「車椅子」のパーセプションチェンジに挑む!ポイントは『新ワードの浸透』と『第3者の巻き込み』ー「WHILL」広報・新免那月さん

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今回は、誰でも乗りたいと思えるパーソナルモビリティを開発、好きな時に自由に使えて、楽しくスマートに近距離移動できる新しいプロダクトとサービスを展開する、WHILL株式会社の新免那月さんに、広報・PRパーソンならではのリアルな企業広報のお話を伺った。
(インタビュー:編集長)

英・経済記者から取材をきっかけにWHILL広報へ転身

編集長:新免さんのTwitterを拝見していて、色々とお話をきければとお声がけさせていただきました。2021年の3月に広報に着任されたということですが、これまでのご経歴を伺えますか。

新免さん:まだフォロワー数も少ないTwitterをみてくださっていたのですね、ありがとうございます! これまでのキャリアですが、大学卒業後に、スコットランドの大学院に進学し、そのままロンドンの現地企業で、主に経済ニュース記者として約3年働いていました。

その後、2021年3月に広報としてWHILLに入社しました。実は、前職時代に、WHILLを記事で取り上げたことがありまして、新しくてかっこいいモビリティなのにまだ電動車椅子と認識されていて、それがブロッカーになって社会に浸透していないという課題を感じました。
そのブロッカーが払拭できれば、障害がある方やご高齢の方、歩きづらさを抱えている方を含め、すべての人が気軽に乗れるようになるのではないか、これが普及しないのはもったいないと思ったことがきっかけとなり、広報としてジョインすることになりました。

編集長:広報専任は新免さんだけですか?

新免さん:はい、そうです。

編集長:広報として、主にどんな業務をされているんですか。

新免さん:WHILLというプロダクトやサービスを知ってもらう広報がメインですが、全社のコーポレート広報や、北米やアジアにも拠点があるので、グローバル視点での広報も海外と連携しながら担当しています。また、マーケティングコミュニケーション部に所属しているので、マーケティング企画から関わったり、営業部のメンバーとも一緒になって、自動車ディーラーさんなどの販売代理店さんを巻き込んだPRも実施したりしているので、部署をまたいだ動き方もしています。

WHILLは世界20以上の国と地域で使われている

WHILLは世界20以上の国と地域で使われている

編集長:ちなみに、ホームページで展開されている企業等とのコラボレーションインタビューも担当されているのでしょうか。

新免さん:WHILLにジョインしてからは、たとえば、自動車ディーラーさんのスタッフさんインタビューを通じての記事化や、ユーザーさんへのヒアリングを元に、WHILLを使う前と使用後の変化を軸にまとめたリーフレットの作成などに携わっています。もともと記者職ということもあり、特に人物に焦点を当てた記事を書くのはすごく好きで、「WHILL community」というnoteで掲載する記事などは一部執筆しています。

note「WHILL community」
https://note.com/whillcommunity/

編集長:業務は多岐にわたりますね。

新免さん:メインは、プレスリリースの作成や発表会のディレクション、広報戦略の立案、メディアリレーションの構築…といったことですが、PRの枠を越えて、WHILLが利用しやすい土壌やイメージ作りに邁進している日々です。

全社一丸となって準備したModel F発表会時の様子、2021年10月19日撮影

全社一丸となって準備したModel F発表会時の様子、2021年10月19日撮影

「近距離モビリティ」と言い続ける!が、パーセプションチェンジの第一歩

編集長:広報のミッションを教えてください。

新免さん:パーセプションの変化をいかに作っていくかということです。WHILLは、歩行に関し障害がある方が主に使う「格好いい電動車椅子」というイメージを持たれている方も多いと思いますが、より多くの方に気軽に使ってもらえるような土壌づくりを意識しています。現在は、徐々に使っていただける層が広がり、免許返納後の移動手段として、歩きづらさを抱えている方が次の乗り物としてWHILLをイメージしてくださるようになってきています。

WHILLのユーザーさんは実は歩ける方が多い  WHILL社 2022年3~4月実施 ユーザー対象オンライン調査 170ss

WHILLのユーザーさんは実は歩ける方が多い  WHILL社 2022年3~4月実施 ユーザー対象オンライン調査 170ss

メディア露出という点でも、WHILLの説明において、近距離モビリティや返納後の移動手段という文言での露出が増えてきています。

編集長:それは、御社が意図的に電動車椅子という言葉を使わないで、近距離モビリティと発信しているからですか?それとも世の中的に変わってきてるっていうことでしょうか。

新免さん:弊社発信です。弊社はいつもWHILLのことを近距離モビリティとお伝えしています。電動車椅子に対するイメージはずっと変わってこなかったんですよね。世の中に誕生してから約100年にわたって見た目も機能も変わってこなかった分、固定概念もずっとそこにつきまとっているのではないかと。
電動車椅子は障害がある方や歩けない方が使うものという固定概念ができてしまっていて、杖をついている方や長距離を歩くのが大変な方にも活用いただきたいのに、イメージでシャットダウンされてしまうのが課題だと感じていました。

その固定概念を取り払い、出かけた先でもっと楽しめるようにWHILLに乗って体力を温存する、歩行領域の移動自体をWHILLで快適に楽しむ、ご家族や友人と同じペースで移動する、といったコミュニケーションをすごく大事にしています。そのため、「近距離モビリティ」という言葉を、2〜3年言い続けています。

編集長:とはいえ、メディアで狙い通りのワードが出ていくとは限りませんよね。特に新しいカタカナワードは。

新免さん:おっしゃるように、当初は、モビリティという言葉そのものがそこまで普及していなかったですし、「WHILLって結局、電動車椅子でしょ」という認識で、メディア、特にテレビや新聞というマスメディアは、言語の使い方が厳しい中で、いくら弊社が近距離モビリティと発信してもなかなか採用してもらえませんでした。
ただ、諦めずに言い続けていると、自動車ディーラーさんなどにWHILLを置いていただけるようになり、少しずつ「車の販売店さんに置いているってことは乗り物なのね」と思ってくださる人が増えてきました。車椅子も乗り物ではありますが、免許返納後に乗れる乗り物という認知がどんどん歩ける方の層に広がり、それに比例し“近距離モビリティ”という言葉が地方紙やテレビで「WHILL=近距離モビリティ」と表記いただけるようになりました。
朝日新聞さんの地方版でも“近距離モビリティ”と書いてくださり、大きな変化だと思っています。

ショールームに展示されているWHILLは、スタッフさんと一緒に試乗が可能

ショールームに展示されているWHILLは、スタッフさんと一緒に試乗が可能

編集長:たしかに、新聞で近距離モビリティって書いたら、デスクに「それって読者に伝わるの?」と、跳ね返されそうなイメージがありますよね。

新免さん:そうなんです。実際にそういったケースもあるのですが、徐々にその割合も減ってきた印象があります。言い続ける、発信し続けることが大事だなと思っています。携帯電話が今やスマートフォンと言われるように、新しいカテゴリーを作っていく意識で取り組んでいます。

キーメッセージとターゲットをかえ、PR施策を展開

編集長:パーセプションチェンジのために、「車椅子」ではなく「近距離モビリティ」というワードを浸透させるほかに取り組まれていることはありますか。

新免さん:一つは、利用者のご家族向けのコミュニケーションです。たとえば、免許返納後であれば、利用者層は歩くことのできるシニアやご高齢の方ですが、ご家族も含めたコミュニケーションを意識しています。ご本人はもしかすると「近距離モビリティって?」とピンとこないかもしれませんが、40〜50代の子ども世代や20〜30代の孫世代の方だと、横文字にも慣れていらっしゃると思いますし、カッコいい乗り物としてご本人に勧めていただけるようなコミュニケーションやPRに取り組んでいます。PR単体で動くというよりは、マーケティング全体で施策を行っていくイメージです。

お子様からお父様にWHILLをプレゼントされるケースも増えている

お子様からお父様にWHILLをプレゼントされるケースも増えている

編集長:具体的に自動車ディーラーを巻き込んだコミュニケーションとはどういうものでしょうか。

新免さん:ディーラーさんを巻き込んだ施策は過去3回行ってきました。
一回目は、2021年6月に「新しいクルマに乗り換えよう」というコピーで、免許返納がネガティブではなく、「人生100年時代」において次のライフステージに進むポジティブなものであるという文化を創りたく、ご家族からご本人に運転感謝状を贈るといった取り組みを行いました。

デザイナーやマーケターらと一緒に作成した運転感謝状。メッセージを書き込めたり、写真を入れ込んだりできる

デザイナーやマーケターらと一緒に作成した運転感謝状。メッセージを書き込めたり、写真を入れ込んだりできる

自動車ディーラーさんで車を購入した際、納車があると思うのですが、それをWHILLでもやろうということで、運転感謝状の贈呈のほかに、車の鍵にリボンをつけるように、WHILLのスマートキーにリボンをつけてお渡し、写真撮影をしました。この取り組みには、全国で16社の自動車ディーラーさんが参加してくださいました。

2回目は、2021年9月に実施しました。31社の自動車ディーラーさんが参加してくださり、「クルマって〇〇だ。WHILLだってクルマだ」というキーコピーを掲げ、○○に各社さんの想いを入れていただき、動画を制作しました。北は北海道から南は沖縄県まで、マツダさんやトヨタさん、ダイハツさん、日産さん、三菱自動車さん…と、ブランドや地域の垣根を越えて実施しました。

ここでは「WHILL=クルマ」とあえて表現しています。元自動車メーカーのデザイナーらがWHILLのデザインを手がけていることから、テールランプやアームカバーのカラーバリエーションなど、機体の随所に”車らしさ”が詰まっていることや、WHILLの運転が車に似ていて楽しいと思ってくださっていることなど、さまざまな観点から自動車との親和性が高いのです。自動車の次の移動手段としてより気軽に選んでいただきやすいよう、「WHILLだってクルマだ」と発信しています。

編集長:よくこれだけのディーラーが協力してくれましたね。

新免さん:本当にみなさんの協力あってこそです。ディーラーさん自身も、免許返納後というのは、お客様とのご縁が切れてしまうんですね。お車を最初にご提案してから、一人暮らしの時、家族ができた時などライフステージに合わせていろいろお車を提案していて、長いお付き合いを経て関係を構築していらっしゃいます。車を手放してもその後も乗り続けられるクルマとして、WHILLがひとつの選択肢になればと一緒に連携させていただいています。営業部のメンバーやマーケターなど、部署横断で取り組み、ディーラーさんも巻き込みながら一緒に、社会に対してコミュニケーションを図る取り組みでした。

編集長:この取り組みに絡め、メディアへのアプローチもされていたのですか?

新免さん:実際にエンドユーザーさんがどういうニーズがあるかのアンケートをディーラーさんにお願いしていました。「お客様から返納の相談を受けたことがありますか」といった質問をしたところ、「返納後、生活手段がなくて困るからどうしよう」とか、ご家族からも、「運転は心配だけれど、車がなくなったら、家からでなくなりそう」「免許を返してから、出不精になってしまい、少しでも外出をしてほしい」という声があがり、こういった話はメディアさんもなかなか把握できていない情報だったとおっしゃっていただきました。
また、自動車ディーラーさんは全国にいらっしゃいますので、その地域その地域のメディアさんに情報を共有させていただいています。地域の方が抱える移動への課題感などをお伝えすると同時に、免許返納を勧めたいわけではなくて、あくまでその後の選択肢にWHILLという移動手段があるよ、というメッセージも大事にしながら、アプローチを進めました。

岩手の自動車ディーラーさんでのPRイベントの様子

岩手の自動車ディーラーさんでのPRイベントの様子

編集長:3回目はどういった施策を展開されたのでしょうか。

新免さん:2022年3月頃から始めた施策のキーコピーは「家族に贈る新しいクルマ」でした。1回目のメインターゲットがご本人で、2回目がディーラーさん巻き込み型、3回目が主にご家族向けの施策です。
これは、ご家族からWHILLを贈る文化を創っていくことで、免許返納や、高齢後の移動手段、その後の暮らしを家族みんなで一緒に考えようというきっかけづくりがしたくてはじめました。
高齢者の移動や暮らしについて、ご本人とご家族が一緒に考え、ライフステージの変化があった時にWHILLを知っていただく、かつ、それを相談出来る場が自動車ディーラーさんにあることを伝えていく施策を展開しました。
具体的には、WHILLを取り扱っていただいている自動車ディーラーさんの店舗で、家族向けのご相談会「春の全国試乗会祭り」と銘打ったWHILLの試乗会を行いました。運転技能検査が義務化されるタイミングで社会気運も高まる中、本施策の参加ディーラーさんは70社に大幅に増え、非常に嬉しかったです。

春の全国試乗会祭り

その後、22年5月13日の法改正前日に、関根勉さんと麻里さん親子のイベントを実施しました。

編集長:関根親子とのイベントは、どのような目的で行ったのでしょうか。

新免さん:家族で免許返納やその後のライフスタイルを考えることの重要性を伝えていきたかったからです。
特に、関根勉さんは、お車好きで知られています。WHILLは自動車メーカー出身含むデザイナーらがデザインしているので、「かっこいい」とか「すごく乗りやすい」とったお言葉を頂戴できればうれしいなと思っていました。

PR施策で、試乗予約は4倍、露出きっかけの問い合わせも2倍に

編集長:お聞かせいただいた3回の施策を行った結果、ユーザー層からの反響はありましたか。

新免さん:反響は大きかったです。ひとつは試乗予約数が4倍になったことです。弊社では、ご自宅近くのディーラーさんの店舗などをご紹介できる試乗予約サイト< https://whill.inc/jp/form-trial-dealer >があるのですが、4/13〜5/12までと、5/13法改正発表後から6/12を比較すると、法改正後、前月同期比で約4倍、試乗予約件数が増えました。
あとは、メディアきっかけによるお問い合わせ件数も前月同期比で倍増しました。テレビや新聞、関根親子のイベント、特にNHK「おはよう日本」の波及力がすごかったです。

NHK「おはよう日本」の波及力

編集長:お問い合わせフォームに、何を見ましたか?という回答欄を設けているのですか。

新免さん:そうです。何起因でお客様が問い合わせされたか知ることができますのでメディア露出の結果をしっかりトラッキングしています。また、「明日、こういう露出があるので、どの露出をご覧になったか聞いておいてください」と、あらかじめコンタクトデスクやカスタマサポートのメンバーに伝えています。本当に、みんなの協力や連携あっての広報PRです。

編集長:パーセプションチェンジにおいては、「言葉の使い方」と、ディーラーを巻き込んだPR施策などの展開が大きかったということですね。

新免さん:そうですね。それ以外でいうと、取り扱ってくださるディーラーさんの店舗が全国に普及したというのも本当に大きいです。福祉用具はどうしても流通チャネルが限定的で、一般の方は「どこで買えるのかしら」とか「どこで乗れるのかしら」と思われますよね。それが自動車ディーラーさんですと、大きな国道沿いにありますし、モビリティとの親和性も含めて、より身近なものとしての認知が進んだと思います。

車載がしやすい点もWHILLと車の親和性の高さの一つ。家族一緒に中長距離の移動も可能だ

車載がしやすい点もWHILLと車の親和性の高さの一つ。家族一緒に中長距離の移動も可能だ

移動課題のある地方自治体・自動車ディーラーとの施策を各地で展開

編集長:WHILLは「日常利用」以外に、空港や観光施設などでの「一次利用」や出張や旅行などの時に借りられる「短期利用」にも力を入れていますよね。日常利用とは異なるPR施策を展開されてるのでしょうか。

新免さん:短期利用ですと、今、旅行・お出かけ需要が大きくなってきているので、折りたためるModel FがJALさんの予約サイトからオプションで借りられるようになっていますし、この前はクラブツーリズムさんのツアーパッケージに組み込まれたりもしました。普段は使わないけれど、旅行だと長距離歩いたりする場合に、体力などを気にせずご家族などと思う存分楽しんでもらえるようなサービスです。

Model Fのレンタルでは3日間から借りられ、ホテルなどでの受け取りもできる
https://www.jal.co.jp/dom/option/other/

一時的なスポット利用ですと、自治体さんと一緒に取り組むことが多いです。たとえば、移動課題を抱えている自治体さんと自動車ディーラーさん、WHILLの3者で「街歩き」「散策・周遊」ができたら喜んでもらえるのではないかという話があがり、WHILLの貸し出しオペレーションは観光案内所などの自治体、保守管理は地元のディーラーさん、そして広報関係はWHILLが、と役割分担して、エンドユーザーさんに気軽に使ってもらうといったPR施策も展開しています。

編集長:WHILLが積極的にこういった企画を地方自治体やディーラーにもちかけるのですか。

新免さん:どちらかというと、地元マターで、地元のディーラーさんと自治体さんがまずはお話されて、自動車ディーラーさんがWHILLを巻き込んでくださり、お話が進んでいくというパターンが多いです。東京や一部の地域を除きほとんどの自治体が移動課題を抱えています。車がないと大変とか、人口減で交通機関の路線が一部廃線になってしまったとか。そういう課題を含めて、WHILLに気軽に乗れるタッチポイントを増やしていこうと、ディーラーさんがすごく積極的に取り組んでくださっています。

大津市では駅周辺2~3km圏内を自由に散策できる実証実験も実施。お花見を楽しまれたお客さまも

大津市では駅周辺2~3km圏内を自由に散策できる実証実験も実施。お花見を楽しまれたお客さまも

編集長:自治体とのコラボの話が進んだ時は、御社がPR面をリードされるんですか?

新免さん:そうですね、リードもさせていただくし、うまく足並みをそろえるためにPR面でフォローさせていただくことは多いです。

編集長:自治体がある県メディアを中心に取材に来てもらうようなアプローチでしょうか。

新免さん:そうですね、地元メディアさんでの露出は、全国で認知や好意度を上げていくことにつながるので、地元メディアさんでの露出も強化しています。記者クラブへの投げ込みは、地元のディーラーさんが対応してくださったり、これも、自治体や自動車ディーラーさんと協力しながら進めています。

編集長:地方自治体と一緒に取り組めると、確かに波及力もありよいですね。

パーセプションチェンジ自体がパブリックアフェアーズに

編集長:パブリックアフェアーズという意味で、何か意識的に取り組まれていることはありますか。

新免さん:パーセプションを変えることがパブリックアフェアーズに繋がると考えています。私自身、よくWHILLで通勤や出張をするのですが、バリアや段差があったり、要所要所で障害物が多かったり、エレベーターの場所がちょっと遠いといったことに気づきます。このようにWHILLが電動車椅子から気軽に乗れる乗り物として普及していけば、自分ごととしてとらえてくれる方も増えてくると思うんです。

編集長:WHILLは、道路交通法とかは関係してこないので行政への働きかけというより、世論への働きかけで誰もが移動しやすい環境を目指すというイメージですかね。

新免さん:そうですね。WHILLの場合、歩行者扱いの製品になります。むしろ、歩行領域というところがまだのびしろのある部分だと思っています。短距離移動は、自転車や今話題の立ち乗りのスクーターなど様々な選択肢がありますが、歩行領域は、歩く以外ないですよね。そこに対してWHILLがひとつの選択肢としてあれば、ご家族で旅行に行った時に「体力が心配だから、私ここで待ってるわ」という方々も一緒に同じペースで行けるようになると思います。歩行領域の移動手段として普及し、皆さんが「自分も乗っていいんだ」という意識になれば、歩く人と乗り物の共存や、街の活性に繋がっていくのではないかと考えています。
法律という大きな含みでいうと、そこまで関わりはないかもしれませんが、意識の改革やイメージを変えていくことこそ、私たちWHILLが取り組むべきことだと思ってます。

お客さまからも、「移動中は体力を温存させて、行った先で家族と同じペースで歩けるのが本当に楽しい」とか、「今まで外出が億劫になっていたけど、もっと早くから我慢せずに乗っておけば良かった」といっていただくことがあり、WHILLは高齢化社会の日本をもっと元気にしていけるんじゃないかと思うのです。そうなれば、経済も潤うと思いますし。そういうことも含めて広報の醍醐味ですし、やりがいでもあるし、もっと届けきれてない人にWHIILLを届けたいと思っています!

編集長:お話ありがとうございました!

PRマガジン編集部の「編集後記」

編集後記:編集長

―社会問題を解決する「デザイン」

WHILL株式会社の新免那月さん

WHILL株式会社の新免那月さん

近年、ビジネス本でも「アート思考」について語られるものが話題になっている。ただ、アートとデザインは少し違うようだ。

ある本では、
・アートは、問題提起を社会に対して行うもの
・デザインは、社会の問題解決をするクリエイティブ
と説明されている。

まさに、WHILLがかっこいいデザインにこだわった背景には、社会問題の解決がある。車椅子というのは、どうしても「仕方がないから乗る」というイメージがつきまとう。そのパーセプションチェンジに挑むのがWHILLだ。

―専任広報はひとりでも、社内外の協力者が心強い!

これだけ事業が急成長しているスタートアップの広報は大変だ。でも新免さんのお話からは、営業やマーケティングと強力なタッグを組んで、一つの目標に向かう推進力を感じた。

それだけではない。地方自治体や自動車ディーラーと各地で展開する施策においても、情報発信をWHILLだけがコミットするのではなく、ディーラーさんが記者クラブにリリースを投函してくれたり、協力体制がすごい。ひとり広報でも孤独にならず、かつダイナミックな施策を展開するヒントが新免さんの話には散らばっていたように思う。

WHILLの進み始めたパーセプションチェンジ。眼鏡が視力の悪い人のものではなく、おしゃれグッズとしても定着したように、WHILLが誰に取っても気軽に近距離を移動する乗り物として認知される日は近いのかもしれない。

今回のPRパーソン紹介

新免 那月(しんめん・なつき)

神戸大学法学部卒業後、スコットランドの大学院へ。そのままイギリスに残りロンドン拠点の経済ニュースメディアで記者として働く。記者時代にWHILLと出会った際、その可能性や普及させるためのパーセプションチェンジの必要性を感じ、2021年3月、広報としてWHILLに入社。

WHILL(ウィル)株式会社(https://whill.inc/jp/

2012年5月設立。デザインとテクノロジーの力を生かし、誰でも乗りたいと思えるパーソナルモビリティを開発。好きな時に自由に使えて、楽しくスマートに近距離移動できる新しいプロダクトとサービスを展開する。
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