謝罪会見に「正解」はある? 最新事例から考える危機管理広報のあり方

謝罪会見に「正解」はあるのでしょうか。
不祥事や事故が起きたとき、広報担当者がまず考えるのは「何を、どう説明するか」です。事実関係を確認し、発表文をつくり、想定問答を準備する。登壇する経営陣には、言っていいこと、現時点では言えないことを念入りに説明する。
もちろん、どれも大切です。
しかし最近の謝罪会見を見ていると、企業への評価を左右するのは、用意された「言葉」だけではないことが分かります。
誰が出てきたのか。いつ説明したのか。質問をどこまで受けたのか。答えにくい質問にどう向き合ったのか。そして、司会者や広報担当者がどう振る舞ったのか。
企業の「態度」はすべて広報になる。最近の事例から、危機管理広報について考えてみます。

謝罪会見は「何を言うか」だけでは決まらない

2026年1月、プルデンシャル生命は、社員・元社員による金銭不祥事を受けて記者会見を開きました。同社も公式発表で、金銭不祥事に関連して同日に記者会見を行ったことを明らかにしています。
ところが注目されたのは、不祥事の内容だけではありませんでした。
会見の進行や質問への対応、司会者の振る舞い、さらには司会者の服装まで批判の対象になりました。華やかに見えるスーツやダブルカフスのシャツなどが「謝罪の場にふさわしいのか」とSNSで話題になったことも複数のメディアが報じています。

もちろん、「謝罪会見ではこの服装でなければならない」という話ではありません。
重要なのは、危機対応の場では、企業側があまり意識していなかったことまで「企業の姿勢」として受け取られる可能性があることです。
質問をどう受けるか。司会者がどんな口調で進行するか。どんな装いでその場に立つか。平時なら気に留められないことまで、謝罪会見ではメッセージになり得ます。

準備すべきなのは「何を話すか」だけではない。企業が社会から「どう見えるのか」まで考える必要があるのです。

「早くトップが出れば正解」でもない

一方、初動対応で注目されたのが、7月に発生したイオンモール熊本の爆発事故です。
事故の翌日、イオンの社長らが熊本市内で会見を開きました。 社長自ら早期に現地入りし、憶測を交えず説明した姿勢などには、会見直後、一定の評価も寄せられました。
事故が起きた。トップが現地へ向かった。そして、自ら説明の場に立った。
その行動自体が、企業から社会へのメッセージになったと言えます。

ただ、その後の経緯まで見ると、危機管理広報の難しさがより鮮明になります。
イオンは8月、地震後に「館内に戻ってよい」という避難解除の一斉アナウンスはしていなかった一方、車の鍵や携帯電話の回収、トイレ利用などを求めた従業員に対し、個別に一時入館を認めた事実があったと公表しました。

つまり、会見を早く開けば、それで説明責任が終わるわけではありません。
危機の直後には分からないことがあります。だからこそ、「現時点で確認できていること」と「まだ確認できていないこと」を分けて伝え、新しい事実が判明したら説明を更新していくことが重要です。

「答えられません」はNGではない

謝罪会見では、すべての質問に答えられるとは限りません。
事故直後なら原因が分からない。不祥事なら社内調査が終わっていない。捜査中で話せないこともあります。
「現在調査中です」「現時点ではお答えできません」と答えること自体が問題なのではありません。
大切なのは、その後です。
何が分かっていて、何がまだ分かっていないのか。何を調べるのか。分かったら、いつ、どう説明するのか。
「分からない」は許されても、「分かろうとしていない」は許されない。
危機管理広報における一つの境界線は、そこにあるのではないでしょうか。

会見終了後から“第二の広報”が始まる

いまは会見が終わるころには、登壇者の発言だけでなく、表情や口調、司会者とのやり取りまで切り抜かれ、SNSで評価される時代です。
「不祥事について説明する会見」だったはずが、翌日には「会見での対応」がニュースになることもあります。
だからこそ、会見を開くこと自体をゴールにしてはいけません。

イオンは事故後も継続して情報を更新し、その後、外部専門家のみで構成する事故調査委員会を発足。爆発事故の原因だけでなく、人的被害がなぜ発生したのか、避難誘導のマニュアルや運用も検証対象としています。
会見で何が疑問として残ったのか。新たに確認すべき事実は何か。そして、次にいつ説明するのか。
会見終了後から“第二の広報”が始まる、と考えたほうがよさそうです。

広報は「謝罪文を書く部署」ではない

では、謝罪会見に絶対的な正解はあるのでしょうか。
「トップを出す」「できるだけ早く説明する」「質問には丁寧に答える」。どれも大切です。
ただ、それをマニュアル通り実行すれば必ずうまくいくほど、危機管理広報は単純ではありません。

最近の事例から見えてくるのは、危機管理広報とは「うまく謝る技術」ではなく、危機の最中に企業がどう振る舞うかを設計する仕事だということです。
トップはいつ動くのか。被害を受けた人への対応と記者発表をどう進めるのか。何が分かった段階で公表するのか。会見で答えられなかった質問には、いつ回答するのか。
一つひとつの判断が、企業から社会へのメッセージになります。
平時の広報では「言葉」を選びます。
でも危機が起きたとき、広報が扱うのは言葉だけではありません。

企業の姿勢は、言葉以上に伝わる

謝罪会見に絶対的な「正解」はないのかもしれません。
ただ、危機のときほど見られているのは、「何を言ったか」だけではなく「どう向き合ったか」です。
その姿勢が社会にどう伝わるかまで考える。それもまた、広報の大切な仕事なのではないでしょうか。

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株式会社コミュニケーションデザイン PRコンサルタント

【ニックネーム】カープマニア
【これまで担当した業界】IT、自動車、食品メーカー、飲料メーカー、自治体、
            医療、家電メーカー、レジャー施設、金融、教育、他多数
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