老舗だからこそ重要な「会社の想いを紡ぐ」広報

皆さん、こんにちは。ロート製薬で広報をしています、柴田春奈です。

普段はロート製薬の広報として、社内外問わず一人ひとりとのコミュニケーションを大切にする日々を送っています。今回は普段どんなことを大切にしているのか、お話したいと思っています。組織によって課題は異なるものの、根幹は同じなのではないか、と感じています。

老舗メーカーが抱く「ある危機感」

ロート製薬はこれまで、CMなどのマスマーケティングの手法を用いて、一気に会社の名を広げていきました。また商品ブランドそれぞれでも多くの認知をいただいています。これまでの資産もたくさんありますが、だからこその課題もたくさんあります。

例えば、「ロート製薬のイメージ」も目薬や鳩など、強い想起イメージがある一方で、その数は少なかったり、企業と商品ブランドの結びつきがそう強くはないこと。またOTC医薬品や化粧品だけでなく拡大する事業領域における認知の低さ。私たちのなかでは全てがつながっており、大切だと思うがゆえ取り組んでいますが、まだまだ意外性を持って驚かれたり、疑問を抱かれる方は多いです。

また社会やお客さま、私たちそれぞれの変化に対して、コミュニケーションの方法でも変化を求められていると感じています。だからこそ事実だけでなく想いを丁寧にお伝えすることで、興味や「関わってみたい」「ともに新しいことをやってみたい」などと思っていただけるような活動を意識しています

その一つがロート製薬公式noteです。もともと2018年にスタートをしていましたが、2021年5月にリスタートをしました。

社外の方とお話させていただくと、「ロート製薬さんは本当にすごいですよね」とお言葉をいただくことが多いです。その「すごさ」は何なのか?もう一度122年の裏側にいた方々からの話からと歴史と向き合っています。社内のメンバーにも共有し今と重ねてみたり、社外の方々とつながるきっかけとなることを目的とした取り組みです。

当時を知る先輩の話や資料から、当時の社会背景とともにロートの数々の挑戦やその想いを知る。全てが当たり前だった私にとっても、たくさんの方々に愛されて存在し続けるのは奇跡的なことだ、と気が引き締まる時間です。

歴史があるからこそ言えることだろう、と感じられる方も多いでしょう。否定はしませんが、ジョブローテーションが多かったり、キャリア入社のメンバーも増えてきている会社の広報として、未来のために歴史を受け継ぎ、共有化することは課題でもあります。実際、私自身も初めて耳にする話も多く、社外の方だけでなく、社内のメンバーにも知ってもらうきっかけとなっています。

事業拡大の背景にある「未来」への想い

全ての前提となる、会社の事業やその背景にある想いを少しお話させていただきます。
ロート製薬の創業は胃腸薬、その後は目薬や化粧品を多くの方にご愛用いただいています。さらに2013年からは私たちだからこその想いを元に、美と健康の領域を少しずつ広げ、再生医療や食事業にも挑戦しています。

胃腸薬や目薬を発売する背景には、社会の変化がありました。明治維新後の食習慣の変化に伴い、胃痛で亡くなる方が増えたことや眼病・トラホームの流行など、人の命に代わるものはないなかで、これからの未来・国への危機感があったのです。

その想いは今も変わりません。薬や医療技術の発展もありながら、それでも難しい病気に対して行われている再生医療の研究。成分に基づいた機能性食品だけでなく、「身体は食べられるものでつくられる」といわれるからこそ、一次産業をはじめとする食。

現在では、心も身体もイキイキと過ごす時間が少しでも長くなるように、との想いも込めてWell-beingとの言葉を大切にしています。ロート製薬から生まれる事業はこの想いに基づいています。

Well-beingg

これまでに経験がなくても、50年後も見据えた社会のために必要だと思うことは、私たちのアプローチで挑戦をしていく。さまざまな分野への挑戦もあり、培った技術や知見を掛け合わせられる強みもある一方で、私たちだけでできることも限られるため、時に会社の枠を飛び越え、社外のパートナーの皆さんとも手に手を取りあって取り組んでいます。

会社の生き方を変えた「東日本大震災」

さらにもう一つ、東日本大震災は私たちの存在を改めて考えるきっかけでもありました。

本社が大阪にあるため、阪神淡路大震災では物資の支援などを行いました。それでも街が復興した時に、未来を支える子供たちが戻ってこなかったことに、会長の山田は大きな悔いをしていました。

2011年3月11日、発生した震災で東北だけでなく日本の危機を感じた山田は、直後に「復興支援室」の立ち上げを決め、公募で選ばれたメンバーにより現地での活動がスタートしました。民間だからこそできる支援の形を模索し、同年10月には震災で親を亡くした子供たちの高校卒業以降の進学先への返済不要の奨学基金「みちのく未来基金」をカゴメ・カルビーとともに立ち上げます。(のちにエバラ食品工業も運営企業として加わりました)

震災の時にお腹の中にいた子が進学先を卒業するまで約25年間の活動をお約束し、現在も仙台に事務局を置きながら活動しています。実は私自身もある想いから現地での活動に手を挙げ、異動をし、たったの2年間でしたが、私自身の価値観も大きく変わる時間を過ごしました(私の話は少しそれてしまうので、今回は割愛します)。

この出来事から、会社は何のために存在しているのか?商品を購入してくださるお客さまがいらっしゃるからこそ、私たちが成り立っていることを実感しつつ、だからこそ社会で生きるとはどういうことか?と、これまで以上に一人ひとりが強く考えるようになったのです。

ここまでお話をさせていただき、ロート製薬のイメージはいかがでしょうか?

広報として「企業を伝える」ということ

最後にある言葉をご紹介したいと思います。

7つの宣誓の導入

「7つの宣誓」と呼ばれる経営理念です。(ロート製薬コーポレートサイトより

前回、私はロート製薬で働きながら、地域のNPOが行う事業の広報をしている、とお話しました。まさに「社外チャレンジワーク(複業)」はこの考えを反映しており、私たちに平等に与えられた時間のなかで、少しでも社会のために活動しながら、自分自身の成長にもつなげていこう、との想いで2016年から解禁しています。

【老舗大手&地方ベンチャー:複業広報が語る】「違い」や「相乗効果」とは?

2021年12月2日

実は、私たちは国内のメンバーだけで約1,500人の会社です。大きな会社とのイメージもいただくので、驚かれることも多くあります。老舗企業だからといって現状に甘んじることなく、ロート製薬の枠を超え、一人の人として、どう生きるのか?時には興味関心や自分自身の枠も取っ払う。それらを繰り返しながら、人としても、そんな人々が集う組織として成長しながら社会で存在しようとの想いを持っています。

この高尚な価値観も頭で理解していても、行動しているかどうかはまた別問題です。世の中に発信する話も、すべて社内のメンバーが体現したことによるもの。だからこそ私自身もその体現者でありながら、その熱を周りに伝播できるのか、と試行錯誤する毎日です。

もちろん人事部門が行う研修や、noteや年に2〜3回発行する社内報での取り上げなどさまざまな手法を通じて行っていますが、そう簡単に乗り越えられる話ではありません。そんななか、私が考える最善策は「対話を地道に重ねていくこと」

挨拶から仕事の話までさまざまですが、社会も一人ひとりも日々変わるなかで、相手を理解したり、自分自身を知ってもらうことはそう簡単ではありません。たかが対話、されど対話。分かったに気にならず、しつこいくらいに興味を持ってお話を重ねていくことなのだ、と考えています。世の中への発信も同様でしょう。

実際に私も、会社で仲間と話をすると自然と力をもらい、アイディアや次のステップが見えてくる。社外の方とのお話でも、会社の話をするなかでロート製薬の輪郭をぼんやりと感じる。未来は他者とのかかわりから見えてくる、と考えています。

どんな会社でも、一人ひとりの行動が重なることで会社の歴史がつくられます。ご覧くださった皆さんも、会社は違えど、広報として日々取り組みをされる日々だと思います。今後も楽しみながら、ともにこれからの未来をつくっていきましょう。ありがとうございました。

執筆者プロフィール

ロート製薬株式会社(https://www.rohto.co.jp/
特定非営利活動法人アスヘノキボウ(https://ventureforjapan.or.jp/
柴田春奈(しばた・はるな)

千葉県我孫子市出身。上智大学新聞学科卒。ロート製薬で行っていた東北での復興支援をきっかけに、複業としてNPO法人アスヘノキボウが行う事業VENTURE FOR JAPANで広報なども行う。GCS認定コーチとして地域を支えるリーダーに伴走することが生きがい。歴史や文化を未来につなぐ組織の編集者でもある。
Twitter:@harunacco126