生成AIの進化によって、プレスリリースはかつてないほど効率的に作成できるようになりました。キーワードを入力すれば、整った構成と無難で正確な文章が瞬時に提示され、誤字脱字も少なく、一定水準を満たした原稿が短時間で完成します。多忙な広報現場にとって、これほど心強い支援はありません。
しかしその一方で、メディアの現場からは「最近のリリースは、どれも同じに見える」「文章は整っているが、ニュースとしての引っかかりがない」という声も聞こえてきます。いま必要なのは、AIを遠ざけることではなく、AIに“任せきり”にしない姿勢です。
本稿では、ニュースとして扱われる“脱テンプレ”プレスリリースの考え方と、その具体的な実践法を解説します。
この記事の目次
なぜ「どれも同じ」リリースが増えているのか
配信サービスに並ぶリリースを眺めていると、内容は違うはずなのに、どこか既視感を覚えることがあります。「〇〇株式会社は、本日△△を開始しました」という書き出しに始まり、背景説明、サービス概要、そして「今後も社会課題の解決に貢献してまいります」という結びへと続く流れは、もはやひとつの“型”として定着しています。
もちろんその型自体が悪いわけではありません。必要な情報を過不足なく伝えるという意味では合理的なフォーマットです。しかし問題は、その型に頼るあまり「なぜこの発表をするのか」という思考のプロセスが省略されてしまう点にあります。
生成AIは与えられた情報を整理し、整った文章へと変換することに長けています。ところが、どれほど滑らかな文章であっても、その背後にある意図や文脈まで自動的に補強してくれるわけではありません。その結果、情報としては正確でも、ニュースとしての必然性に欠けるリリースが量産されることになります。
メディアにとって重要なのは「事実があるかどうか」だけではなく、「それをニュースとして扱う理由があるかどうか」です。配信すること自体が目的化した瞬間、リリースは社会との接点を失い、単なる告知文になってしまいます。
記者が“取り上げたくなる”リリースに共通する3つの視点
では、記者が「これはネタにできる」と感じるリリースには、どのような特徴があるのでしょうか。テレビ業界で10年、さらにPR業界で10年以上の経験を積んできた立場から感じるいくつかの視点があります。
① 社会とのつながりがある
まず重要なのは、その発表が社会的な文脈の中に位置づけられているかどうかです。企業にとっての新規性だけでなく、市場の動きや生活者の変化、あるいは社会課題との関連が示されていると、リリースは一気に公共性を帯びます。
たとえば単なる「新サービス開始」ではなく、「人手不足が深刻化する業界を支援するための新サービス」と説明されれば、それは企業の動きであると同時に、社会の変化を映す出来事になります。企業の発表が社会のストーリーの一部として語れるかどうか、ここがニュース性の分かれ目になります。
② 人の声や背景が見える
次に大きな差を生むのが、“人の存在”です。開発のきっかけとなった現場の声や、担当者の思い、利用者の体験談などが盛り込まれていると、文章は単なる情報から物語へと変わります。
整った説明文だけでは読み手の感情は動きません。しかし、誰かの葛藤や挑戦、期待がにじむ一文があるだけで、記事としての厚みが生まれます。AIが生成する文章は滑らかですが、人の感情や思いなど、そこに込められた温度感までは再現できません。その温度こそが、ニュースとしての魅力を形づくります。
③ “いま出す意味”がある
そして3つ目は、タイミングの必然性です。制度改正や季節要因、社会的な出来事といった「時の文脈」と接続できているリリースは、ニュースとして扱われやすくなります。
逆にいつ出しても変わらない発表は、裏を返せば「いま出す理由が弱い発表」と言えます。ニュースとは単なる新しい情報ではなく、“いま取り上げるべき情報”です。その視点が加わるだけでリリースの説得力は格段に増します。
“脱テンプレ”を実現するリリース構成4ステップ
“脱テンプレ”とは、型を捨てることではありません。型に流し込む前に、何をどう伝えるのかを徹底的に考えること。その一手間がニュースになるかどうかを左右します。
STEP1:ニュースの“芯”を見つける
原稿を書き始める前にまず問いを立てます。
「この発表の本質は何だろうか?」
「社内にとっての成果ではなく、社会にとっての意味は何だろうか?」
新機能の追加かもしれませんし、数値の更新かもしれません。けれど、それが「誰のどんな課題を動かすのか」まで言語化できなければ、ニュースの芯はまだ見えていません。
実務では、情報を整理することに意識が向きがちです。しかし、本当に必要なのは情報の取捨選択です。何を削り、何を前面に出すのか。その判断こそがテンプレとの差を生みます。
ニュースの“芯”が定まると、原稿全体に一本の軸が通ります。逆にここが曖昧なままだと、どれほど文章が整っていても、印象はぼやけてしまいます。
STEP2:主語を変える
テンプレの多くは、「当社は〜を開始しました」から始まります。決して間違いではありませんが、読み手の関心はそこで一段下がってしまいます。なぜなら、主語が企業のままだと、自分ごととして捉えにくいからです。
そこで意識したいのが、主語の転換です。
「〇〇という課題が広がる中で」
「△△市場では変化が起きている」
「✕✕に悩む人が増えるいま」
主語を社会や生活者に置き換えるだけで、リリースは“企業の発表”から“社会の動き”へと変わります。企業の取り組みが時代の流れの中に位置づけられることで、ニュースとしての輪郭がくっきりしてきます。
視点が変われば、伝わり方も変わります。脱テンプレは、文章技術ではなく“視点の設計”から始まります。
STEP3:「何をしたか」より「なぜ今か」を語る
リリースはどうしても、「開始しました」「発売しました」「発表しました」といった事実の報告に終始しがちです。しかし、ニュースとして扱われるかどうかを分けるのは、その事実そのものではありません。
問われるのは、「なぜ今なのか」という理由です。
・市場環境の変化があったからか
・顧客の声が集まったからか
・社会的要請が高まったからか
この「なぜ今」という背景が示されているだけで、発表は単なる出来事から、社会的に意味のあるアクションへと変わります。
AIは事実を整然と並べることができますが、タイミングに意味を与えるのは、人の思考です。そこにこそ、広報の専門性があります。
STEP4:人の言葉で未来を示す
最後に、忘れてはならないのが“人”の存在です。
担当者の言葉、現場の実感、利用者の声。その一行が入るだけで、リリースは機械的な情報から、人の営みへと変わります。
さらに、できれば未来への視線も添えてください。
「今後は〇〇分野にも展開予定です」
「将来的には△△の課題解決を目指します」
ニュースは、完結した物語よりも、続きのある物語を好みます。少しの余白があることで取材の可能性が広がり、記事としての展開も生まれます。
ニュースを生むのは、AIではなく“問い”である
AIは強力なツールです。しかし、ニュースを生み出すのはツールではありません。
「なぜ今なのか」
「誰のための発表なのか」
「社会にどんな意味があるのか」
この問いに向き合う姿勢こそが、ニュースの源泉です。
AI任せに「ちょっと待った」と立ち止まること。それは効率を捨てることではなく、自分の思考を取り戻すことです。テンプレをなぞる広報から、社会に問いを投げかける広報へ。その一歩がニュースを生む“脱テンプレ”への転換点になります。
【ニックネーム】 ナイトウォーカー
【これまで担当した業界】 食品・飲料・医療・美容・自治体関連・出版社
【趣味】 夜の散歩、温泉めぐり
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テレビディレクター時代に、レオナルド・ディカプリオやミラ・ジョヴォヴィッチなどハリウッドスターのインタビュー取材をしたこと
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