「広報 < 営業・開発」というパワーバランスをどう変えるか?

突然ですが、タイトルをみてどう思われましたか?

「は?なに言ってるんだ!?」と思われた方は、きっと、社内で広報のポジションを確立し、他部署からも頼られる存在なのだと思います。しかし、職業柄多くの企業広報さんとお話をしていると、社内のパワーバランスやしがらみで思うような広報が出来ないと言う方も少なくないようです。

今回は、そんなお悩みをもつ広報の方々にこれまで私がお会いした広報(広報部)の実例をだしながら、具体的にどのようなアクションをすれば良いのかお話させていただきます。

広報·PRの『力』や『影響力』を再認識する

さて、あなたは広報·PRがどれくらい会社にとって重要だと思っていますか?

『広報·PR』により、会社の経営戦略と連動し、売上や営業、認知向上に貢献したり、PR活動によるブランディングで、ステークホルダーに「安心」「信頼」「好意」を抱いてもらい、価格競争や競合他社に左右されない企業の地盤をつくるなど、『広報·PR』が会社に及ぼす影響力は非常に大きいのです。

ただし、ただ言われるがままに新商品やサービスのプレスリリースを書いてメディアに掲載/放映してもらうという業務だけで、その重要性は社内に理解してもらえません。

では、どうしたらよいのでしょうか。

自ら他部署と仲良くなりに行く

中堅のBtoB企業で広報を本格的に開始することになり、広報·PR経験のある方が一名転職してきました。

その方がまず一番最初に行ったことが、積極的に他部署の方とコンタクトをとり、時にはランチに誘いコミュニケーションを図るということでした。この企業は広報部を立ち上げたばかりですから、当然社内の方はその存在や何を目的に業務をする部署なのかも知りません。

広報は「社内からいかに情報を吸い上げられるか」が成功のポイントでもあります。そのため、仲良くなって、広報について知ってもらい、いつでも協力してもらえる関係を構築していったのです。

企業によっては、私たちPR会社からPR企画を提案し、広報としてもすごくやりたい!と思ってくださっても、他部署を巻き込むのが難しいから出来ないというお返事をいただくこともあります。

確かに、どの部署も忙しいので余計な仕事はしたくない‥
というのが本音かもしれません。

ただ、そのときに広報に理解があり良い関係が構築できていたらどうでしょう?
さらにそのPR企画を進めることで協力してくれる部署にどういったメリットがあるか話せたらどうでしょう?是非協力したい!と言ってくれる確率が高まると思いませんか?

実際、他部署の協力を得られる広報部は成果を出し、会社からも重視されているケースが多いです。

経営になくてはならない存在になる

とある急成長しているクラウドサービス企業の広報さんは、経営にとってなくてはならない存在の方でした。

皆さんは広報のミッションを

・広告換算額を〇千万円以上にする
・認知度を上げる

などに設定したりしていませんか?

これだと、会社にどう貢献してくれているのか他部署からみたらわからないことが多いのです。このクラウドサービス企業の広報さんは、ミッションは経営目標と同じで、自分たちのサービスを通し世の中の課題を解決していくことでした。

そして、そのミッションを達成する過程を分解し、広報の成果指標としていました。ただその中に、広告換算やメディア露出という文字がないのです。その代わりに、ステークホルダーとどう関係構築していくかというコミュニケーション施策と結果に重きを置いていたのです。

広告換算やメディア露出が成果指標にないからといってメディアリレーションをしないわけではありません。

しかし、メディアリレーションの目的がメディア露出だけでないのです。メディアリレーションを通し「記者から自社に対しての意見を聞ける場」と捉えていました。よくあることですが、例えば商品開発をしていると当然自信をもって開発しているはずですから、すごく良い商品だということが前提で話が進みます。

一方広報は、メディアを始め外部の方と接点が多い部署で自社や自社の商品やサービスに対する様々な意見を収集できるポジションです。そこで、この広報さんは外部から得た情報を社内に戻し、経営や他部署に新たな気づきを与えていきました。

それだけではありません。
広報という仕事を通し得た気づきや課題に対する解決策を会社に提案し行動にうつしていったのです。
広報という枠組みを超えた内容も多々ありましたが、経営目標を達成するため自分にできることは全て行動に移したのです。

ここまでくると、もうこの広報さんは会社にとってなくてはならない存在になります。もっと言えば、ここまでできれば広報はもっとやりがいのある楽しい仕事だと実感いただけると思います!

広報のアクションや成果を知ってもらう

PRネタは机上でも考えるのですが、やはり現場からの情報提供がPR企画立案には不可欠です。
ある業界最大手のレジャー/スポーツ系の会社は全国何十か所にも施設があり、数名の広報だけでは頻繁に情報を吸い上げるのが難しい状況で頭を悩ませていました。

各施設のスタッフに広報ネタを提供してほしいとお願いしても、皆それぞれの業務で忙しく、また広報についてほとんど知識がなかったためほとんど情報は集まりませんでした。そこで、『社内報』を作成し、広報の取り組みや成果を全施設のスタッフに発信し始めたのです。

例えば、「〇〇施設から提供してもらった情報をこういうリリースで発信し、□□メディアや△△メディアで取り上げられました!

その後、HPへのアクセスが増え、体験希望者がこれくらい増えました。」といった内容を実際のリリースなども掲載しながら伝えていきました。

すると「えっ!?こんな情報でメディアは関心を持ってくれるの?だったらうちにはこんな情報あるよ」と各施設から積極的に情報を送ってくれるようになりました。スタッフからすると日常的なことでも取材につながると分かってもらえたのです。

さらに、社内報でもメディアに放映/掲載された結果どのような反響があったかも、できるだけ伝えたため、施設の認知向上や売上といった現場のスタッフが背負っているミッションにも広報が貢献してくれることが伝わり、結果自分たちだけでは目標を達成するのが難しいと判断した場合、広報を頼ってくれるという図式が出来上がりました。

広報PRを楽しみ前のめりに活動する

あるBtoBのベンチャー企業の広報さんにお話をきき、とても共感したのが「広報活動に必要な情報は自らの足で取りに行く」という姿勢です。

この広報さんはとても活動的で、自社のサービスを使ってくれているお客様を積極的に訪問し、導入前後での変化や売上や顧客数など数値などを直接聞いて回っていました。地方のクライアントも多く、実際に聞いた話を簡単に資料化し、すぐに地方の記者クラブに持ち込んで記事化してもらう…ということもしていました。

直接クライアントに話を聞いているので、魅力的で説得力のあるプレゼンがメディアにもできたのだと思います。地方でのサービス展開を重視していたこの会社は、広報により成功事例(クライアント事例)がメディアにでると、問い合わせ数も伸びるということがわかり、営業社員もクライアントと広報を結びつけることを前向きに協力してくれるようになりました。

社員数も多くなかったということから、営業スタッフも広報が現場を回り得た情報を共有してもらうことはとてもありがたかったようで、お互いウィンウィンの関係を築けていました。

嫌々ではなく、前のめりに「自分にできること」を模索し行動に移していると周りからの見る目が変わってきます。

ボスが替わると組織が変わる

これは、様々な会社であった話です。

ただ、現場の広報の方が変えられることではないので管理職の方に読んでいただきたい内容です。
広報がコストセンター扱いされ、悔しい思いをしたことはありませんか?

その理由は
「会社にどう貢献してくれているのか伝えらえていないから」
と言えます。

いくらたくさんリリースを書いてメディアに露出しても、それだけで経営陣や他部署はなかなか評価してくれません。なぜなら評価指標のベクトルが違うからです。

すなわち、広報のボスはリリースを書いたり、記者会見をしたり、メディア露出を実現することで、会社にどう貢献したのかそれをプレゼンできなくてはいけないのです。会社にとって広報がいかに重要であるかをプレゼンできるボスがいる広報部は、予算が縮小されたり、他部署から軽視されることもありません。

また、そういうボスがいると現場の広報社員も自分たちの仕事に誇りとやりがいを持って働けるので、成果も出してくれます。広報部の未来は、ボス(広報部長)にかかっているといっても過言ではありません!

時には第三者の力を借りる

敏腕経営コンサルタントでも自分の会社の経営は、なかなかうまくいかない…という話をよく聞きます。
広報は客観的な目線がいる分、第3者とタッグを組むことで上手くいくケースも多々あります。

例えば、広報から社内に協力依頼をすると簡単に断られてしまうが、PR会社のコンサルタントから依頼されるとなかなか断れない…そうこうしているうちに、広報への理解が深まりすごく協力的になってくれるというケースも。自社の広報PRを軌道に乗せるためにPRコンサルタントの経験や知識、そしてマンパワーを借りるという手もありますよ!

タイトルで「パワーバランス」というワードを使いましたが、部署ごとの上下関係の話をしたかったわけではありません。広報の重要性や影響力をきちんと社内に知ってもらい、他部署の顔色をうかがうことなく、広報としてベストな戦略と戦術で業務に臨めるよう体制を構築することが非常に重要ということです。

そのために、今回お話した事例が皆様のお役にたてば幸いです。

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 広報と営業や開発とのパワーバランスについては、株式会社スタディストの朝倉さんのお話がリアルでとても参考になります。

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参考事例です。
インバウンドの課題を浮き彫りにし、解決策を提示した「PRの力」がよくわかる事例です。

【参考事例】インバウンドの課題を浮き彫りにし、解決策を提示
https://www.cd-j.net/work/hotel/
【ニックネーム】 おみみにアニマル
【これまで担当した業界】 スポーツ、習い事、金融、化粧品、教育、食品、人材など
【趣味】 ものづくり! 何かを作っているときは集中力がMAXに★
【プチ自慢】 眠りたい!と思った瞬間にどこでも寝られること