【元テレビマン】が教えるスマホでつくるPR動画 撮影編

スマホでつくるPR動画 撮影編

少しの工夫でスマホでPR動画は撮影できる

マーケティングへの動画活用のニーズが年々高くなっていることはPRを担当する方なら感じていると思います。商品やサービスのPRにはじまり、商品の使い方やEラーニングなど用途は多岐にわたっています。

しかし、チャレンジしなければならないと分かっていても「動画制作ってどれくらい予算を組めばいいの?」「どう発注したらいいのかわからない」という不安の声をよく聞きます。
かつてテレビ番組制作会社でのディレクターをしていた私のおすすめは、まずは自社で作ってみるということです。もちろん映像のプロに発注するのがベストですが、きれいな映像だからといって話題になるかというのとそうでもないのが、現在の動画市場の面白いところです。手作り動画だからこそ、多くの人の刺さったというケースもたくさんあります。

必要なのは基本的にスマートフォンのみ、工夫すればいくらでも低予算でできるのでお試しで撮ってみても損はないと思います。今回はスマートフォンでPR動画を上手に撮影するための注意点とコツをご紹介していきましょう

いつも持ち歩いているスマートフォン。プライベートでは、カメラ機能を使って写真や動画を撮影していると思います。実は、スマートフォンのカメラ機能を使って簡単にPR動画を撮影することができるんです。実際、スマートフォンのカメラ機能の進歩は著しく、画質や感度、オートフォーカス機能だけを見ればプロのカメラと遜色がない状況です。つまり上手に活用すれば、スマートフォンでも十分、PR動画を撮影できるのです。

動画を撮るときはスマホは横!

番組の製作側だった私は、テレビを見ていてすごくもやもやする瞬間があります。縦長の映像がテレビで放送されているときです。横長のモニターの画面の左右が黒く表示されているのを見たことはありませんか? せっかく面白いシーンが撮影できているのに映っている部分は中央だけなんてもったいない!

みなさんは、スマートフォンで撮影する際、カメラの向きを気にしたことはありますか?
スマートフォンで動画を撮影する際によくやってしまう失敗の一つがスマートフォンの向きを間違えてしまうことです。

テレビやパソコンの画面は横長の長方形になっており、視聴する映像も横長なっています。これでも見ることができないわけではありませんが、せっかくなら画面いっぱいを使って表現したほうがよいでしょう。

もしあなたがパソコン画面やテレビモニターで視聴してもらうPR動画を制作する場合は、スマートフォンを横にして、画面が横長の動画になるように撮影して下さい。
ただし、SNSで見られる動画は、正方形や縦長の動画も多くあります。もしSNSで活用するPR動画を制作する場合は、逆にスマートフォンの向きを縦にして撮影するのも良いでしょう。
まず撮影する前に、制作するPR動画をどのメディアで配信するかを確認し、そのメディアに合わせた向きで撮影しましょう。

三脚を使って撮影しよう


手軽に撮影できるのがスマートフォンの魅力ですが、PR動画を撮影する際、問題になってくるのが手持ち撮影による手ブレです。
手ブレがひどい動画はやはり集中して見続けることができないので、PR動画には向いていません。とはいえ、やってみるとわかると思うのですが、スマートフォンで手ブレをせずに撮影するのはなかなかの至難の技。そこで使用して欲しいのが三脚です。

現在、スマートフォン用に作られた小さい三脚や、カメラ三脚にスマートフォンを取り付けられるアタッチメントが家電量販店などで沢山売られています。

特に、しっかりと見て欲しい商品カットは三脚を使って撮影することをオススメします。
また三脚を使うことによって安定した撮影ができるので、撮影に余裕を持つことができます。そうすることで、構図にこだわったり、演出により集中する事ができます。
また三脚は据え置きにして使うだけでなく、脚を閉じて握って使うこともできます。こうすると片手でも安定させることができて便利です。

もし、三脚を使用できない状況で、手持ちで撮影しないといけない場合は、しっかりと両手でスマートフォンをホールドし、脇をしめて撮影すると安定した手ブレの少ない動画を撮影することができます。

なるべく足を使って撮影しよう

スマートフォンで少し遠くにあるモノを撮影したり、画面いっぱいに撮影したい場合、多くの方がズームをして撮影することが多いのではないでしょうか?

しかし、スマートフォンでPR動画を撮影する場合は、なるべくズームを使用しないことをオススメします。デジタルカメラやビデオカメラでのズーム機能は、基本、光学式という方式をとっておりズームをしても画質は落ちないのですが、スマートフォンはデジタル式のズームのため、ズームで拡大すればするほど動画の画質が低下してしまいます。ですから、スマートフォンで撮影する場合は、なるべく撮影対象に近づいて、ズームを使わずに撮影しましょう。

実際、スマートフォンのカメラレンズは、広角(ワイド)レンズを採用している事が多いので、近づいて撮影した方がダイナミックな映像が撮影できるはずです。

きれいに録音するためにワザ

冒頭でスマートフォンの機能は、プロのカメラと遜色がないと書きましたが、やはりスマートフォンのカメラ機能にも限界があります。それがマイクの問題。スマートフォンのマイクは、ビデオカメラのような指向性があるマイクではないため、ノイズ(雑音)を多く収録してしまう欠点があります。

そのためインタビューなどの同録(動画と音声を同時に収録する)の場合は、ICレコーダーを別に用意するなどの工夫が必要になります。また屋外で撮影するときも風の音や周囲のノイズが入りやすいので録音したい出演者などの近くにICレコーダーを置いておくと安心です。

ICレコーダーで別に収録した音声は、編集時にスマホで撮影した映像と合わせる(同期)ことができます。撮影のときには、予め録画をスタートしておき、映画監督のように「よーい、スタート!」と手を打ち鳴らして出演者に合図すると音声と映像の同期がしやすくなります。

背景に気をつけて

PR動画で商品などを撮影する場合に特に気をつけて欲しいのが背景です。
たとえば、机の上に置かれた商品を撮影する場合、机の上には商品以外のモノが無いように片付けましょう。そうすることで、視聴者の気が商品以外のモノにそれてしまうことを防げます。
また商品の下にテーブルクロスや色紙を敷いて撮影すると、より美しく商品カットが撮影できます。

場合によっては生活感あふれる背景で撮影したほうがいい場合もあるでしょう。しかし、それはプロでもステキに魅せるのは難しく、「美術さん」「小道具さん」と呼ばれる専門職がいるほどです。

重要なのは、視聴者にしっかりと商品を見てもらうことです。その視点に立ち、どうすれば商品に集中してもらえるか、より商品が良く見えるかを考えて工夫してみて下さい。

また人物を撮影する場合は、レンズの特性を生かし、背景が少しボケるように撮影すると、一味違う動画を撮影できます。

背景をボケさせるコツは、人物の背景をなるべく奥行きのある場所を選び、できるだけ手前に人物を配置して撮影することです。背景にどうしても壁などが映り込んでしまう場合は、なるべく背景と人物の距離を離して撮影すると良いでしょう。

編集のことを考えて撮影しよう

撮影を終えると、完成した気分になりがちですが、ここから編集作業が待っています。編集作業では、撮影した動画を素材として組み合わせて一つの動画を作成します。プロの私たちでもそうですが、撮影現場は非常に楽しいものです。現場で思いついたアイデアをどんどん試したくなってしまうことも度々です。しかし、プロの場合は予算も時間も限られています。それに思いつくまま撮影した場合大変になるはこのあとの編集作業です。

よりよいPR動画を作成するコツは、撮影時から編集のことを考えて撮影することです。あとで考えればいいかと適当に撮るのではなく、全体構成と動画同士のつながりを意識して、撮影してみて下さい。

また、同じモノをサイズ違いで撮影しておくこともオススメです。

例えば、商品を撮影する際、先ずはヒキ(商品全体に余白ができる程度の大きさ)で撮影し、次にヨリ(商品全体がトリキリになる大きさ)で撮影しておきます。そうする事で、PR動画にアクセントがつきますし、編集で動画を並べる作業も楽になります。
また、PR動画にテロップ(テキスト)や字幕をつける場合は、それを挿入するスペースをあらかじめ空けて撮影すると良いでしょう。

まとめ

スマートフォンでの動画撮影はほとんどお金もかからず、思いついたらチャレンジできるのが最大のメリットです。実際に撮影してみると自分のやりたかったことなども見えてくることがあります。まずは気負わずに撮影してみましょう。

映像ディレクター/プランナー 中山章太郎
【これまで担当した業界】 専門商社、人材開発研修・教育、美容健康、通信、出版など高校から映像制作を始め、大学院卒業後はテレビ制作会社で経験を積み、2014年より独立。動画を使ったPRのプランニング、撮影ディレクションから編集、グラフィックまでをこなす。