みなさんは、スキマバイトアプリの「Timee(タイミー)」を知っているだろうか。
もしかしたら、橋本環奈さんのCMで見た事ある方も多いかもしれない。
タイミーはこの1年で新聞やテレビでの露出が急速に増えていたため、どんなひとが広報をしているのか、PRマガジン編集部は非常に興味があった。
「きっとガツガツトークする系の広報の方かな」
そう勝手に想像しつつ、実際にそのひとにお会いすると、取材場所のカフェ店内のBGMが大きく聞こえるくらいのソフトボイスの方で、想像とは真逆の人物だった──。
今回は、面接応募なしで直感的な操作で利用できるワークシェアリングサービス「Timee(タイミー)」を運営している、株式会社タイミーの釡谷実希さんに、広報・PRパーソンならではのリアルな企業広報のお話を伺った。
(インタビュー:編集部 若林)
この記事の目次
- 上場直前期の教育会社の営業から、PRの世界へ
- 「タイミーって何?」から、1年でテレビCMを打つ企業に
- 20億の資金調達、その前後の動きが広報の力の見せどころ!
- ネガティブ報道のイメージをひっくり返す広報戦略とは
- 広報として注力したい「リスク管理」と「メディアとのコミュニケーション」
- 今後の広報としての目標「カンブリア宮殿」
- Twitterで「大学生社長の会社」というイメージを覆し、「組織としての強さ」をアピール
- メディアとの関係性継続の秘訣は、他社(他者)の情報もたくさんストックして、話題を提供できる人になること
- プライベートは、読書で広報力をブラッシュアップ!
- PRマガジン編集部の「編集後記」
- 事業の拡大に合わせて、広報の在り方をどう変えていくか
- 成功も失敗も先駆者に学ぶことはたくさんある
- 今回のPRパーソン紹介
- 広報・PRパーソンが仕事や息抜きで使うお気に入りのカフェや場所をご紹介
- 「広報パーソンのお気に入り」いい感じの第四回、渋谷、京王井の頭線神泉駅のすぐ近く、FabCafe Tokyo
上場直前期の教育会社の営業から、PRの世界へ
若林:タイミーさんのことは1年前くらいに知っていましたが、実は、こんなあっという間に広まると思ってなかったんですよ(スミマセン)。最近、橋本環奈ちゃんのCMとかを観て、「こんなんなってるんだ!」と驚きました。お店と利用者が相互評価できたり、ルールがしっかり決まっているから、こんなに広がっていったんですかね。
釡谷さん:最近は事業自体が伸びているのが一番大きいですね。
初期のPRは、代表の小川が学生起業家であることや、色々なビジコンや大会に出ていて、外との繋がりが多く、起業家界隈での認知がそれなりにあったことがきっかけになりました。
若林:釡谷さんは大阪出身で、大学卒業したあとに、すららネットへ入社し、そのあと、PR会社のインテグレートに行かれてますが、タイミーさんに入社したのはいつだったんですか。
釡谷さん:業務委託は2018年12月から始めていて、入社したのは19年3月からです。
若林:2018年の12月というと、アプリが本格的にリリースして半年くらい経ったタイミングですよね。御社の過去の掲載を振り返ってみたときに、1年前くらいからどんどん露出が増えているのがわかって。釡谷さん、もしやこのタイミングで入社した!?と思ってたんですけど。
釡谷さん:入社したのは多分そのくらいの頃です。タイミー自体は、業務委託を受ける少し前から接点があって、そこからちょっとだけお手伝いを始めてはいました。きっかけは結構特殊で、私の友達がタイミーに出資してるベンチャーキャピタルの担当者だったんです。一社目にいたとき、上場直前期で毎日本当にすごく忙しくしていたんですね。
そんな時代のことも友人は知っていたので、「転職して、すごい暇になったんじゃないの?」と言われて。(笑)そんなときにタイミーを紹介してもらいました。
若林:そうだったんですね。釡谷さんが入られてから、WEBメディアやテレビ、雑誌など、100以上のメディアへの掲載を実現されているとか。あと、釡谷さんの広報仲間の方が書かれた記事に「記者さんやスタートアップとの繋がりがすさまじい」ってあって、「話を聞くしかなーい!」と思ったんです。インテグレートさんって戦略系のPR会社さんで、がつがつメディアリレーションしてるイメージはあんまりなかったんですけど、そこはどうですか?
釡谷さん:当時のインテグレートは、戦略コンサルを行う部署とメディアプロモーションを行う部署が違ったんですね。私の配属は後者でした。
若林:前職は営業だったから、何も知らずにプロモーターになったわけじゃないですか。どうやって独自のやり方を身に着けていったんですか?
釡谷さん:そこは結構インテグレートで教えてもらいました。新卒用の研修とかがちゃんとあり、基本的にはそこで学んだことが多いです。
「タイミーって何?」から、1年でテレビCMを打つ企業に
若林:釡谷さんがタイミーに関わり始めた2018年の12月頃と今を比べると、会社の状況って全然違うじゃないですか。変な話、入社された頃って、メディアに電話をしても「タイミーって何?」という感じだったんじゃないのかなって。だからこそ、是非、『広報の変遷』を伺いたいと思ったんです。
釡谷さん:まさに仰ったとおりで、最初は、メディアに電話をかけても全然とりあってもらえないんですよ。PR会社ですと、たくさん案件を抱えているので、大手企業の名前や、担当している案件の中で時流に合わせたものをフックにすればアポイントは比較的取りやすかったです。でも、一企業で、しかも名前が全然知れてない企業だと、アポ取るのも苦労しましたね。ずっと電話をかけ続けている時期もありました。
最初、テレビからは、「アプリだから絵にならない」とすごく言われまして、じゃあ、小川が大学生起業家ということで、”人”を切り口にするのがいいかなと、人にフォーカスする番組にアプローチしたりしました。ですが、出たあとの事業へのインパクトを考えた時に、このタイミングでは自社のサービスにフォーカスしていかなければと思い、途中で切り口を変えました。
若林:なるほど、いろいろ試行錯誤されたわけですね。アプリのようなストレートなニュースよりも、活用した企業の成功事例みたいなPRに切り替えたら、テレビとかに出るように?
釡谷さん:そうですね、きっかけとしてはおそらく日経さんに取り上げていただいたのが結構大きくて、それを見てテレビなど他のメディアの方から問い合わせをいただきました。
若林:日経系には最近もよく出られてましたもんね。2019年だとNHKから始まって、「おはよう日本」や「ZIP」に出て、つい最近は「がっちりマンデー」にも出られていましたね!
釡谷さん:すごい! めちゃチェックしていただいて嬉しいです。
20億の資金調達、その前後の動きが広報の力の見せどころ!
若林:とても要所要所を押さえてメディア露出もステップアップされてて、どんな戦略でPRを展開されているのかなと、すごく興味深かったんですよね。2019年11月にCMが始まるちょっと前ですかね、20億の資金調達をされたタイミングがありますよね。あのタイミングが話題的にピークにいった感じですか?
釡谷さん:仰る通りですね。どこの企業さんも…大型だとなおさらと思いますが、資金調達系のリリースを打ったあとって、注目が集まるタイミングですよね。私が入社する前にも、3億円の資金調達リリースを出していましたので、その時の反響を分析して、20億のリリースの反響がどのくらいあるのか、なんとなく予想を立ててはいました。なので、発表のタイミングでどういう発信をしていくか、という視点は意識しました。
若林:そういう意味でいうと、御社は今後も大きいニュースが出てくるんだろうなという期待が持てますね。タイミーさん自体が、社会問題を解決するような考え方からサービスを打ち出しているので、PRとしてもそこに紐付けてやっていくと、メディアも興味を持ってくれやすいのかなと思うんですけど、その辺って具体的にはどうですか。
釡谷さん:そうですね、単純にサービスだけよりも、社会問題だったり、世の中がこの時期にこういうネタを絶対やるだろうというところと、いかに結びつけられるかは結構重要だと思います。
ネガティブ報道のイメージをひっくり返す広報戦略とは
若林:最近で、一番反響のあった広報の取り組みは何でしょうか?釡谷さん:一番は、「がっちりマンデー」で、社内的な反響も大きかったです。
若林:「がっちりマンデー」のような番組は、見え方とか、広報的にはちょっと工夫したいところもあるじゃないですか。何か社内で工夫されたことなどありましたか?
釡谷さん:企業さんによってタイミーの使い方や使っている目的も違ったりするので、どういう企業さんに出演をお願いして何を打ち出すかは、結構、社内で相談しました。
若林:そうなんですね。今日、お聞きしようか、実は迷ったんですけれども、少し前に、ネガティブな捉えられ方で報道された某経済番組があったと思うんですが、その時はどうでしたか?
釡谷さん:絶対聞かれると思いました(笑)。あれは…そうですね、イメージ的にネガティブはネガティブだったのですが、そもそもあの時点では、まだそこまでタイミーの認知がない時でした。特に広報界隈の方では、「あの番組がきっかけで知ったよ」というのがすごく多かったので、良くも悪くも、認知を広めるという意味ではめちゃくちゃ影響は大きかったですね。
実はそのあとの話がありまして、一週間後にビジネス系の媒体で、小川の記事を出してもらったんですよ。それまでのネガティブが、そこで結構ひっくり返りました。どんな情報が出るのかコントロールできないところはどうしてもあるので、そのあといかに影響力のあるところや、数でたくさんポジティブな情報を出せるかがとても大事なんだなとこの一件で学びました。
若林:ビジネス系の媒体の記事は、社長インタビューとか今後の見通しということであったと思うんですけど、リアルにいい反応があったんですか。
釡谷さん:めちゃくちゃ多かったですね。暗いニュースが多い中で、これだけ若手で活躍して頑張ってる人がいるんだって受け取ってもらえ、Twitterとかでは反響大きかったです。
ネガティブな内容が報じられた時に、事実無根であれば気にしなくていいと思うのですが、それが事実であればそこは改善するしかなくて。広報の力で見え方をなんとかするという話ではないので、事業自体をどうしていくかを考えるほかありません。
とはいえ、真っ当に事業を行なっていてもどう切り取るかは、メディアさんや記者さんにもよるので、コントロールできない部分に関してはもう、たくさん味方をつくってポジティブな発信を重ねていくしかないのかなって思いました。
若林:根も葉もないことなら気にしなくてもいいと思うんですけど、仰ってたように、第三者が見てこういう風な見解があるっていうことに、会社としてどう対応していくかという建設的な意見が出るなら、ネガティブな記事も決してネガティブなわけじゃないですよね。
釡谷さん:とはいえ、事前に、記者さんと会話をしてどういうポイントがネガティブ要素なのかを理解し、サービスを改善したり、もし認識に誤りがあれば正しい情報をお伝えしたりできているのが本当は一番いいと思うので、勉強会などで接点を持って、意見を吸い上げてサービスにも反映させるという活動を今後は積極的にやっていきたいと考えています。
広報として注力したい「リスク管理」と「メディアとのコミュニケーション」
若林:たとえば、飲食のデリバリーをする会社さんとかもそうですけど、メジャーになってくると、いい面だけではなくて、少しネガティブな報道とかも出てきたりするじゃないですか。そういった報道などをご覧になって、自社はどう対応していくかというお話など、社内でされているんですか?
釡谷さん:今日もまさに、プラットフォーマーとして新型コロナウイルスをどう考えるかという話を社内でしていました。サービスとして会社として、利用していらっしゃる企業さんやワーカーさんに、安心安全を伝えるにはどうしたらいいかという話は、毎週さまざまな切り口で出ていますね。
若林:御社のように、いろんな方が働くプラットフォームを提供してる会社は、自社の従業員だけ気をつけていればいいっていう問題ではないですよね。その分、危機管理が求められるのかなと思いますが、その辺りは社長と話されているんですか?
釡谷さん:各部署の意見を聞きながら相談しています。毎週、各部署のマネージャーや、その下のリーダーが集まって、経営企画会議をして、そのときに何かあれば話しています。広報の重要度でいっても、今はリスクマネジメントが高いですね。
若林:2022年に上場を視野に最年少社長上場頑張るぞという意気込みを、いろんなところで話されていると思うんですけど、まだあと2年くらいありますよね。広報としてはどのように上場を後押ししていこうとしているんですか?
釡谷さん:ひとつは、このプラットフォーマー界隈は、競合他社さん含めて同じ壁に絶対ぶつかると思うんですよ。なので、日頃から記者さんとの関係性をちゃんと深めて、弊社の企業としてのスタンスを知ってもらうという活動を今年は強めていこうと考えています。
ですので、今後は露出をとるよりは、弊社のことをもっと知ってもらうために、メディアの方とコミュニケーションをとる場を多く設けることに時間をかけていきたいと考えています。たとえば、記者クラブでのレクチャーや、自社内で顧問弁護士から、弊社の法律面や企業としての考え方などを理解してもらう場を設けていくつもりです。
若林:記事に繋がらなくても、タイミーの考え方を知ってもらうための場を作っていくということすね。ちなみに、小川社長って、メディアとかに、ぐいぐい前に出ていきたいタイプですか? それとも必要があればという感じですかね。
釡谷さん:割と協力的です(笑)。
若林:なんか、いい言葉のチョイスですね。現在22歳ということなので、大学生でもおかしくない年齢ですよね。
釡谷さん:実はまだギリギリ現役で、テストの時だけ学校に行ってます。たまに勉強してるのを見ると、「ほんとに大学生だったんだ」と思いますね(笑)。
若林:そうなんですね!お写真見ると、たしかに若いですよね。リブセンスの社長は25歳で上場ですから、今のペースでいくと最年少での上場も夢物語ではないですね。ちなみに1月くらいから、広報が2名体制になったと聞いたんですけど。
釡谷さん:多い時は、広報にインターン生が4人くらいいました。オウンドメディアを立ち上げの為にライティングをしてくれるメンバーを集めていたんですけれど、途中でオウンドメディアにそこまでリソースを使うのは現実的じゃないってやめちゃったんです。ですので、東京は、私と4月に入社するインターンの2名で、プラス関西の方に1名という体制です。
若林:サービスのエリアが今、関東、関西、九州ですよね。その辺をカバーできるようにしておきたいという感じだったんですか。関西で対応をと言われても、すぐに行けないですもんね。
釡谷さん:そうですね、特にテレビって、取材までの期間が短いじゃないですか。来週、再来週までに撮りたいという要望が入って、当日中にある程度の調整をという話になっても、関西の企業さんやユーザーさんがどういう状況なのか、なかなかキャッチアップしきれませんよね。あとは純粋に、地方は地場のメディアの方と関係性が大事だという話も聞いて、そこをお任せできる方を採用しました。
若林:そういったクライアントやワーカー情報のキャッチアップも広報の業務なんですか?
釡谷さん:聞くようにしてますね。社内でほかのチームのやりとりを見ながら、面白そうな企業さんがいたら、メディア取材が入る前に、直接話を聞きに行かせてもらうようにしています。
タイミーは結構、取材調整の難易度が高くて。企業さんメインの取材でも、ワーカーさんが働きに行くシーンを撮ることも多く、そうなると、企業さん、ワーカーさん、2者の許可が必要になってくるんですね。なので、うまくタイミングを合わせないと取材が成立しなくて。
若林:確かに、今まで私が見た放送は、全部その座組だった気がします。それを2,3日で調整しなきゃいけないわけですよね。また、お店にとっては、御社のサービスを利用していることが、どのようにメディアを通して伝わるかというのが、ちょっと不安な部分もありますよね。
釡谷さん:仰る通りですね、ネガティブな番組が出たあと、お断りされることも多かったので…。
若林:一意見としては、あるかもしれないですよね。でも、そのネガティブな報道の後って、どうでしたか。逆に、そういう報道があったからこそ、「タイミーをこういう風に使ってもらいたい」みたいに、営業の仕方をブラッシュアップできたりとかは?
釡谷さん:そうですね。使い方の部分は、クライアントさんとも毎月打ち合わせをしていまして。使い方が間違っていたねという話があったかというと、意外とそうではなかったんです。ただ、広報として気をつけるようになったのは、一緒に取り上げられる企業さんにとっても、ポジティブになるような取り上げられ方がいいなということです。
例えばスタートアップの導入企業さんなんですけども、パートさんのお子さんが熱を出して、どうしても当日欠勤になった時、「うち、タイミー使ってるから、補えるから休んでいいですよ」みたいな使い方をされてるんですね。従業員を大切にしてる感じがすごく伝わってきました。そういうポジティブな部分にフォーカスをして、働き方改革や、従業員の働き方の自由度を上げるためにタイミーを使っていらっしゃる企業さんを一緒にご紹介できるように頑張っています。
若林:そうですよね。本当はそういうところを伝えていって、協力してくれる会社の見え方も良くし、そこで働きたいなという人が増える…というのが理想的ですもんね。御社はもう、大企業寄りというか、ベンチャー企業ではないような広報の考え方をしていかなきゃならないフェーズに入ってきてるんだなとすごく感じました。
釡谷さん:私もすごく感じています。企業広報ならではの視点だなと思います。
若林:確かにPR会社も、危機管理を専門にしている会社じゃない場合、積極的にメディアに出すのがミッションだったりしますから…。なるほど、そうか! PR会社と事業会社の広報の一番大きな違いはそこになるんですか?
釡谷さん:個人的には、露出後の反響がわかるというのが一番大きいと思っています。PR会社でメディアの露出をとると、出た媒体の大きさなどで評価されますが、それがどれだけ売り上げに繋がったとかって、基本は教えてもらえませんよね。事業会社の広報ですと、どれだけダウンロードが伸びたとか、問い合わせがいつもの何倍あったみたいなところで、従業員のメンバーがとても喜んでくれるのを直接見れるのは楽しいですね。
今後の広報としての目標「カンブリア宮殿」
若林:結構、名だたる媒体に出てらっしゃるから、今後このメディアに出たいというのは、そんなにないですか?釡谷さん:いや、そんなことないです!
みなさん目指してると思いますけど、「カンブリア宮殿」などは、やはり広報の夢ですね。相談したことはあるんですけど、社歴が浅く、山あり谷ありのエピソードがそこまであるわけではないので…。
若林:それこそ、カンブリア宮殿には最年少で上場を達成した頃には露出できるかもしれませんね!
ちなみに、広報としてのKPIや目標とかってあるんですか。
釡谷さん:上場までに、こういうタイミングで、こういう認知をとっていかなきゃみたいなと、ざっくりしたものは引いてますが、数字ではないですね。私が入社した時は、そもそも認知が全然ないので、どんな小さなことや切り口であれ、とりあえずまず認知をとるところからでした。
今、テレビCMを打って、大きいメディアに取り上げられるようになってきて、世の中の流れ的にギグワークみたいな働き方が流行っている一方で、リスクもあるよねという見方はまだまだあると思うんですよね。類似する業界で先行する他社さんの動きはとても参考にさせていただいています。
若林:せっかく先行して、いろいろやってくれてる会社がいるわけですからね。
釡谷さん:そうですね。それを見ながら、企業さんもワーカーさんにとってもポジティブなサービスでありたくて、外の意見を取り入れながら、サービス自体もどんどん良くしていければと思っています。
若林:それが、先ほどおっしゃっていた露出につながらなくてもいいから、知ってもらう機会を増やすという動きに繋がるということでしょうか。それって、メディア向けがメインですか?広報主導のものもあるのでしょうか。
釡谷さん:メディアではなくても株主さんとか関係する方には、ぜひ来ていただければと。法律面のとても細かいところって、実際に記事や番組になった時には多分出ないと思うんですよ。ですけど、その前提の理解があるのと、「あのサービス大丈夫かな」と思いながらでは、切り口が大分変わると思うんですね。そういう意味で、根底にあるものを理解してもらいたいという感じですかね。
若林:聞いててすごいなと思うのは、名の知られないベンチャーだと、そういう会をやっても記者が集まらないじゃないですか。集められるようになってきているというのは、御社のフェーズが変わってきているということですかね。
釡谷さん:まだはじめていないのでなんとも言えませんが、過去記者発表会は2回やってまして、初回はセブン銀行さんと業務提携したタイミング、その次はタイミートラベルのアプリリリースの発表会で、どちらも20名くらいですかね。
若林:セブン銀行のニュースをみた時、広報としてもですが、何より、提携をとりつけてる営業力がすごいなって思いました!言い方は悪いですけど、名の知れてないところから、大手のグループとかが全部使ってくれるようになって…、一足飛びにそこにいく?と。(笑)
釡谷さん:弊社のすごいところって、ちゃんと事業が伸びていて、こういう切り口の事例が欲しいと話すと本当に作ってきてくれるところなんですよね。(笑)いくら広報で企画をこねくりまわしても、実態がないと絶対メディアには出ないので、そこを作ってくれてるのが、本当にすごいなと思います。
Twitterで「大学生社長の会社」というイメージを覆し、「組織としての強さ」をアピール
若林:もうちょっとパーソナルなお話も伺いたく、ご自身のTwitterはどういう位置づけでやっているんですか?釡谷さん:実は経緯があって、タイミーといえば小川がすごく有名で、他にもめちゃくちゃすごいメンバーがいるのにフォーカスされてなくて。強い会社さんって、社長だけではなくマーケッターや広報の人も有名みたいな、組織としての強さがあると思うんですね。学生起業家ということを打ち出しすぎずに、いろいろな強いメンバーがいるということを打ち出していこう、個人の発信力を強めようとメンバーみんなが頑張っています。
若林:それもフェーズですよね。サイバーエージェントの藤田社長とかも、最初は「藤田社長のサイバーエージェント」みたいな感じだったのが、組織としての強さを打ち出していく時に、いろんな人に光を当てたりサービスとかを打ち出していって、藤田社長色を少しずつ弱めていく時期があってみたいな。
ちなみに、Twitterを見て、釡谷さんに相談とか結構来たりしませんか?
釡谷さん:たまにあります。たぶん今の所全部会ってます。近くまで来ていただければ。
若林:全部会ってるんですか!? これ書いちゃって大丈夫ですか??(笑)
釡谷さん:大丈夫です(笑)。そんなに件数が多くなかったので。単純に、私の広報業務やタイミーに興味がある方もいらっしゃったりして、いろいろです。全然違うサービスをされてらっしゃる広報さんだと、どこまでお役に立てるかわかんないですけど、自分だったらその広報どうやるだろうと一緒に考えるのは楽しいですね。
若林:すごいですね、Twitter上で済まさないで、会える時は直に会って。メディアリレーションがお得意と言われているだけあって、行動力もあるんですね、きっと。
釡谷さん:面白いものを知りたい欲は、すごくあるんだと思います。
メディアとの関係性継続の秘訣は、他社(他者)の情報もたくさんストックして、話題を提供できる人になること
若林:釡谷さんの経歴だけ見ると、すららネットで営業してPR会社でも勤務してましたーとここまで来たら、ガツガツ系女子なのかというイメージがあったんですよ。で、タイミーに入られてからもほぼお一人で、結構なメディア露出実績を作っていらっしゃるから、すごい押し押しの感じの広報なのかなと思ったら、違いますよね。(笑)釡谷さん:お話を聞く方が、たぶん、しゃべるより好きですね。記者さんがその時知りたい情報って、聞かなきゃわからないですよね。タイミーだけで持ってるネタは限られていて、一回出ちゃうと、そのあとメディアさんとの関係性ってなかなか続けるのは難しいじゃないですか。
ですけど、「ほかに面白い企業さん知ってますか?」と聞かれて、いろんな広報さんと話した中の情報があれば、そういう提案もできますし、相談に来てくださった広報さんがいいネタを持ってたら、繋げられればと。
若林:そっか、タイミーの看板だけをしょってメディアと会うんじゃなくて、今まで話を聞いた広報さんがハマるなーと思ったら、こういう方いますよーとお繋ぎとかも結構してるんですか?
釡谷さん:ありますね、ありますねー。
若林:そういう意味では、メディアの方も釡谷さんが来ると、いろんな話がきけるかもという期待感があるんですかね。
釡谷さん:そこまでまだ、なれてはいないと思いますけど、なったらいいなと思ってます。
若林:今後、広報として注力しようと思っていることがあったら、教えてください。
釡谷さん:直近でいうと、危機管理などの守りを強くするというところや、上場が近くなってくると、IRも必要になってくると思うので、今までやってなかった範囲をどんどん勉強していって、広く全体像がわかっている広報になりたいなと思います。
プライベートは、読書で広報力をブラッシュアップ!
若林:ありがとうございます。ちなみに、プライベートはどうされてるんですか。釡谷さん:最近は結構本を読んでること多いですね。鞄に、めっちゃ厚い本入ってますよ。
若林:あっ、『危機管理 広報完全マニュアル』ですね。私も持ってます!
釡谷さん:持ち歩くのは向かないですけど、PR会社で教えてもらったような広報の基本的なこととかも書いてあるので、とても良い本だと思います。辞書的に使うのがいいなあと思いますね。
ほか、最近ですと、毎日新聞の校閲の本、『ミスがなくなるすごい文章術』も読みました。
今、インターンの子が導入企業さんの取材記事を書いてくれているんですけど、今まであまり文章書く仕事をしてこなかったので、「添削してください」と言われた時に、直すポイントが上手く伝えられなくて。プロモーション用の資料はもちろん作りますが、特にテレビに持って行くものって写真メインな感じでしたので、課題だなと。
若林:へえー、私も、元記者の方が書いた『編集の教科書』という本を読んで、若い子たちに、どのくらいメディアの方がタイトルに命かけてるかわかるから読んでみたらと勧めています。今日はありがとうございました。たくさんいいお話聞けました。
釡谷さん:人にしゃべるとめちゃくちゃ自分も考えが整理できるから、ありがたいです。
若林:私たちもいろんな広報の女性と会う機会があったんですが、結構広報って、ひとりで頑張っている女性が多くて、他社さんが何してるかすごく知りたいけど、なかなか接点がなかったり、そこまで根掘り葉掘り聞けないとかあったので、そういう方たちに、ちょっとでもお役に立てたらと、このコーナーを立ち上げて、いろんな企業の広報に話を聞きに行ってるんです。
釡谷さん:ちょっとでもお役に立てたらうれしいです!
PRマガジン編集部の「編集後記」
事業の拡大に合わせて、広報の在り方をどう変えていくか
橋本環奈さんのCMで知った人も多いであろうタイミー。実はだいぶ前から知っていたが、こんなにも急速に拡大するとは思っていなかった。
事業自体にも興味はあったが、この1年で新聞やテレビでの露出が急速に増えていたため、どんな人が広報をしているのかにはもっと興味があった。
釡谷さんは「営業」そしてPR会社での「プロモーター」を経てタイミーに入社している。この経歴だけ見て「絶対ガツガツトークする系の広報だ!」と思い込みお会いすると、店内のBGMが大きく聞こえるくらいのソフトボイスで、想像とは真逆の人物だった。
でも確実に釡谷さんがタイミーに参戦した2018年12月からメディア露出が増えている。そのメディアアプローチのテクニックは本編で読んでいただきたいが、今回最も参考にしていただきたいのは、事業(会社)の拡大に合わせて、広報の在り方をどう変えていくかという点だ。
成功も失敗も先駆者に学ぶことはたくさんある
創業初期の無名の時期から、事業も認知も拡大しCMを出稿できるようなフェーズ、そして上場に向けて加速する時期…広報も力を入れるべきポイントが異なってくる。
今回の釡谷さんのお話はタイミーでのご自身の経験を通し、名の知られていない時代から、軌道に乗り始めたとき、その後、壁にぶち当たってから次の戦略に至るまでなど、包み隠さず語ってもらっている。
「だってそこが皆さん聞きたいところですもんね」と、にこやかに笑いながら答えてくれた。
普通であればなかなか聞けない話だと思う。成功も失敗も先駆者に学ぶことはたくさんある。
是非、様々なフェーズにいる広報の皆様に読んでいただきたい。
今回のPRパーソン紹介
■株式会社タイミー
釡谷 実希(かまたに・みき)
■株式会社タイミー (Timee, Inc.) (https://timee.co.jp/)
広報・PRパーソンが仕事や息抜きで使うお気に入りのカフェや場所をご紹介
「広報パーソンのお気に入り」いい感じの第四回、渋谷、京王井の頭線神泉駅のすぐ近く、FabCafe Tokyo
「広報パーソンのお気に入り」は広報・PRパーソンが仕事やプライベート、ちょっとした打合せや息抜きで使うお気に入りのカフェや場所をご紹介するコーナー。今回はすごくおしゃれで渋谷らしいカフェ。タイミー釡谷さんのお気に入りカフェは「FabCafe Tokyo」。
東京都は渋谷、京王井の頭線神泉駅すぐ近くのデジタルものづくりカフェに行ってきた。
ちなみに、われわれ取材陣は3Dプリンタにすごく興味があったのだが、当日、カメラ担当の腰痛が酷くなりデジタル工作は断念した。とはいえ、クリエイティブなスペースに感動しつつ、大好きなジンジャーエールをいただいたおかげか、クリエイティブなセンスがあがった(ような気がする)。
PRマガジンの読者である広報女子も男子も、ぜひ利用してみてほしい。
東京都渋谷区道玄坂 1-22-7 道玄坂ピア1F
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