完全リモートで山形の酒蔵PRに挑戦!Chatworkで社内ネタを発掘するテクニックとは—「楯の川酒造」広報・高梨杏奈さん

今回は、伝統的な日本酒だけではなく新しいことに挑戦する蔵元、楯の川酒造株式会社の高梨杏奈さんに、広報・PRパーソンならではのリアルな企業広報のお話を伺った。
(インタビュー:編集部 若林)

子どもの成長から逆算し、コロナ禍での転職を決意

ミーティングルームの一角。

ミーティングルームの一角。

若林:高梨さんはユニークなキャリアを歩まれていますよね。これまでのご経歴を詳しく教えていただけますか。

高梨さん:2012年に大学を卒業しまして、20代前半は様々な職種を経験しました。新卒でマクドナルドに入社し、店舗運営などを行い、その後、地域活性系の会社で総務や経理、ECサイトのサポートなどを担当し、再度、マクドナルドの協力会社で、期間限定商品やハッピーセットのおもちゃの数量の確保をする仕事に従事していました。そして、前々職である映像制作系の会社で本格的に広報を始めました。

若林:BtoB広報ということですよね?

高梨さん:そうです。デジタル動画制作やロケ地の検索サイトを運営している会社でしたので、そういったサービスの広報をしていました。2.5次元の映画の広報にも少し携わっていましたね。

若林:その後、ご妊娠中に、(株)mofmofに転職されたのですよね。その頃から高梨さんのTwitterを拝見していました!可愛い名前の会社だったので、子育て系のサイトとかを運営してるのかなと思ったら、IT企業だったんですよね。(笑)

高梨さん:そうなんです。ロゴも羊なので、そういったイメージを持つ方も多いと思います。(笑)

若林:今年6月にコロナ禍で山形県に本社がある楯の川酒造に転職し現在に至るというキャリアですよね。…読み方は「たてのがわ」ですか?

高梨さん:「たてのかわ」ですね。お酒って、基本的に濁りがNGらしくて、濁点はつかないんです。

若林:そうなんですね!6月に転職をされて、転職活動も結構大変だったとnoteに書かれていましたが、なぜこのタイミングだったのでしょうか。しかも地方企業で、今までのキャリアにはない、BtoC企業の広報になりたいと思われたのですか。

高梨さん:様々な要因がありましたが、自分のキャリアと育児について考えた結果です。前職はコロナのタイミングでフルリモートワークに移行したのですが、コロナが明けたら出社しようという話になっていました。前職は、週1日リモートワークをコロナの感染拡大前から実施しており、すごく働きやすいと思っていたのですが、子どもが産まれて復帰し、今後の働き方に関してどうすべきか考えることが増えました。たとえば、ワーママの集まりでは、「小1の壁」についての話を耳にすることが多く、私の子どもは、来年、年少さんになる年齢なので、早い段階から小1に向けて計画的に進めていかないと厳しいなと感じていました。

自分はどのようにキャリアを積み、子どもの成長とうまくバランスを取っていくかを考えた時に、リモートワークも大事ですが、自分のキャリア的に、「リモートワークで働ける会社だけ」に狭めるのもよくないと思いまして。そのためには今のうちに自分のスキルをもっとあげていかないといけないと考えるようになりました。

前職では、社内広報や採用広報など、絞られた業務の広報が多く、社外広報の機会は多くありませんでした。でも、そこの力をつけていかないと、たとえば、独立してPRパーソンとして働いていくとなった際には、厳しいと思ったんです。また、BtoB広報の経験しかなかったので、BtoCも経験しておかないと、と。これが主な転職の経緯です。

若林:なるほど、そういった経緯で、いずれは独立も視野に入れ、キャリアの幅を広げようと今回の転職につながったのですね。
ちなみに、今でも本社には一度も行かれていないんですか。

高梨さん:まだなんです。酒造のメンバーは歓迎してくれているのですが、新型コロナもまだ終息していませんし、必要なタイミングで行ければと思っています。

ミッションは熱狂的なファンを増やすこと

社長の東京出張にて、リモート組が終結。この場が初めましての人も。

社長の東京出張にて、リモート組が終結。この場が初めましての人も。

若林:今、広報はお二人体制なのですか。

高梨さん:そうです。社歴が長く、蔵での製造経験もある方と業務分担をしながら広報をしています。これまではインバウンドの取材対応と採用広報をされていたのですが、私が入社したタイミングで部署ができ、今一緒に部署立ち上げを行っているところです。

若林:高梨さんの担当領域は何ですか。

高梨さん:主に社外広報です。リリース作成やメディアリレーションが今の主な活動です。もう一名に関しては、主に社内広報をになっており、社内報の構築や、営業も兼務してますので、コラボ案件の進行や販売会の対応をしています。

若林:入社される時に、広報として期待されていることがあったと思いますが、どんなことだったのでしょうか。

高梨さん:まず、「広報とはなんぞや」を会社に浸透させていくことと、対外的な発信です。

若林:今、高梨さんが掲げている広報部門としてのミッションは何でしょうか。

高梨さん:広報課のミッションとして掲げているのは、熱狂的なファンを増やすことです。そのためにまず認知を上げるというのが課題です。現在、一都三県に関しては、当社の商品を置いてくださっている飲食店や特約店も多いのですが、九州や北海道などはまだまだこれからです。また、会社自体にネタが豊富で、最近は働き方やSDGs、酒造DXの推進など、酒造としてはかなり新しい動きを取り入れていることも多いので、それらの情報をもっと発信していき、日本酒業界はレガシー産業と思われがちですが、そのイメージを覆し、日本酒業界全体がもっと盛り上がる発信をしていきたいなと思っています。

若林:リリースの9割以上が、商品に関わる内容ですが、首都圏や全国メディアでは、新商品といった切り口でもある程度掲載していくことができるかもしれませんが、九州や北海道など、地方のメディアに対して新商品アプローチだけだと厳しいですよね。そうなった時に考えてらっしゃるのが社内ネタなのでしょうか。それはそれで、また別に、地方に対しての認知度アップをするための施策を別軸で考えてらっしゃるんですか。

高梨さん:別ですね。地方に関してはBtoCでの認知獲得を進めようとしているので、マーケティングの動きと絡めて進めていければと思っています。10月にはブランドを統括するメンバーも入社したので、これから色々構築していく予定です。

全国的に知名度を上げたいと考えているので、まずは現在の認知状況を知るべくブランド認知調査もこれから始める予定で、今、設計を始めています。

リモートでのネタ収集のポイントは、毎日チャットワークで社員に響きそうな話題を発信すること!

利き酒練習会をオンラインとオフラインで実施したときの様子。WeWorkで実施したため、通った方には二度見されたとか。

利き酒練習会をオンラインとオフラインで実施したときの様子。WeWorkで実施したため、通った方には二度見されたとか。

若林:社内ネタも結構豊富だとお話されてましたが、入社してその会社のことを把握していくのって、結構大変ですよね。しかも、御社はリモート勤務されている方も多数いらっしゃるということで、どのように社内でコミュニケーションを図りながらネタを発掘されていったのですか。

高梨さん:例えば、チャットワークの雑談スペースを活用しています。

若林:みなさん、反応してくれましたか。

高梨さん:最初は全然でしたが、最近は盛り上がるようになりました。毎日、地道にニュースを上げていたところ、興味があるものには反応してくれるとわかり、継続してるうちに、チャットワークで会話が盛り上がるようになってきました。 

若林:チャットワークでの雑談の仕方や投げる情報など、何か工夫されましたか。

高梨さん:ABテストみたいな感じで、製造部門が興味ありそうな情報と、海外が興味ありそうな情報、日本酒好きが興味ありそうな情報を分けて、毎日バランス良く出して、皆の反応を見たりしていました。

若林:毎日積極的に情報を発信する中で、徐々に自社の情報が収集できるようになってきたということですか。

高梨さん:どちらかというと、私がある情報を投げながら「この会社はこうみたいですが、うちはどうなんですかね?」と聞くと、それについての回答がもらえるといったイメージです。

若林:なるほど、他社事例をケーススタディ的に出して「うちってどうなんですかね」と聞くと、わかってる人が「うちってこうだよ」と、教えてくれるということですね。

高梨さん:そうです。たとえば、最近日本酒界隈で話題になった「ICHI-GO-CANプロジェクト」というのが、個人的にはすごくいいなと思い、それを雑談チャットに投げました。その時に、弊社の社長が、コスト面を含めイメージ戦略のリスクなどを簡潔にコメントくださり、とても参考になりました。

社長もたまに雑談チャンネルに顔を出してくれるようになり、より盛り上がるようになってきたと感じています。

若林:やはり、トップが何を考えているか知ることができるというのは、広報として大きいですよね。

高梨さん:はい、ここ1ヶ月で様々な取材が入り、社長に話を聞く機会も増えました。また、結果が出てきたことで、私のことも信頼してくれるようになったのかなと感じることも多いです。

転職の挨拶をきっかけに全国紙で記事化。「働き方」で他メディアからも注目が集まるように

高梨さんのリモートワークの様子。

高梨さんのリモートワークの様子。

若林:朝日新聞の「テレワークで変わる転職スタイル」や、withLabの記事を拝見しましたが、それ以外にも結構取材が入っているのでしょうか。

高梨さん:はい、思ったよりも反響があり頭がパニックになってるのですが、朝日新聞での露出をきっかけに「おはよう日本」が決まりました。朝日新聞からの流れが結構ありまして、山形新聞の記事掲載や、さくらんぼテレビからの取材問い合わせにもつながっています。あとは、日本経済新聞の記者さんからも事業継承についての取材を控えています。(取材時点)

若林:日経は、山形支局ですか。

高梨さん:いえ、全国の方です。日経の山形支局の記者さんには、先日社長のインタビュー記事を掲載いただきました。

若林:楯の川酒造では、これまで商品以外の情報を積極的に発信するということは、なかったのではないですか。

高梨さん:なかったと思います。以前から、社長としても働き方についてもっと情報を発信したいという想いはあったようなのですが、対外的な広報をできる方がいなかったので、今回の露出は社長としても嬉しかったようです。

若林:朝日新聞で御社と同じ記事内で紹介されていた、ヘイさん、ニットさんって、全部PRマガジンで取材させていただいていたり、寄稿してくださっている企業なんです。広報の皆さんもつながっていて、一緒にアプローチをしたのかな?と思ったのですが、そのあたりはいかがですか。

高梨さん:全然違います(笑)。
私の場合、編集委員の方が、前職の時からのお知り合いだったので、転職のご挨拶とともに次の働き方についてお知らせしたところ、「その働き方、興味ある!」とお返事をいただき、詳しくお話したところ、「頃合を見て記事にしたい」と言っていただけたんです。それが、入社してすぐの6月くらいのことです。数ヶ月経ち、「具体的に記事にしていきたいのでもう一度取材したい」とご連絡をいただき、上司も含め取材いただいたところ、想定以上に大きな記事にしていただけまして。自分の写真がトップに上がっていて私も見た瞬間に驚愕しました。

新規メディア開拓には王道の「問い合わせ」も有効!?EightやTwitterも駆使

デスク周辺はこんな感じ。

デスク周辺はこんな感じ。

若林:今のお話から察するに、高梨さんって、メディアとの関係構築がお上手なのかなと思ったのですが、どうですか?

高梨さん:うーん、自分としては、積極的に話をするタイプでもないので、それほどリレーションが得意なタイプではないと思います。ただ、タイミングをみて「この人はこの話題だったら興味ありそう」と思った際に話をしにいくという工夫はしています。

若林:今、高梨さん自体もリモートですし、記者さんも前ほど出社していない状況で、新規にメディアの人脈を開拓していくのが難しいと思うのですが、どのように開拓されていっていますか。

高梨さん:割と問い合わせから情報提供しています。

若林:それはWeb媒体とかですか。

高梨さん:Web媒体もそうですし、新聞社でも「どうしてもこの方は気になる!」という記者さんでしたら、「この方のこの記事を見てすごく興味があるので連絡したいです」と名指しで問い合わせをすると、情報を渡してくれる時もあります。

若林:へえ~!
問い合わせのメールの内容が、記者さんに響くように魅力的に見せることができていたってことですかね。何か意識されてることはありますか。

高梨さん:闇雲に連絡するのではなく、先方が興味を持ってくださるような内容がない限りは厳しいと思ってますので、そこの情報の選定かと思います。

若林:その記者さんの追ってるテーマとかを見た上で、自社のこういう情報だったら興味を持ってくれるんじゃないかみたいなところをピンポイントで提供していくってことですよね。

高梨さん:そうですね。あとは名刺管理アプリのEightで氏名検索をして、「どうしてもあなたと連絡を取りたいんです!」と名刺交換リクエストすることもあります。
山形メディアはリレーションがなかったので、Eightで検索してつながった方も多いです。Eightだけでなく、地方メディアや連絡先が取れないときには、FAXでも情報提供をしています。FAXを見てくださり、画像が分からないのでメールで送ってほしいと連絡をいただく時もあります。

若林:地方の支局は、少ない人数で対応されていますし、情報量も首都圏と比べると少ないので、ちゃんと見てくれている感じはありますよね。ちなみに、記者との新たなリレーション構築で、EightやFAX以外に活用されているものはありますか。

高梨さん:Twitterですかね。フォローして仲良くなってきている記者さんもいらっしゃいます。例えば、セミナーで知り合った記者さんをフォローして、そこからちょこちょこ投稿に対してコメントをしていたら、向こうからもコメントをいただけるようになったり。
あとは、前職からの繋がりのあるメディアの方に紹介してもらうというケースもあります。

課題は現状の立ち位置や課題の把握~ブランド認知調査を実施

課題はブランドの現状把握である。

課題はブランドの現状把握である。

若林:今、高梨さんは楯の川酒造の認知を高めることに注力されていますが、そのためのPR手法はどのようなものを考えていらっしゃいますか。

高梨さん:BtoCの会社ですので、どうしても商品のプレスリリースは増えるのですが、商品以外の情報もメディアさんに伝えていけたらと思っていまして、色々なやり方を駆使して出していければと考えています。

若林:ちなみに、入社してからまだ半年も経ってないですが、楯の川酒造で広報に着手して、課題と感じられていることや、それに対して取り組み始めているアクションなどあれば教えてください。

高梨さん:課題としては、先ほども少し触れましたがブランドの現状把握です。現状は、会社としてもブランドが社会にどれくらい認知されているか肌感覚でしかわからない状況です。そのため、まずはブランドの現在地を知ることが重要だと考えています。その上で、どういった施策を展開するのか詰めていきたいです。ブランドの認知調査は、広報だけではなく、営業や商品開発にも活用できると思っています。

若林:ブランドの認知調査は、どのくらいの規模感で実施される予定ですか。

高梨さん:正直なところ、予算がそこまでとれないので、スクリーニングは全国を対象としますが、本調査は一都三県を予定しています。スクリーニング全国調査のサンプル数は2万サンプルの予定です。

若林:ちなみにターゲットは、お酒が好きかどうかは関係なくランダムに一般の方に調査されるんですか。

高梨さん:スクリーニングの際は、日本酒好きに限らずランダムに、本調査は、完全に日本好きの方々がどういう嗜好を持っているのかを調査しようと考えています。

若林:なるほど。そもそも、日本酒好きの方のほうが、好きになってもらえる可能性も高いですし、その方たちが楯の川酒造に対して、どういう想いをもってらっしゃるのか、知ってるのか知らないのか、どういうものを好んでいるのか、そういうことを調査されていくということなんですね。

高梨さん:そうです。日本酒を好きではない方だけをターゲットにすると多分認知度も1%くらいになってしまうと思うんですね。ですので、PR施策を展開しても1%が1.05%になったとかそれくらいの結果しか出ないと思うんです。なので、まずは日本酒好きの方に絞って調査を実施する予定です。

若林:結果が楽しみですね。毎年実施していくと、広報のKPI指標としても活用できますよね。

高梨さん:そうなんです!広報のKPIにも活用できる項目も入れたいと思っています。実は、入社時はマーケティング部に所属しており、KPIは売り上げに直結するような数字にしてほしいと言われたんです。でも、それは少し違うのではないかとお話しをさせていただき、今は経営企画室に移ったこともあり、認知度等をKPIにしていくのが良いのではないかと考えています。

もう一つの課題としては、この数ヶ月、かなり「攻めの広報」を展開しているので、「守りの広報」いわゆる危機管理にも下半期は着手したいと考えています。

若林:これまでのキャリアで危機管理には、あまり携わられていないと思うのですが、いかがですか。

高梨さん:前職で少し携わった程度ですので、これからキャッチアップしていきたいと思っています。ここは、経営企画の室長とも上手くコミュニケーションを取りながら進めるイメージですね。

若林:確かに、御社の業種は、人の口に入るものを製造するメーカーなので、最上位の危機管理が求められますよね。

高梨さん:これから売上や知名度が上がっていった時に、どこにリスクが潜んでいるかわからないので、先手を打っていかなければいけないと思っています。

SNS・メディアでの自己の働き方を発信し、これからのワーママに貢献

新仕込み蔵の様子。

新仕込み蔵の様子。

若林:楯の川酒造の入社前から、Twitterやnote、日経クロスウーマンのアンバサダーに就任される等、ご自身の情報を発信することに非常に積極的な姿勢をお持ちの方だと思っていました。これはセルフブランディングの戦略だったりするのですか。

高梨さん:日経クロスウーマンは、実は周りでアンバサダーをされている方が多く、以前から興味を持っていました。ただ、Twitterのフォロワーが1000人以上いないと応募できなかったので、そこを目指しTwitterを本格的に始めました。
自分に関しての情報発信は、セルフブランディングというより、ワーママのロールモデルが会社の中ではすごく少ないと感じていたこともありまして、自分の経験ややり方を発信することで、社会に対しても何かいい影響を生み出せたらと思ったことがきっかけです。

若林:日経クロスウーマンは、ご自身の経験をもとに、後進のためにも何か自分の経験が参考になればと思われ、コラムを書かれているということですね。

高梨さん:そうです。自分がちょっと特殊な経験きをしていまして。妊娠中の転職や半育休での復帰、コロナ禍でリモート転職など、従来的な働き方とは少し違うので、それがプラスなのかマイナスなのかわからないですが、ひとつのあり方として知っていただけるといいのかなと思っています。

若林:ちなみに講談社の雑誌『with』のwith labメンバーには、いつから入られているのですか。 

高梨さん:結構前です。少しでも編集部に近づけたらいいなという裏目的もあったのですが、特に何もなく(笑)。今年10月に『20代OLたちに「リアルにハマっているモノ」を聞いてみて分かったこと』で掲載されたのですが、これは私が元々クラフトビールがとても好きで、この企画は出すべきだな…!とという軽い気持ちで出したら通ったという経緯です(笑)。

若林:確かに、クラフトビールが好きって、Twitterでも結構おっしゃっていますし、日本酒メーカー勤務なのに?というところもおもしろいですよね。

意識低い系?のコミュニティ運営で「働く女性」そして「ひとり広報」の悩みを解決

楯の川酒造の蔵外観。

楯の川酒造の蔵外観。

若林:高梨さんはオンラインで「広報雑談会」と「ゆるゆるワーママ広報会」を運営されていますよね。

高梨さん:広報雑談会の方は、1年前から始めました。広報の方なら誰でもどうぞっていう感じで、一緒にメディア開拓をしませんかとか、月1で会って話しませんかとか、そういうのを繰り広げています。ワーママ会に関しては、半年前から始めています。以前、他のワーママ会に参加したことがあるのですが、皆さんの意識が高すぎて気負いしてしまって。もうちょっと気軽に相談しあえる仲間を作れる場として立ち上げた感じです。

若林:だからネーミングも、“ゆるゆる”なんですね。

高梨さん:そうなんです…参加させていただいたコミュニティは課題図書あって。それもなかなか難しそうな本で。仕事も家事もやって、さらに難しい本も読んで参加なんて私には無理!って(笑)。なので、ワーママ会は、事前準備も不要で、その場で、「今こういうことがあってどう思う?」とか、「夏休みの過ごし方どうしてる?」といった情報をシェアしています。

若林:確かにいいかもですね。人によるんでしょうけど、働いているママ同士って保育園出会っても、朝はバタバタしているし、お迎えの時間もバラバラだから、そんなに雑談ってしないですよね。特に仕事のことなんて。そんな中で、広報という同じ職種で、しかも働く女性でってなってくると、共感できる部分もきっと多いですよね。

高梨さん:生まれたての子を育てている方もいれば、これから育休に入る方、小学校や中学校のお子さんがいる方など、年代も様々なので、いろいろな視点で話が聞けて、毎回学びが多いです。

若林:ちなみに広報雑談会に関しては、なぜやろうと思ったんですか?

高梨さん:コロナで全然人と話せない状況が続いて、PR企画などの壁打ちがしたかったんです。それで、Twitterで一緒に話しませんか?って投稿したところ、思いのほか、多くの方から反応をいただきまして。最近は常連の方が他の方にも紹介してくださったりして、どんどん規模が大きくなってきています。

若林:他にも広報のコミュニティって、このコロナ禍でたくさん出来ているなと感じてるんですけど、メディアの方を呼んだ勉強会であったり、堅苦しくはないけど学び要素みたいなものを提供する会が多い印象でした。でも高梨さんは、あくまで雑談というか気軽な会を意識されているんですね。

高梨さん:はい、そうです!私がやっぱり意識低い人なので、勉強って聞くと「うっ…」となっちゃうんですけど、お互いになんとなく悩みとかを話しているうちに、「こういうやり方良かったよ」「それ、自社でもできそう!」と、自然と学びあえるんですよね。雑談だけど気付いたら他社広報のtipsを聞けていることがとても多いんです。普通にただ雑談するときもあるのですが、それはそれでいいと思っています。そこで仲良くなって、Twitter上で声をかけたりできるようになりますし。実際、雑談会きっかけで知り合った広報さん同士で企画が進んだ・記事になったという声を最近では聞くことも多いです。

若林:そういう感じで高梨さん自身もリレーションを広げていったり、新たな気づきをキャッチアップされているのですね。

高梨さん:ありがたいことに様々な方面から多くの方が来てくださってるので、そこでの気づきはとても多いです。

今後は「攻め」と「守り」のバランスを意識した広報を展開

高梨さん「個人としては、自分ができる仕事の幅を増やしていきたいと思っています。」

高梨さん「個人としては、自分ができる仕事の幅を増やしていきたいと思っています。」

若林:最後に今後の目標をお聞かせください。

高梨さん:楯の川酒造の広報としては、やはり知名度を上げて熱狂的なファンを増やしていくというミッションを着実に進めていきたいです。あとは「攻め」と「守り」のバランスを考えながら、広報課の立ち上げをしっかりやっていきたいです。

個人としては、自分ができる仕事の幅を増やしていきたいと思っています。もっと力をつけていきたいので、今やらせていただいているコミュニティもなるべく継続して、多くの方とお話をしていきたいです。広報は多くのやり方があると思うので、いろいろな方法を吸収したり、新しく広報になった方々の悩みを拾い、自分が解決できることがあったらアウトプットできたらと思ってます。

若林:ありがとうございました!

PRマガジン編集部の「編集後記」

編集後記:編集部 若林

キャリアは自分次第でいくらでも築ける

Zoom取材中の様子。

Zoom取材中の様子。

一昔前に比べると、女性も活躍しやすい世の中になった(と思う)。しかし、どうしても子どもをお腹に宿し、出産できるのは女性だけ。さらに理解のあるパートナーがいても子育ては大変だ。

でも、何より大事な存在になる。子どもは十数年したら手がかからなくなる。だから時短で勤務したり、契約形態を変えたり、転職を考えても子どもにそのしわ寄せがいかないように…。 小さいうちは「理想」とする働き方を、諦めようと考える方も多いかもしれない。

しかし、お母さんは子どものために何かを諦めなくてはいけないのか? 新型コロナウイルスにより、これまで以上に働き方が多様化した今、お母さんだって、ほんの少しの決意と体力で自分の理想とするキャリアを築いていける!

高梨さんのキャリアはそれを証明しているように思う。

フルリモートならではのコミュニケーション方法

社員とのコミュニケーションは広報にとって肝とも言える。だが、取材時点ではまだ本社に一度も行ったことのないという高梨さん。

コミュニケーションを取る方法は当然オンラインだが、どうやらポイントは“社員それぞれが興味を持ちそうな話題を送り続ける”ことにあるようだ。 メディアリレーションと一緒で、「相手の関心が何かを把握すること」と「諦めない心」がなにより大事と言えそうだ。

子育てしながら仕事をすることも、フルリモートも広報活動も、全部一筋縄ではいかず大変だけど、全部楽しそうに取り組んでいるのが素敵だ!

今回のPRパーソン紹介

高梨 杏奈(たかなし・あんな)

2016年に広報に出会い、映像・IT関連ベンチャー企業の広報を経て、2018年、妊娠中に株式会社mofmofへ転職。出産後、「半育休」で職場復帰。子連れ出社やリモートワークを駆使し、採用広報やサービス広報を行う。2021年6月山形県に本社がある楯の川酒造に広報として入社。プライベートでは、#広報雑談会や#ゆるゆるワーママ広報会を主宰。

楯の川酒造株式会社 (http://www.tatenokawa.com/ja/sake/company/

天保三年(1832年)創業。山形県酒田市に位置する酒蔵。伝統的な日本酒だけではなく、アートと掛け合わせた日本酒や食べるフルーツリキュールの製造・販売、 キャラクター「たてにゃん」のグッズ販売など、新しいことに挑戦する蔵元。
楯の川酒造OnlineShop (https://shop.tatenokawa.com/