この記事の目次
プレスリリースは本数じゃない!効果的なタイミングはいつか。
1.プレスリリース発信の頻度は?
タイミング、頻度、本数。広報担当者が悩ましく思うポイントだと思います。
プレスリリースを作成して、メディアに送ることは、広報担当者にとって重要な仕事。だからこそ、毎日せっせとさまざまな情報を送りたくなります。
一方メディア側の立場で考えるとあまりに頻繁にプレスリリースを送られるとスパムメールのように迷惑に感じるのではないか、結果自社の印象が悪くなるのではないかと心配になります。
では、どれくらいが程よい頻度で本数なのか、正直残念ながら答えはありません。
プレスリリースは、プラスの内容であるなら、月に数本は出してもよいと私は思います。まず、ナショナルカンパニーのような大企業でない限り、世間に自社のことはほとんど知られていないということを前提にしましょう。
永年勤務している社員、特に経営層は、自社のことを熟知しているため世間でも認知度が高いと勘違いしてしまう場合もあります。自身が思っているよりも世間には知られていないものです。業界ナンバーワン企業であったとしても、違う業界の方からしたら無名企業かもしれない、そういう意識も大切です。
私もかつて社内で「誰でも知っている内容をわざわざリリースする意味があるのか」という指摘を受けたことがありました。そこで外部の認知度調査をしたところ、自分たちの想定よりも認知度がかなり低かったことがわかり、驚かれました。社員が当たり前だと思っていることでも世間にとっては全く知られてないことはよくあることです。なので、誰でも知っているようなことを発信してもいいのかという点についてはそれほど悩まなくていいとおもます。
ただし、意味もなくやたらと乱発してはメディアによい印象は持たれません。ときどき数多く発信することで仕事をしているという充実感を覚えるタイプの広報マンをみかけましが、当然ながらリリースは中身の情報が充実してこそです。必要に応じて、根気よく、様々な角度からテーマなどを考えて発信しましょう。
2.発信のタイミングは? 価値があるうちに出そう
業種や業態、また企業の成熟度合いや認知度によって異なりますが、メディアへのリリースは「ニュース」価値があるうちに発信することが大切です。
ただし、プレスリリースはちらしや広告とは別物です。ここでいう「ニュース」とは、自社にとってのニュースではなく、世間にとっての価値がニュースであることです。
その理解が社内で得られていない場合もあります。会社全体のことを見ないで自部門の自身の担当商品のことだけを取り上げてほしいと言った依頼や、事業部からあれもこれもと無料の宣伝ツールのように依頼された経験がある方もいるのではないでしょうか。企業広報は、きちんと自社のポリシーを持って発信することが大事です。そのことを社内で忍耐強く周知していくことも重要です。
商品広報は、商品に特化した広報なので、企業広報とは違う場合もあるでしょう。たとえば、Aという商品の発表をしたけれども、売れ行きが好ましくないからもう一度出したいなどという依頼が事業部から来た場合どう対処するのが正しいのでしょうか。同じ内容のプレスリリースでは「ニュース」にはなりません。変える必要があります。
繰り返しになりますがプレスリリースは、ちらしのように「激安」「お得情報」という文字を並べて宣伝するものではありませんので、宣伝と広報は区別する必要があります。
3.一度の配信で反響がなかったら……
次になかなか掲載に結びつかないけれど、どうしても掲載してもらいたい案件の場合について考えてみましょう。新商品発売のプレスリリースを発信したけれどもまったく反響がなくメディアに掲載されないときはどうするか。
いくつか方法がありますが、私ならまずは以下の2つを試してみます。この商品に関わる違う視点でのリリースを検討するのです。
②この商品と世間の流行りものとの共通点を見つける。
①商品の開発秘話などを担当者目線で発信
商品やサービスそのものではなく、そこに関わる人間にを焦点を当てる。たとえば小麦アレルギーでも食べられるお菓子の開発に携わったのは、実際にアレルギーの子どもを持つ研究者で、アレルギーがあってもなくても美味しく食べられるお菓子を作りたかったという思いを語ってもらうなど商品の背景を紹介するのもメディアに喜ばれます。
②この商品と世間の流行りものとの共通点を見つける。
以前、食品の製造過程で異物混入が問題になったとき、自社の製造工程を進んでテレビで公開した食品メーカーが話題になったことがありました。
たとえば今ならプラスティック製品と海洋汚染との問題がクローズアップされているときに、いち早く紙製に切り替えたなど時事ネタとリンクした話題はニュースの価値があります。食品なら健康志向の観点、建築なら環境施策からのアプローチなどが可能です。同じ商品のプレスリリースでも、様々な角度から違う見え方にしていくつかプレスリリースします。
逆に、取材申し込みがいくつか来た場合、その波に乗りたいこともあるでしょう。その場合も同様に、違う角度からのリリースを何本か発信するようにします。
たとえば新しい商業施設をオープンさせたリリースが、何件も記事化された場合、最初のリリースでは「商業施設がオープン」したことがメインに取り上げられますので、次のリリースでは例えば商業施設の具体的な店舗の紹介をする、担当者と商業施設のお客様との対談をリリースする、など膨らませていくことが可能です。
4.根気よく、様々な角度から
本数や頻度にこだわるよりも最初に書いたとおりプレスリリースは「根気よく、様々な角度から」なのだと思います。最後にそのことを実感した出来事をご紹介したいと思います。
それは、厳密に言うと自社のリリースではなく、グループ会社の環境施策をテーマにした小さな案件で、正直私の目から見てもニュースバリューは低いものでした。具体的には窓ガラスにイルミネーションを施しましたので街の人にも楽しんでもらえたらという我ながら少し大げさに書いたプレスリリースでしたが、結果として記者の目に留まることはありませんでした。
しかし、社員のモチベーション向上を目指したいといったグループ会社の強い意向もあり、どうしても1件でも掲載に結び付けたいということで次の一手を考えることになったのです。同じ内容のものを記者クラブには何度も出すことは社内の承認を取りにくかったため、一度出したリリースのベースは変えず添付資料などをアレンジして、直接ウェブ媒体へお願いしたり、専門紙の記者へ直接お会いして手渡し説明をしたりしました。
広報サイドから見ると「2度目の同じ案件のリリース」ですが、残念ながら記者にとっては「初めて見た」ものでした。毎日膨大なリリースが届くので、見ていただけていなかったのです。結果、1件だけですが専門紙に記事化してもらうことができました。
プレスリリースの種類や会社の規模、業種業態によってもリリースの適切な頻度は異なると思いますが、それぞれに合った形を見つけること、また各企業のリリース発信に対するポリシーをしっかり持っておくことが重要です。ぜひ、積極的に発信してみてください。
これまで担当した業界 :メディア、不動産、街の活性化など
趣味:旅行、写真。旅に関する書き物をすることが夢。
プチ自慢 :スノードームコレクション