一つの動画が、億単位の売上を生み出す!? 広報・PR担当者の必須スキル「YouTuberリレーションズ」

広報・PR担当者として中核となる重要なスキルの一つが、言うまでもなくメディアとの良好な関係を維持・構築する「メディアリレーションズ」です。それに加え、最近ではSNS・オウンドメディア運用やインフルエンサー活用など、関係構築の対象は広範囲に広がってきています。

そうした中、最近、インフルエンサー活用で重要性が高まってきているのが、「YouTuberリレーションズ」と言えます。これは文字通り、YouTuberとの良好な関係を維持・構築していくことです。年々、YouTubeの利用者は増加しており、子どもだけでなく若者から中高年まで幅広く見られるようになってきました。本記事では今後、必須スキルとなり得るYouTuberリレーションズの取り組み方について解説していきます。

メディアで話題になるような商品・サービスのコラボはYouTuberにとっても有益


YouTuberにとって重要な収益源は、Googleからの広告収入に加え、企業からお金をもらって動画をつくるいわゆる「企業案件」です。企業側からすると、YouTuberとはお金を払わないと仕事ができないと思いがちですが、必ずしも全員がそうではありません。YouTuberはメディアと同様、日々面白い・興味深い動画の企画を一生懸命に考えて発信しています。

そこで、広報・PR担当者として考えるべきことは、自社の商品・サービスなどを提供することで、YouTuberの動画に何か貢献できることがないかということです。
たとえば、時短につながる画期的な家電製品(炊飯器など)や話題性のある便利屋・何でも屋、誰と通話がつながるかわからないアプリなどの面白サービス、短期間で英語が話せるようになる英会話スクール。あるいは、非日常体験が味わえる豪華な宿泊施設や、多くの人が知らない最新の美容施術体験など。普段、YouTubeを見ている方であればこうした動画を見たことはあるはずです。

つまり、メディアで話題になるような商品・サービスのコラボはYouTuberにとっても有益で、動画の再生数が稼げる可能性があります。そう感じてもらえた場合、企業案件ではなく通常の動画として無料で取り上げてもらえることがあるのです。実際、当社クライアントでは動画で取り上げてもらったことによって、顧客数や売上が大幅に増えたケースなどがすでに多数出ています。

どういう面白い動画づくりに貢献できるかを考えることが重要


YouTuberにコンタクトするうえで重要なことは、単に自社の商品・サービスを動画内で宣伝してほしいということではなく、どういう面白い動画をつくれるかという貢献の視点です。
メディアに求められるスタンスはYouTuberに対しても全く同じと言えます。

日頃からYouTubeを見て、自社商品・サービスと相性の良いと思われるYouTuberをリストアップしておきましょう。そのチャンネル登録者数が仮に1万人~数万人規模であったとしても、動画は伝えられる情報量が文字と比べても圧倒的に多いので、紹介されることで思いがけずヒットにつながる可能性があります。

なお一般的には、大手YouTuber事務所に所属しているクリエーターよりはフリーで活動されている方のほうがこうした提案に興味・関心を示していただけることが多いです。

人気YouTuberとの商品コラボで1週間の売上が6億円


今年に入って、企業が人気YouTuberとのコラボ商品をプロデュースし、動画だけで爆発的に商品が売れたという事例も出てきています。

チャンネル登録者約390万人の人気YouTuberヒカルさんと、衣類と靴のネット通販を行う上場企業ロコンドがコラボしてつくったシューズが発売開始3日間で売上2億円を突破、発売1週間で売上6億円に到達したことが発表されました。しかも驚くべきことに、告知はヒカルさんのYouTube動画で数回行われただけです。

ここまで大きなヒットにつながった背景には、商品の品質やデザインだけでなく、多くの人たちを惹きつける魅力的なストーリーがあったからです。ヒカルさんはコラボシューズが一定以上売れたら、お笑いコンビ「雨上がり決死隊」の宮迫博之さんとヒカルさんが共演のテレビCMを流してほしいとロコンド社長にあらかじめ直談判したことを動画内で紹介していました。

これが実現されると、ヒカルさんは初のテレビCM出演を実現することに加え、地上波への復帰が難しいと思われていた宮迫さんがテレビに復帰することになるのです。こうした展開はテレビ番組では考えられず、YouTubeだからこそできるユニークな企画でした。そして、このストーリーを実現したいと多くのヒカルファンが共感したことにより、実際に爆発的なヒットにつながったのです。今回のコラボにより、商品が売れただけでなく、ロコンドというブランドを初めて知った人も多かったことでしょう。

企業案件では、YouTuberの最も再生されている動画テーマが狙い目


最後に、YouTuberとの企業案件のコラボについても効果的な取り組み方を紹介しておきます。
企業案件の費用はチャンネル登録者数は関係なく、平均視聴再生数×10~12円程度が一般的な相場になっています(個人差がありますので、あくまで目安です)。

ここで着目すべき点は、同じYouTuberであっても、当然、再生数の多かった動画もあれば、少なかった動画もあるということです。ですから、少しでも費用対効果を高めるためには、YouTuberの動画の中で再生数が最も多かった動画テーマを調査し、なるべくそのテーマに合わせた動画企画をつくるということです。そうすることで、そのYouTuberの平均視聴回数より多く見られる動画になる可能性が高くなり、費用対効果が上がるということです。自社がやりたい企画と、YouTuberの人気企画の重なるテーマで企画することが重要になってきます。

まとめ

今回の記事、いかがだったでしょうか?
YouTuberとの仕事は宣伝予算を持つ宣伝担当者だけでなく、広報・PR担当者も取り組むべき重要なテーマということがおわかり頂けたのではないかと思います。

この記事を書いた人
玉木剛(たまき・つよし)
PR会社コミュニケーションデザイン代表。
これまで300社以上の中堅・大手・外資企業、100名以上の専門家のPR業務を手掛ける。
書籍プロデュース300冊以上。同志社大学文学部卒業。TOEIC915点。