プレスリリースの書き方 プレスリリースはどんどんバージョンアップしていきましょう!

プレスリリースはどんどんバージョンアップしていきましょう!

1.プレスリリースとは何か?


そもそもプレスリリースとは一体何なのでしょうか?
広報担当になったらまずはプレスリリースだ、と意気込んで調べたりセミナーに行ったり事例を探したりしている方もいるかもしれません。何となく、プレスリリースは広報業務の基本だというイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。私も広報担当1年生だったころ、プレスリリースを体裁よくきれいに書くことに必死で、書き終えたらそれだけで達成感を覚えていました。しかし、プレスリリースとははじまりに過ぎません。

プレスリリースは企業活動を伝えるための公式な文書ですが、書くことが目的ではないのです。マスコミのみならず、顧客や取引先、利害関係者などのすべてのステークホルダー、また社員に自社のニュースを知らせるものです。

商品やサービスのPR、人事関係、IR、CSR、さらにトラブルなど素早いリリース配信もステークホルダーとの信頼関係を築くブランディングとなります。企業によっては自社ウェブサイトへの掲載時に、マスコミへの告知を「プレスリリース」、その他広くステークホルダーへの告知を「お知らせ」などとタイトルを変えて掲載しているところもあります。

ここでは、企業・団体などが広報のために、報道関係者に向けてする発表。また、そのために配布する資料についてお話していきます。

2.「古臭いプレスリリース」になっていませんか?


プレスリリースの書き方に正解はないといっても、注目してもらってこその資料ですから書き方も常にアップデートをしたいものです。プレスリリースはこうであらねばという思い込みでアップデードができてないなんてことはありませんか?

たとえば、前任者からひきついだマニュアルやフォーマットをそのまま使っていたり、愛読しているノウハウ本がずい分前に発行されたものであったりといのはよくあることです。前例にこだわりすぎるあまり、どんなプレスリリースにも同じフォーマットを使用していると本当に伝えたいことが分かりにくくなってしまうことがあります。

企業によってはA4フォーマット1枚にまとめた方がよいとか、フォントも決まっているなど様々なルールがあると思いますが、プレスリリースの書き方に正解はありません。以下、何件か書き方の事例をご紹介します。

【商品・サービスをPRするリリース】

上場企業などは記者クラブに発信する決められた体裁のプレスリリースを用意する必要があると思いますが、他の媒体、雑誌やテレビ番組用にプレスリリースの体裁を変えた数パターンを作成するのもよいでしょう。なぜなら受け取り手が違うと、取り上げたい切り口が違うからです。

たとえば「A社がBという商品を出したという事実を取り上げたい(A社が何をやっているかが重要)」記者クラブの媒体と、「A社のBという商品(この場合A社であることにこだわりはない)」を取り上げられる可能性が高いテレビ番組とでは、プレスリリースの構成が全く異なります。受け取る相手の気持ちを考えて書きましょう。参考資料を添付したり、画像は別途自社ウェブサイトからダウンロードできるようにしたりしても良いでしょう。

違う業界との共同リリースをするのも効果的です。たとえばA県の食材を使っているコンビニBの商品を県とコンビニが共同でリリースするなど。担当記者が違うこともあり、普段掲載されない媒体に載る可能性が高くなり、新たな顧客獲得や認知度アップにつながります。
特に、BtoB企業がBtoC企業とコラボレーションすると、違う切り口で発信できます。

世界初、日本初ではなくても、自社にとって初ならニュースです
例えば、「〇〇のサービスをプレスリリースしたい」と事業部の方に相談したとしましょう。事業部の方は「そんなものはプレスリリースする価値がない」と言われた経験がある方も多いのではないでしょうか。しかし、自社にとって初ならニュース(あたらしいこと)です。

万が一記事化に至らなくても、発信をすることに価値があります。携わっている社員のモチベーションアップにもつがなり、次回のリリースへの社内での協力体制も構築できます。

【時事問題、社会性のある話題に関するプレスリリース】

次にプレスリリースの発行のタイミングを考えてみましょう。新製品や新サービスの発表時だけだと思っていませんか?自社の商品やサービスが社会で話題になっている事件などに関係していたら、それもプレスリリースを出すタイミングです。

たとえば、企業からの情報漏洩が社会問題になり世間を賑わせているタイミングで、自社が情報管理を扱う場合、自社のサービスの安全性を改めてPRリリースを出すなど。業界的に逆風ととらえる向きもありますが、それをあえて公開することでポジティブな反応を引き出すことができます。

新しい商品やサービスではなくても継続的に行っている自社の活動をPRできます。環境問題が話題となっている場合は自社が行っている環境施策をリリースするなども良いでしょう。

【謝罪などのマイナスリリース】

個人情報漏洩が発覚した場合、商品に不備があった場合、衛生面でのトラブルがあった場合など、マイナスリリースはプラスの情報よりも早い対応が必要です。商品の一部に欠陥があった場合なども、迅速にリリースをして交換などの対応をすることで企業の信頼性を落とさないようにしましょう。

3.プレスリリースを出してからその後


プレスリリースは出したら終わりではありません。スタートです。
発信してはじめてステークホルダーとのコミュニケーションがはじまります。目にしてもらえなければコミュニケーションすらスタートしないかもしれない、出したら満足してはいけません。商品PRについてもリリースすれば必ずメディアに掲載されるわけではありませんし、謝罪にしてもリリースしたら終わりではありません。その後の対応も含めてリリースを発信することです。

商品PRのリリースに特化していうと、発信方法は、記者クラブへの投函、メール、ファックス、郵送などがあります。ファックスや郵送をされている方は少ないかもしれませんが、初めてアプローチしたいテレビ番組など、そもそも担当者と面識もなく入り口すら分からないこともあります。
もし他社広報との横のつながりがある場合は、違う業界の担当記者にアピールするのもよいでしょう。違う切り口で掲載してもらえる可能性があります。

私の場合は、美容系商材広報・ホテル広報・不動産デベロッパー広報の3人で某新聞記者に会いに行ったことがあります。美容系商材広報は新商品のシャンプーなどを持参。ホテル広報は新しい女性向けプランを説明、不動産デベロッパー広報は新しい商業施設のPR。担当記者クラブでいうと、経済産業省と国土交通省という違いもあります。
しかし、ターゲットが女性という共通点。それぞれが違うプレスリリースを持参してのPRでしたが、話していくうちに「こういう切り口で掲載するのがおもしろいのではないか」といった記者目線での提案もでき、記事化してもらうことができました。

あくまでこれは一例ですが、「書き方」の最後でも紹介したように、最後は情熱!熱い気持ちで、直接記者と話をできるようになるのが理想ですが、まずは記者とのアポイントメントがとれるようなプレスリリースを書くこと。

マイナスリリースについては、発信後にくる質問や対応を適切にできる体制にしておくことが需要です。たとえば、アパレル企業が販売している一部商品に縫製不良があったとします。新品への交換など対応ができる体制が整ったら即リリースを打ち出します。謝罪リリースしか発信していなければ、その後のトラブルの対応がない企業として悪い印象のみが残ってしまいます。どれほど謝罪リリースを丁寧に素早く出していても、その後のフォローがなければ無駄になってしまいます。

プレスリリースの内容にはプラスもマイナスの要素もありますが、結果的には企業にとってプラスになるように発信するものです。企業価値の向上のために、常にアンテナを張ることが大切になります。こだわりを捨てて、「新しいプレスリリース」を書いてみましょう。

ライター/PRアドバイザー 川辺 夏(かわべ・なつ)
これまで担当した業界 :メディア、不動産、街の活性化など
趣味:旅行、写真。旅に関する書き物をすることが夢。
プチ自慢 :スノードームコレクション