「経営」との距離が近いからできる“想いを形にする”広報~そして、リファラル採用を啓蒙するためのPRとは―「MyRefer」広報・岩田知佳さん

今回は、企業と従業員と候補者を結びつけるリファラル採用サービス「MyRefer」の企画・開発などを手掛ける、株式会社MyReferの岩田知佳さんに、広報・PRパーソンならではのリアルな企業広報のお話を伺った。
(インタビュー:編集部 若林)

副業が転機となり、「ベンチャー企業の広報」という天職に

2020年8月に移転した神楽坂オフィスの入口

2020年8月に移転した神楽坂オフィスの入口

若林:岩田さんは、一橋大学のボート部でマネージャーをされていたんですね!

岩田さん:そうなんです。一橋大学では、一年生が全員ボートを漕ぐようなイベントがあって、ボートが「校技」と言われるような大学としても有名なスポーツです。みんな初心者から始めるのですが、日本一を目指して活動している団体です。実は、私の同期がオリンピック選手になっていまして、今、出場しているんです(取材時)。ボート競技はテレビに全く映らないのですが…、個人的にTwitter等ですごく応援しています!

若林:そうなんですね!卒業後に大手メーカーに就職されて、グローバル規模のマーケティングを担当されてたということですが、新入社員で入った時点からマーケティング担当だったのですか。

岩田さん:はい、入社後二ヶ月の研修を経て、マーケティングの部署に配属されました。
新卒は、営業や人事、経理、物流など、各部署に一名ずつくらい配属されるのですが、私は商学部で学んでいたこともありマーケティングで希望を出し、それが通りました。

若林:ご自身で希望されたのですね!そこから広報に挑戦したいと思われたきっかけは何だったのでしょうか。

岩田さん:当時、世界25カ国でブランドのイメージ調査を行い、レポーティングする業務を担当していたので、規模の大きな仕事に携わらせてもらえていました。ただ、お客様と接する機会がなく、経営陣とも距離が遠くて。すでにインフラになっているサービスでしたので、新しく挑戦することを求められないという環境に物足りなさを感じていました。
社会人2年目になった頃には、色々な方のお話を聞くようになっていたのですが、そこでたまたまスタートアップの広報の方のお話を聞きました。経営者とも非常に距離が近く、ビジョンを支える役割も担え、社会と会社の接点にもなれるような仕事で、すごく楽しそうだなと思ったのがきっかけで広報に興味を持つようになりました。

若林:そこからすぐに転職されたのではなく、まずは、「SHE」のスタートアップ広報のアシスタントや、「プレスラボ」でWEB編集のお手伝いをされていたんですよね。

岩田さん:はい、転職を考えて何社か話を聞きに行きましたが、なかなか広報未経験で採用している会社はありませんでした。そのため、まずは小さく始めてみようと思い、SHEでオウンドメディアのライターとして記事を書かせていただき、そこから「広報手伝ってみる?」と声をかけていただき、プレスリリースを書いたりイベントでメディア対応をしたりしていました。プレスラボでも、アシスタントを募集していたので、社会人インターンとして文字起こしや情報集め、取材対象者探しをさせていただいていました。

若林:SHEとプレスラボは、同時期ですか。

岩田さん:そうです。その時在籍していた大手メーカーはすごくホワイト企業だったので、仕事終わりや週末に上手くやりくりしていました。

若林:人によっては、それだけ有名な大企業でマーケティングをされていて、働き方もホワイトとなると、わざわざベンチャーにいかなくても…という方もいらっしゃったのではないですか。

岩田さん:そう言われましたね。(笑)ただ、私はシンプルに仕事するのが好きなんです。ボート部のマネージャーをしていた時も、みんなで熱中して取り組み、日本一という高い目標に向け突き進むという環境が好きでした。社会人になっても、もっと熱狂して働きたいという想いがあり、スタートアップの環境に出逢い、こちらの方が自分には合っていると思ったんです。

若林:なるほど、仲間と一緒に高い目標に向かって突き進むというのが、ボート部時代から岩田さんのベースにある想いだったのですね。

岩田さん:スタートアップ広報の方のお話を聞いた時に、広報はマネージャーの役割とも近いのではないかと思いました。マネージャーのときは、チーム全員で日本一を目指して、選手が練習に熱中できる最高の環境を作ることがミッションでした。まさに広報は、高いビジョンを掲げている経営者のもと、社内外のコミュニケーションを設計してファンを増やし、お客様に提案する営業やカスタマーサクセスなど全メンバーをサポートするような仕事ですよね。事業や組織がうまくいくための最高の環境を作っていく役割だと思ったので、「これが私のやりたいことだ」と!

若林:岩田さんのnoteにも書いてありましたが、ご自身にやりたい夢がなくても、やりたい人の夢を叶えるのが広報だと書かれていましたよね。どうしてMyReferで働きたいと思われたのですか。

岩田さん:当社は、「つながりで日本のはたらくをアップデートする」というビジョンを掲げています。私自身、社会人1〜2年目の時に、働くということに“もやもや”していた時期がありました。もっと働きたいけど熱中できない、やりがいも見つけられず、自分には価値がないのではないかと思ったこともありました。そういった時期に、いろいろな人との出会いや副業を通し、自分に合う場所は他にあるのかもしれないと気づきました。
このような自分の経験もあり、リファラル採用という人と人とのつながりを通じて、多くの人がより前向きにキャリアを選択し、チャレンジできる世の中を作りたいと思っていましたので、当社のビジョンに非常に共感しました。

大企業での導入事例を前面に出し「リファラル採用」の固定概念を崩す

社内キックオフでのプレゼン

社内キックオフでのプレゼン

若林:岩田さんがMyReferに入社された2019年前半、リファラル採用ってどういう状況でしたか。

岩田さん:今よりもちろん認知は低かったです。その頃は、「リファラル採用=ITベンチャーの採用施策」というイメージが強かったように思います。ですので、メディアの方に、富士通さまや日立製作所さまが弊社のサービスを導入してくださっているとお話すると驚かれることが多かったです。
ただ、ありがたいことに、人手不足は社会課題として根強くあり、新しい採用手法を取り入れていかなくてはという課題感が社会全体にありましたので、メディアの方にも興味を持っていただき、事例を少しずつ広めていくことができました。

若林:2019年の上半期頃は、そういった大手企業の導入事例を通して、リファラル採用という言葉を広めていこうとされたのですね。

岩田さん:まさにその通りです。その頃、リファラル採用は、コネや縁故入社と勘違いされがちで、リファラル採用という言葉の認知がまだまだ広まっていない状況でした。そのため、リアルな事例とともに言葉を広めるため、リファラル採用を導入しているお客様に成功事例を発信いただくことが重要と考えていました。メディア露出だけではなく、私自身、お客様などの取材記事をオウンドメディアに掲載していくことにも注力していました。

若林:大手企業の事例をメディアに紹介していくと、「こんな大手がリファラル採用やっているんだ」と確かに興味を持ってもらえると思いますが、MyReferの名前は出せましたか。

岩田さん:出せる時と出せない時がありました。最初は「あれ?うちの会社出ないの?」という反応もあり、社内の期待値調整が難しかったです。特に、代表や営業担当の社員には、時間のない中で調整してもらっていましたので。ただ、リファラル採用の認知や本当の価値を広めることも重要なミッションにしており、その中でMyReferに任せたらリファラル採用が上手くいくということも合わせて伝えられたらいいので、リファラル採用の事例が広まるだけでも、市場を拡大するために価値のある活動だと思い取り組んでいました。

若林:大手企業のリファラル採用事例がメディアに掲載されると、それをサポートしてくれた企業はどこなのかと口コミ的にも拡がっていくという効果はありましたか。

岩田さん:そういった効果もありました。ただ、リファラル採用に興味を持っている企業に対するMyReferの導入については、営業が一社一社コンサルティングしていくことがより重要だと思っています。広報としては、他社の事例などを通して採用の一つの選択肢としてリファラル採用を思い浮かべてもらう。その先は営業の方々にしっかり託しています。

オウンドメディアの立ち上げ・運営を通し、新規営業にも貢献

リファラル採用SaaS「MyRefer(マイリファー)」

リファラル採用SaaS「MyRefer(マイリファー)」

若林:さきほど、オウンドメディアでもリファラル採用に関して発信していかれたという話がありましたが、「HR Lab.」のことですよね。2019年上期にはじめられて、月2〜3本記事を出されているとのことですが、こちらは岩田さんが立ち上げられて、取材や執筆も岩田さんがされているのですか。

岩田さん:基本的には私が担当しています。広報として入社した際、代表から、「我々はリファラル採用のパイオニアだから、リファラル採用の知見がもっとも集まるメディアを作りたい」という想いを聞き、「やりましょう!」と立ち上げたのが「HR Lab.」です。最初は私が取材も執筆も編集もしていましたが、今はライターさんにも手伝っていただきながら回しています。

若林:入社してすぐにオウンドメディア立ち上げるって、結構な行動力ですね!

岩田さん:その時はあまり深く考えずに「やらなきゃ!」と。ただ、自分がメディアにプレゼンしていくにしても、お客様の生の声が語れるというのは重要なので、取材を通してお客様が何に課題を感じてリファラル採用を始め、その上でどういう工夫をされ、MyReferにどういった価値を感じてくださっているかを知る良い機会になっています。

若林:取材や執筆に何の抵抗もなく始められたのは、プレスラボさんでの経験があったからかもしれませんね。

岩田さん:文章は、読み手にどれだけ寄り添えるか、相手の視点に立ってどういう読後感を与えるかがすごく大事だと思うので、プレスラボやSHEでのライター経験も活きたと思います。また、他社広報やメディアが開く勉強会でもたくさん学ばせていただきました。

若林:オウンドメディアの目標とゴール設定についても伺えますか。

岩田さん:複数ありますが、立ち上げ当初は、“リファラル採用について最も知見が集まる場所”にすることを目標としていました。最近は、新規営業に繋げるということを目標に取り組んでいます。そのため、どういった企業事例があると良いか営業とコミュニケーションを図りながら取材先のリストを作っています。
また、リファラル採用の価値を啓蒙する上ではリファラル採用を通して“社員をファンにする”、“おすすめしたい組織づくりをしていく”ということが大事なので、取材させていただく際は、人事の方々の想いや、どういう組織を作りたいかといったこだわりも聞くようにしています。

若林:取材先は、MyReferさんを導入している企業なのでしょうか。

岩田さん:基本的には導入企業が多いですが、導入企業でなくても、リファラル採用が上手くいっている企業に取材させていただいているパターンもあります。

「リファラル採用3.0」を掲げ、新たな定義を啓蒙

「Fanbase Recruiting MTG」のイベントの様子

「Fanbase Recruiting MTG」のイベントの様子

若林:さきほど仰っていた、「リファラル採用にとって大事なことは、社員をファンにすることだ」というのは、本当にその通りだと思っていまして。私も人事担当ではないんですけど、自社で「社員をファンにすることって、すごく大事ですよね!」と語った直後だったので、勝手にとても共感していました。

岩田さん:ありがとうございます!まさにここは、我々が啓蒙しているところでもあります。リファラル採用が広まってきたのはありがたいのですが、とりあえずインセンティブだけ設定し、社員に紹介させようという「紹介させられ採用」も増えてきてしまっていると感じていました。我々は、リファラル採用のパイオニアだからこそ、きちんと定義をアップデートしなくては、と社内で話し「社員に紹介させる」ではなくて、「社員が紹介したくなる」ような関係作りから始める採用であることを啓蒙しなくてはという結論に至りました。我々は、それを「リファラル採用3.0~ファンベース採用~」と呼び、2019年下期からブログやイベント、メディアでこのメッセージを発信してきました。

若林:いわゆる啓蒙活動って、結構難しいですよね。具体的にどういった取り組みをされたのでしょうか。

岩田さん:複数の施策を展開していました。まず、人事の本音調査リリースです。MyReferが人事担当に寄り添う存在であることを知っていただきたく、リファラル採用3.0を取り組む背景として人事担当者の悩みを調査で浮彫にしていきました。例えば、どうしてもエンゲージメントが課題になるとか、リファラル採用を成功させるには実は経営陣の協力が必要だとか。そういった情報を発信することで、一緒に課題を解決できる仲間になれればと思い、まず人事目線での課題提起を行いました。

若林:調査リリースを通して、課題を顕在化するということでしょうか。

岩田さん:そうです。リファラル採用を行えば上手くいくと思われがちですが、実は人事担当者がリファラル採用を推進するのはすごく大変です。その大変さもしっかり情報として出していかないと、制度は作ったが失敗するという企業が増えてしまいます。結果、リファラル採用ダメだったねということになると本末転倒ですので、より本質的にリファラル採用を進めていくために、課題を提起していきたいと考えていました。

若林:課題を顕在化した後、どういう取り組みをされたのですか。

岩田さん:調査リリースをもとに、代表のnoteでの発信や、「BRIDGE」さんなどのメディアでの寄稿、イベントを開催しました。noteやメディアを通し、人事が抱える課題とそれに対してリファラル採用のあるべき姿を発信し、その後イベントで、社員をファンにしてリファラル採用をするには、どういうメソッドで進めると良いのかMyReferとしての解決策を提示していきました。

若林:具体的にイベントではどのようなことをされたのですか。

岩田さん:元SHOWROOM株式会社COOの唐澤俊輔さんや、株式会社スープストックトーキョー・取締役副社長 店舗営業部部長の江澤身和さん、株式会社SmartHR 執行役員・VPヒューマンリソースの薮田孝仁さんに登壇いただき、社員がおすすめしたくなる組織作りとはどういうことなのかを議論いただきました。

若林:「リファラル採用3.0」、つまりファンベース採用の重要性が理解されたという感覚は得られましたか。

岩田さん:イベントは、人事担当者にMyReferの世界観に共感してもらうことをゴールにしていましたので、一つの目標としてSNSでの拡散を置いていました。結果的に、「#ファンベース採用」というワードでTwitterのトレンド入りをすることができたので、HRの最先端を知っているような方々には広められたと思っています。
それより先でいうと、日々、営業やカスタマーサクセスが資料の中に、私たちが広めるリファラル採用というのは、縁故採用や紹介させられ採用とは異なり、社員をファンにする採用であるという資料を入れて、一社一社啓蒙活動に取り組んでくれています。営業からファンベース採用について話を聞き、その世界解に共感し、リファラル採用をしたいと言ってくださる企業も出てきています。

経営者の考えや想いを社内に浸透させるのも広報のミッション!

「あなたの会社のおすすめは?」Fanbase Recruiting MIGのイベントで作ったボード

「あなたの会社のおすすめは?」Fanbase Recruiting MIGのイベントで作ったボード

若林:リファラル採用3.0という考え方は、まずは経営と広報でにぎり、先行してファンベース採用に関する情報発信をしてHRの感度が高い方に広めてから、それが内側でも響いてきたということですか?

岩田さん:いいえ。前提、経営戦略としてSaaSのビジネスをする上で重要になる“ハイレベルコンセプト”を作る中で行った啓蒙活動です。「リファラル採用3.0」をキーに、プロダクト、セールス、CS、PRすべて連動した戦略だったので、「なぜリファラル採用をアップデートするのか」については社内の締め会やイベントで代表が経営戦略を発表し、社内と社外と同時に浸透させていきました。

若林:社内報「リファラル通信」なども活用されましたか。

岩田さん:そうですね。経営者や私だけが発信して、社内に共感してもらえていなかったらすごい悲しいじゃないですか。(笑)ですので、何かを発信する時には社内にも丁寧に伝えるということは徹底しています。MyReferの社内ニュース機能を使った社内報のほか、最近は社内ラジオも始めまして、ファンベース採用を啓蒙する時や、なにか大きなイベントを行う時、資金調達する時には、特に丁寧に裏話などを社内に発信しています。

若林:今のお話って、すごく大事だなと思います!経営と広報の距離が近いほど、連動して経営に沿った広報活動を展開できますが、現場との温度差があると、いくら正しい戦略をとったとしても、現場の人の気持ちが動かないと意味がないですよね。そういう温度差って、広報としては課題になりやすいと思っていたのですが、社内報や社内ラジオを通し、社内の全体のベクトルを同じ方向に向けていく努力も広報としてされているということですよね。

岩田さん:そこは一番大事だと思っています。ただ、MyReferには、「つながりで日本のはたらくをアップデートする」というビジョン、「令和を代表する会社を創る」というスローガンに共感したメンバーが集まってきているので、リファラル採用の啓蒙をしなくてはというのはみんなが思っています。なので、広報に対してもすごく協力的ですし、ファンベース採用に関しても一人ひとりがきちんと発信してくれ、すごく感謝しています。

若林:ちなみに、社内ラジオは岩田さんが2021年2月頃に立ち上げたとのことですが、何かきっかけがあったのでしょうか。

岩田さん:社員数も倍ほどに増え、さらに200名規模の未来を見据えた組織設計をしている中では、経営者の考えていることが現場にまで浸透していないという課題を感じていました。それに対して広報が経営と現場をつなぐ役割を担うべきだと思った時に、ひとつ、ラジオで経営者の脳みそを伝えていけたらいいなと「脳みそラジオ」という名前でラジオを始めました。「令和を代表する会社を創る」ためには、代表の目指すビジョンを伝え続けて、激しく変化しながらもみんなで同じ方向を向いて強いカルチャーを作ることが重要だと思っています。

月1回、Voicyさんの社内報機能を使い実施していまして、私はファシリテーターをしています。内容としては、社員から質問やアイデアを集め、それに対して代表の考えを自らの言葉で伝えてもらうというものです。まさに、代表の脳みそを見れるような企画になってるかと。(笑)

広報主導でアワードを開催~受賞企業のプレスリリースがリファラル採用浸透の後押しに

「Japan Referral Recruiting Award 2021」表彰式の様子

「Japan Referral Recruiting Award 2021」表彰式の様子

若林:コロナによる影響はありましたか。

岩田さん:ありました。当初は、企業も見通しが立たないので、採用をストップしたりしていましたが、不況でも勝ち残る組織にするにはやはり強い人材を採用していかなくてはならないということで、今は、優秀な人材を採るためにリファラル採用を検討する企業も増えています。
転職者側の話でいうと、コロナ禍で企業の将来性も見えず転職は積極的にはできないという感じでしたが、テレワークなど働き方の価値観の変化や自分を見つめ直す時間ができたことで、転職の意向自体はかなり高まってきていると伺っています。

若林:最近、広報が仕掛けたPR施策で反響のあった事例があれば教えてください。

岩田さん:3月に開催したイベント「Japan Referral Recruiting Award」のお話をしたいと思います。我々がリファラル採用のパイオニアとして、リファラル採用のロールモデルをつくり表彰し、あらゆる業界・領域での成功事例を広めていこうということになり実施しました。
今回のアワードは、すでにリファラル採用を実施されているお客様をよりファンにして、一緒にリファラル採用を啓蒙してもらうことを目的にしていました。目標の一つとしては、表彰されたお客様が受賞についてプレスリリースで発信してくださるということを掲げていました。実際、「リファラルアワード受賞しました!」とプレスリリースで発信してくださり、業界メディア等に取り上げられるという結果にも繋がったので、自分たちが取材をするだけではなくて、リファラル採用のロールモデルとなるお客様から発信してもらえた事例として、すごく大きな価値があったと思っています。

若林:おもしろいですね!既存のお客様で優れたリファラル採用をしている企業を表彰して、それをプレスリリースでお客様たちに発信してもらい、メディアに掲載してもらい、その企業をベンチマークしているような会社さんたちの目に留まれば、リファラル採用に関心を持ってもらえる可能性が広がるという広報戦略ですよね。

岩田さん:仰る通りです。また、2015年からリファラル採用を啓蒙し続け、ようやくロールモデルができたタイミングで、採用を変革する人事や友人と企業をつなぐリクルーターの方々を純粋に表彰したいという想いがすごくあったので、お客様が輝く場所をつりたいという気持ちも大きかったです。

若林:すごくわかります! 我々も今回初めて、「PRマガジンAWARD」っていうアワードを実施したんですけど。それも、広報って、メディアに露出できてあたりまえ、社内からは実際に何やっているかわからない、どう会社に貢献しているのかわからないって思われていることが多くて、評価されづらい部署なのではと感じていたからです。我々としては、広報ってすごく会社の力になる存在なので、それを知ってもらうためにアワードを立ち上げたんですね。人事も同じかなと。人事なんだからいい人材が採れて当たり前という考えがあるので、こういうアワードとかで頑張ってる人を評価するって、すごく良い取り組みだなって拝見していたんですよね。

岩田さん:ありがとうございます、本当にその通りで、リファラル採用は、ほかの採用チャネルに比べても、すごく大変だと思うんです。社内全体を巻き込まないといけないので、人事の心理的負荷もかかりますし、これまでの王道の採用手法からリファラル採用という新たな手法にチャレンジされている人事の方々には、尊敬しかありません。そういった方が日の目をみる機会を作れたというのは、私としても会社全体としても嬉しいイベントの一つでした。

若林:そうだったのですね。このアワードには、企画などで広報も関わっていらっしゃるのですか。

岩田さん:はい、私ともう一名がプロジェクト担当として進めました。もともと2021年2月に資金調達を実施したのですが、そのタイミングで、改めてリファラル採用のパイオニアである我々がアワードを開催し、ナンバーワンであることをPRしていかないといけないねと社内で話をしていました。そこで、リファラル採用No.1ポジションを築くためのPR施策のひとつとして、アワードを開催することにしました。私と既存のお客様担当であるカスタマーサクセスがペアで粛々と、エントリー集めから、審査、イベント準備を行いつつ、社内全員に協力してもらって開催しました。

若林:広報は岩田さんおひとりですよね?あと、カスタマーサクセスの方おひとりとで、粛々と準備をされてたと。

岩田さん:そうですね、全体のディレクションをしながら、コンセプトは代表と作り、審査は代表やマネージャー陣を巻き込み一緒に対応いただきました。また、エントリー集めはカスタマーサクセス全員で一緒に動いてくれ、お客様にかけあってくれました。また、当日の演出は取締役や外部の配信パートナーにも手伝っていただきました。

若林:それでイメージ通りの結果になったというのは素晴らしいですね!

岩田さん:ふたりで粛々とやりながらも色々な方に手伝っていただいたので、本当にその結果だと思っています。イベント後も、マーケティングや営業がアワードをうまく活用もしてくれています。アワードで表彰した内容を冊子にして郵送し、新規獲得に役立ててくれています。

経営との距離が近いからこそ、KPIの達成を意識しすぎず、“その時会社に必要なアクション”を起こせる

社長室(グロースハック室)、管理部の方々と

社長室(グロースハック室)、管理部の方々と

若林:冒頭で、前職では経営者との距離が遠く、もっと近いところで働きたいと思い転職されたとお話されていましたよね。今はかなり、経営者と密にコミュニケーションをとり動かれている印象を受けたのですが、実際、どのくらいの頻度で、どういったコミュニケーションを取られているのでしょうか。

岩田さん:頻度としては、定例ミーティングを週1回、一時間行っています。それ以外でも近い席にいますので、何かあれば話を聞きながら進めています。定例の時は、“どういう課題を持っているか”や、“中長期で考えていること”、“今、考えている新しいこと”を、事業だけではなくて組織課題も含めヒアリングしています。その中で自分のリソース配分やどのターゲットにどういったメッセージを発信するべきかを考えて実行に移しています。あとは、代表の描く未来をワクワクして聴いています。(笑)

若林:経営者との週1ミーティングで、どこに自分のリソースを割くか決めるとなると、KPIの設定が難しそうですね。どういったKPIを設けていらっしゃるのでしょうか。

岩田さん:目標については、半期に一度設定しています。そこで、誰にどう思ってもらうのかというゴールと、それに対してどういった施策を展開するかという、行動ベースでのKPIを立てています。具体的に、コミュニケーションの相手として、既存のお客様や、エンタープライズ企業の人事、MyRefer社員、採用候補者等に分け、それぞれにどう思ってもらうかというゴールを作っています。ただ、その通りにはいかないので、適宜修正しています。どうしてもKPIだけを目指して走ると、中長期で本当に重要なことに対応できないことも出てきてしまいますので、そこは毎回、目的とゴールをしっかり考えて動くようにしています。経営者も理解してくれていまして、KPIだけで評価するというよりも、本当に経営の視点で考えているかどうかの方が大事と言ってくださっているので、そういうスタンスで仕事をしています。

あとは自分自身も、実際に何かを発信した時の反響がどうだったかは積極的に共有しています。「このメディアに露出したことで、こういうインバウンドが2件入りました」とか、「こういうコメントがあり、リファラル採用に対してこういう風に思われています」とか、社内でも「社員が最近このバリューについて話すことが増えていますよ」など、どういう効果が出ているのかはしっかり伝えています。それが次の経営判断にも生かせる場合もあると思いますし、広報はそういう役目も担っていると考えています。

若林:岩田さんは、Twitterも運用されていますが、どういう目的でされているのですか。

岩田さん:MyReferの広報を始めた時に、会社のブログを書いても全然拡散されなくて、「やばい、誰にも読まれない」と思ったことがきっかけです。自分だけでもフォロワーを増やして、読んでもらえるようにしなくてはと始めました。でも、一定数まで増えた段階の今は、自分自身が有名になりたいとかはないので、あくまでも“同志”を増やしたいという想いで続けています。広報としての経験や、その中で思ったことをつぶやいていく中で、同じような想いをして頑張っている方に応援してもらったり、応援したりしながら濃い仲間が増えればいいなと思っています。

若林:最後に、プライベートについてもお伺いしたいのですが、現在、副業はされているのですか。

岩田さん:今はしていないです。最近は月に1〜2回Zoomで話すくらいですが、母校のボート部のマネージャーにアドバイスをしたりしています。

一橋大学のボート部の写真

一橋大学のボート部の写真

若林:どんなことをアドバイスされるのですか。

岩田さん:最近でいうと、まさにオリンピックがあったので、SNSの投稿について、こういう写真や内容を投稿してみたらと提案したりしています。また、ボート部で新しいロゴを作っていたので、それを発信するために、ロゴを作るまでの過程をブログに書いてみたらとか。自分が部員だった頃は目の前のことに必死でしたので、他の団体がどんなことをしているかや、本を読んで学ぶということは全然しておらず、今になってようやく他の事例の活かし方もわかるようになってきたので、その辺りは少しアドバイスさせていただいています。

若林:一橋大学のボート部は、ブログやSNSにも積極的なのですね。

岩田さん:そうですね、ファンを増やすためにどうすればいいのか、皆で考えて実行しています。私もそこに少しだけ参加させてもらい元気をもらっています。

若林:いろいろお話聞かせていただいて、ありがとうございました。

PRマガジン編集部の「編集後記」

編集後記:編集部 若林

“経営者の想い”を形にしてくれる広報

経営者がどんなに素晴らしいビジョンを掲げていても、それを実現してくれる社員がいないと会社は大きくならない。私は創業社長にとって「右腕」となる存在がいるかどうかは非常に大きいと思っている。

残念ながら、広報が「右腕」と言われることはこれまであまりないが、オウンドメディアにしてもアワードにしても、社長や経営陣の想いをくみ取り、実現してくれる岩田さんの存在は大きいはずだ。

「あれ?一人広報だよね??」と確認したくなるほどのマンパワー

誰でも、自分のやりたいことには、時間も情熱も惜しみなく注ぐことができるだろう。
でも、誰かを支えることに情熱を注げるのが岩田さん。

経営者から課題を聞いて、解決の糸口を模索し、リリースのために調査をしたり、メディアリレーションをし、営業とリレーションを取りながら、オウンドメディアで取材や執筆し、時には社内ラジオのパーソナリティも。

そして、リファラル採用を行う企業の人事を表彰するアワードも中心となって動かすというすごい機動力…。

広報をされている方ならわかるように、社内のサポートがあるからとはいえ、これだけのことを一人で行うのは、並大抵のことではない。なのに、ご自身の実績や活動を自慢するような話は一切せず、「社員のみんながいたからでいたこと」と、ニコニコしながら話してくれた岩田さん。

本当に体育会系の部活で癒しとなるやさしいマネージャーのようだった!

今回のPRパーソン紹介

岩田 知佳(いわた・ちか)

一橋大学卒業後、大手メーカーに入社。マーケティング部に配属されグローバル規模のブランドイメージ調査を担当。副業でライターやウェブ編集、広報を経験した後、2019年春に株式会社MyReferに入社。
一人広報としてメディアへの情報発信はもちろん、オウンドメディアの立ち上げ・運営、イベント開催、社内ラジオのパーソナリティなど幅広い業務を担当。

株式会社MyRefer (https://myrefer.co.jp/

2015年にインテリジェンス(現パーソルキャリア)の社内ベンチャーとして創業し、2018年5月28日に独立。企業と従業員と候補者を結びつけるリファラル採用サービス「MyRefer」の企画・開発などを手掛ける。現在700社を超える企業、約40万名の従業員が利用し、年間2,000名以上の転職・就職のマッチングを創出。Japan Referral Recruiting Award主催。