テレビ番組に取材の提案をした際、「検討します」と言われたまま、その後まったく連絡が来ない——。
PR・広報担当者であれば、誰もが一度は経験したことがあるのではないでしょうか。
実はこの「検討します」という一言の裏には、テレビ番組ならではの制作構造や判断基準が隠れています。そして、多くの場合、取材につながらない原因は“ネタそのもの”ではなく、“伝え方”や“企画の組み立て方”にあります。
本記事では、番組担当者が「検討します」と言う本当の理由を紐解きながら、取材される広報が実践している「番組目線の発想法」を解説します。
この記事の目次
番組担当者が「検討します」と言う本当の理由
ディレクターやプロデューサーのもとには、毎日ひっきりなしに情報が流れ込んできます。企業からのプレスリリース、PR・広報担当者からの取材提案、イベント告知、官公庁や自治体の発表まで、その量は想像以上です。
この状況下で、すべての提案に対して丁寧に可否を伝えることは現実的に不可能です。
そこで使われるのが、「検討します」という言葉です。この言葉は、前向きな可能性を残す表現であると同時に、「今この場では判断できない」という制作側の事情を内包した、いわば業務上のクッション言葉でもあります。
「内容は悪くないけれど、いま扱うテーマではない」
「企画として成立させるには、もう一歩何かが足りない」
「映像にしたときの完成形がまだ見えない」
こうした状態のとき、即座に断る理由もなく、かといって前向きに進める確信も持てない。その結果として、「検討します」という言葉が選ばれるのです。
ここで重要なのは、テレビ番組が“情報の価値”よりも“企画としての完成度”を優先するメディアだという点です。
どれだけ社会的意義があり、企業として誇るべき取り組みであっても、番組の枠に収まらなければ放送できません。放送時間、特集テーマ、VTRの尺、出演者のバランス。あらゆる制約の中で、「この情報は今、使えるのか」が判断されます。
その構造を知らずに提案してしまうと、広報側の熱量と番組側の判断軸は、どうしても噛み合わなくなってしまうのです。
「伝わらない企画書」に共通する3つのミス
テレビ取材の提案が「検討します」で終わってしまう最大の原因は、プロモート資料や企画書の中に“番組目線”が欠けていることです。
現場のディレクターは、資料を一読して「放送できるかどうか」を直感的に判断します。
ところが、多くの資料は“会社として伝えたいこと”を中心に作られており、テレビが求める要素とズレてしまっているのです。
タイトル・切り口が“広報目線”のまま
たとえば「○○社、新サービスを開始」「地域活性化を支援」など、社内広報的な表現は伝わりやすいようで、実は番組側には響きません。
テレビは「視聴者にどんな発見や感情を与えるか」を基準に構成するため、タイトルの第一印象で“ニュースではなく広告っぽい”と感じられると、それだけで不採用になります。
絵になる要素(登場人物・現場・数字)が不明瞭
番組制作では、“何をどう撮るか”が最も重要です。
登場人物、現場の動き、具体的な数字――これらが資料に書かれていないと、ディレクターは「絵が浮かばない」と判断してしまいます。
取材の可否は、実は“内容の魅力”ではなく“映像化の容易さ”で決まるケースも多いのです。
「視聴者が知りたい理由」が語られていない
企業のPR視点ではなく、「なぜ今、世の中の人に伝える価値があるのか」を語ることが重要です。同じ商品でも、「地元の職人が廃材を再利用して作った」「高齢者の声から生まれた」といった社会的な背景があれば、ただの商品紹介ではなくストーリー性を持たせることができます。
広報資料の中でこの「視聴者目線の必然性」を明確にしておくことが、テレビ取材への第一歩になります。
取材される広報がやっている「番組目線の発想法」
では、実際にテレビ取材を獲得しているPR・広報担当者は、日々どのようなことを考え、どのように行動しているのでしょうか。
共通しているのはただ一つ。発想の起点が常に「自社」ではなく「番組」にあるという点です。
①自社ネタを“社会課題”や“季節性”に接続する
テレビ番組において重要な要素の一つが、「今」感です。
どれだけ内容が優れていても、「今である理由」が見えなければ、番組の優先順位は上がりません。逆に言えば、同じテーマであっても、社会的な文脈や季節性と結びつけるだけで、扱われ方は大きく変わります。
たとえば、環境対応の技術やサービスは、単体で紹介すると専門的で分かりにくくなりがちです。しかしそれを「SDGs特集」「物価高・省エネ対策」といった社会的テーマに接続すれば、一気にニュース性が生まれます。地域イベントであれば、「年末商戦」「夏休み需要」「インバウンド回復」といった時期性を絡めることで、番組側は企画として扱いやすくなります。
取材される広報は、自社ネタをそのまま提示しません。
「この話題は、今の社会のどんな空気とつながるか」「視聴者の生活とどこで接点を持つか」を考え、番組向けに“翻訳”します。この翻訳作業こそが、広報の重要な役割です。
②番組別に“ネタの引っかかりポイント”を分析する
一口にテレビ番組と言っても、その性格や判断基準は番組ごとに大きく異なります。
情報番組、報道番組、ドキュメンタリー、バラエティ。それぞれが求める要素はまったく同じではありません。
情報番組であれば、「新しさ」や「トレンド性」が重視されます。視聴者が思わず誰かに話したくなるような分かりやすい切り口が必要です。一方、報道番組では社会的意義や問題提起の強さが問われ、数字や背景説明の重みが増します。バラエティ番組であれば、多少テーマが軽くても、人のキャラクターや感情の振れ幅が重視される傾向があります。
取材される広報担当者は、こうした番組ごとの傾向を感覚ではなく、経験として把握しています。その上で、「このネタはどの番組なら活きるか」「どの要素を前面に出すべきか」を整理してから提案します。
同じ資料をすべての番組に一斉送信することはありません。番組ごとに“引っかかりポイント”を微調整することで、提案の通過率を高めているのです。
③番組側の「物語フォーマット」に合わせて話を構成
テレビ番組の多くは、実は非常に分かりやすい物語構造を持っています。
代表的なのが、「課題があり、それに挑戦する人がいて、何らかの変化や結果が生まれる」というフォーマットです。
取材を獲得できる広報は、提案段階からこの流れを意識しています。
誰がどんな課題を抱えているのか。
なぜその課題に取り組むことになったのか。
その結果、何が変わったのか。
こうした要素を整理し、登場人物・転機・結果を明確にすることで、ディレクターは「編集後の完成形」を頭の中で描くことができます。
つまり、企画書を単なる説明資料ではなく、“番組の台本の原型”として提示しているのです。
④担当ディレクターとの信頼関係を築く方法
最後に、担当ディレクターとの信頼関係です。
取材される広報ほど、日常的なコミュニケーションを大切にしています。
新しいネタが出るたびに、「すぐ使えるかどうかは別として」軽く共有する。放送が実現した際には、露出の結果だけでなく、制作への感謝や視聴者の反応を丁寧に伝える。
こうした積み重ねが、「あの人の情報なら一度見てみよう」という信頼につながります。
重要なのは、電話一本で結果を出そうとしないことです。
即効性のある売り込みではなく、長期的な関係性を前提としたコミュニケーションに切り替えることで、「検討します」という言葉の意味も変わってきます。それは単なる社交辞令ではなく、次につながる“前向きな保留”になるのです。
取材獲得の近道は、強く押すことではありません。
番組の一員のような視点で考え、信頼を積み重ねていくことこそが、結果として最も確実な方法なのです。
まとめ
いかがだったでしょうか?
取材につながらない原因は、ネタの価値そのものではなく、番組の制作構造や判断基準を踏まえないまま提案してしまっていることが原因かもしれません。
テレビは「今、番組として成立するか」「映像として構成できるか」を重視するメディアです。
その前提を理解せず、広報目線のタイトルや説明で提案してしまえば、どれほど良い取り組みであっても「検討止まり」になってしまいます。
重要なのは、番組の一員のような視点で考え、信頼を積み重ね、「使いやすい企画」として情報を届けることです。
そうした姿勢に切り替えたとき、「検討します」という言葉は、単なる社交辞令ではなく、次につながる前向きなものへと変わっていきます。
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・番組ジャンル別のネタ設計と物語フォーマット
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【ニックネーム】 ナイトウォーカー
【これまで担当した業界】 食品・飲料・医療・美容・自治体関連・出版社
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2、ほったらかし温泉(山梨) 眼下に甲府盆地が広がり富士山も見えます
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