メディアに自社の人物やサービスが掲載されたとき、その記事を営業資料に使いたい、社内で共有したい、SNSで発信したい――広報担当者なら誰もが一度は考えることでしょう。
しかし、「メディアに取り上げてもらったのだから、自由に使っていいはず」という思い込みは危険です。記事の無断コピーや社内イントラネットへのアップロードは、著作権法に違反する可能性があります。
さらに2026年現在、生成AIの普及やTVer等の配信プラットフォームの拡大により、「二次利用」をめぐる環境は以前よりも複雑になっています。
今回は、2024年8月に公開した本テーマの記事をアップデートし、最新の法制度やAI時代ならではの注意点も含めて整理します。
この記事の目次
1. 著作権の基本――まず押さえるべき大原則
メディアに掲載された記事や写真は、著作権法によって保護されています。著作権者は通常、記事を制作したメディアやライターであり、その許可なく記事を複製・配布することは著作権侵害にあたります。
よくある誤解が「自社が取材を受けた記事だから自由に使える」というもの。取材対象であっても、記事の著作権はあくまでメディア側にあるのが原則です。
社内イントラネットへのアップロード、スキャンしたPDFのメール配布、営業資料への貼り付け――いずれも無断で行えば著作権侵害のリスクがあります。
2. 合法的に二次利用するための方法
記事を二次利用したい場合、以下の方法で許諾を得るのが一般的です。
(1)著作権者に直接許諾を得る
メディアの著作権担当部署に連絡し、利用目的・利用形態・利用期間を説明した上で許諾を得ましょう。案件によってはスムーズに許可が出ることもありますが、原則として事前確認が必要です。
(2)許諾料を支払って利用する
大手新聞や雑誌の場合、記事の二次利用には許諾料の支払いが求められるのが一般的です。新聞著作権協議会に加盟している新聞社については公益社団法人日本複製権センターに、加盟していない新聞社については個別に連絡して許諾料を支払うことになります。
利用形態(社内回覧、HP掲載、営業資料への転載など)によって費用は異なりますので、個別の確認が必要です。
(3)クリッピングサービスを活用する
記事の二次利用許諾を一括で処理してくれるクリッピングサービスを利用する方法もあります。許諾取得の手間を省きたい場合には有効な選択肢です。
3. 許諾なしでも認められるケース
著作権法上、以下のようなケースでは著作権者の許諾なしに著作物を利用できます。
私的使用のための複製
著作権法で「個人的に、または家庭内その他これに準ずる限られた範囲内で使用すること」と定義されています。ただし、企業の業務目的での使用は私的使用にはあたりません。「社内だから私的使用」と考えるのはNGです。
教育機関での使用
学校教育法に定められた教育機関(小・中・高校、大学など)で、授業で使用するためにプリント教材や試験問題等に利用する場合。なお、予備校・塾等は対象外です。
正当な引用
他人の著作物を自分の著作物の中で引用する場合は、出典の明示、引用部分と自分の著作部分の明確な区別、引用の「主」と「従」の関係など、著作権法上のルールを満たせば許諾なしで利用可能です。ただし、記事全文の転載は「引用」にはあたりません。
4. リンクの共有はOK?──正しい理解を
Web上の記事のURLを共有すること自体は、著作権侵害にはなりません。リンクURL自体は「著作物」ではなく、リンクを張る行為は、ユーザーをリンク先のWebサイトに誘導しているだけだからです。
メールやSNS、社内チャットでURLをシェアすることで、著作権の問題を回避しながら社内外で記事情報を広めることができます。
ただし、以下の点には注意が必要です。
● URLとともに記事本文を大量にコピペして共有するのは、リンク共有ではなく「複製」にあたる可能性があること
● SNSでの共有時、OGP(リンクプレビュー)で表示されるサムネイル画像や抜粋文の範囲を超えて記事内容を転載しないこと
5.【2026年の新論点】生成AIと著作権リスク
2026年現在、広報・PR業務に生成AIを活用するケースが急増しています。プレスリリースの下書き、SNS投稿文の作成、プレゼン資料の要約作成など、活用範囲は広がる一方です。
しかし、生成AIの活用には、メディア記事の二次利用とも密接に関わる著作権リスクが存在します。
(1)AIに記事を読み込ませて要約・リライトさせる行為
メディア記事を生成AIに入力して「要約して」「リライトして」と指示する行為は、記事の複製にあたる可能性があります。AIを通じた加工であっても、元記事の著作権は消えません。「AIが書き直したからオリジナル」という認識は誤りです。
(2)AI生成コンテンツの著作権侵害リスク
生成AIが出力したコンテンツが、既存の著作物と類似している場合、著作権侵害となる可能性があります。文化庁は「生成物に既存の著作物との類似性及び依拠性が認められる場合」は著作権侵害にあたるとの見解を示しています。
(3)AI生成物自体の著作権
AI単独で生成されたコンテンツには、原則として著作権が発生しないとされています(人間の「創作的寄与」が認められれば例外あり)。つまり、AIが作成した広報資料を他者に無断で利用されても、著作権で保護できない可能性があるということです。
広報担当者としては、「AIを使えば著作権の問題をクリアできる」のではなく、「AIを使うからこそ新たな著作権リスクが生じる」という認識を持つことが重要です。
6.【2026年の新論点】TVerなど配信プラットフォームとの混同に注意
テレビ番組のTVerでの見逃し配信や、番組公式YouTubeチャンネルでの公開が拡大したことで、「ネットで見られる=二次利用できる」という誤解が広まっています。
しかし、TVerや公式YouTubeチャンネルでの配信は、あくまで放送局側が正規に行っている公式な提供です。視聴者がその映像をキャプチャして自社資料に使ったり、SNSにアップロードしたりすることは、従来と同じく著作権侵害にあたります。
「テレビで紹介された」という事実を伝えたい場合は、番組名・放送日時を記載した上で、「○○番組で紹介されました」という事実のみを自社サイト等で告知するにとどめるのが安全です。映像のキャプチャや番組ロゴの無断使用は避けましょう。
7. 法的リスクを最小化するためのチェックリスト
記事の二次利用に際しては、以下のポイントを確認する習慣をつけておくことをおすすめします。
● 許諾の範囲(利用形態・期間・媒体)を書面で確認しているか
● URLの共有で済む場合は、リンク共有にとどめているか
● 生成AIに記事を入力する場合、著作権上の問題がないか確認しているか
● TVerや公式YouTubeの映像を、許諾なく自社利用していないか
● 社内向けの共有であっても、「私的使用」に該当しないことを理解しているか
まとめ
メディア記事の二次利用は、広報活動の成果を社内外に伝える上で非常に重要な施策です。しかし、「良かれと思って」行った共有が、知らないうちに著作権侵害になっているケースは少なくありません。
2026年の今、生成AIの普及や配信プラットフォームの拡大によって、「二次利用」の境界線はさらに曖昧になっています。だからこそ、基本に立ち返り、「迷ったらまずメディアに確認する」という姿勢が、広報担当者にとって最も確実なリスク回避策です。
リンクや記事引用の場合も含め、HPやプレスリリースへの掲載、社内LANでの利用、生成AIへの入力を希望する際は、まず発信元のメディアや著作権協会に連絡・ご相談いただくことをおすすめします。


























