企業広報×フリーランス広報×PR会社、座談会 ~広報PRに対する考え方や働き方の違いとは?

この広報PR座談会は、2021年6月初旬に開催した内容となります。

この記事の目次

広報PR座談会、参加者の自己紹介

若林
皆さん、改めまして、PRマガジンの編集長をしております、若林(わかばやし)です。今回は「PRマガジン」主催の座談会に参加くださり、ありがとうございます。

本日は、企業広報やフリーランス、PR会社という立場で広報PRに携わっていらっしゃる皆さまに、ご自身の立場から色々とお話を聞かせていただきたいと思っております。

先ず、お一人ずつ、自己紹介をお願いします。

では、企業広報の成田さんと永友さんお願いします。

ガレージファクトリー合同会社の広報、成田七瀬(なりたななせ)さん

ガレージファクトリー合同会社の広報、成田七瀬(なりたななせ)さん

成田さん
ガレージファクトリー合同会社で、昨年10月から広報を担当しております、成田七瀬(なりた ななせ)です。弊社は2020年7月に設立し、まだ1期目の会社です。現在は、社長、副社長と私、アルバイトを含めた6人体制で運営を行っております。

事業内容としては、主にデジタルマーケティングやコンテンツ制作、アーティスト支援事業などを行なっております。私の主な業務は、会社の認知向上を目的としたSNSの発信やノートの更新をしております。また、新しく立ち上げたサイトのライティングやクライアント企業のプレスリリースの作成などを行なっております。先日、会社のサイトをリニューアルしたため、そこに掲載するクライアント事例紹介の準備も行なっています。よろしくお願いします。

株式会社3Backs(スリーバックス)広報の永友貴子(ながともきこ)さん

株式会社3Backs(スリーバックス)の広報、永友貴子(ながともきこ)さん

永友さん
株式会社3Backs(スリーバックス)で広報をしております、永友貴子(ながとも きこ)と申します。
2019年に3Backsに中途入社いたしました。現在は広報と採用広報、それから新規事業部を手伝っており、業務は、社内・外の広報活動のほか、採用広報としてTwitterやウォンテッドリーの運用を行なっております。最近では、採用広報に関する新規事業も進めており、そちらのプロジェクトマネージャーも務めさせていただいております。

今回、いろんな方のお話をお聞かせいただければと思っております。どうぞ、よろしくお願い致します。

若林
では、フリーランス広報のichさんと佐賀さんお願いします。

フリーランスの広報、ichさん

フリーランスの広報、ich(いち)さん

ichさん
私はフリーランスで広報活動を行なっており、今は4社~5社ぐらいお手伝いさせていただいております。活動業務は、主に、採用広報や企業広報となります。もともと、ライターをしていたこともあり、文章を書くことが得意なため、プレスリリース作成の他、メディアへの寄稿なども行わせていただいております。また、採用広報は、状況次第で面談も担当させていただくことがあります。

私は企業広報の皆さんと違い、フリーランスという立場にあるため、1社に深くコミットすることは難しいです。その分、幅広いジャンルの企業様と一緒に、その企業様の広報における期待価値を、得意な文章を使うことで表現することをメインのお仕事にしております。よろしくおねがいします。

フリーランスの広報、佐賀晶子(さがあきこ)さん

佐賀さん
はじめまして、佐賀晶子(さが あきこ)と申します。私もフリーランスで広報の支援をしております。組織のキャリアも含めると、広報経験自体は17年を超えてきました。

現在、クライアント数で言うと5社前後を担当させていただいております。支援先企業としましては、金融業界もあれば、不動産業界もあるというように、業界に、あまり縛られることなく、ご縁あった企業の広報活動を支援させていただいております。
支援の内容としては、アドバイザー的な内容からメディアプロモートまで、クライアントのニーズに応じてご支援しております。よろしくお願いします。

若林
では最後に、PR会社の尹さんと岡部さんお願いします。

PR会社コミュニケーションデザインの尹勇紀(ゆんよんぎ)さん

尹さん
PR会社コミュニケーションデザインの尹勇紀(ゆん よんぎ)と申します。今回、唯一の男性参加者ということで、物凄く緊張しておりますが、よろしくお願いします。

私は、新卒でプレスリリース配信サービスを提供する企業に就職し、営業もしながら、プレスリリースに埋もれた修行生活をしておりました。その後、テレビ業界に転身し、少し経験を積み、今のコミュニケーションデザインで約2年勤めております。なので、広報歴はトータルで5年半くらいです。

現在は、業種も様々な企業をリテーナー契約で4社程度、担当させていただいております。その他、時々ご依頼いただくPRイベントの担当もさせていただいています。業務内容としては、メディアへのアプローチを中心に、PR戦術の企画を考え、それに基づいたコンサルティングなども行っております。

最近では、社内の新人教育も任せていただいており、PR業界未経験者に「PRとは何ぞや!?」という概念を伝える部分に苦戦しながら、人材育成にも少しずつ貢献して行きたいと努めているところです。よろしくお願いします。

PR会社コミュニケーションデザインの岡部美紀(おかべみき)さん

PR会社コミュニケーションデザインの岡部美紀(おかべみき)さん

岡部さん
はじめまして、岡部美紀(おかべ みき)と申します。
PR会社コミュニケーションデザインにて、企業のアカウントを担当しております。私は、ファッション業界に10年程務めた後、前職となるジュエリーや飲食を運営する会社へ入社し、配属先のマーケティング部で、ブランドを百貨店やテナントに誘致するリーシングの担当をしておりました。その時、リーシング業務と並行し広報のお仕事も担当していました。その後、コミュニケーションデザインに入社し、現在に至ります。前職も合わせると約10年間、PR業務に携わっております。

プライベートでは昨年、娘を出産し、現在は一児の働くママとして仕事と子育てに追われながら日々奮闘している毎日でございます。業務内容としては、美容系や健康系の女性案件を中心に、これまで15社ほど担当して参りました。最近ではママになってからの知見を活かし、保育事業の担当もしております。

現在は5社のPRを担当しており、その他、スポット契約の企業もお手伝いもさせていただいております。この日を楽しみにしておりました。皆さまと色々とディスカッションできればと思っております。どうぞよろしくお願い致します。

若林
皆さんありがとうございました。
私自身の紹介も簡単にさせていただきます。

新卒で航空会社のグラウンドスタッフとして2年ほど働いていました。当時、日本で1番とも言われていた会社に入ったつもりが色々あり、現場にいた私でさえ、他社のブランド力に“負け”を感じてしまうようになり…。その時「これがブランディングなのか!?」と、強く惹かれ、未経験でしたがPR会社に飛び込みました。そこから10数年、PRコンサルタントとして、様々な企業の広報PR実務や戦略部分をお手伝いしました。そして、2年くらい前から編集長という立場で、このPRマガジンに携わっております。

さて、一言に広報と言いましても多岐にわたります。企業広報やPR会社に加え、最近ではフリーランスとして、活躍をされている広報の方も非常に増えてきている印象があります。

そこで、今回は企業広報、PR会社、フリーランス広報と、それぞれの視点で働き方や広報PRに対する考え方を伺えればと、このような場を設けさせていただきました。

企業広報×フリーランス広報×PR会社、それぞれのPR戦略やブランディングの考え方

経営課題をヒアリングした上で、“経営に資する広報”を展開(フリーランス:佐賀さん)

フリーランスの広報、佐賀晶子さん在宅ワークの様子。

フリーランスの広報、佐賀晶子さん

若林
佐賀さんのSNSや資料を拝見させていただくと、“経営に貢献する広報”を非常に意識されていると拝察いたしました。
フリーランスの方が経営に関する部分まで、グッと踏み込み、広報として関わって行くのは、凄く難しいと思うのですが、どのように貢献する広報を展開されていらっしゃるのでしょうか。

佐賀さん
経営貢献するとか経営を支援するというのは、大きな概念なので説明も少し難しいのですが、経営者の方からご相談受けてご支援する時に、先ず、経営課題がどこにあるか、というところからお伺いするようにしています。

例えば、まだ生まれたばかりのサービスで知名度がないとか、ある程度、歴史のあるサービスなのだが、ユーザー獲得に困っているとか、もしくは、急成長企業で人が足りていなくて、採用に困っているなど、その企業に応じて課題は変わってくると思うんですよね。
ですので、先ずは、そこの課題をお聞きした上で、そこに紐づく広報の戦略を考えています。

若林
佐賀さんは、新卒で内閣府に入られ、小泉政権時代の広報や国際会議の運営にも携われ、その後は、小松製作所や三菱電機、ベネッセホールディングスを経て、ベンチャーをいくつか経験されていらっしゃるんですよね。どこの企業でも、経営に対して広報で貢献することが当然という環境で、広報をされてきたということですね。

佐賀さん
はい、おっしゃる通りです。
私の中で、PR活動というのは、コーポレートPRとマーケティングPRというように、ざっくり大きく分類ができると思っています。そして、その考え方に当てはめると、私はコーポレート広報の、ど真ん中の人間だと思っています。IRの経験も長く、そこで培ったことが活きているからです。具体的には、会社が出す情報を、どう意味づけして公に出すか、その情報を通じて、相手にどのような態度変容を促すかということを、大企業在籍時に教育していただきました。そのため、経営貢献や支援を意識するマインドが根底にあるのだと思います。

若林
そうなんですね。
でも、フリーランスという立場で、経営に関する深い所まで踏み込んで行けますか?

佐賀さん
ベンチャーの場合だと、経営者の方と直接やり取りする機会が多いため、 “広報とは何か?”というところの解像度を上げていくことからさせていただいています。
フリーランスになってから、しみじみ感じるのは、広報というものが、そもそも理解されていないということです。そのため、「広報とは、魔法のツールじゃない」「ただ、露出すればいい訳ではない」と、説明した後、「御社の場合はこういう状況なので、このような貢献ができると思いますが、どうですか?」という期待値をすり合わせながら、「じゃあ、このようにやって行きましょうか!?」という感じで、自分としてどう価値提供していくかを話し合うようにしています。

広報のTwitterをきっかけに社名の認知向上を図る(企業広報:成田さん)

ガレージファクトリー合同会社、成田七瀬さん

ガレージファクトリー合同会社、成田七瀬さん

若林
ちなみに成田さん、ガレージファクトリーさんは2020年7月に創業されて、現在の従業員数は6名ということですが、従業員の採用の順番が面白いですね。最初は社長、副社長、そして3人目の社員として、広報を採用されたと。非常に珍しい会社だと思いました。やはり会社のブランディングは短期間では出来ないからこそ、早いタイミングで広報を採用されたのでしょうか。凄い決断ですよね、入社された時、びっくりされませんでしたか?

成田さん
私も広報に対する知識が全く無かったため、広報=プレスリリースとか、新商品の発表、そういうイメージしかありませんでした。だから、会社の規模や業務内容から「今、この会社に広報は必要なんだろうか?」と、そのくらいのトーンで入社しました。

しかし、代表と話を重ね、会社のことを考えるようになると、広報=プレスリリースやメディアリレーションだけではないことに気がつきました。そして、Twitterを通して他社の広報さんとの交流から従来とは違う方法で、アプローチする手段があることも分かりました。今では、このような小さい会社だからこそ、できる取り組みとして、先ず、私のことを知ってファンになって貰い、そこをきっかけに弊社のことを知ってもらう流れを作るべくTwitterを運用しているところです。

若林
そうだったんですね~。
成田さんのTwitterを拝見すると、仕事の内容もそうですが、プライベートのお話もかなりツイートされ、フォロワーさんもたくさんいらっしゃいますよね。
やはり、成田さんのTwitterをきっかけに、ガレージファクトリーを知っていただこうという広報戦略のひとつだったのでしょうか。

成田さん
最初に代表に言われたのが、Twitterで未経験広報として成長する過程やストーリーを見せて欲しいということと、働いているお母さん達の代表として、ワーママのリアルな現状を日常生活も含めてTwitterで呟いて欲しいということでした。
最初は、日常生活をSNSに載せるのは少し抵抗がありました。でも、Twitterを見てくださっているワーママさんの中には広報で頑張っている方も多く、私が呟くことで、「私も同じです!」と、言っていただき元気をもらったり、仕事で悩み呟けば、色々な方からアドバイスいただき、Twitterには日々、励まして貰っています。

若林
失礼な言い方になるかもしれませんが、広報界隈では恐らく、ガレージファクトリーよりも、成田さんの方が有名なのではないかと思ったりします。私も座談会への参加をオファーするために、ガレージファクトリーさんのホームページを初めて見に行かせていただきました。だから、社長の戦略は正しかったということかもしれませんね。

成田さん
最近、ありがたいことにTwitterのフォロワーさんがすごく増えました。それに紐づくように会社のホームページのアクセス数も、急激に伸びております。
もともと、ホームページは一時的な仮のサイトとして立ち上げ運営してきたため、これを機に、きちんと対応できるサイトに見直しました。

情報収集と分析に重きを置き、PR戦略立案とメディアリレーションを展開(PR会社:尹さん)

株式会社コミュニケーションデザイン、尹さん

株式会社コミュニケーションデザイン、尹さん

若林
尹さん、PR会社としては、どういった関わり方や取り組みをされることが多いのでしょうか。

尹さん
PR会社の場合、1人で複数の企業を担当しているため、先ずは担当している企業のことをよく知るために、リサーチすることが非常に大事だと思っています。

先ほど、佐賀さんも「期待値のすり合わせ」というお話をされていましたが、我々も何が強みで、何が弱みなのか、企業からしっかりヒアリングさせていただきます。その内容を基に、戦略や弊社でできることと、それによる結果や期待できる効果について提案させていただきます。また、その後のメディアアプローチ戦略も、各メディアの特性に合わせて、商材をどのように活かし露出させていくか、それもリサーチから始めるようにしています。このように、戦略を立てる際、リサーチに重きを置くのは前職、テレビ業界でリサーチャーとして働いていた時の経験も活きていると思います。

複数の企業を担当する私たちにとって、普段から常にアンテナを張り、情報を収集し、分析するリサーチ力は重要です。例えば「これとこれを組み合わせて、このような企画にしていこう」とか、「これってなんか真似できそうかな!?」というような思考を24時間、365日、頭のどこかで、考えを巡らせては戦略を作り上げて行きます。

企業広報×フリーランス広報×PR会社、それぞれのKPI設定について

活動成果を可視化しやすい指標を設定(PR会社:尹さん)

若林
尹さんは、どんなKPIを設定されていますか?

尹さん
弊社では、クライアントごとに方針の違いは多少ありますが、わかりやすい指標としましては、メディアでの露出数や広告換算値をあげることは多いです。やはり、PR会社となると活動内容が見えにくいこともあり、活動成果を可視化しやすい指標を設定することは多いと思っております。

企業広報・採用広報ともに、SNSからの流入をKPIに(企業広報:永友さん)

株式会社3Backs広報、永友さん

株式会社3Backs広報、永友さん

若林
永友さんは、KPIは掲げていらっしゃいますか?

永友さん
今、私が力を入れている業務にSNSの運用があります。SNSやTwitterに関するKPIとして、ツイート数やエンゲージメント数を設定しております。また、広報としては、今回の取材のように、SNSのDMを経由して、取材依頼が何件いただけたかも指標のひとつです。採用広報に関しましては月に何人、採用希望の方から、ご連絡をいただけたのかも指標として設定しております。

若林
そうなんですね。採用において、SNSのDM経由で応募が入るとのことですが、それは永友さん個人のSNSということですか?

永友さん
はい、そうです。その他、代表の三浦や人事を含めた10名程が運用しております。

KPIより、課題の抽出と解決策の提示を重視(フリーランス:ichさん)

フリーランスの広報、ichさん

フリーランスの広報、ichさん

若林
KPIを設定されていない方にもお話も伺ってみたいですね。
ichさんはKPI設定されていないとのことですが、それ以外で、クライアントとは何にコミットする形でお仕事をされることが多いのでしょうか。

ichさん
フリーランスで広報をしていると、よく感じることなのですが、広報を理解されていない方が多い気がします。
「とりあえずプレスリリースを書いておけばいいだろう」とか、採用広報にしても「Wantedly(ウォンテッドリー)に載せておけば何とかなるだろう」と、思っている方が多いように思います。なので、先ずは「広報とは、そういうもではないです」という、すり合わせから始めることが多く、KPI設定というよりは、その方の課題点を一緒にあぶり出してからステートを作り出す感じが多いです。

採用広報を例に説明すると、相談者から「3ケ月後に何人採用したい」という、話があったとします。その場合、私は、「今は、ステップ①なので、このような現状。次に、ステップ②に進むとこうなり、ステップ③だとこうですね」みたいなことを話し合ってから展開して行きます。よって、KPI設定をがっちりして活動を進めて行くことはないですね。

若林
なるほど。お手伝いする企業には、自社の課題が何か分かっていない、もしくは、KPIを設定したとしても、その目標に対して、どのようにアクションを起こして行けばいいのか分からない方々も結構いらっしゃるということでしょうかね。

ichさん
そうですね。フリーランスの広報に依頼される方や企業の多くは、予算がなく専任の広報を採用できないとか、そもそも広報にお金をかけたくないという想いがあり、広報の重要性を低く捉えている傾向が窺えます。そのため、フリーランスの広報に「試しにお願いしてみるか」という感じで、ご相談に来られます。そこで、私は「広報は大事です!」という話から、はじめることが多いため、KPIは掲げないスタイルで活動しています。

それから、私が提供しているサービスの一つであるクラウドファンディングの立ち上げは、KPI設定がしにくいというのも、KPIを掲げていない理由の一つです。

若林
バシッと言うんですね!いかに広報が大事かということを(笑)

ichさん
そうですね~(笑)
それは、冗談ですが。広報の重要性や役割をあまり理解されていない方が多い印象はありますね。

若林
その感覚は、フリーランスの方だけでなく、企業広報やPR会社の方にも共通の悩みであり、課題なのではないでしょうか。
企業広報であれば、「プレスリリース出して取材取ってくるのが仕事でしょ」とか。PR会社に至っては「PR会社って、メディアへの露出屋さんでしょう!」といった、広報やPR活動の極一部を見て解釈し、本来の意味を理解されていない方が多い、そのような現状がまだまだあるのだと実感しました。

ichさんがおっしゃったように、社内やクライアントに「広報PRとは、そういうものじゃない」という説明から始める必要があるのだと私自身も思います。だから、成田さんの会社のように、広報PRへの感度の高い社長がいるというのは恵まれた環境ですよね。

成田さん
そうですね。座談会で他社の企業広報の方とお話しする機会が多いのですが、「広報って毎日、何しているの?」というような、質問を社員から投げかけられるそうです。やはり、なかなか、社内からも理解してもらえない現状があるようですね。なので、弊社のように、代表が理解してくれているのは羨ましいと言っていただくことが多いですね。

若林
本当に、そうだと思います。私も様々な企業を見てきましたが、広報がうまく回っている企業の共通点の一つが、経営者が広報PRに理解があるということです。経営者の理解度によって、広報のアウトプットも変わってきます。経営者の考え方次第では、ただのプレスリリースを書くだけの人になる可能性もありますし、本来の意味のパブリックリレーションズの活動を展開していける場合もあります。
つまり、経営者の理解は非常に大きいのだと感じています。

成田さんや永友さんの会社は、経営者の方の理解が進んでおられ、素晴らしいことだと思います。一方、ichさんや佐賀さんは、理解されていない会社には「違いますよ、広報PRとは、このようなものですよ」という説明から始めていらっしゃり、これは、広報PRが世の中に正しく浸透して行くための、大きな一歩だと思っています。勿論、PR会社のお二人も、日々、営業案件やクライアントもたくさん抱える中、正しく理解してもらい、成果を出すことに、日々努力されているのだろうと思っております。

企業広報×フリーランス広報×PR会社、プレスリリース・企画書作成について

取材ライター経験を活かした“企業の魅力を伝える文章”が得意(フリーランス:ichさん)

若林
ichさんはnote内にポートフォリオを作り、提供サービスの紹介をされていますよね。そこで、サービスのひとつとして、PRライティングと書かれていますが、ニーズは多いのでしょうか?プレスリリース、企画書、あるいは採用ページの文言や、文章を書いてもらえませんか?という相談は多いのですか?

ichさん
そうですね、多いです。
もともと、取材ライターを長くしておりました。その時から広報にまつわるライティングの依頼は多かったと感じています。そのため、そこにブランディングが加われば、広報としても活動して行けるのでは!?と思ったことが、現在のフリーランス広報に繋がっています。
なので、ブランディング記事を制作して欲しいとか、noteで発信したいとか、ウォンテッドリーの紹介の記事を制作して欲しいという依頼は、結構多いです。

若林
やはり社内では、自分たちの魅力を伝える文章を書くのが難しいから、プロフェッショナルにお願いしたいと思う方が多いということですね。

ichさん
そうかもしれませんね。
ライターも得意とする分野がわかれており、例えば人の想いを伝えられる取材ライターとSEO対策ができるライターとでは、書く文章のスタイルが違います。つまり、クラウドソーシングを利用し、採用募集をかける場合でも、自社の考えに共感し、理解した人材を募集するためには、自分たちや会社の想いを文章にし、伝えることが重要となります。だから、取材ライター出身の私には依頼が多いのかもしれませんね。
余談ですが、フリーランスの私は、業務を進めるにあたり、経営者の方と話す機会も多いです。経営者は会社の内部事情を話す形にもなるので、信頼関係を重要視されていると感じる部分もあります。

クライアントからの基礎情報をベースに、メディアで掲載される切り口を考案(PR会社:岡部さん)

株式会社コミュニケーションデザイン、岡部さん

株式会社コミュニケーションデザイン、岡部さん

若林
岡部さん、PR会社ではプレスリリースや企画書をたくさん書いていらっしゃいますよね。
その際、ゼロベースで書くことは多いのでしょうか?それとも、クライアントから、たたき台をいただき、タイトルやリード文を魅力的に書き直して行くのか。または、リリースや企画の基となるネタ集めから行われているのか、どのようなケースが多いのでしょうか。

岡部さん
私の場合はBtoCの製品やサービスのPRが多いため、ある程度、固まった内容をクライアントから頂きます。しかし、それだけではメディアへ発信する情報として要素が弱いため、世の中の時流に合わせたテーマを掲げ、そのテーマに絡めた情報を加え、製品やサービスの企画書やリリースを作成していきます。

若林
メディアでのアウトプットを想定して、クライアントから提供いただく内容だけでは足りない部分を、プロフェッショナルな視点で書き換え、魅力的な資料に仕上げていくということをされているのですね。

岡部さん
はい、そうですね!

社内ヒアリングで、大きなニュースがない時期には、自らネタを見つけにいく(企業広報:永友さん)

若林
ちなみに、永友さんも会社でプレスリリースをたくさん出されていますよね。
社内制度や新たにサービスを始めるにあたり、担当者からの依頼ベースでリリースを書いているのでしょうか。それとも、例えば、転職者に響くコンテンツを自分で社内から見つけて来て、自発的にリリースや企画書にするケースが多いのでしょうか。

永友さん
どちらも行っております。できれば、毎月1本でもリリースを書き、発信できたらと思っております。ただ、毎月イベントや大きなリリースが出るわけでもないため、ネタ集めは工夫しております。ネタが見つからない時は、社内でヒアリングをし、ちょっとしたニュースがあれば、紹介するよう心がけています。

例えば、弊社は若者のキャリアを支援するサービスを展開しています。最近では「コロナ離職者のスキル取得支援」や、採用枠を広げたことにより受け入れる研修生の人数が300名を超えたというニュースがありましたので、それらをリリースにし、発信しました。
新規サービスの紹介や、サービスがローンチされてからの結果をリリースで出すこともあるので、どちらも行っているという状況です。

企業広報×フリーランス広報×PR会社、メディアリレーションについて

広報仲間と協力し、新規のメディアを開拓(フリーランス:佐賀さん)

フリーランスの広報、佐賀さん

フリーランスの広報、佐賀さん。在宅ワークの様子。

若林
佐賀さんは現在、フリーランスとして岐阜と東京の2拠点で生活されていますよね。
メディアリレーションは、どのように取り組まれていらっしゃるのでしょうか。

佐賀さん
基本的には、既にリレーションのある記者さんとやり取りすることが多いので、ほぼ、オンラインにシフトしております。
コロナになり、新規の開拓が難しくなったという印象を持っておりますので、広報仲間との横の繋がりを大事にし、自分が知っている記者さんを紹介したり、逆に紹介してもらったりしています。その他ですと、複数人でオンラインキャラバンを行なったりして協力し合いながら開拓をしています。

若林
オンラインでの企画提案やキャラバンに対して、メディア側は抵抗なく受け入れてくれている感じでしょうか。

佐賀さん
はい、そうですね。そのような気がします。
時々、新聞社の方の中には、初見のご挨拶の時は、できたらオフライン、対面で会いたいと、お話しになる方もいらっしゃいますので、そのときは先方のニーズに合わせて対応するようにしております。

若林
そういう時は、どのように対応されるのですか?
「東京から離れたところにいるので、オンラインにて対応させてください」みたいな感じでオンラインでの面談を提案される感じでしょうか。

佐賀さん
いえ、その時は岐阜から東京に駆け付けて同席しています。日帰りで出向くこともあれば、東京に行くタイミングに合わせて、他の予定を調整し、お会いできるようやりくりしています。取材の場に自分も同席することが、その後のフォローをする上でも大事だと思うためです。

提供したい情報に合ったメディアを個人まで特定してアプローチ(PR会社:尹さん)

若林
尹さんはどうですか?PR会社ということで、これまで、沢山のメディアにアプローチされているイメージがありますが、現状はどのような感じでしょうか。

尹さん
PR会社の基本的なやり方として、リリースや企画書を一斉配信し、その後、電話でメディアの方へ連絡し、アプローチをする方法があります。しかし、最近はコロナの影響が大きく、メディアの方も在宅勤務となり電話をかけても繋がらない状況です。
なので、新規開拓に関しては、事前リサーチをしっかり行い、提供したい内容に関心のありそうな記者や編集者を特定し、「この情報はこの方に届けたい!」と強い意志のもとアプローチしています。

若林
どのようにメディアの方を特定しているのでしょうか?

尹さん
例えば、新聞なら露出のイメージとなる記事を探します。その記事に記者さんのお名前が載っていれば、次にその記者さんの過去記事を遡り内容を確認します。その上で、「記事化をお願いするなら、この方しかいない!」となれば、記事の内容などから在籍部署を推測し特定していきます。他のメディアに関しても、「この人に」、「この番組に」、「コーナーに」あたりたいと目星をつけ、優先順位をつけながら情報提供をすることが多くなりました。

若林
確かに、PR会社だと記事やテレビ番組の検索システムが充実されていますよね。
だから、過去の記事から「このテーマなら、この記者」といったリサーチも行いやすく、特定もしやすいのでしょうね。

尹さん
はい、その通りです。
あとは、社内の情報共有ですね。「このテーマにあった記者や編集の方、知らない?」と声をかけると「こういった方がいるけど、紹介する?」と、いった感じで紹介してもらい取材に繋がることもあります。

一度繋がったメディアには、継続的にコンタクト~長期的に良好な関係を築く(企業広報:永友さん)

若林
PR会社ならではですね。
企業広報の方はPR会社と違いマンパワーが限られていますよね?メディアへのアプローチの件数も沢山の数はこなせないと思います。永友さんはメディアアプローチ戦略として、どのようなことを考え、実行されていらっしゃるのでしょうか。

永友さん
メディアの新規開拓は課題のひとつですが、メディアリレーションで積極的に行っていることがあります。それは、私が担当し取材のセッティングをさせていただいた記者の方には、定期的にご連絡をさせていただいていることです。
例えば、その記者の方が書いた記事を読んだら、感想を送らせていただくなどです。最近は、SNSをされている記者の方も多いので、DMをお送りすることも増えています。その結果、記者の方から「今、このようなトレンドを探しているのですが、ご存じないでしょか?」というようなお話をいただくこともありますね。
1回の取材だけで終わるのでなく、長期的に良好な関係を築けるよう、継続型のアクションを心掛けております。

若林:
記事の感想を送るとなると、忙しい業務の合間に、頑張って新聞やwebメディアに目を通していらっしゃるということでしょうか。

永友さん
そうですね。新聞は、ほぼ目を通します。
特に、日本経済新聞は、毎日見ます。その他、好きなメディアや露出を狙っているメディアは隙間時間を利用し、チェックして読ませていただいています。

SNSのDMで新規開拓~ポイントは事前に記者の過去記事を読み込むこと(フリーランス:ichさん)

フリーランスの広報、ich(いち)さん

フリーランスの広報、ich(いち)さん

若林
ichさんは、最近、宮崎県にお引越しされたんですよね。
メディアリレーションを行うにあたり、オンラインでも支障がないと判断され、移住を決められたのでしょうか。

ichさん
そうですね。私もほぼSNSで、メディアリレーションをしています。それで、特に問題はないと思っております。

若林
やはり、そうでしたか。では、SNSでメディアリレーションする時に、気を付けていらっしゃることや工夫されていることは、何かあるのでしょうか。

ichさん
実際、取材をお願いしたい記者の記事を見もせずご連絡するのは失礼にあたりますので、事前に、きちんと目を通します。その上で、私が展開しているPRのテーマと、記者の方の特性がマッチしていると思えたら、是非お願いしたいと連絡をするようにしています。
新規開拓をする際は、SNSのDMを活用することもあります。その際は、気になっている記者の方のTwitterも拝見し、フォローさせていただいた上で、連絡しております。

若林
SNSで探される場合は、記者の方の名前や媒体名で検索して特定する感じでしょうか。

ichさん
そうですね、名前で検索しています。実は以前、ネット検索で記者の方の名前がヒットせず、困った際にTwitterで検索したところ、記者の方が発信しているTwitter見つけました。拝見していくうちに「あっ、DMで連絡を差し上げても良いんだ!」と、気がついたことがきっかけですね。
勿論、突然のDMに驚かれる記者の方もいらっしゃいますが、「フリーランスで繋がりがいないので、お願いします」と、お話させていただいています。

いきなりDMを送るのではなく、まずは“存在を知ってもらう”ことが重要(企業広報:永友さん)

若林
永友さんも先ほど、SNSのDMでメディアの方に連絡をされているとのことでしたが、DMはどのように送っていらっしゃるのでしょうか。

永友さん
初見の方には、「はじめまして」といった感じでDMを送らせていただきます。
ただ、Twitter上で、ご挨拶させていただく方に関しては、メディア交流会などで、既に一度、お話させていただいた方を中心に、フォローさせていただいた上で、ご挨拶させていただいております。面識が全くない状態での「はじめまして」は、先方の反応がスタンプだけや、スタンプすら返ってこない、無反応のこともあります。なぜなら、同じようにメッセージを送られる方が多いからです。

なので、いきなりDMを送らず、その方のツイートをリプライや引用リツーイトしています。そうすると、相手に通知が行くので、確実に見てもらえ、印象付けることができます。その後、少しずつアプローチをして行き、仲良くなってきたタイミングで、DMやリリースをお送りし、「このような取り組みがございまして、お話させていただきたいです」という流れで連絡をさせていただいております。

若林
それは、凄く戦略的ですね!
皆さん、とても丁寧に段階を踏んでアプローチを行なわれていますね。

広報に関わったことが無い方々が想像するメディアリレーションは、プレスリリースを送ったら、馴染みのメディアに数件電話するという感じではないでしょうか。でも皆さんは、電話1本、メール1通するまでに、広報未経験の方からは、想像もつかない努力を惜しまずされていますよね。

アプローチの対象となる媒体や記者の方のことを、良く調べ、理解し、時間をかけて距離感を縮め、信頼関係を築く。このように手間と時間をかけて、丁寧にアプローチすることで、その真摯なプロセスがメディアの方にも伝わり、反応率も高まるのだと思います。メディアの方も何も調べないでアプローチしてきている方って、ちょっと話を聞くと分かると思うんですよね。そうすると、耳を傾ける気にもならなくて、反応率が下がってしまうのではないでしょうか。

この点は、広報PRに携わる者としては、気を付けたい点ですよね。