テレビCMやネット広告のクライマックスでよく見る「続きはWEBで」というフレーズ。物語の一番いいところで情報が止まり、気になってつい検索してしまった経験はないでしょうか。
この「中途半端な状態がどうしても気になる」という心理現象は、「ツァイガルニク効果」と呼ばれています。この効果を利用した、広報PRパーソンがすぐ使える技術を紹介します。
この記事の目次
なぜ、広報PRに「ツァイガルニク効果」が有効なのか?
広告はお金を払って「枠」を買い、伝えたいメッセージを100%発信する手法です。一方、広報PRのミッションは、メディアや生活者に「自分から語りたい・取り上げたい」と思わせることにあります。
まじめな広報担当者ほど、プレスリリースや企画書に自社の良さをはじめからすべて書こうとしがちです。しかし、最初から100%の答えを渡された相手は「なるほど、わかった」と頭の中で完結してしまい、そこから先の行動(取材する、SNSでシェアするなど)を起こす気持ちをなくしてしまうことも多いです。
たとえば記者の「もっと深く調べて記事にしたい」、生活者の「これってどういうこと?」という自発的な好奇心を引き出すには、あえて情報をすべて出さない「引き算の考え方」が大切です。相手の頭の中に「?」という未完了の余白を作ることで、次の行動を引き出せるのです。
広報PRの実務で使える3つのアプローチ
では、日々の広報活動の中でどうやってツァイガルニク効果を使えばよいでしょうか。今日から実践できる3つの場面を紹介します。
1. プレスリリースの「タイトル」とメールの「件名」
毎日何百通ものプレスリリースを受け取る記者に対して、最も大切なのがタイトルで「引き」を作ることです。タイトルだけでニュースの内容が全部わかってしまうと、本文を読んでもらえません。ここでは意図的に「情報の差」を作ります。下に例をあげます。
「〇〇社、AIを活用した新しい勤怠管理システムを10月1日より発売開始」
→ 記者の反応:「よくある新製品の発表か」とタイトルだけで流されてしまう。
「残業ゼロ企業はなぜ『退勤ボタン』をなくしたのか?〇〇社が挑む新しいAI勤怠管理」
→ 記者の反応:「なぜ退勤ボタンをなくしたの?どうやって管理しているの?」という疑問が生まれ、本文を開きたくなる。
2. ティーザーPR(段階的な情報公開)
新商品や大きなプロジェクトを発表する際、初日にすべての情報を出すのではなく、あえて少しずつ情報を出して注目や推測を呼ぶ手法です。情報が不完全な期間が長いほど、最終的な「本発表」の盛り上がりは大きくなります。
具体的には、特設サイトで「謎のカウントダウン」を始めたり、メディア向けに一部を黒塗りにした「先行プレスリリース」を配信したりする方法があります。生活者や記者の間で「一体何が始まるの?」「どんなブランドが関わっているの?」という話題がSNSやWEBメディアで自然に広がり、発表日そのものを大きなイベントにできます。
3. 「失敗・弱点」から入るギャップ・ストーリーテリング
「成功」や「すぐれた機能」だけを伝えるストーリーは、そこに余白がなく、記者の記憶に残りにくいという弱点があります。そこで、あえて「大きな失敗」や「自社の未熟な点」というマイナスな話から語り始めるアプローチが効果を発揮します。
たとえば、メディアへの企画提案の場で「この事業は、過去3回の深刻な失敗から始まりました」や「実は私たちのサービスは、〇〇な人にとっては全く役に立ちません」と話します。これを聞いた相手の頭には「なぜそんな失敗を?」「じゃあ、なぜ今うまくいっているの?」という強い「理由を知りたい」気持ちが生まれます。
こうしたモヤモヤの感情の先に自社の強みを語ることで、深い取材や密着取材などにつながりやすくなります。
すべてを語らない「勇気」を持つ
情報があふれる今、生活者もメディアも「きれいに整った説明」には目を向けません。心に引っかかるのは、いつもどこかに「未完成な余白」を残したメッセージです。
良い広報PRパーソンになる第一歩は、自社の魅力をすべて伝えきりたいという気持ちをグッとこらえ、あえて一歩手前で止める勇気を持つことです。これから届ける情報に、相手が自分から入り込める「すき間」はあるのかどうか。日々の発信をふり返る際、ぜひ「ツァイガルニク効果」という視点を取り入れてみてください。
【ニックネーム】らめにき
【これまで担当した業界】コンサルタント・健康・教育・DX・企業PR
【趣味】音楽鑑賞・野球観戦・バンド・ライブハウス・数学・ラーメン・カラオケ
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