株式会社divの代表である「マコなり社長」はメディアにも多数露出し、YouTubeやSNSでも有名な方。しかし、divの広報である本谷さんもラーメン評論家として負けないくらい多くのメディアに出演している。SNSもTwitterは1.3万フォロワー、Instagramも1.1万。その他にfaniconやTikTokでもファンがいるくらいの方だ。
ご自身もテレビなどに多数出演しているせいだろうか、話が簡潔でわかりやすい。そして、聞きたいことにもストレートに回答してくれる。 「これは答えづらいかな?」と思う質問をぶつけても、気持ちいいくらい明快な回答が返ってくる——。
今回は、「人生にサプライズを」をビジョンに掲げ、プログラミングスクール「TECH CAMP」や オンラインビジネストレーニングプログラム「UNCOMMON」などの事業を展開する、株式会社divの本谷亜紀さんに、広報・PRパーソンならではのリアルな企業広報のお話を伺った。
(インタビュー:編集部 若林)
この記事の目次
- 社長からの熱意あるスカウトでdivへの入社を決意
- 「マコなり社長=div」からの脱却~他の社員や受講生へのフォーカスでサービス認知を広げる
- 新規性がなくても、メディアに合わせたこだわりの提案メールで、掲載を獲得
- 広報ビジョンは「教育を通じて、誰かの人生を豊かにするお手伝いをする」こと
- テレビの画づくりのスキルを上げていくのが広報課題
- 実態を分析して見えてきた「学び直し」は、長期でメディアの注目を集めるキーワードに
- 教職希望から、広報人生のきっかけとなった「ラーメン」への想い
- 情報収集力を鍛えるコツは、五大新聞を3ヶ月読み込むこと!
- PRマガジン編集部の「編集後記」
- メディアと会社に寄り添える広報
- スポークスパーソンとしても最高!
- 今回のPRパーソン紹介
社長からの熱意あるスカウトでdivへの入社を決意
若林:早速ですが、これまでのご経歴を教えてください。本谷さん:はい、東京女子大学を卒業後、株式会社オイシックス(現オイシックス・ラ・大地株式会社)に入社し、その後、シニア人材を生かした海外進出支援会社サイエスト株式会社で広報室の立ち上げから関わり、現在は、テックキャンプをはじめとする教育事業を展開するdivという会社におります。大学3年のインターンの時からずっと広報ですね。
若林:なんでまた、大学時代から広報をやろうと?
本谷さん:最初は、広報という職種も知らなかったのですが、オイシックス代表の高島さんから、「テレビに出る側を経験している広報ってなかなかいないからやってみたら?」と言われて、広報室に配属になったのがはじまりです。
若林:そこから、ずっと広報畑を歩んでいらっしゃるんですね。もともと真子社長とは友人でいらしたんですよね。
本谷さん:大学生の時からの友人です。大学卒業当時(2010〜11年頃)は、ベンチャー企業に就職する人がすごく少なくて、ベンチャーに就職したり、起業している友人同士が集まりやすい環境にありました。そんな中で、共通の友人になりました。
若林:ベンチャーつながりということなんですね。その後に、真子社長から広報社員にならないかというオファーがあったそうですが、その時はdivに入社されなかったのですね。なぜ2回目に誘われた際はdivに入社を決めたのですか?
本谷さん:私は、30歳を超えたらフリーランスとして活動しようと思い、キャリアを積んできました。ただ、真子からずっと、「プログラミング教育で世界を変える」という壮大なビジョンを聞いていたということと、すごく熱意のあるスカウトをいただき、入社を決意しました。あと、私自身が大学の時に抱いていた「教員になりたい、何かを教えることで人の未来を照らしたい」という夢が、プログラミング教育を伝えるというところで実現できるかもしれないと思えたことも理由の一つです。
若林:現在は部下が2人いらっしゃるとのことですが、それまではひとり広報だったそうですね。ちなみに、本谷さんが入社される前もdivには広報担当がいらっしゃったのですか?
本谷さん:何人かいたそうです。でも業務兼任の方が多かったそうで。もともと友人ということもありますし、真子のビジョンを10年見聞きし続けてきた私だったらいいのではないかということで、他の社員からもオファーをいただき、縁があって入社しました。
「マコなり社長=div」からの脱却~他の社員や受講生へのフォーカスでサービス認知を広げる
若林:今、広報としてはどういった業務をされているんですか。本谷さん:本当に様々ですね。プレスリリースの発信やメディアの取材対応はもちろんしていますが、代表の取材が多いというのが弊社の特徴と言えます。ですが、真子の名前だけが前に出すぎないように、テックキャンプやdivというサービスを知っていただくための広報にも注力しています。
若林:露出を拝見して、やはり圧倒的に、代表きっかけのものが多いなとは思ったのですが、特に2020年の後半くらいから意図的に、テックキャンプや別の役員を出されている印象を受けました。
本谷さん:そうですね、私たちも最初は知名度がなかったので、真子に取材を集中させるのが一番わかりやすいかなと思っていました。しかし全ての取材が真子に入りすぎてしまう現象もありまして。細かなサービスの説明を要する取材は、別の人間を立てたりするということを最近意識的にしています。
若林:企業の規模拡大にともなって、今まではマコなり社長=divだったのを、もうちょっと違うイメージに転換していこうということですね。
本谷さん:それもありました。サービス本体ではなく真子の顔だけがどんどんみなさまにインプットされてしまうので、若干、プログラミング教育が伝わりにくいという課題がありました。そこで、長い目で見たら専任でカリキュラムを作ってる担当者やマーケティング事業部長も露出させた方が、バランス良く会社の認知を拡大できるのではないかと考え、取材を真子に集中させないということを意識しています。
若林:プログラミング教育をメディアに出すのは結構大変な印象があります。ただ、御社の場合、コロナ禍ということもあり、フリーランスや新しいスキルを身につけて自分らしい働き方を実現するといった切り口で上手く露出につなげているなと。そこは、やはり意図的にされているのでしょうか。
本谷さん:そうですね…、プログラミングって、パソコンの黒い画面を動かしているだけなので、テレビで伝わりにくいんですよね。プログラミングやカリキュラムの素晴らしさを伝えたくても取材につながりませんでした。そこで、様々な境遇や気持ちでテックキャンプを選んでくれた受講生にフォーカスし、プログラミング教育を伝えていくというのが全体的な戦略です。コロナ禍のキャリアチェンジやスキルアップについては、意図的というより、受講生が積極的に情報を発信してくれていましたので、それを拾ってメディアにお届けしたところ、結果それが一番、需要があったという感じです。
若林:プレスリリースを拝見すると、受講生のお話はそんなになかったように思ったのですが、どのようにメディアに届けていったのですか?
本谷さん:信頼できる懇意のメディアさんにひとつひとつ伝えていくというのと、弊社のテックキャンプブログというオウンドメディアのPV数がすごく高いので、それを見た記者さんから取材をお申し込みいただくこともあります。
若林:そのサイトはなぜそんなにPV数が高いんですか?
本谷さん:サービスの開始から比較的早い段階でメディアの立ち上げに着手しました。プログラミングを学びたい人は沢山いても、具体的な内容やキャリアチェンジをイメージできるような情報サイトが昔はあまりなかった時に始めたのが功を奏しているのかもしれません。あとは、記事の量もすごく多く、SEO的にも「プログラミングで学び直し」や「コロナでキャリアチェンジ」というキーワードで上位にあがってくるので、メディアの方の目にもとまり、取材いただけたのだと思います。これは専任のチームが担当をしていますが、企画は広報も一緒に作ることがあります。
若林:具体的には、広報はどういうことをされてるんでしょう。
本谷さん:メディアのニーズに合いそうなストーリーをお持ちの受講者像をメディアチームに伝えるといったことをしています。たとえば、「それまでのキャリアに悩んでいた方が、プログラミングを学んで副業や趣味の幅も広がって自己実現できた」というようなストーリーをお持ちの方はいないかとメディアチームに投げかけると、約2万人の受講生から探し出してヒアリングし、記事を作ってくれるんです。その記事のリンクを私からもメディアに届けますし、HPの掲載を見てということで取材をいただくことも多いです。
私たちはプレスリリースはそこまで量が多くないですが、別の方法でメディアに情報を届けています。
若林:一般的に、事例を活用したPRというと、あがってきた事例を広報が注視してピックアップするという流れが多いと思うのですが、本谷さんの場合は、「こういう受講生を発信したら、多くの人がdivに興味を持ってくれるのではないか」という仮説のもとにメディアチームにオファーなさっているんですね。
本谷さん:企画を出させてもらっているという言い方が近いと思います。メディアチームは受講に悩む顕在層に情報を届けることがミッションで、私たち広報はマスメディアに届けることが仕事ですよね。広報は毎日新聞などから情報収集をしますから、今、世の中では何が注目を集めているか把握できています。そこで、「こういうキーワードやこういう経歴の人がいたら、もしかしたら取材に繋がるかもしれない」と、社内だけどちゃんと企画書にして通すというイメージです。
若林:記事になって、記者の目に止まって取材されたら、ブログのPVも上がるわけなので、Win-Winですよね。
本谷さん:そうですね、メディアチームにはいつもとても感謝しています。
新規性がなくても、メディアに合わせたこだわりの提案メールで、掲載を獲得
若林:先ほどの話で、プレスリリースを重視してないというのがおもしろいなと。逆に、何を重視してるんですか?本谷さん:重視してないわけじゃないんですけど、やはり私たちは、一つのプログラミングサービスで7年やっていて、毎月新商品が出るわけではなく、これからもそんなに変わることはありませんので…。たとえばオイシックスの時は、毎月新たな商品が出るなどニュースがたくさんあり、記者さんに連絡し、食べていただけたらレスポンスが返ってくるというスタイルでした。
でも、divは教育がサービスの主体なのですぐに良さを実感していただくのは難しいです。1時間取材いただいても、楽しさを体感していただけるわけではないので、最初はプレスリリースも打ってたんですが、あまりお客様には響かないので、結果として、そこにリソースを割くのはやめようということになりました。
若林:なるほど。今は何にリソースをさいているのでしょうか?
本谷さん:私が教室にいったり、経営メンバーと話した中で出てきた小ネタはいっぱいあります。たとえば、働き方改革の時にすごく注目されていた「副業」ですが、副業している社員は私以外にもたくさんいるので、そういった小さな話題を、メディアのネットワークに届けることは、とても重視しています。広く届ける必要はないと思ってまして、メルマガ風に「こんなおもしろいことがありまして、どうですか?」という感じで、一見気軽なメールですが、ものすごくこだわって作っています。
若林:どういうところにこだわっているのか、めちゃくちゃ気になります!
本谷さん:出すテーマの方向性で若干変わります。記者さんはオフレコの話を聞きたいと思うのですが、会社側にとっては、オフレコは本当にオフレコなので話せないことも多いですよね。なので、「本来はオフレコだけどちょっと出せる話」と「(記者さんの)なるべく聞きたいオフレコ話」の最大公約数を見つけ、連絡するということにこだわっています。こういったアプローチをするために、「ここまでだったら、ギリいいですか??」と事前に経営層に確認し、記者の方には「ここまでだったら出せるけど、ここからは勘弁してください」という調整を、繰り返しています。
若林:今のお話を記事になってる実際の事例をもとに伺うことはできますか?
本谷さん:そうですね、新しいオンラインビジネススクール「UNCOMMON(アンコモン)」の情報は、会社としての正式リリースは1月5日だったので基本的にはそこまでは内密でした。ですが、記者さんはいろいろなサービスを見ているので、記者さんの反応をサービスに反映させるのはいいことだと思い、仲のいい記者さんには出せる範囲で12月から少し情報を出していました。結果、3月頭時点でもう取材が3つくらい決まってまして。おそらく、12月に「ここだけの話」を出していたからではないかと感じています。
若林:12月の時点でメディアにはどのような情報を出していたのでしょうか。
本谷さん:正直、サービスは9割くらいできていたので、記者さんには、費用感や、何を学べるのかなど、少し深いところまで出していました。そこで、「今、取材いただいたら、もしかしたら記事を最初に書けるかもしれませんよ!」とお伝えしていました。
若林:なるほど、そういうことなんですね。いろんなジャンルにお知り合いのメディアさんがいらっしゃると思いますが、ビジネススキル系を中心に連絡されたんですか?
本谷さん:今回のUNCOMMONは、プログラミングスクールよりも一般層に受け入れられやすいサービスなので、テレビやバラエティ、新聞もいけるのではないかと思い、本当にいろんなところに連絡をしました。
若林:それぞれのメディアで、若干切り口を変えてメールをお送りしたということで、すごく時間がかかったんじゃないですか。
本谷さん:私もラーメン評論家としてテレビに出る側でもあるので、情報提供いただくことがあるのですが、一斉送信で情報をいただいても、あまり想いが伝わってこないんですね。たとえば「いつもブログ拝見してます。ラーメン食べに来てください」という文面よりも、「インスタグラムのこの日のラーメンの投稿を見て、醤油ラーメンがお好きとあったので、うちの新店に食べに来てくれませんか」と言われた方が嬉しいです。その嬉しかった経験から、「何月何日の記事を読んで、親和性があると思ったので、UNCOMMONのご紹介をさせていただいていいですか」といったご連絡を心掛けています。そのほうが取材や記事化いただける確度も高いと思います。
広報ビジョンは「教育を通じて、誰かの人生を豊かにするお手伝いをする」こと
若林:なるほど、だからこその結果であり、メディアとの良好なリレーション構築に繋がっているということですよね。ちなみに、御社の広報ミッションは、divやプログラミング教育を広めるということになるんでしょうか。本谷さん:もちろんそれもありますが、私たちのビジョンは、「すべての人が幸せに生きる世界をつくる」です。プログラミングスクールや、UNCOMMONなどのサービス単体だけを広めたいというのではなく、「教育を通じて、誰かの人生を豊かにするお手伝いをしたい」、自分だったらやりきれるという成功体験が実感できるスキルを広めるという意識をもって取り組んでいます。もし、ご自身にスキルや自信がないならば、プログラミングはこれからの時代で活躍するひとつのスキルとして、今、本当にエンジニアが不足していますし、成功体験を積むにはおすすめです。
若林:自社のサービスや認知を上げようというよりも、もうひとつ上の階層で考えられているんですね。うちの会社をうまく使ってください、みたいな。
本谷さん:そうですね。テックキャンプがほかのサービスと大きく差別化できているのは、プログラミングスキルを教える人間と、「ゴールまでもう少しです!」と励ます人間が分かれているということです。教育を受けたコーチが隣にいて、とにかく励ましてくれるんです。それがプログラミングスクールを卒業したあとも、ほかのことで悩んだ時…たとえば、「エンジニアにはなれたけど会社のことで悩んだ時、あの時やりきった!という自信が元となって、すごく自分らしい人生を生きられています」というおたよりが、テックキャンプブログに届いたりします。そういう生き方を広めていきたいなと思っています。
テレビの画づくりのスキルを上げていくのが広報課題
若林:広報としては上手くいっていると思うのですが、課題や注力していることはありますか?本谷さん:そうですね…、まだ自分の中では、うまくいってるとは全然思っていません。たとえば、真子は、フリートークがすごく面白いんです。私はそのことを知っているので、もっとテレビの露出が来るようにしていきたいと思っています。
テックキャンプは、地方の方にもご受講いただいているので、地方テレビで届けたいと思っていますが「テレビ向きではない」と言われたりすることもあります。自分の中で体得できていない画づくりのスキルを、もっと上げていかなくてはと思っています。
若林:勝手なイメージですけど、本谷さんはバラエティ番組などにも結構出演されてますから、そういったリレーションをいかして、うまくもっていけるんじゃないかなと思うのですが。
本谷さん:それがなかなか難しくて…。代表の人柄などの伝え方も、サービスの伝え方をそれを取材すれば視聴者にいい影響があるのかということを、もっと深く伝えていかなくてはいけないと思っています。
若林:積極的な広報を展開するという意味では、3人体制は他社から見ると羨ましいと思われるかもですね。
本谷さん:そうですね、最近は人材の育成にも注力していまして、部下を育てるのがすごく楽しいですし、育て甲斐のあるメンバーです。
実態を分析して見えてきた「学び直し」は、長期でメディアの注目を集めるキーワードに
若林:直近で、UNCOMMON以外で反響のあったPR事例はありますか。本谷さん:昨年の8月、緊急事態宣言が明けたあとすぐに、弊社の売り上げが上がったのはなぜかを分析したら、「飲食や旅行ではなく、学び直しにお金を使いたい」というお客様の声が多く、その情報をリリース以外の形にまとめて記者さんにお送りしたところ、日経新聞に掲載され、そこから福岡や大阪のNHKにも出ました。その後も「学び直し」の文脈で、いろんなメディアに露出し、今も出続けています。
若林:リリース以外の形にまとめてということですが、どういった内容を入れ込んだのでしょうか?
本谷さん:弊社の情報としては、売り上げが良くなっているという事実と、受講生へのヒアリングや、ブログのインタビューで上がってきた「コロナで時間ができたからプログラミングを始めた」という声などです。あとは、広報の方はみなさんされていると思いますが、同時期に他社からも学び直しのプレスリリースがすごい量で出てましたので、「これはひとつのブームといえるのでは」と他社事例などもいれ、提案していました。
若林:世の中的に学び直しブームがかなりきていて、御社の売り上げも上がっているというのであれば、ちょっと面白そうだと取材に繋がったということでしょうか。
本谷さん:そうですね。緊急事態宣言が明けた少しあと、6、7月くらいにカスタマーセンターの受講問い合わせが過去最高だったんです。そういったこともあり、みんなが学ぶことについて気になっているという話もさせていただきました。
若林:全国のメディアに情報を送ったのでしょうか。
本谷さん:全国にリレーションがあるわけではなかったのですが、日経新聞をご覧になった大阪のメディアからお問い合わせいただき、弊社は大阪にも教室があるので、取材まで話が早く進みました。
若林:報道の連鎖ですね。
本谷さん:この1月まで繰り返し話題化されるというのは、私も今まで経験がありませんでしたが、緊急事態宣言が出るたびに、みなさんが学び直しについて検索なさってるんだなと。
教職希望から、広報人生のきっかけとなった「ラーメン」への想い
若林:みなさん、いろいろな不安から将来のことを考えて、そういう行動に出てるのかもですね。本谷さんご自身のお話も少し伺えたらと思いますが、大学時代にオイシックスの広報をする経緯にもなった、ラーメン評論家としての活動ですが、大学の頃から活動をしていたんですね。本谷さん:仲のいい友人10人くらいで食べ歩いていたのが、テレビに出ることにつながりました。
若林:そもそも、いつからラーメンがそんなにお好きなんですか?
本谷さん:私は埼玉出身なんですけど、ロードサイドのラーメン店に家族で行くのが好きで、ラーメンは身近な存在でした。
若林:それが、今の人生の2足のわらじのひとつになったんですね。
本谷さん:アイドルのCDや、「こち亀」の漫画全巻など、もともと、何かを集めるのが好きで、高校の時に予備校があった池袋に行くようになると、そのハマりぐせがラーメンに転化して、情報を集めていった感じです。
若林:それをSNSで発信していたら、お願いランキングとかに繋がっていった感じでしょうか。
本谷さん:当時はmixiくらいしかSNSがなかったので、ちょこちょこ書いてはいましたが、きっかけはSNSではなく、「お願いランキング」というテレビ番組でラーメンの特番に合う人材の募集に応募したことです。なぜかというとテレビに出たらラーメン代が出るということで、当時バイトをしていたマクドナルドの時給が850円でしたので、3時間拘束で3杯ラーメンが食べられたらラッキー!くらいの気持ちで応募したのがきっかけです(笑)。
一回きりの予定だったのが好評だったようで、じゃあ大学の間だけ…とやっていました。並行して、大学生から始めたオイシックスのインターンがすごく楽しくなりまして。もともと教員志望だったのですが、「ラーメン評論家活動もオイシックスも並行しながらできる。しかもそういうキャリアを持った人はいないし、じゃあやってみよう!」というのが、今に繋がってます。ちなみに、今まで食べたラーメンは5000杯を超えてますね。
若林:すごい!ラーメンを食べない日はないっていう感じですね。媒体の種類は違いますが、真子社長に続くくらいメディアに露出していんじゃないですか?
本谷さん:実はほかにもメディアに多く出ている社員はいるのですが、多い方だと思います。
若林:ちなみに、divのほか、rin branding office(リンブランディングオフィス)という会社も起業もなさってますよね。
本谷さん:そちらは、仲間と集って作った会社です。どんなことをやっているかというと、個々人が受けた副業案件で、個人の力だけでは解決できない大きさのクライアントも増えてきたんです。その中で、別々のスキルをもったメンバーで協力して作業を分けています。そうすることによって、これまで断っていた個人の能力以上の仕事を受けることができています。
若林:divだけでもかなりの業務量なのに、他社の案件や、ラーメン評論家…と時間は足りていますか?(笑)
本谷さん:大学時代から、働くのが好きなんですよね。完全にお休みという日があると逆に怖いといいますか、土日もパソコンを開かない日はなくて。でもそれが別に苦痛ではないんです。ただ、広報を必要としている会社がこんなにあると思っていなかったので、私ひとりでは手が回らない分、仲間と一緒に対応したり、期待値の調整のために、私自身は自分の一番得意なところしかお手伝いをしないという契約を結ばせてもらっています。
若林:本谷さんが得意なところとは?
本谷さん:私はすごくミーハーなので、いろんなメディアをみるんですね。なので、こういう切り口なら当たるなとか、こういうものが流行るとか、一歩先のバズりそうなことを見つけるのが得意だと思っています。
若林:PR切り口の立案が一番得意ということですね。そんなに多くのメディアに目を通してたら、24時間じゃ足りなくないですか。(笑)
本谷さん:情報をインプットするのが、めちゃめちゃ好きなんですよね。バラエティ番組やNetflixなどのエンタメコンテンツ、社長を始めとするYouTubeなど、動画は2倍速で観てます。
情報収集力を鍛えるコツは、五大新聞を3ヶ月読み込むこと!
若林:できるなら、いろんな媒体から情報収集して活かしたいけど、なかなか効率的にインプットできないという広報さんも多いと思うんですよね。効率よく情報収集するコツを教えていただけますか?本谷さん:私は、後輩が入社した時に、「3ヶ月は5大新聞を全部読むように」と指導するんです。いまどき新聞?と言う方もいますが、取材力の強いもの、作るのに時間がかかってるものを読むと、良質な情報に触れることができます。そして段々とどれが自分に必要なのかがわかってきます。4ヶ月目からは、自分でこれだ!と思うメディアしか見なくていいと伝えてます、最初からいいリリースを書いて一発当てようとせずに、とりあえず、全部のメディアに目を通すことが大切だと思っています。
若林:最初からいいリリースなんて、書けないですもんね。なるほど、ありがとございます。最後に今後の目標をお伺いしたいのですが、まず、ラーメン評論家としてはいかがですか?
本谷さん:ラーメン評論家としては見てくれる人のためになる情報を最高の形でお伝えしていきたいと思っています。結果、あの番組面白かった、参考になりましたなどと言っていただけるのが自分の心の栄養になるので、どんどんそこに還元していきたいですね。
若林:今、Twitterで1.1万、インスタで1.3万フォロワーがいらっしゃいますが、ほとんどがラーメン評論家としてのフォローでしょうか。
本谷さん:正直、ラーメンの情報は、なぜかぜんぜんいいね!はつかないんです。最近だと広報の情報や、日常の投稿の方がつきますね。ラーメンで私に興味を持ってくださっている方は、オンラインのファン倶楽部「fanicon」に入ってくださったり、テレビもすごく観てくださるのですが、何を求められているのか、30歳を超えてわかんなくなってるというのが正直なところです。なので、いろんな角度からアウトプットし、ABテスト中です(笑)。
もちろん、ラーメンの情報はベースではあるのですが、広報のことを書いて、「すごい良かった」「教えてください」とDMを頂くとやりがいを感じますし、自分でテーマを縛りすぎずいろんなものを躊躇せずに書いていこうという方向性でいます。
若林:インスタグラムは、ほとんどラーメンですよね。
本谷さん:ラーメン写真のビジュアルがすごい好きなので、綺麗に撮れた写真を載せています。でもそれだけだと、物足りないと声をいただくのでほかの情報も載せています。
若林:「fanicon」はいつからですか?
本谷さん:昨年の10月か11月です。その前はファンとのコミュニケーションは2年間ほぼ毎日、17LIVEを2時間配信してました。しかし、今は自分の新な挑戦のために一旦はライブ配信をやめました。faniconは17LIVEをみてくれていたコアなファン向けに始めたという感じです。
若林:そういう位置づけなんですね。ご自身でもいろいろなSNSを駆使されているからこそ、divの代表のYouTubeやTwitterなどにアドバイスや共感ができるという循環でしょうか。
本谷さん:役員以上の方のSNSについてはほぼ関与していません。ただ、広報としては、社員向けにSNSリテラシーを説いたりしています。
若林:divの広報としてのビジョンはいかがですか?
本谷さん:ダイナミックな広報をしようと代表とも言っているのですが、それがまだこの2年間で実現できていないので、会社員人生の集大成として、広報の枠を超えた広報の実現が目標です。具体的ではなく申し訳ないです。
若林:いえいえ、ありがとうございます。ご自身もメディアに出ているということもあって、お話がとにかくわかりやすくて、このインタビューが記事になったら、すごく学びになる方が多いのではと思います。
本谷さん:ありがとうございます!
PRマガジン編集部の「編集後記」
メディアと会社に寄り添える広報
広報は経営陣が考えていることを理解し、それをPR戦略や施策に落としこむ能力が必要とされる。経営陣との距離を縮め、話を聞けば、理解するところまでは多くの広報がたどり着けるはずだ。でも、本谷さんはその上をいっていると感じた。
divの代表である「マコなり社長」はメディアにも多数露出し、YouTubeやSNSでも有名な方。でも、本谷さんもラーメン評論家として負けないくらい多くのメディアに出演している。ご自身のSNSもTwitterは1.3万フォロワー、Instagramも1.1万。その他にfaniconやTikTokでもファンがいるくらいの女性だ。
企業広報であると同時に、メディアに出る側でもあるためメディアにでる人間の大変さに共感し、アドバイスもできるのだ。
「共感」までできる広報はなかなかいないのではないだろうか。
スポークスパーソンとしても最高!
ご自身もテレビなどに多数出演しているせいだろうか、めちゃくちゃ話が簡潔でわかりやすい。そして、私が聞きたいことにストレートに回答してくれる。 「これは答えづらいかな?」と思う質問をぶつけても、気持ちいいくらい明快な回答が返ってくる。
回答がわかりやすいだけではなく、人のキモチを動かすトーク力もあると感じた。代表の想いを代弁し、divの存在意義を語る本谷さんから、熱いものを感じた。取材時間は1時間。だけど、もっとお話を聞きたいと思ってしまうほどだった。
広報は会社の顔と言われることもあるが、本谷さんはスポークスパーソンとしても素晴らしい方だった!