その推し活、実は「応援」じゃなくて“投資と宣伝”!? 『PRODUCE 101 JAPAN新世界』に学ぶ、“感情が資本になる”新しい市場の仕組みとは?

10〜20代を中心にブームを巻き起こしているアイドルオーディション番組『PRODUCE 101 JAPAN 新世界(以下、日プ新世界)』
練習生たちがデビューという狭き門を目指すこの物語は、単なるエンターテインメントの枠を超え、ファンの熱量がそのまま市場価値に直結する「感情資本主義」の最前線となっています。
本稿では、当番組から学ぶ、現代において「選ばれる」ための広報戦略を紐解きます。

昨今の推し活の変化と「体験型推し活」の重要性

かつての「推し活」は、完成された商品(CDやグッズ)を購入する「消費型」が主流でした。
しかし、日プ新世界が提示しているのは、ファンが制作過程に直接介入し、結果を左右する「体験型・参加型」の推し活です。
ここで重要なのは、ファンが抱く「心理的オーナーシップ(所有意識)」です。
自分が投票した練習生が、自分の1票によって順位を上げ、次のステージへ進む。
この「私がこの子を育てている」「私の力でデビューさせる」という実感が、ブランドに対する強烈な愛着を生みます。
これはマーケティング用語で言えば、顧客を単なる「利用者」から「共同創作者(コ・クリエイター)」へと昇華させるプロセスです。
SNSが主流となった今の時代、消費者は自分が関与して作った物語に価値を感じます。
未完成な練習生が成長していく過程に投資する体験こそが、現代最強のコンテンツとなっているのです。

アイドルオーディション戦略でファンが広報になる

『PRODUCE 101 JAPAN』シリーズの推し活の珍しい特徴として、運営がファンに対して「推しの宣伝に自由に使っていいですよ」と、公式の写真や素材の使用を認めている点が挙げられます。
公式サイトにある高画質な練習プロフィール写真や、公式番組のロゴなどに利用規約を確認の上、使用許可が許されています。
ファンはこれらの素材を使い、次のような「広報活動」を自発的に広げています。

SNSで布教シートを流す

布教シートとは X(旧Twitter)などでよく見かける、推しの性格やチャームポイントを1枚にまとめた「紹介パンフレット」です。
「ダンスはクールだけど、実は天然キャラ」といったギャップをファン独自の目線で紹介するなどして、注目ポイントを新規ファンに案内するガイド役を買って出ています。

LINEオープンチャットで「全国の応援団」と繋がる

匿名で参加できるLINEのグループを作り、数百人〜数千人のファン同士で毎日作戦会議を開いています。
「今日の投票は済んだ?」「21時に一斉にハッシュタグを付けて投稿しよう!」と声を掛け合い、一致団結して推しの名前をトレンド入りさせています。
公式が何億円もかけて一方的にCMを流すよりも、一人のファンが「この子の努力を見て!本当にかっこいいから!」と熱を込めて送るメッセージの方が、初めて見る人の心を動かし、「一回投票してみようかな」と思わせる力が強いのです。
『日プ新世界』は、こうしたファン一人ひとりの「伝えたい!」という熱量を、番組を盛り上げる一番のエンジンにすることに成功しています。

企業広報がファンから見習うべき「人の動かし方」

日プ新世界のファンたちは、プロの広報担当者も驚くような高度なテクニックを、無意識に、かつ情熱的に使いこなしています。
企業が「ファンに愛されるブランド」を作るために盗むべきポイントは、次の3つです。

1. 「ストーリー重視のプロセス」をさらけ出す

ファンが一番熱狂するのは、最初から完璧なスターではありません。
例えば、番組中に評価が低くて泣いていた子が、深夜まで練習してステージで輝く姿を「成長物語」としてファン達は拡散します。
それを企業に置き換え、開発の失敗談や「なぜこれを作ったのか」という泥臭い裏側をフックにメディアに製品をアプローチすることでメディア担当者の心を掴むことができます。
その製品の実績と併せて、どれだけメディアの関心を引くストーリーを提示できるかが肝になってきます。

2. 相手に合わせて「紹介の仕方」を180度変える

ファンは、推しを誰かに勧めるとき、相手の好みを瞬時に判断して「刺さるネタ」を選び抜きます。
例えば、ファンが友人や知人に当番組を紹介する際には、ダンス好きの友人には「推しのダンス動画」を、顔立ち重視の友人には「ビジュアル重視の写真」をと、布教の仕方を変えることでしょう。
ここで、その布教の仕方をメディアへのアプローチとすると、広報はそれぞれのメディア媒体に合った布教を考えなくてはなりません。
全員に同じチラシを配っても意味がないように、メディア媒体の欲しい情報に寄り添って、「自社や自社の商品を取り上げるメリットはこれですよ」とピンポイントで情報を届ける「おもてなし広報」が、今の時代には必要です。

3. 「いいな」と思ったら10秒で行動できるようにする

どんなに魅力が伝わっても、アクション(投票や購入)が面倒だと人は逃げてしまいます。
しかし、この手間を理解しているファンは、布教シートや動画の最後にも、多くの人が「投票ページのURL」を添えるといったことを行っています。
さらに、「ここをタップして、SNSでログインするだけ」などと、とにかく手間を減らす工夫を徹底しているのです。
これを参考に、広報がファクトブックやプレスリリースをメディアに配信する際、今の時代、莫大な枚数のファクトブックやプレスリリースをメディアにダウンロードさせるのは不親切です。
より簡潔に1枚で商品の良さやメディア側が企業に取材を頼みたくなるような、そして取材対応者の連絡先がすぐにわかるような資料作成を心がける必要があります。

感情が「資本」に変わる!ファンたちの「広報力」が試される

日プ新世界という場所において、練習生は「立ち上がったばかりのベンチャー企業」であり、ファンは「その成功を信じて支える投資家」兼「宣伝部長」です。
ここでは、ファンの「応援したい!」という感情が、物理的な「票」になり、グループの価値を決定します。
この世界では、SNSでどれだけポジティブな話題を作れるか、という「広報力」そのものが、推しの未来を左右する強力な資本(元手)になります。
ファン一人ひとりが、自分の「推し」を勝たせるために動いている姿は企業広報が自社の製品や商材をメディア媒体にアプローチする姿と似通っています。
この姿勢を見習って、企業広報たちも迅速かつ消費者たちにより応援したいと思わせるSNSでの布教活動がこれからの時代は必須となってくるのです。

なぜ「りくりゅう」は応援されたのか オリンピックから学ぶPRの“共感力”

2026年3月17日

BE:FIRST、JO1、NiZiU…彼らのヒットの裏に見るマーケティング戦略【PRマンが考察する】

2025年8月5日

PRマンが”現代のバンド”から見る『人』『物語』を売る戦術

2024年11月12日
株式会社コミュニケーションデザイン PRコンサルタント

【ニックネーム】はる
【これまで担当した業界】出版など
【趣味】カフェ巡りと漫画を読むのが好きです
【プチ自慢】 美味しいご飯屋さんを探し当てる確率が高いこと!

お知らせ
【課題別】PRノウハウやテクニックを無料公開
多くご相談いただく内容とその解決方法をホワイトペーパーにまとめました。
PR切り口の考え方|メディアリレーション方法|広報KPIの考え方【無料ホワイトペーパー】

当社では新たなメンバーを募集しています!
PRコンサルタントとして活躍したい方はぜひご応募ください。
採用情報|PRの力で「社会問題」を解決する