登録者40万人超!有隣堂YouTubeはなぜファンを増やし、利益まで生み出せるのか?

神奈川・東京・千葉・兵庫・大阪に約40店舗展開する「有隣堂」。書店として認識されている方がほとんどだろう。

その有隣堂が手掛けるYouTubeチャンネル「有隣堂しか知らない世界」は、今や登録者数が40万人を超える人気チャンネルになっている。
まだ見たことがない方は是非見ていただきたいのだが、とにかく面白い。テーマも面白いし、会話のやり取りも面白い。あと、多くの動画が10分前後でまとめられており、隙間時間に見やすい。
こんなチャンネルを開設できたら、企業広報としての世界観がちょっと変わるのでは??と、ちょうど発売されたばかりの「愛される書店をつくるために僕が2000日間考え続けてきたこと(ハヤシユタカ・著)を読み込んでみた。

「へ~」「なるほど!」と思うことが多々あったが、きっと本に書かれていないポイントがまだまだあるはず!と、思い切って取材を申し込んだ。
今回は、有隣堂の広報・マーケティング部(取材時/現在は社長室 デジタルクリエイティブチーム)の渡邉郁さんと「有隣堂しか知らない世界」のプロデューサーで本の著者でもあるハヤシユタカさんに根掘り葉掘り話を伺った。

(編集長)

創業111年目のチャレンジとして始めたYouTubeは3か月で打ち切りに…

編集長:現在の有隣堂の広報体制について、教えてください。

渡邉さん:部長以下7名で、メディアリレーションやプレス対応、SNS・ホームページの情報更新、社内広報(毎月発行)、書店で無料配布している情報誌「有鄰」(隔月)の制作など、社内外への情報発信を担っています。

編集長:かなり業務が多岐にわたりますね。YouTubeチャンネルの運用も広報マターなのでしょうか。

渡邉さん:YouTubeに関しては、広報・マーケティング部ではなく、社長室デジタルクリエイティブチームが主管となっています。私は兼任しているため、YouTubeにも携わっています。

編集長:創業111年目のチャレンジとしてYouTubeチャンネルを2020年2月に立ち上げた際は、ハヤシさんではなく別の外部業者とコンテンツを制作していたそうですね。1本目の動画は「[8分で解説]天職の探し方」を公開するも全く視聴されず、新たな動画を公開するたび再生数が落ちていったと。。。
結果、6本公開したあと、打ち切りを決定されたのですよね。

渡邉さん:はい、そうです。そもそも、最初の3か月はテスト期間という位置づけで始めていました。その期間で思うような結果を出すことができなかったため、一旦打ち切りとし、次にハヤシさんに入っていただき、今の形のYouTubeチャンネルを始めることにしました。

編集長:そのあたりの詳しい経緯は、ハヤシさんの著書「愛される書店をつくるために 僕が2000日間考え続けてきたこと(2025年6月21日初版)」に書かれているので、気になる方は是非読んでいただければと思うのですが、ハヤシさんは最初からYouTubeチャンネルを成功させる自信はおありでしたか。

ハヤシさん:自信はありました。2020年当時はまだ企業チャンネルでYouTubeのためだけにオリジナルコンテンツを制作している企業もほとんどなく、いわばブルーオーシャンでした。
そのため、自分が思い描くような動画を作ることができれば、10万人登録など企業YouTubeチャンネルとしては良いところまでいけるのではないかという予感はありました。

有隣堂で取り扱いがあるかは関係なし!テーマを決める際の3つの条件とは?

編集長:YouTube開始当初の目的は何だったのでしょうか。

ハヤシさん:あわよくば、広告収入が入ったり、業界のご意見番になれないかなと思っていましたが、YouTubeで商売っ気を出してしまうと見てもらえないと思っていたので、「有隣堂が多くの方から好かれるブランドになれれば」と考えていました。そのため、KPIも特に定めず、探り探り進めていったという感じです。
現在は、書店の場合、品揃えではあまり差別化できないこともあるので、YouTubeを通し有隣堂を好きになってもらい「どうせ書店に行くなら、有隣堂に行こう」と思ってもらうということを目的にしています。

編集長:おっしゃったように企業YouTubeの場合、どれだけ企業色を出すべきか、出してもいいか、その塩梅が難しいと思います。
宣伝色を払拭する意味で、新たに仕切り直して始めたYouTubeでは、1本目に有隣堂では販売していないキムワイプを取り上げたのですか?


▲【超性能ティッシュ】キレイの概念が変わる!キムワイプの世界

ハヤシさん:キムワイプが有隣堂で販売していなかったというのは、事前に知らなかったので偶然です。(笑)
実際、今もそうですが、取り上げるものが有隣堂で販売しているかどうかは議題にもあがりません。
キムワイプを取り上げたのは、取り上げるものに対する「熱量」や「素直さ」、「知的好奇心を満たせるか」という3つの条件に合致していたからです。
現在も何を取り上げるかは、この3つの条件を軸に決定しています。

編集長:これだけ視聴されるYouTubeチャンネルに成長すると、売り込みも多くなると思うのですが、この3つの軸をベースにハヤシさんと有隣堂で取り上げるかどうかを決定されているということでしょうか。

ハヤシさん:はい、その通りです。

編集長:もし、「有隣堂しか知らない世界」で、取り上げてほしい商品やテーマがある方は、この3つの条件を意識して売り込んでいただくと良いかもしれませんね。(笑)

従業員が2500人いるのに、開始2か月のチャンネル登録者数は1000人…アレ!?

編集長:現在までに300本以上の動画をYouTubeで公開されていますが、過去の動画を遡ってみても再生回数が伸びていない動画がないのに驚きました。

ハヤシさん:再生回数の大小はありますが、アベレージで高い数字を取る、つまりチャンネル内のどの動画を見ても面白い(面白そう)という状況を作ることがYouTubeを運用する上でとても大事な要素だと考えています。
企業YouTubeでありがちなのが、1本面白い動画に出会いチャンネルを見に行ったら企業の宣伝色が強い動画ばかりというケースです。これではチャンネル登録にも繋がりません。

編集長:なるほど。とはいえ、YouTubeチャンネルを立ち上げたばかりの時は、認知もないですし、再生回数を伸ばすためにどのような工夫をされたのでしょうか。

ハヤシさん:ありとあらゆることをしました。書店は購入という目的がなくてもお客様が来店される稀有な場所です。この特徴を利用しない手はないと思ったので、伊勢佐木町本店(横浜市)には ポスターやのぼりを設置したり、店舗で商品を購入した際に発行されるレシートにYouTubeチャンネルのQRコードが印刷されるようにもしています。また、メディアの取材が入ったら全力で対応させていただいています。

伊勢佐木町本店(横浜市)の横断幕

このように色々な施策を展開しましたがほとんど上手くいかず、結局、再生回数やチャンネル登録者数を伸ばすには、面白い動画を作り続けることにつきると思います。

ちなみに、当時、従業員がアルバイトも含めて2500人ほどいたので、皆が登録してくれたらすぐに登録者数は2500を超えると思っていたのですが…お願いしてもほとんど登録してくれなかったですね。(笑)

外部での評価が高まったことで、社員もYouTubeを意識してくれるように

編集長:再スタートしてから2か月の時点で、チャンネル登録者数は1000人ほどだったということですが、面白いと思ってもらえるような動画を公開し続けた結果、転機が訪れたのですよね?

ハヤシさん:「ねとらぼ」で、“正直すぎて面白い”と紹介されたことをきっかけに、チャンネル登録者数が急増しました。
2021年2月8日に記事が公開された際のチャンネル登録者数は5392人だったのですが、24日には1万人突破、3月6日時点では2万人を突破、3月18日には3万人を突破しました。
これは運も良かったと思います。

編集長:1本目のキムワイプの世界を公開したのが2020年6月30日ということなので、約7か月後の転機ですね。それでも、初回から結構再生回数は回っていたのではないですか?

ハヤシさん:地獄の半年間でしたね。想定より登録者が全然伸びなくて。(笑)
でも、面白い動画を作っているという自負はありました。また、YouTubeの場合、1本目はご祝儀のような感じで周りの方が見てくれることもあり伸びやすく、2本目以降は下降してしまうことが多いのですが、更新するたびに微増ですが前回の再生回数を上回ることができていたのでモチベーションは保てていました。

とはいえ、企業YouTubeチャンネルの場合、ゼロスタートではなく社員がいるという強みがあるので、有隣堂の場合もすぐに2500人は突破すると思ったのですが…。(2回目。笑)

編集長:YouTubeに限らずですが、何か広報が新たに始めたときの社内の反応って「何かやってるな(静観)」「企業アカウントのSNSやYouTubeに登録するのはやだな」って感じが多いみたいですよね。
従業員数に関係なく、社内を巻き込むのは大変なことだなと。

ハヤシさん:大変だとは思いますが、企業YouTubeの数少ない強みでもありますからね。我々の場合は出だし上手くいきませんでしたが、これからYouTubeを始めようとされている企業は全社員が登録してくれるような働きかけを絶対にした方が良いです。

編集長:ちなみに現在は、有隣堂の従業員の多くがチャンネル登録してくれているのですかね?

渡邉さん:体感では、社員350人のうち、半分程度は登録してくれているのではないかと。

ハヤシさん:本当なら全員登録してほしいですし、アカウントを1人2つ作って登録してほしいくらいですが。(笑)

編集長:でも見方を変えると、身内の数字がほとんどなく、チャンネル登録者数が40万人を超えているので、すごいことですよね。

渡邉さん:社内の理解や応援を得るのはやはり大変なことだと思うのですが、今回のYouTubeに関して言うと、先に社外での評価が上がり、そこから従業員たちがYouTubeを気にしてくれるようになったという流れでした。

編集長:SNS系は、確かにその流れが多いような気がします!特にちょっと変わったことを始めた場合など。だからこそ、メディアや取引先、読者・視聴者など外部からの評価が高まるというのは、SNSやYouTubeを継続する上で大事な要素ですね。
これもコンテンツが面白かったり、有意義であることが大前提ですが。

ちなみに、YouTubeをやっている意義については、広報から社内にも発信しているのですか?

渡邉さん:はい、ことあるごとに、有隣堂のファンを増やすためYouTubeを行っているということは伝えています。またチャンネル登録者数が10万人突破や40万人突破など節目を迎えるタイミングで、従業員の皆様の協力のおかげで達成できているということをお伝えしています。

KPIは定めていないが、売上に貢献できることを示していく!

編集長:YouTubeにより実感できている効果としては、具体的にどのようなものがありますか。

渡邉さん:店舗スタッフからは、YouTubeを見て、近隣だけではなく遠方からも有隣堂に来店してくれるお客様が増えているという声を聞きます。また有隣堂は外商も行っており、官公庁や企業に訪問することもあるのですが、担当者の方が有隣堂のYouTubeのファンで、話が弾み契約にも好影響があったという話も聞きます。どちらも定性的ですが、良い影響が出てきているのを実感しています。

編集長:YouTube開始当初はKPIを設定していなかったということですが、今はどうですか。

ハヤシさん:広報は成果を数値化するのが難しいですよね。営利企業であることを考えると売上にどれだけ寄与できたかをKPIにするとわかりやすいですが、有隣堂の年間売上である520億円のうち、YouTubeがどれほど寄与したかは正確に算出できません。
チャンネル登録者数10万人を目指していた頃は、KPIにしていたこともありますが、10万人突破したことが売上にどれだけ寄与したのかはわかりません。
YouTubeの場合、再生回数や登録者数をKPIにするという手もありますが、我々の場合、数字として表せない効果の方を大事にした方がいいと考えているので、KPIというのは本当に設定しづらいんですね。
とはいえ、事業活動の一環で取り組んでいることなので、数字は出していこうという方針で、売上の額は小さくても、YouTubeが売上に寄与しているという分かりやすい成功体験を積み重ねています。 
それが、例えば「24時間生配信」です。

24時間生配信では、のべ28万人が視聴~850万円の売上にも貢献!

編集長:24時間、しかも生配信って、よく企業としてGOがでましたね。どんな好影響があったか具体的に教えてください。

ハヤシさん:2024年9月28日にコレド室町にある「誠品生活日本橋」で実施しました。

約4000人が来店してくださり、YouTubeの同時接続も最高8000人、のべ28万人が視聴してくださいました。
また、会場では台湾のウイスキー「カバラン クラシック(税込14,410円)」を購入してくださった場合に、YouTubeの進行を務めるキャラクター“R.B.ブッコロー”がボトルにサインをするというイベントも行いました。
結果、850万円を超える売上につなげることができました。
24時間生配信で、YouTubeが売上に寄与できることを示せたのは大きかったと思います。

今年6月には、「有隣堂しか知らない世界 5周年記念イベント」として、『ブッコロー1日店長!10時間密着生配信』というものも行いました。

もともとイベントの売上目標を前年同月同曜日比の200%で設定していましたが、実際はこの前年同月同曜日に対して300%の売上を達成しました。

行列の店内@ブッコロー1日店長!10時間密着生配信

こういった売上に対して意識的に貢献するようなイベントを企画するようになったのは、ここ1~2年ですが、その甲斐あって社内にもYouTubeが売上に貢献できることを示せるようになってきています。
まだまだ売上としては、微々たるものですが…。

編集長:私からすると微々たる金額ではありませんが、YouTubeを始めなかったら生まれなかった利益ですよね。YouTubeにより新たな顧客獲得にもつながっていると思うと、金額以上に意味のあることだと感じます。
同業他社や同じような課題を持っている他業界にとっても、「有隣堂しか知らない世界」は非常に良いケーススタディになっているのではないでしょうか。

編集長:オリジナルグッズも40種類ほどあるということですが(2025年5月時点)、YouTube立ち上げ段階からグッズ販売で収益を得られるようになることも視野に入れていらっしゃったのですか。

ブッコローのオリジナルグッズ

ハヤシさん:そうですね、立ち上げ当初からぬいぐるみは視野に入れた方がよいという話をしていました。今はまだまだですが、グッズで売上に大きく貢献できるようになることが、グッズ販売の大きな目的です。それ以外にも、キャラクターグッズを持っていることでより愛着がわいたり、グッズ経由でチャンネルの認知向上にもつながると考えています。

チャンネルの成長とともに、グッズも増やしていき、いずれはグッズ販売店を構えられるくらいになれればと夢を膨らませています。

驚異の視聴維持率「60%超え」を支えるのが“60分の1”の編集技術

編集長:「有隣堂しか知らない世界」は、どの動画も10分前後で構成されているのも良いですよね!私はどんな動画もだいたい1.5倍速で見ているので、そうすると数分で見終わるので、次の動画もどんどんみれちゃうというか、見たくなるというか。

ハヤシさん:そういった意味では、いかに最後まで飽きずに見てもらえるかという「視聴維持率」にはとてもこだわっています。
多くの動画は視聴維持率60%を超えています。

編集長:想像よりだいぶ高い数字でした!!これは編集の技術なしには叩き出せない数字ですね~
編集ではどういった点を工夫されているのですか?

ハヤシさん:ヒミツです。(笑)
とはいえ、自分でゼロから新しい手法を編み出したわけではなく、先人たちが語っているノウハウから自分なりの成功法則を導き出して、実践しています。
ただ、極論、めちゃくちゃ頑張るということに尽きると思います。

例えば動画は、パラパラ漫画のように静止画を連続させて動いているように見せています。「有隣堂しか知らない世界」では、その1秒を60枚に設計し、編集の際には1枚ごとに長さを伸ばしたり縮めたりしながら調整しています。そのため、制作には膨大な時間がかかっています。

編集長:そんなお話を聞くと、企業広報が兼務でYouTubeを運用するのは難しいのではないかと思ってしまいますね…。

ハヤシさん:そんなこともないと思います。自分の場合は、編集にこだわりを持ち、それがチャンネルの評価にもつながっていると思いますが、例えば超人気タレントをキャスティングして動画を制作するのであれば、そこまで編集にこだわらなくても人気のチャンネルにすることはできると思います。編集にこだわることが全ての企業にとって正解というわけではないはずです。

同じことをやり続けながら、日本一の企業チャンネルへと成長させる!

編集長:今後のYouTubeのビジョンや目標を教えてください。

ハヤシさん:マンネリ化してしまうのはすごい怖いなと思っているのですが、同じことを続けるということもすごく大事だと思っています。
以前、占い師のしいたけ.さんに出演いただいたことがあるのですが、その時におっしゃっていた「マンネリだと思っても、もう何年かつづけた方が良い」という言葉が心に残っています。
登録者数が増えれば、現状のやり方を継続するのが難しくなるかもしれないですが、できるだけ“同じことを続けていこう”と思っています。
また、目標は時価総額日本一の企業が本気で取り組んでいるYouTubeチャンネル「トヨタイムズ」を抜くということです!ですので、今年中に50万人突破を目指しています。

編集長:トヨタイムズとは10万ちょっと開きがありますが、実現できそうですか?

ハヤシさん:目標としてチャンネル登録者数をあげておきながら、こんなこと言うのもなんですが、登録者数は、昨今あまり意味のないものになりつつあると考えています。
なぜなら、ショート動画をあげれば、登録者数は増えていくからです。「有隣堂しか知らない世界」も最近登録者数が30万から40万に増えたのですが、 その理由は毎日1本ショート動画を公開し始めたからです。例えば、この本数を1日2本に増やせば50万人突破はそう難しい目標値ではありません。

でも企業広報においては、ショート動画で登録者数が10万人増えるより、たとえ1万人しか増えなくても、ロング動画で深く・長く接触してもらい、いいねやコメントをたくさんもらうほうが意義あることです。
ですので、分かりやすい指標として登録者数の話をしましたが、本来の目的を無視して登録者数を伸ばすような施策をするつもりはありません。

編集長:なるほど。でもショートってそんなに登録者数増えるのですね。
ロング動画でエンゲージメントを高めることが大事というお話ですが、ショート動画の関連動画にロング動画を紐づけて誘導することもできますよね?

ハヤシさん:機能的にはそういうこともできますが、実際はショートで完結してしまう人や、有隣堂のチャンネルであることを知らずに見ている人が多いと思います。
ショートは麻薬みたいなもので、やりすぎるとチャンネル全体のエンゲージメントを下げてしまうので注意が必要ですね。

期待に応えるか、期待を裏切るか、企業チャンネルはどちらかに振り切るべき

編集長:今回お話をうかがう中で、何度も「面白い動画であれば」という言葉をつかっていらっしゃいましたが、「面白い動画」の条件は何でしょうか。

ハヤシさん:有隣堂の場合は、「知的好奇心を満たす動画であること」また「笑いとしての面白さがあること」だと考えています。
そして、今回の著書には書いていないのですが、企業YouTubeの場合は、
・期待通りのものを作る
・期待を裏切るものを作る
この2択しか見てもらえる動画にはならないと考えています。

企業が作る動画なので、視聴者は当然クオリティが高いに決まっているという目で見ます。結果面白いと感じてもらえれば期待通りと評価してくれます。
一方、有隣堂は期待を裏切るほうの動画を作っていると自負しています。それは例えば企業としてはあり得ないくらいR.B.ブッコローが(建前ではなく)素直な意見を言ってしまうところであったり、有隣堂で売っていないものを全力で紹介したり、企業YouTubeで想像する動画とはギャップを感じてくださると思います。

一番よくないのは、この2つの真ん中、つまりクオリティも低ければ当たり前のことしかしないということです。それでは、貴重な時間をわざわざ使ってみようとは思ってもらえません。

「期待を超えたとき」、あるいは「期待を裏切ったとき」に面白さにつながるというのが企業YouTube動画における大きなポイントだと思います。

編集長:有隣堂の広報としてのビジョンについても教えてください。

渡邉さん:YouTubeの話の中でも、再生回数や登録者数ではなく、いかに有隣堂のファンになってもらえるかというところを大事にしているというお話をさせていただきましたが、有隣堂全体の広報としても、リリース配信数やメディア露出ではなく、そこからどれだけ有隣堂の考えや思想が伝わったか、社会に影響力を与えられたかを追求していきたいと考えています。

編集長:また数字では評価しづらいところですね。(笑)
良い評価方法が編み出せたら、是非教えてください!!

PRマガジン編集部の編集後記

編集後記:編集長

―片手間ではなく、本気で取んでいるからこその結果

昨今、広報PRがSNSも担当しているケースが増えているのではないだろうか。
様々な業務を兼務する中で、さらにInstagramやX、YouTubeも外せなくなってきているから、空いた時間で取り組んでいるという方もいるだろう。
その結果は満足いくものになっているだろうか?
特に、構成や編集が欠かせないYouTubeの場合、広報だけでは継続することも結果を出すことも難しいかもしれない。

有隣堂の創業111年目のチャレンジとして2020年に始まったYouTube。
開設当初のYouTubeチャンネルは、全く上手くいかず打ち切りに。
それでもYouTubeの継続をあきらめなかった有隣堂と上手くチャンネルを成長させられる自信があったというハヤシ氏が膨大な時間をつぎ込んだことで、チャンネル登録者数が40万人を超えるほどのチャンネルへと急成長している。
そして、最近では売上にも貢献できることを社内外に示している。

これぞ、企業のYouTubeチャンネルが目指すべきところではないだろうか。
これぞ企業のYouTubeドリーム!?

夢で終わらせず、会社のブランディングや成長に貢献できるYouTubeチャンネルへと成長させるため、是非今回の記事からヒントを得ていただきたい。

今回の注目企業

株式会社 有隣堂(https://www.yurindo.co.jp/

設立:1909年12月13日
概要:文具や雑貨を扱う書店や、1つの店内で異業種が同時に営業する複合業態店舗を開発・運営を行う他、企業・官公庁・図書館・教育関連機関などへ幅広い商材やサービスを提供。

お話を伺った方

株式会社 有隣堂 広報・マーケティング部(取材時/現在は社長室 デジタルクリエイティブチーム) 渡邉郁さん |
『有隣堂しか知らない世界』プロデューサー ハヤシユタカさん

株式会社 有隣堂

広報・マーケティング部(取材時/現在は社長室 デジタルクリエイティブチーム) 
渡邉 郁(わたなべ・いく)

『有隣堂しか知らない世界』プロデューサー
ハヤシユタカ