手探りで見つけた私流の広報の始め方―メディアの特徴分解とアタック方法

私が「広報」になったきっかけ

私は現在株式会社ニットの広報として働いています。最初、当社は専任の広報を採用しようと何年も採用活動を行っていましたが、なかなか採用までつなげることができませんでした。その結果、社長の秋沢が自ら広報活動をするという状況に。

しかし、社長業の傍らで広報を行うのは難しく会社としてもどうしようか考えていました。私は営業職で当初は働いていたのですが、2020年7月に、社長の秋沢から広報への異動を提案されました。社会人13年目、前職のリクルートでも営業しか知らない私が、初めて、広報の世界へ飛び込むことになりました。

着任当初は「メディアの方と繋がりない!」「打ち出せるネタがない!」「知識もノウハウもない!」という状態で、とても不安いっぱいでした。

広報系の本は30冊以上読み、最初はとにかく勉強をしました。
また、外部の広報コミュニティに参加したり、ベテランの広報の先輩に話を聞きに行ったり、元PR会社の友人に色々と教えてもらったり、記者さんとの飲み会やお食事の機会があれば最優先で参加するなど、まずは動いて情報をキャッチすることを重視していました。

露出実績がない企業はメディアに載れない

今、世の中に「メディア」と呼ばれる媒体はたくさんあります。最初は、「よし!TVだ!日経新聞への掲載を目指すぞ!」と思っていましたが興味を持ってもらえず、玉砕していました。

「露出実績がない企業は載れない」ということを痛感したのが、広報になってすぐに直面したことでした。TVや日経新聞などの大手メディアは、「この企業が載る理由は何か?」「載せるだけの実績があるか?」という世の中の人々にどのような影響を与えることができるかを考えているのです。

また「テレワークについて語れます!」とアピールしても、3か月間だけテレワークを実践した企業と10年間テレワークを実践している企業を比較したら、メディアの方は後者に取材をしに行くでしょう。

ただ、一つ言えるのは、たとえ後者だとしても「発信をしていなければ取材は来ない」ということです。要するに、発信をしていなければ、やっていないことと一緒というのが、広報の世界だと思っています。だからこそ、広報立ち上げにおいて、メディアに載るためには、①実績を作る、②自社発信をするということがとても大事です。

当社は創業時からフルリモートで事業を運営しているので、その実績を積極的にアピールしていこうと決めました。「メディア」とひと口にいっても、その影響力やカラー、抱えている読者の傾向は多岐にわたります。最初に概念を3つに分けて整理しました。

メディアの概念を3つに分けて整理

①誰もが知っている影響力の大きいメディア
②認知度はそこまで高くないが、影響力があるメディア
③認知度は高くないが、業界に特化しているメディア

「①誰もが知っている影響力の大きいメディア」とは、主にTVや大手新聞、大手Webメディアなどが当てはまります。ただ、こうしたメディアに無名のベンチャー企業が突然アタックをしても、見向きもしてもらえません。関係性をつくることすら難しいと感じています。

そのため、まずアタックすべきは「③認知度は高くないが、業界特化しているメディア」です。私たちの場合は、HR、経営者、ビジネスなどの知見があるので、そうしたテーマと親和性の高そうなメディアさんをリストアップして、一気にアタックをしました。TVや大手新聞ほどの知名度はなくても、業界に特化されているので、見て欲しい人=ターゲット層に刺さる可能性が高くなることに加え、「HRに強い会社なんだな」というブランディングにもなります。さらには、そのメディアさんと良い関係を築けたら「世の中を変える」という同じ目標を持つ同志にもなり得ます。

商談の進め方として、まずそのメディアが目指す未来や運営会社の理念などを見て、自社が入り込める「スキマ」を探します。言い換えると、そのメディアに対してどんな新しい価値を提供できるかを考えることがポイントです。傾向と対策が固まったら「そのスキマを埋めることができますよー」と提案します。営業としての手腕が試される部分ですね。このようにしてメディアとの関係性を段々と築いていきました。

③のメディア露出が増えてきたら、次に「②認知度はそこまで高くないが、影響力があるメディア」を開拓します。これは、実は月間1億PVを誇るメディアや、Yahoo!ニュースに転載されるようなメディアを指します。バーッと調べてリストアップし、③の実績を引っ提げてアタックします。そうして、ジワジワと②③のメディア露出を増やしていきました。

②③への露出が増えてきた段階で①にアプローチをかけるます。ポイントは「ここぞ!」というタイミングを見計らってアタックすることです。この時、単に自分たちの言いたいことを提案してもなかなか採用されません。世の中の潮流を捉えて「今、何がニュースとなり得るか?」を想像し、そのメディアの特徴や記者さんの興味や得意なことを考慮したうえで提案しています。

メディアへのアタックから寄稿獲得までの流れ


①メディアのリストアップ(HR、経営者、ビジネスなど、自社と親和性の高いテーマを扱っているメディアを選定)
②アタックのための文章を作成
③一気にアタック
④反応があったら、もうひと押しして商談につなげる(「ぜひ取材を!」)
⑤相手から「取材は難しいが、寄稿でしたら……」と言われた場合は寄稿で進める

弊社はオンラインアウトソーシングサービス「HELP YOU」を提供しており、多くのフリーランスが所属しているため、この①②③は業務委託メンバーに対応してもらっています。私はもともと営業マンなので、商談は得意分野ですが、この①②③まで一人で対応するのは結構、大変なんですよね。そのため、ここは別の人にやってもらって、私は私が一番得意で肝な部分に集中する、という体制を組んでやってきました。

◆寄稿は自分の言葉で書ける

メディア露出において、オススメなのは「寄稿」です。メディアとしても、ライターを雇うのは大変だし、お金も掛かります。そのため、仮に「この会社良いな~」と思ってもらえていたとしても、待っているだけではなかなか取材につながりません。だからこそ、寄稿です!

◆寄稿獲得の流れ

①テレワークなどの寄稿実績を提示し、信頼を得る
②メディアに合ったテーマで寄稿の提案をする
③「Twitterでシェアします!」と一緒に記事の影響拡大を狙う方向でクロージング

私にとっての営業ツールはnoteでした。もともと去年のコロナ禍で時間ができ、noteを書き始めました。結果としてそれが財産となり「こんな記事、書けますよ!」と提案し、執筆テーマが決まり続けています。寄稿のメリットは、継続してメディアさんと関係性を持ち続けられることです。特に連載が決まったら、関係性を持ち続けることができます。広報としては継続して露出するメディアがあることはすごくありがたいことだなと思います。

1年と3ヶ月の実績で築き上げた実績

下記は広報に着任してから築き上げた実績です。コツコツとネタを見つけながら、プレスリリースや執筆を続けた結果なのではないかなと思っています。

【メディア露出は603本】
フジテレビ、TBS、テレビ朝日、日本経済新聞、朝日新聞さん、スポニチなど数々のメディアの方々に取り上げていただきました。本当にうれしく思います!

【寄稿だけでも100本超え】
そのうち、4月は単月20本の執筆をし、Yahooニュースにも転載されました。

【プレスリリース配信数は224本】
毎月15本以上はコンスタントに書いています。

【現在連載中のメディア一覧】
HRテーマでは@人事、HRzine、おかんの給湯室の3つのメディア、テレワークテーマではマイナビニュース、キャリコネニュース、日経BizGate、ビジネス+IT、日本法令の5つのメディア、
広報含めたビジネス全般のテーマはwithnews、SalesZine、Moovooの3つのメディア、計11メディアで寄稿しています。

広報は社長と同じ視点で事象と捉える経営である

着任してから、知れば知るほど「広報」はとても奥深く、「広報は経営である」と感じるようになりました。
広報の仕事というと「内部にあるものを拾って社外へ発信する」と思われがちなのですが、全てがそうではないと考えています。広報視点で世の中の潮流を捉えて、事業への提言をしたり、組織開発へ加わったり、イベントの主催をしたりと組織への関わり方はさまざまです。

広報主体でネタを作り、それを発信することも大事ですね。それは、もはや経営なのだと思います。
会社として在りたい姿に近付くために、「広報として何ができるか?」「どういうメッセージで発信するか?」ということを考え抜くのです。

社長と同じ視点で物事を見て、ディスカッションし、社内の現場を動かすという観点で見ると、広報は捉え方次第では、ステークホルダー全てに関わることもできます。会社のブランディングのために、社長をプロデュースすることも広報の仕事です。ベンチャーの一人広報としては、それぐらいのスタンスでいることが大事かもしれません。まだまだ未熟な部分はありますが、そうした理想のもとにこれからも広報活動を行っていければと思っています。

読んでいただき、ありがとうございました!

執筆者プロフィール

株式会社ニット(https://knit-inc.com/
小澤 美佳

リクルートで10年間、営業マネージャーやリクナビ副編集長として勤務した後、中米ベリーズへ移住し起業。2019年に株式会社ニットに転職し、2020年7月より広報担当となる。副業で大学の非常勤講師として、キャリアや就職の授業を担当。
Twitter:@mica823