ゆるキャラの皮をかぶったPR戦略家?大阪万博・ミャクミャクに学ぶ地域巻き込み術

ちょっと不思議で、ちょっとこわい?
そんなインパクトのある見た目で話題になっているのが、大阪万博の公式キャラクター「ミャクミャク」です。

4月に万博がは始まってからというもの、その姿を見かける機会がぐんと増えました。テレビはもちろん、市役所のポスターや商業施設の飾りつけ、SNSの投稿、そして街のマンホールまで……まるでどこにでも現れる勢いです。

その姿は一見ユニークで不思議。それでも、繰り返し目にするうちにじわじわと親しみがわき、いつの間にか愛される存在として定着しつつあります。そして、この愛され力には、ミャクミャクの意外な戦略的一面が隠されていたのです。

ザイオンス効果とは……?繰り返し見かけることの強さ

コンビニの新商品でも、街角のポスターでも、何気ないCMでも。最初は特に気にしていなかったのに、気がつけばなんとなく気になっている。そんな経験、きっと誰にでもあるのではないでしょうか?

この“なんだか気になってくる”感じには、ちゃんと理由があります。
心理学では「ザイオンス効果(単純接触効果)」と呼ばれる現象です。

これは、同じものに繰り返し触れることで、自然と好感度や親しみが増していくという効果のこと。最初は興味がなくても、見たり聞いたりする回数が増えることで、その対象に対して安心感や好印象を持つようになる――という日常的な心理メカニズムです。

例えば、テレビCMの音楽や、駅の広告、よく見る商品のロゴなども、この効果を狙ってつくられています。
そして、このザイオンス効果はミャクミャクのPR活動の一環でも使われているのです。

日常に溶け込む、ミャクミャクの“さりげない接触設計”

ミャクミャクが強く印象に残るのは、「また見かけた」と思わせる接触の多さにあります。特徴的なのは、それがわざとらしい宣伝ではなく、生活の中に自然と溶け込むように設計されている点です。

例えば、市役所の掲示物や施設の案内板。
手続きをしに行った人がふと目にする場所にもミャクミャクのイラストがひっそり忍んでいます。
テレビ番組でも、特集だけでなく情報番組の背景やテロップ装飾など、意識せず目に入るところに登場しています。

大阪市内では、ミャクミャクが描かれたデザインマンホールが出現したことでミャクミャク探しに勤しむ人も……SNSではその写真がシェアされ、自然発生的な拡散が生まれています。

そんな“小さな接点”の積み重ねが、いつの間にか記憶に残る存在へと変わっていくのです。こうした“意識せずに何度も目に入る”接触設計こそが、ザイオンス効果を自然に発揮する土台となっています。

広報のヒントは、ミャクミャク化の中にある

ミャクミャクの使っているザイオンス効果、そのミャクミャク化を使えば広報戦略に繋がるかもしれません。かといって、ミャクミャクほど視覚的に日常の至るところにPRを張り巡らせるのは難しいもの……

そこで、今日から使える広報におけるミャクミャク化をいくつかご紹介します。

タイミングで刷り込む 「またこの曜日か」で思い出させる

「〇曜日にはこの投稿」「毎月1日はこの話題」など、“内容”ではなく“タイミング”で記憶に残す仕掛け。接触の場を固定せず、「いつもの時間に出会うもの」としてリズムをつくることで、印象が自然に定着します。

言葉にクセを宿す フレーズの“定番化”で記憶に残す

毎回のSNS投稿などに、決まった言い回しやキャッチフレーズを繰り返し使うことで、「この言葉=このブランド」という認知が育ちます。
例えば、毎回の発信で決まった語尾や独特な言葉づかいを繰り返すことで、「あ、またこのブランドだな」と思わせることが可能です。

「いつもと同じ」だからこそ、少しの違いが効いてくる

SNS投稿やパッケージを毎回ほぼ同じフォーマットで出し続けると、見る人の中に“おなじみ感”が生まれます。そこに毎回ほんの少しだけ変化を加えると、その違いに自然と目が向くようになります。
例えば

・背景だけが毎回違う
・同じセリフの語尾だけが変わる
・パッケージに毎回ひとつだけ変わる小ネタを仕込む

“どこが違う?”と気になることで、接触の回数だけでなく、関心の深さまで育てられるようになります。定番と変化のバランスが、ザイオンス効果をさらに強めてくれる仕掛けになります。

このように、広報の中に“ミャクミャク化”……つまり、繰り返し接触によってじわじわと印象を残す設計を取り入れてみることで、思わぬ広報戦略のヒントが見えてくるかもしれません。派手な仕掛けや大きな予算がなくても、ちょっとした工夫で「気づいたら好きになっていた」をつくることは可能です。

まずは身近なところから、実践できそうなものを一つずつ試してみるのはいかがでしょうか。

PRマガジンAWARD2021受賞インタビュー、自身をキャラクター化し、メディアからの出演オファーも殺到~「サンコー」広報・ekkyの次なる目標とは

2022年7月1日
1

近大マグロでおなじみ近畿大学の広報室長・加藤公代さんが語る「広報ファースト」の姿勢に学ぶ 話題になるPRの仕掛け方

2020年11月12日
株式会社コミュニケーションデザイン PRコンサルタント

【ニックネーム】はる
【これまで担当した業界】出版など
【趣味】カフェ巡りと漫画を読むのが好きです
【プチ自慢】 美味しいご飯屋さんを探し当てる確率が高いこと!

お知らせ
【課題別】PRノウハウやテクニックを無料公開
多くご相談いただく内容とその解決方法をホワイトペーパーにまとめました。
PR切り口の考え方|メディアリレーション方法|広報KPIの考え方【無料ホワイトペーパー】

当社では新たなメンバーを募集しています!
PRコンサルタントとして活躍したい方はぜひご応募ください。
採用情報|PRの力で「社会問題」を解決する