の見送りも

ちなみに企業の理系の発表ではないのですが、以前私がある地域で「歴史的に意義のある遺跡の発掘」を取材したときは、会見内容の情報が乏しく、各社とも市教委の発表に首をかしげ、現地にも足を運びながら担当者に取材を重ねました。本当にこれはニュースなのだろうか。発表内容は正しいのだろうか。どなたか歴史的な意義づけができる大学教授を紹介してもらおうとしたのですが、裏が取れる(きちんとコメントしてもらえる)人がなかなか見つからず、残念ながら記事化は見送りとなりました。

③ダジャレをひねり出す!

イベント名に遊び心を

最後に3つ目ですが、催しそのものをダジャレに引っ掛けてしまうというのもニュース価値を上げる方法です。先日、台東区の銭湯で、ヘッドホンを着けクラブのようにDJの音楽を楽しみながら踊るサイレントフェスが行われたのですが、このイベント名「ダンス風呂屋」を目にしたときは思わずうなりました(壁に華やかな光を映し出す「風呂ジェクションマッピング」や対談コーナー「せんとーく」もあったようです)。

イベントそのものの魅力がすぐに伝わり、思わず行ってみたくなりますよね。ここまで企画自体が面白いものではなくても、当社のクライアントではことわざに寄せたイベントに仕立てて取材誘致に成功した例があります。

紙面づくりもダジャレと奮闘!?

また以前、新聞の紙面を編集、レイアウトしていたときにダジャレの見出しを付けてニュースバリューを高めたことが何度かあったので、その事例をご紹介します。

初夏にしてはとても暑く、京都で5月の最高気温を更新した日、新人の記者がその暑さを伝えるスケッチ写真を動物園に撮りに行きました。締め切り間際に出稿された画像を見ると、そこに写っていたのはなぜかヤギ数匹。写真説明に「暑さでぐったりしているヤギ」と書かれていますが、暑そうかどうかは人間が判断できません。当日私が担当していた社会面の真ん中には、このスケッチ写真を大きく入れる予定でいましたが、この写真ではそれが難しいため困っていました。そこで「一番暑いMay(メ~ィ)」と5月とヤギを引っ掛けた見出しを付けて、なんとかそのまま紙面の中央にこの写真と記事を入れることができました。苦しいダジャレではありますが、翌日、編集局長からは「見出しに救われた」と声を掛けられました。

このように、同じ内容でもダジャレを考えたり韻を踏んだりすることで情報の価値が上がる可能性はあるので、一度難しいことから離れて言葉で遊んでみると意外と取材誘致につながるかもしれませんね。

以上、今回は3つのコツを紹介しましたが、ほかにもニュース価値、情報の価値を上げる方法はありますのでどうぞお気軽にご相談ください。

【ニックネーム】週末ボーカリスト
【これまで担当した業界】証券、銀行、人材コンサルティング、人材教育、食品メーカー、化粧品、飲食など
【趣味】ボーカル活動(ゴスペラーズを輩出した大学アカペラサークル出身。オリジナルのポップスやジャズのバンドでライブ経験あり)、国内外の島巡り、ミニシアター系映画鑑賞、フルマラソン(2回完走)
【プチ自慢】2007年に滋賀県彦根市で行われた「世界一長いコンサート(連続184時間)」にアカペラで参加し、ギネス記録達成!