今回は、「最高品質を最速でつくるモノづくり集団」をコンセプトとしたオールインワン型ITシステム開発スタジオ、アルサーガパートナーズ株式会社の松村恵美さんに、広報・PRパーソンならではのリアルな企業広報のお話を伺った。
(インタビュー:編集部 若林)
この記事の目次
- ものづくりメーカーから、発信のおもしろさと可能性を感じてIT系企業へ
- イベントの事後レポートで思いがけない反響が!文章を強みに広報キャリアを歩むことを決意
- ミッションはDXでの想起と指名~スタートアップの広報として、重要なのは事業と採用にコミットすること
- WEB解析で検証→コンテンツ見直し→改善のサイクルを回す
- Twitterでの採用広報を実現する、8%の高エンゲージメントの秘訣とは
- 「お客様の声」を対談形式での掲載にこだわり、企業としての想いを形に
- 「社員インタビュー」やプレスリリースが商談のきっかけに!?
- 転職直後から成果を出すために必要な3つのコト
- ものづくりに携わる人たちを「広報の力」でバックアップしていきたい
- PRマガジン編集部の「編集後記」
- 渋谷IT界隈で最も地味な広報?
- スタートアップBtoB企業の広報でメディア露出よりも大切なこと
- 今回のPRパーソン紹介
ものづくりメーカーから、発信のおもしろさと可能性を感じてIT系企業へ
松村さん:渋谷のIT界隈一、地味な広報の松村です(笑)。よろしくお願いします!
若林:渋谷一地味だなんて(笑)。今回は、すごくしっかりした事前資料をいただきまして、ありがとうございます。
松村さん:いえいえ、実はPRマガジンさんを拝読しておりましたので、先に必要そうな情報をお送りできればと思いまして。
若林:非常に助かりました! 実は毎回インタビュー前のリサーチに3時間くらいかけていまして、取材させていただきやすくありがたいです。
今回取材させていただこうと思ったのは、私も、PRコンサルタント時代にエスアイヤー(SIer)と呼ばれるような企業のPRを担当していたからなんです。BtoBというだけでなく、事例もなかなか出せないという状況でのPRの難しさは実体験としてもありまして。松村さんの展開される広報PRにとても興味があり取材を依頼させていただきました。
2021年1月に入社されたとのことですが、それまでのご経歴を伺ってもよろしいですか。
松村さん:私は2010年度の新卒なのですが、ちょうどリーマンショックの時期でして、就活にはとても苦労しました。ただ、なんとか大手重工業メーカーに入社できまして、4年間ほど原子力事業でサプライチェーンのお仕事をしていました。その後、また別の大手重工業メーカーに転職し、主に海上自衛隊の船を作るプロジェクトに参画して、こちらの会社でも調達部調達担当として約3年間働きました。30代にさしかかり、IT寄りの仕事をしたいという想いから、Web系のベンチャー企業で働きながらライター業もするという働き方を2年間ほどし、今年の1月にアルサーガパートナーズ株式会社に広報担当として入社しました。室長になったのは、今年3月からです。
若林:メーカーからベンチャーに転職されて、広報やマーケティングをはじめて担当されたということですよね。
松村さん:そうです。ただ、もともと重工業メーカーにいた頃から、プライベートでブログを書いて発信するのが好きで、業務上文章を褒められることも多かったので、そのスキルは生かせるのではないかと思っていました。
イベントの事後レポートで思いがけない反響が!文章を強みに広報キャリアを歩むことを決意
若林:前職では、広報として書いたイベントの事後レポートがきっかけで、地方自治体や教育機関からの新規問い合わせ獲得につながったこともあったそうですね。
松村さん:はい、転職系のキャリアメディアを運営していた際、「コロナにより、求職者と企業を繋ぐ場がすごく減ってるよね」という話になったんです。そこで、オンラインプラットフォームを使った転職フェアをやろうということになりまして。法人企業に参加していただくためにWEB広告やTwitterでの告知、プレスリリースでの情報発信を行ったのですが、あまりターゲットにささった感じがしなく、結局みんなでインサイドセールスをして、なんとか開催にこぎつけました。もう少しできることはないかと考え、イベント終了後に、開催レポートブログを3,000文字くらいで、すごく丁寧に書いところ、それを見たという企業さまや、地方公共団体からお問い合わせをいただけたんです。小さなベンチャー企業でも、しっかり記事を書けば見てもらえるし、お問い合わせに繋がるということを発見できました。ここでは、マーケティングと広報を担当していたのですが、この経験から、私は広報の方が向いてるかもしれないと思い、広報として転職することを決めました。
若林:通常、そういったイベントの事後レポートとか事後リリースって、掲載もあまりされないですよね。でも、そこまで反響があったのは、なぜなのでしょう。
松村さん:良かったことも悪かったことも書いたということだと思います。事後のリリースは、割と「こんなことをやりました!成功しました!こんなに賑わいました!」といった良かった結果だけを書くことが多いと思います。ただその際は、社長ともよく話しをしまして、開催に至るまでの苦労や、開催中にどういった改善を行ったか、ルールの周知徹底などについてのディテールをすごく細かく書いたんです。そうすると、読んだ方が同じように自社でイベントを開催したいと思った時に、つまずくポイントがわかりますよね。お問い合わせには繋がらなくても、コロナ禍で求職者と企業の出逢いの場を作るというのがイベント開催のミッションでしたので、真似していただけたら、もっと状況が良くなるんじゃないかと社長と話してました。
若林:なるほど! 開催中のディテールまで公開し、再現性のある形で発信したことで、非常に多くの方に見られて、お問い合わせも入り、広報の可能性を大きく感じて、広報に絞ってキャリアを極めることを決めたのですね。
ミッションはDXでの想起と指名~スタートアップの広報として、重要なのは事業と採用にコミットすること
若林:今年の1月にアルサーガパートナーズに入社されて、3月から松村さんが室長で、もうお一人が採用広報をメインに担当されているということですが、松村さんは具体的にどういった業務を行われているのでしょうか。
松村さん:私は広報室長として、会社全体の広報戦略の立案や事業広報、お客様やメディアとのリレーションといったようにプレイングマネージャー的な役割です。弊社ならではの広報としては、WEB解析を積極的に活用していることと、ページを作るためのHTMLコードやCSSなどのデザイン部分に関して、広報も多少知識をもっていることだと思います。
若林:広報のミッションとしては、どういうことを掲げていらっしゃるのでしょうか?
松村さん:会社全体としては、最新のDX(デジタルトランスフォーメーション、ディーエックス)といえばアルサーガパートナーズと想起・指名されるよう認知を獲得することです。
若林:それってすごく難しいことじゃないですか。というのも、最近、IT企業でDXをうたってない会社がないくらいトレンドワードですよね。その中で想起してもらう、指名してもらうというのは、すごくハードルの高いミッションだなと。でも、BtoBかつスタートアップの企業広報という意味では、メディアに露出するだけではダメということですよね。
松村さん:そうです。弊社はまだベンチャー企業ですので、事業や採用にコミットすることが大切になってきます。そのためには、メディアに露出するだけではダメで、まずは、私たちのホームページから、しっかりミッションや実績を発信していくことが大切だと思っております。
WEB解析で検証→コンテンツ見直し→改善のサイクルを回す
若林:ミッションを達成するために、具体的にどういった取り組みをされているのでしょうか。
松村さん:主に3つあります。まず、採用広報面では、私たちが採用したい層に記事やコンテンツが届いているかを確認し、次のコンテンツづくりに活かすというPDCAサイクルを回しております。
コンテンツは、社員インタビューや会社の制度紹介の他、エンジニア・デザイナーと協力し「DX技術用語辞典」という企画も始めています。
https://www.arsaga.jp/knowledge/dx-technical-glossary/
若林:用語辞典も採用目的なんですね。SEO対策寄りのコンテンツなのかなと思いました。
松村さん:SEOもありますが、採用とお客様に見てもらうことを意識しています。ベンチャーなので、両方達成する座組はすごく考えます。
二つ目は、WEBのデータ解析です。自社のホームページに関しては、Googleアナリティクスのデータ解析を広報室主導で行っております。これまでは新規ユーザー数をKPIにしていましたが、今後はより精度を高く見ていくべく、たとえば、私たちのお客様になり得る方の地域や閲覧数などもKPIに設定していこうと考えております。
若林:地域まで見ているんですか! それはなぜですか?
松村さん:私たちのミッションの話に戻りますが、日本のDXを変えていくには、まず大手企業や地方自治体に見てもらう必要があります。その検証には、地域を見ることがすごく重要です。たとえば、東京・千代田区からのアクセス数が多ければ、オフィスや官公庁の多いエリアから見てもらえてるなと、仮説が立てられますよね。もちろん完璧な仮説ではありませんが、そういった仮説を持って情報発信していければと思っております。
若林:情報を見に来てくれている地域も意識しながら、次の施策を考えていくということですね。そのほかWEB解析で重視されてることや、アクションはありますか?
松村さん:二つあります。まず、どのカテゴリーが見られているかは重視しております。現在、弊社のホームページは、ニュースとリクルートにアクセスが集まっている一方で、施策事例やサービスが手薄になっています。今後商談に結び付けていくには、よりサービスを手厚くする必要があり、WEBのコンテンツ強化、改修を進めています。
若林:WEBの改修も、広報がされるんですか?
松村さん:「こういうコンテンツが欲しい」とか、「これを入れましょう」という話は広報から社内のエンジニア・デザイナーに提案しておりますし、逆にエンジニア・デザイナーから「こういうコンテンツがあったら良いのでは?」との提案を受け、実際にコンテンツをつくったこともあります
Twitterでの採用広報を実現する、8%の高エンゲージメントの秘訣とは
松村さん:もう一つは、Twitterです。私が入社し、WEB解析をすると、Twitterからのユーザーさんが社員インタビューをすごく見に来てくれていることがわかりました。そこで、Twitterからもっと社員インタビューを発信したら応募が増えて、採用費も下げられるのではないかという仮説を立てたところ、実際に流入が増え、早速Twitterから2名採用することができました。
インタビューの発信と同時にTwitterからの閲覧数がかなり増えたので、Twitter経由で求職者の方に情報をお届けでき、採用にいい影響があったと思っております。
若林:ちなみにTwitterのフォロワーが500くらいに対し、平均エンゲージメント率が8%以上ってすごくないですか!?
松村さん:そうなんです! 主に部下の子がやってくれてるのですが、ツイートがすごく上手くて、一番多い時はホームページへの流入が600を超えてる時もあったので、本当にすごい才能だなと思います。
「お客様の声」を対談形式での掲載にこだわり、企業としての想いを形に
若林:今、広報ミッションに対して行われているアクションは3つあるとお話されていましたが、コンテンツの強化とWEB解析をもとにした対応、もう一つは何になりますか。
松村さん:お客様の声の強化です。ナショナルクライアントさまは、開発実績を重視される傾向であることがわかったため、お客様の声を増やしていこうと取り組んでおります。
たとえば、塩野義製薬さまとの事業提携を発表した際、「DX現場でサスティナブルってどういうこと?」をテーマに、弊社のディレクターと先方のご担当者さまとの対談を企画しました。こだわりは、お客様の声単体を掲載するのではなく、弊社の社員とお客様のご担当者さまとの対談形式で記事にしたということです。私どもの社名「アルサーガパートナーズ」にもあります通り、パートナーシップの力で日本のIT全体を良くしていきたいという想いがありますので、パートナーシップが伝わることを重視しました。
若林:パートナーシップを組むことで、より良いシステム開発の実現を打ち出していきたいということですね。
松村さん:そうなんです。私どもは若い会社ですので、対談の中には、「社員が元金髪だった」といった話も出てくるのですが、そこも包み隠さず発信することで、より親しみを持っていただけるのではと思っております。
「社員インタビュー」やプレスリリースが商談のきっかけに!?
若林:ちなみに、これまでのお話以外で、お客様の獲得や業界内の評判、採用の加速に直接アプローチできた直近の取り組みはありますか。
松村さん:お見積もりをやりとりしていた企業さまが、実は採用広報目的の社員インタビューを見てくださり、「すごく良い会社だと思いました」と発注くださった事例がありました。ご提案内容が一番大事ではありますが、会社の雰囲気や人柄、システムに向かう情熱などをお伝えすることで、安心感をお持ちいただけたのではないかと思っております。
若林:社員インタビューが数千万円の案件受注の追い風になるって、すごいお話ですよね。最近、DXというワードを各社が打ち出していて、検索すると色んな会社がヒットするという状況下で、発注する側としては、サービスを比較しても正直わからないっていう場合もありますよね。大手企業だったら社名や実績で受注できることもあると思いますが、社員インタビューで「この会社だったら」と思わせるのは、ベンチャーならではの打ち出し方だなと思いました。
松村さん:DXはさまざまな定義がありますが、弊社としては、デジタル技術を活用して新規事業や社会に向けたサービスを作り出し、会社や組織、社会のあり方や、やり方、暮らし方まで変革させてしまう、その企業さまの事業をまるっと変えてしまうくらいの影響力があることだと思っております。そこで、適切なコスト且つサポート力で選んでいただくためにはどうしたらよいかを考えた時に、提案内容プラス、人が良いところに発注したいというお声もいただきますので、とにかく広報では、そういった働き方やITへの情熱を打ち出していこうと、少しずつ対応してきました。
若林:システム開発において、発注側の担当者が必ずしもITやシステムに詳しいというわけではないですよね。そういう意味では、人間力やコミュニケーション力もすごく必要になってきますよね。だからこそ、社員インタビューも効いてるのかなと。
松村さん:そうですね。実際、商談に同席させていただくことがよくあるのですが、そこから多くのお客様がシステム開発会社に対し、コミュニケーションをすごく大切に考えていらっしゃることがわかりました。実績以外での弊社の魅力付けといったところで、広報としてはアシストしていきたいと思っています。
「DX用語集」も、そのひとつで、IT系のメディアと一緒に、よりビジネスサイドの用語集をWEB連載していくという取り組みをしております。DXで、わかりづらかった部分について、私たちが丁寧にメッセージングして知識を提供することで、これまでITに触れてこなかった方々にも知識をお届けできるという趣旨の企画です。
若林:その企画自体は松村さんが持ちかけたんですか?
松村さん:はい、私が主導で持ちかけました。
若林:へえええ。それはどういうお考えで、実現しようと思われたんですか?
松村さん:実は塩野義製薬さまとの事業提携でのやりとりがきっかけだったのですが、IT企業としてエンジニアもいますし、DXについてわかりやすく発信していく責務があるのではないかと思ったのです。
ただ、弊社サイトだけでは、広く情報を発信することができないので、影響力のある出版社さまのWEBメディアで発信させていただくことで、より価値提供もできますし、メディアさんにとってもひとつのコーナとしていい影響があるのではと考えたのがスタートになります。
若林:それはいつ開設されたんですか?
松村さん:2021年6月14日より、企業がDXに取り組む際に必要な用語を解説するWeb連載「DX用語集」を、『DIGITAL X(デジタルクロス)』(株式会社インプレス運営)にて始めています。編集長と弊社のコンサルタントに加えて、中国人のディレクターも参加してくれて、中国語でも解説するという座組を広報主導で考えさせていただきました。
若林:なぜ中国語でも?
松村さん:これは私の原体験に基づいているのですが、ものづくり企業におりました時に、ある企業さんが「ものづくり用語辞典」をくださって、日本語と英語、中国語、タイ語、ベトナム語で各国の用語が載っており「すごい!」と思ったんですね。実際、海外の支社とやりとりする時に、単語がわかっているだけでも意思の疎通がすごくスムーズになります。
若林:反響が楽しみですね。
松村さん:すぐはないとは思いますけど、仮に弊社に発注やお問い合わせがなくても、読んでくださった方のプロジェクトは確実に良くなるのではないかと思っていますし、まずは、そこを目指していきたいという気持ちがあります。
若林:まさにパブリックリレーションズですね! あと、松村さんのご実績としては、プレスリリース経由で商談獲得につながったこともあるそうですね。
松村さん:プレスリリースを見てくださった方から、商談したいから話を繋いでくださいと広報に連絡をいただいて、実際にアプリ開発の商談に結びついたことがございます。
若林:そのプレスリリースは、業界紙とかに掲載されて、お問い合わせにつながったということですか?
松村さん:そのリリースは、弊社の移転のお知らせだったんです。ですので、それ自体はメディア掲載ゼロだったのですが、どこかから見つけていただけて、広報にお問い合わせをいただいたという経緯です。
若林:御社の場合、一件あたりの受注単価が数百万〜数千万ということで、繋がると非常に大きな貢献になりますよね。
松村さん:そうなんです、何がお仕事に繋がるかわからないなと思いました。
転職直後から成果を出すために必要な3つのコト
若林:入社されてから、まだ半年も経ってないと思いますが、転職して早々に、ここまで広報を開拓したり成果を出したりするってすごく難しいと思うのですが、松村さんご自身が一番意識されていることは何でしょう。
松村さん:まず、弊社が広報活動に協力的な社風というのが一番大きいと思っています。本当にみんな優しくて。特に、デザイン部と財務のマネージャーのプロ意識がすごく高く、プレスリリースの画像1枚つくるのも、とても協力してくれるんです。こういった社内の協力を得て、丁寧なリリースが出せることで、商談につながったり、応募してくださる方が増えたりしたのではないかと思っております。
これがもともとのベースの部分で、私自身が心がけていることは3つあります。
それが、1)大手企業さまに安心していただけるコミュニケーション、2)WEB解析による仮説検証、3)チームワークです。
順番にお話させていただくと、DXのパートナーにベンチャー企業を選定することが、まだまだ新しい取り組みだと思ってまして、どうしたら大手企業さまに安心いただけるのかを考えた時に、コミュニケーションをしっかりとることではないかと思いました。たとえば、アジェンダを書いてから打ち合わせに臨むとか、連絡をこまめにするとか、ミスしたら謝るとか、人として当たり前のことを、レベルを高く持とうと心がけていました。
たとえば、塩野義製薬さまとの事業提携のリリース時、広報として迷いが生じた場合、どんな小さなことでもすぐ相談することを心がけていました。その結果、ディレクターとの対談記事に繋げられたり、さきほどのインプレスさんとの連載のコラボレーションも、そのリリースからのご縁で実現できたりしたので、丁寧なやり取りは大事だと思っています。
2つめのWEB解析の仮説検証は先ほどお話ししたので割愛し、3つめのチームワークですが、エンパワーメントはすごく考えています。私が入るまではポテンシャル採用の子がひとりだったので、例えば文章の書き方を教えてあげられる方もいない状況でした。私としては、採用広報を頑張って欲しかったので「社員インタビューの企画をブランドにしよう!」「“人をつくるアルサーガ”をひとつの文化にしよう!」と二人で話し合って決めました。自分でつくったブランドには、思い入れもひとしおだと思いますし、現在もすごく一生懸命取り組んでくれています。
とはいえ、頑張ろうという気持ちだけではダメなので、目標とする品質と時間、発信形式の定義に向かってやっていこうと話しました。これは、ものづくり企業で染み込んだ考え方です。あとは、文章に対して、ひとつ良いところを褒めたら3つフィードバックすると決めてまして、「ここはすごくいいけど、ここはもっと頑張ろう」と、丁寧にフォードバックしたことで、メンバーからも信頼してもらえたのではと思っています。
若林:ポテンシャル採用は、未経験という意味づけでいいんですか?
松村さん:はい、未経験というのがひとつと、自分で何かをしたことはあるけど業務としては未経験、だけど情熱がすごく高いというふたつがあります。どちらかというと後者を重視してますね。
ものづくりに携わる人たちを「広報の力」でバックアップしていきたい
若林:広報室としての今後の目標をお聞かせいただけますか。
松村さん:今後の目標としましては、弊社はもちろん上場を目指してますので、そこに向けて引き続き、広報体勢の強化をはかっていきたいというのはございます。もうひとつ、私個人の人生レベルの話ですと、ものづくりをする人とずっと一緒に働ける広報でありたいです。ものづくりをしている方々が大好きなので、情熱が高くてちょっと不器用で、でも優しいエンジニアの方たちが、会社にいて幸せだなって思ってもらえるような企画を実施して、頼ってもらえるようになりたいと思っております。
若林:今までずっと、ものづくりの軸はぶらさずにキャリアを歩まれているんですもんね。ちなみに、プライベートはどんな感じでお過ごしなんですか?
松村さん:プライベートは極力、頭を使わないようにしてます。とはいえ、勉強しないといけないので、広報について考えてる時間がすごく長いです。広報の本や広報会議などで情報収集をしているのですが、それだけだと、広報が好きすぎて頭がおかしくなりますので、お料理やお菓子をつくるなど、ものづくりっぽいことをしています。
若林:本当に広報がお好きなんですね…! メディアリレーションも大好きなんですよね。
松村さん:そうなんです!本当に大好きで、ずっとそればかりやりたい気持ちもあるのですが、会社の成長のためにやるべきことをしっかりやっていきたいと思っています。
PRマガジン編集部の「編集後記」
渋谷IT界隈で最も地味な広報?
私は、毎回取材にあたり、トータル3時間くらいは、取材対象者の過去記事やSNS、HPやメディア露出状況などを徹底的にリサーチしている。それは礼儀でもあるが、まだ世の中に出ていない話を聞きたいからだ。リサーチした上で、仮説を立てて、根ほり葉ほり聞きたいのだ。でも、松村さん事前にPRマガジンの記事を読み込み、必要な情報を詳細に送ってくれた。おかげで、普段の半分くらいの時間でばっちり取材準備ができた。松村さんは自分のことを「渋谷IT界隈で最も地味な広報」というがそもそも広報の仕事は地味でコツコツした作業の積み重ね。それが、大きな成果につながるのだ。
「渋谷IT界隈で最も地味な広報」上等じゃないか!
スタートアップBtoB企業の広報でメディア露出よりも大切なこと
BtoB広報といっても、事例が出せる企業と出せない企業では、戦術も変わってくる。アルサーガパートナーズのようなシステムの受託開発会社は、まず事例を出しての事業PRは難しい。そういった環境下で、松村さんが入社半年未満でも、顧客獲得や採用面で大きく貢献できた背景には 「Web解析」と「社内でのコミュニケ―ション」があると言えるだろう。
正直、Web解析までして、広報の取り組みを検討しているというのには驚いた。これはIT企業ならではの着眼点なのかもしれないが、是非多くの企業広報にGoogle Analyticsを使いこなし、メディア露出以外のコミュニケーション戦略も強化してほしいと感じた。社内を巻き込み、PDCAを回す仕組みが構築できれば、どんな会社でも広報としてパフォーマンスを発揮できるのではないか!?
そう思わせてくれる取材だった。