7月末になると、企業の広報担当者から、次のような声が聞かれます。
「猛暑対策のプレスリリースを配信したが、反応がなかった」
「他社も似た商品を発表しており、差別化できない」
確かに、7月末の時点から夏本番のPRを始めるのは遅いでしょう。
しかし、夏のピークを追うのではなく、残暑や秋口に起きる生活者・企業の変化を先回りするのであれば、7月末は決して遅くありません。
厚生労働省によると、2025年に職場で発生した熱中症による死亡者および休業4日以上の死傷者は1,803人に達し、過去最多となりました。暑さに関する課題は、8月だけのものではありません。
ただし、「残暑が続くので、当社の商品を紹介してください」と提案するだけでは、取材にはつながりません。
重要なのは、次の問いです。
自社の商品名を外しても、その情報はニュースとして成立するか。
本記事では、商品やサービスを単なる「猛暑対策商品」で終わらせず、残暑・秋口のメディア企画に変える方法を解説します。
この記事の目次
2026年から「酷暑日」が正式な名称に
2026年4月17日、気象庁は最高気温40℃以上の日を「酷暑日」と呼ぶことを正式に決定しました。
背景には、40℃を超える暑さが例外ではなくなりつつあることがあります。2025年8月5日には、群馬県伊勢崎市で国内観測史上最高となる41.8℃を記録しました。
「酷暑日」という新しい言葉にはニュース性があります。
しかし、商品名に「酷暑」や「猛暑対策」と付けるだけで、商品そのものまでニュースになるわけではありません。
メディアが見ているのは、暑さによって社会や生活者の行動がどう変わったかです。
メディアが見ているのは商品ではなく「変化」
企業側は、次のように考えがちです。
新しい冷却機能を搭載した商品なので、ニュースになるのではないか。
一方、メディアが知りたいのは、次のような情報です。
・ 暑さによって人の行動や現場はどう変わったのか
・ この企業だから提供できる新しい事実は何か
商品はニュースの主役ではなく、社会の変化を説明する材料の一つです。
「猛暑対策商品を発売しました」という情報をニュース企画に変えるには、商品の外側にあるデータ、現場、生活者の変化を掘り起こす必要があります。
事例:松屋銀座は顧客と従業員の両面から企画化
2026年、松屋銀座は屋上の「美しくなるビアガーデン」で、気温に連動した「酷暑日サービス」を実施しました。
当日の日本気象協会「中央区3時間天気予報」で最高気温が37℃以上となる場合に、来場者へ「ひとくちシャーベット」を無料で提供する取り組みです。
さらに、屋外で働く従業員には、体温変化を可視化する「示温シール」を導入し、水分補給や休憩を促す体調サポートも行いました。
この事例には、メディアが扱いやすい要素があります。
・ 予報気温に連動する仕組み
・ 来場者が体験できるサービス
・ 従業員への安全対策
・ 撮影可能なビアガーデン
・ シャーベットや示温シールという映像素材
予報最高気温が37℃以上の日に顧客向けサービスを実施し、同時に屋外で働く従業員の体調変化を可視化する取り組みが始まった。
これが「商品名を外してもニュースになる」状態です。
残暑・秋口の情報をニュースに変える4つの切り口
1.「売れた」ではなく、何が変わったかを数字で示す
「売上好調」「問い合わせが増えた」だけでは、ニュースとして不十分です。
次のような比較データを探してください。
・ いつから変化が始まったか
・ 購入・利用される時間帯が変わったか
・ 地域や年代で違いがあるか
・ 気温が一定水準を超えた日に何が起きたか
気温が一定水準を超えた日に何が起きたか
松屋銀座のビアガーデンも、2025年に前年比112%となり、過去最高の売上を記録したことを企画の背景として示していました。
数字を使う際は、比較期間、対象範囲、調査方法を明記することが重要です。
商品名を外しても、その数字は生活者や業界の変化を示しているか。
2.「夏の延長」ではなく「秋のズレ」を探す
残暑PRで重要なのは、「まだ暑い」と繰り返すことではありません。
暑さによって、本来は秋に切り替わるはずだった行動がどうずれているかを探します。
例えば、次のような変化です。
・ 冷たいメニューの注文が続いている
・ 屋外イベントの開始時間が遅くなった
・ 散歩や運動の時間帯が変わった
・ 制服、休憩、配送時間が変更された
暦は秋なのに、人の行動はまだ夏のままである。
プレスリリースのタイトルも、商品ではなく変化を主語にします。
実際に使用する際は、自社が保有するデータに合わせて表現を調整してください。
3.商品ではなく「現場」と「人」を見せる
特にテレビ取材では、商品画像だけで企画を成立させることは困難です。
誰が、どのような場所で、何に困っているのかを撮影できる必要があります。
対象となる現場には、工場、倉庫、建設現場、物流拠点、厨房、学校、高齢者施設、観光地などがあります。
2025年6月1日に施行された改正労働安全衛生規則では、WBGT値28℃以上または気温31℃以上の場所で、連続1時間以上または1日4時間を超えることが見込まれる作業について、事業者に熱中症対策が求められています。
冷却商品を紹介するだけでなく、
・ 現場でどのように使われているのか
・ 働き方がどう変わったのか
・ 9月以降もなぜ対策が必要なのか
4.プレスリリースを書く前に取材素材を決める
媒体によって、求められる情報は異なります。
| メディア種別 | 優先して用意する素材 | |
|---|---|---|
| テレビ | 撮影可能な現場、利用者、比較映像、実演 | |
| 新聞 | 社会的背景、前年比データ、専門家のコメント | |
| Webニュース | グラフ、現場写真、読者が実践できる情報 | |
| ビジネスメディア | 経営判断、生産性、労務管理、市場変化 | |
| 地方メディア | 地域別データ、地元の現場、自治体との連携 | |
プレスリリースを書き終えてから媒体を考えるのではなく、誰を取材できるか、どこを撮影できるか、どの数字を提供できるかを先に決めることが重要です。
7月末から始める残暑PRの進め方
7月末から企画を始める場合は、8月後半から10月を見据えて動きます。
| 時期 | 実施すること | |
|---|---|---|
| 7月末~8月上旬 | 売上、問い合わせ、利用時間、顧客の声を確認する | |
| 8月上旬 | 現場担当者、利用者、取引先へヒアリングする | |
| 8月中旬~下旬 | お盆明けや9月の残暑による変化を企画化する | |
| 9月 | 前年比較や夏を終えて判明したデータを発表する | |
| 10月 | 秋の高温による影響や翌年の対策を発信する | |
最初に作るべきなのは、プレスリリースの文章ではありません。
まず、「今年、現場で何が変わったのか」という一次情報を集めてください。
表現を強くする前に根拠を確認する
暑さ対策商品では、健康効果や優位性を強く訴えたくなります。
しかし、根拠のない次のような表現には注意が必要です。
・ 必ず体温が下がる
・ 飲むだけで夏バテを解消する
・ 医師も認めた
・ 日本一
・ 顧客満足度No.1
・ 業界初
商品の種類や表現によって、薬機法、景品表示法、健康増進法などが関係します。
ニュース性を高めるために表現を強くするのではなく、客観的なデータと適切な条件説明によって説得力を高めましょう。
配信前に確認したい5つの質問
2.「なぜ今なのか」を生活者や現場の変化から説明できるか
3. 前年や地域、年代と比較できるデータがあるか>
4. 実際の現場や利用者を取材できるか
5. 提案先の媒体に合った素材を用意しているか
特に重要なのは、最初の質問です。
商品名を外しても、その情報はニュースとして成立するか。
商品の外側にある数字、現場、人の行動、制度、社会的背景を掘り起こしてください。
まとめ
7月末から夏向け商品のPRを始めるのは、確かに遅いかもしれません。
しかし、残暑や秋口に向けて、
・ 季節と実態のズレ
・ 職場や地域で起きている課題
・ 夏を終えて判明するデータ
を発信するのであれば、7月末は準備を始めるべき時期です。
猛暑、酷暑、残暑といった言葉は、企画の入口にすぎません。
メディアが取り上げるのは、暑さそのものではなく、暑さによって社会や人の行動がどう変わったかです。
商品名を外しても、その情報はニュースになるか。
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