「あらゆる広報担当者が考察すべき記者会見運営とは」日本・森保監督、ドイツ・クロップ監督の就任記者会見から

2026年7月24日、日本サッカー協会(JFA)は都内で記者会見を開き、森保一監督(57)の3期目となる日本代表監督続投を発表しました。契約期間は半年間とされ、来年3月にはU-21日本代表を率いる大岩剛監督(54)へ引き継ぐ異例の人事もあわせて公表されました。

一方、同日にはドイツサッカー連盟(DFB)もフランクフルトで記者会見を開催し、ユルゲン・クロップ氏(59)がドイツ代表監督に就任すると発表しました。契約期間は2030年FIFAワールドカップまでの長期契約です。

両者はいずれも代表監督の就任会見ですが、発信されたメッセージや組織としての姿勢には大きな違いが見られたように筆者は感じました。本稿では、広報・組織ガバナンス・メディアリレーションズ等の視点から、両会見を比較し、日本サッカー協会に期待する広報のあり方について考察します。

1. ドイツサッカー連盟の記者会見が明確だった理由

今回の会見で印象的だったのは、ドイツ・サッカー連盟(DFB)とクロップ新監督が、組織として目指す方向性を明確に共有していた点です。

会見では、クロップ氏を長期的な改革の中心人物として位置付け、「ドイツサッカーを再び世界の頂点へ導く」というビジョンが、連盟・監督双方から一貫して語られました。2030年ワールドカップまでの長期契約も、その方針を裏付けるものといえるでしょう。

また、組織改革や育成システムの見直しなど、競技成績だけではない中長期的な改革にも言及され、監督と連盟が同じ方向を向いていることが会見全体から伝わってきました。

さらに印象的だったのは、クロップ監督が冒頭でメディアとの関係性について自ら言及したことです。クロップ監督は、自身や家族のプライバシーを尊重することをメディアに求める一方で、「私と一緒にドイツサッカーを次のレベルへ引き上げるチームの一員になってほしい」と呼び掛けました。

つまり、メディアを単なる取材相手ではなく、ドイツサッカーを発展させる重要なステークホルダーとして位置付け、相互に敬意を持った関係を築こうとする姿勢を明確に示したのです。

2. 日本サッカー協会の記者会見に見えた課題

一方、日本サッカー協会の記者会見では、組織としてのメッセージという点で改善の余地があるように感じられました。

2026年FIFAワールドカップ敗退後、日本代表の戦術や強化方針、組織運営については、メディアや評論家だけでなく、多くのサポーターからもさまざまな意見が寄せられています。

今回の会見でも、監督続投の背景や今後のビジョンについて説明はありましたが、「なぜこの人事なのか」「日本サッカーをどの方向へ導こうとしているのか」というメッセージが、十分に伝わったとは言い切れませんでした。

もちろん、会見だけで組織全体を評価することはできません。しかし、重要な人事発表の場では、登壇者の説明内容だけでなく、表情や姿勢、受け答えなども組織の信頼性を左右する重要なコミュニケーション要素になります。

危機管理広報の観点から見ると、記者会見は単なる説明の場ではなく、「組織の考え方」を社会へ伝える重要な機会です。だからこそ、メッセージ設計や登壇者間の役割分担など、の広報・報道戦略としての準備が、世界的に強くなっている日本サッカーまわりでは、今後は、より一層求められるのではないでしょうか。

3. 日本サッカー協会への記者会見上での提案

今回のような重要なトップ人事の記者会見では、今後以下のような取り組みを検討してもよいのではないでしょうか。

(1)スピーチライターの活用

メッセージの一貫性を高め、組織として伝えるべき価値観や方向性を事前により緻密に整理することができます。

(2)記者会見リハーサルの実施

想定問答はもちろん、登壇者同士の役割分担や話す順序まで含めた事前準備を行います。

(3)メディアトレーニングの強化

回答内容だけでなく、視線、姿勢、表情、間の取り方など、非言語コミュニケーションも重要な要素です。

(4)配信映像の改善

日本ではまだ時期尚早かもしれませんが、今後は、質問する記者も映像に映すことで「メディアもチームの一員」といった報道設計も検討の余地があるかもしれません。

こうした改善は、メディアだけでなく、スポンサーやサポーターを含む幅広いステークホルダーとの信頼関係構築にもつながるでしょう。

まとめ

記者会見は、単なる発表の場ではありません。組織の理念や意思決定プロセス、ガバナンスを社会へ伝える「広報活動そのもの」です。
今回の日本サッカー協会とドイツサッカー連盟の会見を比較すると、その違いは説明内容だけではなく、「誰に、何を、どのように伝えるか」というコミュニケーション設計にも表れていたように思います。

企業や団体においても、重要な記者会見は組織への信頼を左右する重要な機会であることはいうまでもありません。広報・PR担当者には、メッセージ設計から登壇者支援までを含めた戦略的な広報活動が、SNS全盛の昨今では、これまで以上に求められます。

参考
▼日本サッカー協会  記者会見 動画
https://www.youtube.com/watch?v=4hwmj9KuCcU
▼ドイツ・サッカー協会 記者会見 動画
https://youtu.be/wdNYTRdpQK4?si=XJE8t_39REkgSUOZ

■書籍「企業不祥事・危機対応広報完全マニュアル」 山見博康著 (自由国民社)

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2022年1月7日
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