「食べチョク」を意識しだしたのが「シューイチ」での秋元社長と中山秀征さんの対談。コロナ禍で出荷量が減る農家の救世主として取り上げられていた。その後も様々なシーンで「食べチョク」を見る機会が増えた。
それもそのはず。後々、秋元社長のnoteで知ったことだが5~7月の3か月で 、1000件以上のメディアに露出していたそうだ。このnoteがきっかけで、一体どんな凄腕広報が話題を仕掛け、この怒涛の取材ラッシュを裁いたのか取材したくなり、下村さんに取材をオファーさせていただいた。
今回は「地域経済を回す仕組みづくりをしたい」との想いから「食べチョク」を運営する、株式会社ビビッドガーデンの下村彩紀子さんに、広報・PRパーソンならではのリアルな企業広報のお話を伺った。
(インタビュー:編集部 若林)
この記事の目次
- 交渉スキルを身につけるために、大学時代は飛び込み営業の世界へ!
- 「地方で生まれ育った自分」にできることを追求し、ビビッドガーデンへ
- 他社サービスとの差別化をはかる、広報の重要性
- コロナ禍であえぐ生産者に寄り添い、消費者を惹きつける企画の連打でカオスなほどの急成長を!
- テレビ取材獲得に導いた、“ファッション誌”に見出す「食べチョク」との親和性と着眼点
- 五大紙の掲載や、バラエティ密着取材などにつながった、露出の連鎖を巻き起こす「逆転発想」
- 「表現者」たちと共に暮らし、人を見つめながら、「生産者が正当に評価される世界」を目指していく
- PRマガジン編集部の「編集後記」
- 3ヶ月間で1000件以上の掲載を獲得
- “人のキモチ”に寄り添う広報パーソン
- 今回のPRパーソン紹介
交渉スキルを身につけるために、大学時代は飛び込み営業の世界へ!
下村さん:本日はよろしくお願いします。背景って、これでいいですか?普通の壁の方がいいでしょうか?若林:大丈夫ですよ!壁紙は、みなさんで名刺っぽく合わせているんですか?
下村さん:そうです!「食べチョク」のデザイナーがつくってくれました。
若林:素敵ですね!早速ですが、下村さんはご実家が新潟県魚沼市のユリ農家なんですね。
下村さん:はい、今も叔父といとこがユリ農家を営んでいて、幼い頃から農業に近しい環境で育ちました。地域に農家や家庭菜園をやっている家が多く、家に帰ると玄関先にこんもり野菜が置いてあってご近所にお礼に行く、といった環境で育ちました。
若林:そうなんですね、魚沼ってお米も有名ですよね。
下村さん:魚沼産コシヒカリがおそらく一番有名だと思います。一年間の田んぼの変化を近くで感じるのが当たり前の環境で生きてましたね。
若林:大学は東京ですか?
下村さん:青山学院の短期大学に進学しまして、そこで一人暮らしをはじめました。
若林:ご経歴で驚いたのが、学生時代、生命保険の営業や、自動販売機の設置場所を増やすための飛び込み営業をされていたんですね!
下村さん:そうなんです。私は社会人になったら、人対人のお仕事につくだろうと思ったので、学生のうちにわかりやすい実績をつくりたい、まずは対人スキルや交渉スキルを身につけたいと思い、営業系のインターンや個人事業主を選びました。
若林:交渉スキルをつけたいとはいえ、生命保険の営業って厳しいじゃないですか。自販機の飛び込みはもっときついと思いますが、よくそこを選びましたね。
下村さん:当時は一番スキルがつく仕事がしたかったので、無形商材の営業は難易度が高いのではと考え生命保険にしました。そのあとに、より難易度の高いtoBの営業もやってみたいと思った時に見つけたのが自動販売機でした。がむしゃらに頑張った結果、生命保険のインターンメンバーの中で一日のアポイント件数が1位になったこともあります。
若林:ちょっと意外だったのですが、卒業後は、ネオキャリアさんに入社されたんですね。
下村さん:私は短大卒でしたので、四大卒と同じフィールドで評価されるフラットな環境と、最短で成長できる環境を探していて、フィット感があったのがネオキャリアだったんです。2年間営業に就いたあと、新卒採用の人事をやらないかというお話を頂き、採用広報や採用マーケティングに携わるようになりました。
それまではずっと、一対一の営業をやってきたのですが、採用広報や採用マーケティングはひとつの仕掛けによって、変数的に効果や反応が変わっていくので面白かったです。人事では、当時もっとも課題だったターゲット学生からの応募数を3倍に引き上げることができたことが成功体験になりました。
「地方で生まれ育った自分」にできることを追求し、ビビッドガーデンへ
若林:そこから、「食べチョク」を運営されているビビッドガーデンさんに転職されたということで、入社までの経緯を伺ってもいいですか。下村さん:1度きりの人生で、私がチャレンジしたいことはなんだろう、スキルを積み上げていった先に何をしたいんだろう、と改めて自分に問い直してみた時に、大きなアイデンティティだと気づいたのが、「地方で生まれ育ったこと」でした。出身地である新潟の魚沼にこだわっているわけではないのですが、田舎の中にも、伝統工芸品や観光地、文化、お祭りなど、まだ知られてない魅力的な資源がたくさんあると思い、潜在的なものをより顕在化させて、地方の経済を回していく仕組み作りをしたいと考えるようになりました。
もやもや考えて帰省した時に、ユリ農家を営むいとこと話す機会があり、「球根は高いのに、売値が変わらないから、なかなかユリ農家って儲からない」とか、「つくることにはプロフェッショナルだけど、どうやって売っていくのかイメージできない生産者は多い」とか、「台風などの自然災害があると、全てが0になる」といった悩みを聞き、生産者さんの販売先の多様化が実現できたら、売り上げや経営に悩む生産者さんの数は減っていくのかもしれないとぼんやり考えるようになりました。そのわずか1週間後に、ビビッドガーデンに出会いました。
若林:どのように出会ったんですか?
下村さん:いとことの話を知り合いの経営者に話したらビビッドガーデンの名前が出て、代表の秋元の記事を読んだことがきっかけです。事業や秋元の想いが私の想いとドンピシャで、「ここで働きたい!」と思いました。ちょうどビビッドガーデンが1人目の広報社員を探していたタイミングと重なり、私もスタートアップで1人目の広報をやりたいと考えていたので、入社に至りました。
若林:その当時は、広報のキャリアはなかったですよね?
下村さん:はい。ただ、採用広報をやっていたのは大きかったです。会社の魅力を伝えていくという仕事を通して、本当は価値があるのに、うまく伝え切れてないものって、たくさんあるんだろうなと考えるようになったんです。そこでより地方に根付いたものをPRしていくような仕事をしていきたいと考えるようになりました。ネオキャリアの時、広報の部署が隣でしたので、業務がある程度イメージできたことと、性格的にも未経験でのチャレンジに対して物怖じしないタイプではあるので、やれるだけやってみようと突き進んでみました。広報未経験なのに採用してくれた代表の秋元にとても感謝しています。
若林:なるほど、物怖じしない…。インターン時代の話を聞いたので、「でしょうねー」としか言えないですね(笑)。その当時、ビビッドガーデンさんは、社員数が10人くらいの規模感でしたよね?
下村さん:8名くらいでした。ちょうど、シリーズAの調達を発表する直前に入社したので、プロダクトとしてようやく形になりはじめた頃で、利用者の数も、ここからどんどん増やしていこうというタイミングでした。
若林:なるほど、これまでの露出を拝見していると、創業当時は、女性起業家として秋元社長が取り上げられているのが多い印象でした。それが、2019年の秋頃くらいから露出の内容が変わってきたので、その頃に広報に注力しだし、下村さんの採用でさらに広報を強化して、今に至るのかなと思いましたが、かなりの露出を獲得していたので、まさか広報が1名だとは思っていませんでした。今は、大学生のインターンが2名いらっしゃるんですよね?
下村:はい、メディアさんに向けた新規アプローチの企画づくりや、取材をお受けすることが増えてきたので、アシスタントとして、食材の準備や生産者さんへのお声がけなど、ほかの業務との兼業でいろいろ手伝ってくれています。
他社サービスとの差別化をはかる、広報の重要性
若林:広報のミッションが、「食べチョクの売り上げに起因する露出をつくること」とのことですが、このあたりも、もうちょっと詳しくお聞きしてもいいですか。下村さん:「食材を買う」サービスは様々ある中で、「食べチョク」を選び使っていただくためには、広告だけでなく、私たちが何のために食べチョクを運営しているのかといったストーリーを伝えていくことが、他のサービスとのもっとも大きな差別化になると考えています。広報は、そういったストーリーを伝えていくことに適していますので、会社として、力を入れています。また、関東に住んでいると、第一次産業に触れることがなかなかないと思うので、どういった生産者さんが、どのようなこだわりを持って作っているといった情報や、災害などで困っている状況を伝えていくことも、私たちのミッションだと思っています。
若林:広報活動の目標として3つのことを掲げられていますね。
(結果目標)指名検索数
(露出目標)注力媒体掲載数
(行動目標)アプローチ数(プレスリリース/ニュースレター/それ以外)
まず、指名検索数を増やすということについて教えてください。これは、Googleの?でしょうか。また、前年比の何%アップとか、そういう感じですか?
下村さん:はい、Googleでの検索です。伸び率が数百倍に増えているので、前年比ではなく、毎月、指名検索数と注力媒体の掲載数、アプローチ数を設けています。ただ、数を絶対増やすという方針ではなく、届けたい人に、伝えたいメッセージを、これまでにない形で意図して届けられているかというのが一番重要な指標になっています。
若林:なるほど、次に露出目標で、注力媒体掲載数と書かれてますが、プレスリリースの配信だけでなく、直接コンタクトもとっていかれると思うのですが、下村さんが一件ずつ、飛び込みで電話をして情報提供されてるんですか?
下村さん:基本的にはメールでご連絡して、興味を持っていただいた方にお電話するというのが大きな流れです。一個のメディアに載ると、そこから連鎖的に取材依頼をいただくことも多いので、小さなネジから大きなネジを回していくような連鎖を意図してやっています。ですので、まずは、検索をした時にヒットするようなWEB系の媒体に注力し、そこから、ラジオ、雑誌につなげ、新聞やテレビにという連鎖をつくりだせるようにアプローチ媒体を決めていたりします。そもそもの戦略として、まずは代表の秋元を経済系の番組にガンガン露出させていったのですが、フェーズが変わり、2020年に入ってから30〜40代の購入者層にきちんと情報を届けるため、ファッション雑誌や料理雑誌、情報バラエティや情報番組に裾野を広げていきました。
若林:「がっちりマンデー!!」さんや「シューイチ」さんも、意図的に取りにいった感じなんですか?
下村さん:お声がけ自体は先方から頂いてはいますが、意図的にアプローチはしていました。
若林:いつくらいからアプローチを?
下村さん:私が入社して間もない頃からなので、昨年の11〜12月くらいからアプローチをし始めて、1月くらいからつながりが出来はじめ、企画になったのは5月でしょうか。初めてのやりとりから企画につながるまでのリードタイムが長いことはよくありましたので、少しずつ、メディアさんとの人脈を増やしていきました。
若林:やっぱり、新型コロナウイルスの影響も大きかったですよね。
下村さん:そうですね、生活の価値観がガラリと変わった方が多かったのではないでしょうか。今までは、スーパーに並ぶ野菜の生産者さんにまで想いを馳せるって、なかなかなかったと思うんですが、今回のコロナをきっかけに、この先には生身の人間の生活があると実感した方も多いと感じています。
一方生産者さんは、ご自身で販路を積極的に開拓していた方ほど、飲食店やホテル、道の駅など、様々な販路が止まり、一気に売り上げが9割減というような現象が全国的に起こってしまいました。そのため、今後のために新しいチャレンジをしていかないといけないと考える方が増えたように思います。直販もその一歩として、消費者と直接つながって自分の農園のファンを作っていくことの大切さを実感された生産者さんもいらっしゃったと思います。
コロナ禍であえぐ生産者に寄り添い、消費者を惹きつける企画の連打でカオスなほどの急成長を!
若林:下村さんがウォンテッドリーに書かれた「セブンルール放送から約半年の食べチョクの変化」という記事を拝見したのですが、すごいですよね、2019年9月に「セブンルール」が放送された時には450件だった登録生産者数が、2020年の4月には950件を突破して、登録ユーザー数が5,6倍に! 数字だけ見てもすごいですけど、コロナが始まってから、御社はいろいろなリリースを出され、めまぐるしく新しいサービスやタイアップなどを展開されていて、怒濤のような半年だったのではと思いますが、そのあたりは広報としていかがですか。下村さん:めまぐるしく会社が変化していったので、怒涛でしたが個人的には楽しかったです(笑)。現時点での登録生産者数は2800軒を超えていて、2020年2月から8月でユーザー数も17倍になりました。広報としては、よりスピード感とインパクトを求められるようになったので、今やっている仕事は事業成長において最適なのかをこれまでより俯瞰して考えるようになりました。
若林:2020年の5〜7月まで1000件以上メディアに掲載されたと秋元社長がnoteで書かれていましたが、コロナがはじまってから今に至るまで、どういう広報戦略のもとで、どのような活動に注力されてきたんですか。
下村さん:時代の変化に伴って、生活様式や食生活に関する価値観も変わっていっているということを伝えてきました。戦略としては、生産者と消費者のほか、求職者、コーポレート、自治体に対し、「こういうメッセージを伝えていきたい」というのをそれぞれ決めていて、対象に届けるためのベストな媒体を考え、そこから逆算して、企画を作りプレスリリースを打ちました。たとえば、レシピ付きの食材をシェフとコラボして、おうちでも本格シェフの料理が楽しめるような企画や、「シェアダイン」さんという出張料理サービスと連携して、おうちでもシェフがつくってくれる料理があるとか、そういった企画をたくさん打っていったのが、このタイミングでした。
加えて、「美味しい食材が手に入る産直サイトです」と、文字や言葉で見聞きしてもわかりづらいと考え、購入体験をストーリーで伝えていけるような広報活動をしています。たまに生産者さんから手書きの手紙が同梱されることがあるのですが、届く手紙はかなりストックしています。また届いた時の様子も写真に撮り、メディアさんに提供できるようにしています。
若林:たくさんの企画を世に出していったということですが、企画の本数と実際に出してるプレスリリースの本数ってまた違うと思うんですけど、この期間にどれくらいの企画を社内であげたんですか。
下村さん:プレスリリースが一番出たのは、6月で8本だったのですが、企画ベースでは10本以上あったのではないかと思います。そこから練りに練って8本にしました。やれることは全部やろうと、最速スケジュールを引いて、エンジニアやデザイナーなどのプロダクトサイドと連携して作ってきました。
若林:メディアに対しての情報発信は下村さんが中心になって行ったと思うんですが、企画に落とし込んでいくのは、社長や、マーケティングの方とか、全員で企画を出しあった感じですか?
下村さん:ひとりでやるのではなくて、それぞれの職種や知見を生かして、一番いい形でみんなで作り上げていくのが弊社の働き方ですので、プロジェクトごとに担当を設けたものが多いですね。私が担当していたのは、シェフのレシピ付き食材と、「シェアダイン」さんとのコラボでした。
若林:「食べチョク」のホームページでも大々的に出ているコンテンツのひとつですよね。「シェアダイン」さんは、先方から、お話を頂いて企画が実現したと書かれてありましたが、もともとリレーションがおありだったんですか?
下村さん:代表同士が知り合いで、先方から一緒にやらないかというお話をいただき、企画を作っていきました。ちょうど緊急事態宣言中で、新しい生活様式などが言われる前だったんですけど、今後は、オンラインとオフラインが混同した生活様式に変わっていくのではと考え、であれば、オンラインのサービスである「食べチョク」と、オフラインのサービスである「シェアダイン」で、ご自宅でできる新しい食のエンタメの形を提案をしていけばいいんじゃないかと合意し、ミーティングから1.5週間でプレスリリースまで持っていきました。
若林:バラエティ番組の密着も実現なさってますけど、だいたい密着ものって、結構前倒しで提案して検討してもらうという流れが多いと思いますが、どういう流れで、こんなに短期間で決まった企画に密着を誘致できたんですか。すごく気になります。
下村さん:密着が決まったのは、リリース半月後くらいで、まさに、バラエティ番組の方が情報収集しそうなメディアさんに載せてもらうところから始めました。テレビ番組にリレーションがない中で、ゼロからアプローチをしてもなかなか難しいというのは、これまでの経験上思っていました。であれば…と、見つけてもらうために、いくつかのファッション誌さんなどに載せてもらってる中で、それを見たバラエティ番組の方からご連絡をいただき、タレントさんが「食べチョク」から食材を買い、実際にシェフを呼んで食べてみるという企画をやってくださり、反響がとても大きかったですね。
テレビ取材獲得に導いた、“ファッション誌”に見出す「食べチョク」との親和性と着眼点
若林:さきほどから、“ファッション雑誌”というワードを何回か伺いましたが、生活情報誌ならわかるんですが、ファッション誌って、食べ物系の記事は多くないのに、なぜアプローチをしていったんですか?下村さん:多くないからこそ検討いただける余地が大きいと思い、「これはほんとに美味しくてこだわりのある食材なので食べてみませんか」というアプローチから始めました。ファッション誌さんの多くは、こだわりを持った、洗練されたサービスを取り扱いたいというご意向が強いと考えています。その点「食べチョク」は、女性受けするデザイン性にしていますし、高級なこだわり食材をおうちで堪能でき、ワンランク上の生活を求めるような方にすごくフィット感があると考えています。もちろん、生活情報誌さんにも掲載はしてもらっていますが、ファッション誌さんはすごく親和性が高いですね。
若林:そういう捉え方で注力されていたんですね。すごくしっくりきました。農家さんの作物をメディアに持っていくという話がありましたが、下村さんが現場に行って生産者さんの声を聞くことは、やっぱりすごく大きいですか?
下村さん:そうですね、「食べチョク」は生産者ファーストをかかげていますので、生産者さんのこだわりや人柄、スター性などに、もっと光が当たるような露出の仕方をしていきたいと思っています。ですので、メディアに伝える情報を聞くために、取材前には絶対、農家をやっているわけやこだわりなどの深いお話を、ご協力いただけるすべての生産者さんにお聞きするようにしています。新しい作物作りや、高騰している作物など、生身の情報を聞くことによって、報道番組にアプローチできるネタを見つけることができたりもするので、「最近、うちの息子がね…」というような話も含めて、コミュニケーションは深くとるようにしてます。
若林:農家さんとのやりとりから、ニュースのネタとなるトピックスが上がってくることも多いんですか。
下村さん:多いですね。先月、フジテレビの番組で伊勢海老に関するニュースを取り上げていただいたんですけど、生産者さんと報道番組さんとお話する中で、取材につながっていきました。
五大紙の掲載や、バラエティ密着取材などにつながった、露出の連鎖を巻き起こす「逆転発想」
若林:さきほど、露出が露出を呼ぶ状況をつくるというお話がありましたが、それって、何年も広報PRをやっているベテランの発想という感じですよね。プロダクトの広報PRとしてはもうすぐ1年だと思いますが、どういった体験があって、そのような考えに行き着いたんでしょうか。下村さん:過去の経験上、一番インパクトが強いのはテレビ番組だったのですが、ゼロからアプローチしても、なかなか繋がることが難しかったんです。どうやったらいいか考えた時に、「その人たちが見てる情報の中に入ればいいんだ!」という発想に行き着いたので、「メディアさんはどこで情報収集されてるんだろう」と想像するようになったのが大きいです。
たまたまですが、ちょうど3月くらいのコロナで販路がなくなった生産者の支援を行っていますというニュースで、WEBメディアに載り、そこから五大新聞に載り、ヤフーのトップニュースに載り、それを観てテレビの取材が来るという連鎖が起こったんです。それが今の広報スタイルにつながっています。それからは記者さんにお会いした時、情報収集の仕方や、企画の考え方などを、聞くように変わっていきました。
若林:インターン時代にガツガツ営業されていたので、テレビの方も、気合でアプローチされてるのかなと思ってしまったのですが、とても戦略的に考えてらっしゃるんですね!
下村さん:広報は私ひとりしかいませんので、工数的にできることには限界があります。であれば、どうやれば一番効率的にメディアさんとのやりとりができるんだろうと考えた末の行動でした。
若林:工数の話でいうと、農家さんとのやりとりもあるでしょうし、6月にリリースが8本、7月は6本も出ていて、全部下村さんが書かれているんですよね。それだけでも結構たいへんですけど、メディアアプローチもですもんね。戦略的にやらざるを得ない状況になっていったということですかね。
下村さん:まさにそうですね 量でかせぐのはなかなか難しいので、ちゃんと見て欲しいメディアさんに見てもらうにはどうしたらいいのかと考えて動いてます。
若林:この6,7月で怒濤のリリースラッシュになった背景には、コロナにより、販路を失ってしまった生産者さんからのSOSが月500軒以上よせられて、7月に御社として初のCMを出され、CMのほか広報やPRによって、いろんなメディアで御社の情報を出していこうという戦略もあったということですかね。
下村さん:まさに、テレビCMは過去に類を見ないほどの投資でしたので、このタイミングで「食べチョク」を、より多くの方に知ってもらい、ファンになってもらうためには、広報も生かしていかないとと思いました。「CMで『食べチョク』知りました」というよりは、「あの新聞に載ってた」「テレビに出てた」という前提があった方が、「検索してみよう」「買ってみよう」という行動にも繋がっていくと思ってます。
若林:「食べチョク」というサービスは前から知っていたつもりではいるんですけど、コロナが蔓延して、「シューイチ」で秋元社長が出演されているのを拝見して、改めてすごいサービスだなと思って、そこで初めて秋元社長のツイッターをフォローしたんですよね。そのあとちょっと期間が空くんですけれど、なにかのメディアでまた見て、あ、そういえばと、秋元社長のnoteに飛んだ時に、広報についてのことが書かれていたんです。短期間に1000件以上の露出を獲得したと。それで、こんなすごい広報がいたんだ!って思い、即取材を申し込ませていただきました。この流れを消費者に置き換えると、なんとなく「食べチョク」さんを知って、CMで信頼感が生まれて、一回サイトを見てみようーから、試しに買ってみようという、そういった導線づくりを、まさに今されているということですね。
下村さん:まさにそうですね。生産者さんも同様で、露出によって信頼感につながり、生産者さんの息子さんや娘さんが「食べチョク」のファンになって、親御さんに勧めてくださって登録に至るケースも増えているので、全社的に意識をしています。「なんとなく、食べチョクっていいよね」と、まずは認知してもらい、こだわりと想いを持ってやっていることを知っていただき、「生産者の応援につながるんだ」「面白い体験ができるんだ」、「じゃあ一回買ってみようかな」と購入に繋がり、「美味しい」と感じていただけたら、ずっと続けてもらえると考えています。そういった導線作りをするために広報は最重要セクターだと思っています。
「表現者」たちと共に暮らし、人を見つめながら、「生産者が正当に評価される世界」を目指していく
若林:広報としてのご実績が素晴らしいですよね。6月には「がっちりマンデー!!」「ノンストップ」とか、テレビ13本、ラジオ5本、新聞13本。7月もテレビ3本、「25ans」とか「クロワッサン」などの女性誌などで4本。10月も5件テレビに取り上げられたということで、なんかもう、メディアの方で「食べチョク」を知らない人もあんまりいなくなってきてるんじゃないかという感覚があるんですが、今後、広報として、注力していきたい活動や目標はありますか?下村さん:私たちは、単に食を売ってるサイトではなく、生産者さんが正当に評価される世界を目標にしています。生産者から直接食材を買って食卓を囲むことが日常になっていく世界をつくりたいという想いがあって、そのために、生産者さんのことや日本の第一次産業の変化、食生活の変化を、リーディングカンパニーとして提唱していきたいと思っています。単なるサービスのPRではなく、日本の第一産業のイメージ変革や、食生活のアップデートにチャレンジしていきたいです。
若林:ありがとうございます、最後にプライベートについてもお伺いしていいですか。
下村さん:8人くらいでシェアハウスに住んでまして、食べ物とかもみんなでシェアすることが多いんです。昔から、いろんな人が集まってごはんを食べるのが当たり前の家で育っているので、そういう生活が今も好きなんです。
若林:特定のテーマがあるようなシェアハウスですか?
下村さん:一応、「表現者」というテーマがあって、何かに対してチャレンジをしていたり、頑張ってるメンバーが集まっていて、10〜20代の方が多いのが特徴です。YouTuberとか、芸人とか、起業家とか…そういう、何かにチャレンジしようとしてる人たちが集まっているので、すごくおもしろいです。
若林:へええ、お仕事に何かいい影響があったりしますか?
下村さん:食べチョクで購入したホタテや牡蠣の殻をみんなで開けたり料理したりするのですが、ユーザーの気持ちで「食べチョク」のサービス体験ができるので、気づきや発見があります。多様な価値観を持ったメンバーが集まっていて、私が普段興味を持たないようなことに詳しいメンバーもいるので、面白いです。
若林:人に関心を持たれるタイプなんですね。メディアの人ってどういう媒体を見て、どんな風に考えてるんだろうとか、その人の気持ちになりきって行動されていますよね。
下村さん:そういう特性はあるかもしれません。取材前も、どういうことを話したら、その方の期待に応えられる取材になるかとか、どういう絵を求めているんだろうとかを想像することは好きで、無意識でやっていたかもしれないです。
若林:すごいことですよね。取材する側としても、考え及ばなかったことまで教えてくださる方は、記事のボリュームも膨らみますし、もっと聞きたいなという感じにもなるのでありがたいです。ありがとうございました。
PRマガジン編集部の「編集後記」
3ヶ月間で1000件以上の掲載を獲得
私が「食べチョク」を意識しだしたのが2020年5月3日に放映された 「シューイチ」での秋元社長と中山秀征さんの対談だった。(放送中に秋元社長のTwitterもフォロー)コロナ禍で出荷量が減る農家の救世主として取り上げられていた。 その後も様々なシーンで「食べチョク」を見る機会が増えた。
それもそのはず。後々、秋元社長のnoteで知ったことだが5~7月の3か月で 、1000件以上のメディアに露出していたそうだ。 このnoteがきっかけで、一体どんな凄腕広報が話題を仕掛け、この怒涛の取材ラッシュを裁いたのか取材したくなり、下村さんに取材をオファーさせていただいた。
“人のキモチ”に寄り添う広報パーソン
学生時代にインターンとして生命保険の営業や個人事業主として、自動販売機の飛び込み営業をしていたという下村さん。なんでわざわざそんなハードなものばかり選ぶのか・・・と思ったが、これだけ「食べチョク」が様々なメディアで露出している背景には、そこで培ったすさまじい行動力があるからなんだと決めつけていた。
…が、見事にその予想を裏切られた。
もちろん行動力はお持ちだが、量を重視するメディアアプローチは一切していなかった。
“情報を届けたい消費者が目にするメディアの人”がどういった媒体から情報を収集しているのかを想像し、そこにターゲットを絞り情報提供。結果として取材してもらいたいと思っていた媒体からもオファーを獲得しているという。
取材獲得のハードルが高いメディアこそ、それは有効な手段だ。素晴らしい!
また、これだけ多くのメディア露出を獲得している背景には、「食べチョク」に登録してくれている生産者さんとのコミュニケーションを大事にしているということもあるのだろう。会話の中からニュースネタを見つけることも多いそうだ。 メディアや生産者さんのキモチに寄り添う広報だからこそ、これだけの成果が出せているんだな。納得。
余談だが、私も取材後、「コロナ復興支援 #元気いただきますプロジェクト」で、食べられるお茶やらカニやらを購入させていただいた。
お家に届いたら、カニパーティーだ!
今回のPRパーソン紹介
■株式会社ビビッドガーデン 広報
下村 彩紀子(しもむら・さきこ)
■株式会社ビビッドガーデン(https://vivid-garden.co.jp/)
食べチョク:https://www.tabechoku.com/