広報界隈でも注目を集める老舗和菓子屋が展開するベンチャーマインドの広報!真髄は溢れんばかりの「くず餅愛」—「船橋屋」広報・亀田さん、月岡さん

今回は、文化二年創業、発酵和菓子「くず餅」の老舗、株式会社船橋屋の亀田優奈さん・月岡紋萌さんのお二人に、広報・PRパーソンならではのリアルな企業広報のお話を伺った。
(インタビュー:編集部 若林)

広報のミッションは、「くず餅」の魅力を広く深く伝えること

株式会社船橋屋の広報、亀田優奈さんと月岡紋萌さん。

株式会社船橋屋の広報、亀田優奈さんと月岡紋萌さん。

若林:実は1年前くらいにも、取材させていただいた広報さんから「船橋屋さんの広報の方はすごいですよ!」と教えていただき、それ以降、定期的に情報を拝見していました。そして、この前も他社の広報さんとお話をした時に、御社の名前をお聞きしたんですね。ちょうど亀田さんも産休から復帰されるとうかがい、いまだ!と思い、取材を申し込ませていただきました。

亀田さん・月岡さん:ありがとうございます!

若林:おふたりのご経歴ですが、まず、亀田さんは新卒で入社されたのでしょうか。

亀田さん:はい、2013年入社です。最初は販売部に配属され、1年くらいで店長になりました。3年ほど販売部にいまして、その後、本社に異動になり、広報と新卒採用を担当し、現在に至ります。

若林:ご自身でご希望されて広報に配属となったのでしょうか。

亀田さん:そうです!入社したての時に、「広報に興味あるんです!」と当時の広報の方とお話して、仕事内容などを聞いてました。

若林:月岡さんも新卒で入社されてるんですよね。

月岡さん:2019年度入社です。私も同じく最初は販売で、弊社は何年も販売をやることが多いのですが、亀田が産休に入ったタイミングで広報に異動となったので、ちょっと早めの異動でした。ですので、2020年度の1月から、広報と新卒採用を担当しています。

若林:亀田さんの産休のタイミングで月岡さんが広報に入られて、復帰されてからは2名体制で進められてるということですね。役割分担はされてるんですか。

亀田さん:広報室を立ち上げ、室長として広報戦略の企画やメディアの方と交流をしたりしています。月岡もメディアの方との交流をしつつ、ブランディングやファンとのコミュニケーションをメインに担当しています。その一環として、Twitterの運営などもしています。

若林:なるほど、先ほど仰ってましたが、おふたりとも新卒採用のミッションも担われてるのでしょうか。

亀田さん:私がひとり広報だった時は兼任で、産休に入ったタイミングで新卒採用担当をひとり置き、月岡には補助として手伝ってもらっています。

若林:じゃあ、メインは広報ですね。ちなみに、ミッションはどういうところに置かれてるのでしょうか。

月岡さん:弊社は「くず餅屋」として216年間営業しておりますので、くず餅の認知を高めることを一番のミッションにしています。都心が中心で、まだ全国的には知られていなかったり、実はくず餅って和菓子で唯一の発酵食品なのですが、そこの認知度が低いので広げていきたいと思っております。

若林:実は私、今回取材させていただくにあたって、ほかのくず餅屋さんも見てみたんですけど、発酵食品であることを打ち出しているお店はほとんどないですよね。御社は、「くず餅乳酸菌®」を推していらっしゃいますし、経営目標にも「和菓子製造企業から健康提供企業に生まれ変わる」と掲げていらしたので、広報のミッションとしては、くず餅の認知はもちろん、からだにいいものとしての認知を広めるというところにも重きを置かれているのかなと思ったのですがいかがでしょうか。

月岡さん:まさにその通りです! 知って欲しいのはくず餅なのですが、認知を高めるために『飲むくず餅乳酸菌』なども出してますので、そういうところからも広く深く伝えていくのもミッションとして大きいかなと思ってます。

若林:プレスリリースも拝見しましたが、9割くらいが新商品のリリースですよね。「くず餅乳酸菌®」のPRはどういった工夫をされてるんですか?

亀田さん:「くず餅乳酸菌®」を添加したあんみつやおしるこも開発しておりまして、そういった商品を推しています。

月岡さん:季節毎の商品は、消費者向けのリリースという位置づけで配信したり、ホームページに掲載していますが、新店舗オープンや、乳酸菌を使った新商品はニュースになり得るので、メディアの方に直接リリースをお送りし、情報提供するということもしています。

船橋屋の飲むくず餅乳酸菌

船橋屋の飲むくず餅乳酸菌。

若林:おふたりは、広報未経験からはじめられてますよね。前任の方もいらっしゃったかもしれませんが、どういった形でこれだけ反響のある広報を展開できるようになったのでしょうか?

亀田さん:私の時には、会ってなんぼの時代でしたのと、未経験で何も知らない状態から入ったので、ひとり広報向けの勉強会や支援をするコミュニティに積極的に参加をし、広報とはなんぞやを基礎から勉強しました。そこで学んだことをすぐ実践してみようと、メディアの方とお会いしたりしているうちに取り上げられることが多くなり、反響が反響を呼んで露出が積み重なっていった感じです。

若林:亀田さんは2016年から広報になられているのですよね。御社のHPも2016年から掲載情報を出されてますが、亀田さんが広報活動をし始めてから、メディア露出が増えてきた感じですか。

亀田さん:前任もすごい方で、そこからの積み重ねではあります。ただ、プレッシャーはありました。HPの掲載情報は、メディアの方がご覧になった時に、魅力的な企業に感じてもらえるようなわかりやすい掲載ページをつくったという背景があります。以前、「カンブリア宮殿」に出させていただいた時も、弊社のホームページから知ってくださったそうなので、ある程度そういう効果はあったのかなと思います。

若林:「カンブリア宮殿」もですが、よく、地元をお散歩するような番組で取り上げられているのは、過去の掲載が効いているのかもしれないですよね。

月岡さん: WEB記事は結構テレビに繋がりやすいかもしれませんね。ブランドの価値を壊さない限りは積極的に取材を受ける姿勢でおりますので、ひとつひとつの露出からにさらに大きなものに繋がっていっているのは感じています。
ただ、年々露出数を高められている一番の理由としては、やはり、くず餅の商品力があるからです。新商品は一時的に盛り上がっても、すぐにその波も落ち着いてしまうということもあると思います。でも、弊社はありがたいことに、くず餅という長い歴史のある商品がありますので、メディア露出で盛り上がった時や新商品を出した時には、認知が高まり、そこでまたくず餅を知ってもらえ右肩上りになっていると感じます。くず餅が持つ機能性やもともとの魅力が、広報にとってはすごくありがたいなと思います。

文化2年創業の老舗~“ベンチャーマインド”で、ブランドを守りながらも、攻めの広報を

2018年度年間MVP受賞時の写真

亀田さんが2018年度年間MVPを受賞した時の写真。

若林:文化2年に創業されていますので、老舗ならではの広報が伺えたらおもしろいなとは思ったのですが、御社の渡辺社長は、『Being Management 「リーダー」をやめると、うまくいく』(PHP研究所)の出版や、Twitterで船橋屋を舞台にした家族ドラマを制作されたり、他にもリーダーズ選挙等、老舗だからこそなのか、いろいろ新しいことにチャレンジされてますよね。実は私も、船橋屋のくず餅より渡辺社長を先に知っていて。経営論などですごく注目されていますよね。老舗企業ならではの広報は何かありますか。

亀田さん:老舗だからといってあぐらをかかずに、ベンチャーの気持ちで、「くず餅って知ってますか? こんなに魅力的な商品なんですよ」と、みなさんが知らないことを前提としてご紹介しています。

月岡さん:渡辺がよく言いますが、老舗だけど中身はすごいベンチャーな会社なんです。なので広報も、そのスタイルが受け継がれていると思います。老舗らしさでいうと、やはり、くず餅のブランドはかなり大切にしていますので、一気にバズるよりも、正しく広まるか、ちゃんとお客様に届くかを判断させていただいて、取材対応やメディアアプローチをしています。

若林:ベンチャーマインドとか、くず餅が正しく広がるようにというお話からすると、メディアアプローチの仕方も、「新商品が出ました!」というよりも、「くず餅って知ってますか?」からご紹介していく感じですか?

月岡さん:それが多いですね。まず、くず餅を知ってもらった上で、「実は今でしたらこういう新しい切り口があるんですよ」とプラスでお伝えしています。

若林:そうか、経営も「くず餅一筋真っすぐに」と書かれていますが、広報もくず餅一筋で、新商品という切り口があったとしても、基本的には、くず餅をより多くの人に知ってもらうための活動をされているということですね

おふたり:まさにその通りです!

月岡さん:ブランドを知ってもらう、船橋屋の認知を広めるために商品がおざなりにならないよう、新商品も、くず餅に合うものなのかを広報から社内に意見させていただくこともありますし、そこの軸はずっと変わらないところではありますね。

若林:今の話、おもしろいですね! 新商品が出る前に、広報にも話が来るんですか?

亀田さん:私たちが働いてる場所が営業企画部で、開発や販促と一緒の空間にいるので、そういう話は常に飛び交っています。ですので、広報目線で、こうした方がいいんじゃないかとか、リリース出すならこの日に販売がいいのではといった形で積極的に会話に入っています。

若林:かなり他部署と積極的にコミュニケーションを取っていらっしゃるということですね。

月岡さん:そうですね。新商品の広報PRでいうと、たとえば去年、家にいながらふわふわのかき氷が届く「宅配かき氷」という商品を販売し、テレビなどでたくさん取り上げていただきました。この新商品も「くず餅乳酸菌®」が入ってるという新規性を上手く打ち出すことで、くず餅のこともしっかりお伝えできると判断し、積極的にメディアアプローチをしました。このように、新商品というだけで情報を発信するのではなく、くず餅についてしっかり伝えることができるかどうかで広報PRもどれくらい注力するか検討しています。

若林:御社のHPですごくたくさんのメディア露出実績を見ていたので、新商品で新しい顧客層の獲得をミッションにされているのかと思ったのですが、それよりも、“くず餅を正しく知ってもらう”ことを一番に展開されているのはなるほど~と思いました!

月岡さん:「守りの広報」とか「攻めの広報」とよく言いますが、弊社の場合は、守りがベースになっていながらも、どんどん攻めていく感じですね。くず餅を守る216年間のブランドを崩さないというのは当たり前で、その上でどれだけ攻められるかというのが、私たち広報がいつも考えていることです。

亀田さん:くず餅を昔から愛してくださっているお客様が本当にたくさんいらっしゃるので、軸からずれたことをすると裏切ることになってしまいます。お客様を大切にしているからこそ、216年続いているというのはあると思います。

月岡さん:BtoCならではというか、お客様が長くいてくださるからこその広報のやり方なのかなと思います。

わずか1年で5万人のファンに支持された、「共創」を意識したTwitter戦略

月岡さん「認知を高めるよりも、今いるお客様に直接情報を届けようと、Twitterに力を入れるようになりました。」

月岡さん「認知を高めるよりも、今いるお客様に直接情報を届けようと、Twitterに力を入れるようになりました。」

若林:ブランドを愛してくれているお客様を裏切らずに、でも、期待以上のものをお届けするというのがコアにあるということですね。ちなみに、コロナ禍で2020年4月には半数のお店が休業を余儀なくされて、前年同期比36%になってしまったと。でも、4月から9月は、通販の売り上げが前年同期比186%になったという記事を拝見しました。この結果は、広報による貢献も大きかったのではないかと思ったのですが、広報としてはどのようにサポートしていたのでしょうか。

月岡さん:通販自体は10年前から行っていました。ですので、コロナで新しく始めたわけではないという前提でお話させていただければと思います。まず、弊社はご来店いただくスタイルがメインなので、商品等のプレスリリースを配信した場合、どう評価されるかわからない、ブランドを傷つけてしまうかもしれないというリスクがあり、2020年4~5月はリリース配信を一旦休止にしました。そして、認知を高めるよりも、今いるお客様に直接情報を届けようと、Twitterに力を入れるようになりました。

もともとTwitterの運用はしていましたが、商品の情報発信に加え、ファンの方とのコミュニケーションツールとして活用しようと目的設定を変えました。結果、ファンの方からの弊社やくず餅への愛着が増したのではないかということを、この1年で感じています。また、当初は、メディアへの情報発信とTwitter運用は完全に分けて考えていたのですが、最近、ファンの方はメディアに出ると、自分の好きなブランドが出たとか、人に勧めやすくなる、と喜んでくれることに気づきました。そういう相乗効果に気づいたので、Twitterでの対お客様のコミュニケーションに力を入れながら、お客様に向けにプレスリリース配信サービスを活用し情報を発信したり、元々関係を築いているメディアの方に情報提供し、くず餅を取り上げていただいています。

若林:以前のTwitterは、新商品の紹介などがメインだったんですね。月岡さんが担当になって、コロナ前はフォロワーが5000人だったのが、今は5万人以上ですもんね!

月岡さん:私がTwitterを引き継いだのが、ちょうど1年前くらいで、それまではメディア向けの広報活動がメインでした。それが、コロナ禍でもできることを模索し、自分から「Twitterを通してお客様との関わりを深めてくず餅の認知を上げ、より知ってもらえるアプローチ方法に変えたい」と直接提案しました。

若林:もともとSNSはお好きだったんですか?

月岡さん:いえ、私自身はあまりSNS自体に詳しくありませんでした。SNSの運用自体が目的になってしまうと、迷走してしまう気がしたんですね。そこで、私自身がくず餅をすごく好きなので、そういう仲間と一緒に盛り上げる場を作りたいなと思いまして。コミュニケーションの取りやすさや自分のやりたいことに一番合っていたのが、Twitterでした。

若林:月岡さんがTwitterでされた取り組みとして、「くず餅の日」の募集や、和菓子のプレゼント企画がありますよね。プレゼント企画には1万人からの応募があったそうですね。そういった企画の意思決定はどのようなプロセスを経ているのでしょうか。

月岡さん:去年は亀田が産休育休でいなかったので、基本的に企画は自分発信が多かったのですが、ありがたいことに上司がTwitterの効果を見てくれていたので、二つ返事で許可をもらえ、スピーディーに進行することができました。

船橋屋のくず餅。

船橋屋のくず餅。すごく美味しそう!

若林:Twitterの運用を始めてから現在までで、ファンとのコミュニケーションをすごく加速させた取り組みといえば、どの取り組みになりますか。

月岡さん「共創」ということを1年間意識し、そこに、効果や結果を感じています。実は、爆発的にバズったというのはないのですが、くず餅の日も「あったらおもしろいかな」っていう私の投げかけからいろんな案をたくさんいただいたんですね。日程を決める段階からみんなで一緒に盛り上がって相互にやりとりをし、実際に、Twitter上でやってみたら、想像以上に「今日買ってみました」とか「前食べた想い出をツイートします」など、多い日は1日で120件、お客様から発信いただけたんです。そういうこともひとつの例かなと思いますし、同じような流れで、ファンネームを一緒に考えて盛り上がったという企画もありました。

若林:「フナバシスト」ですね!?

月岡さん:そうです!(笑) あれも、フナサーとかいろいろな案をいただいたんですよ。その中でまたアンケートをして選んでもらったりして、「みんなで決めた」、「みんなで盛り上げていく」というのを大切にしてきました。ほか、「くず餅を買ったけど、家じゃうまく並べられない」というお声をいただいたので、「本店ではこういう風に並べているんですよ」と動画を撮ってアップしましたら、みなさんが、必要な情報だったと喜んでくださって、マネして写真を撮って載せてくださるという良い循環がありました。

若林:なるほど! リアルに対面はしなくても、一緒に何かをやる「共創」が、いい循環を生み出しているということですね。頭ではわかっていても、実際にやるのは結構難しいことだと思って、「SNSお好きですか?」と聞いたんですよね。私はあんまり得意じゃなくて。(笑)
月岡さんのセンスというか、何でしょう…やっぱり、「くず餅愛」なんですかね。

月岡さん:それもあるかもしれないですね。SNSは、もとはあまりやってたタイプではなかったのですが、この1年運用してきて、めちゃくちゃ楽しいというのは自信を持って言えます! 何よりもやっぱり、自分が楽しんでいないと発信する気にならないので、くず餅に対する愛と、お客様とコミュニケーションをとる楽しみを本当に感じているのが、継続できた一番大きな理由だと思います。

若林:素晴らしいですね! でも、メディアキャラバンや取材対応もされているのに、いつTwitterをそんなにやってるのかなと。

月岡さん:よく聞かれます(笑)。正直、亀田が戻ってくる前はてんてこまいになってしまっていたこともありました。ただ、Twitterは、仕事の一環ではありますが、一日何投稿するとか、絶対にリプライを返すとあまり決めてなかったので、取材の時は、フォロワーやファンの方に、「今日は取材対応があるのであまり浮上できませんが、よろしくお願いします」などと事前にツイートしています。それ自体をコミュニケーションの一つと考えたり、できる工夫はしてきたので、どうにか本業のメディア対応と両立できていたのかなと思います。

メディア人をもファンにするコミュニケーション術とは

メディアに対してもファンになってもらうという心得で広報を行う。

メディアに対してもファンになってもらうという姿勢で広報に取り組んでいる。

若林:御社の場合、プレスリリースを配信したり、リレーションのあるメディアに送ると、結構反応ってあるものですか? それともそのあとに、電話や訪問とかでフォローアップすることで掲載に結びついているのでしょうか。

亀田さん:配信サイトを活用したプレスリリースの配信は、お客様向けに出しているので、メディアのお問い合わせは実際あまりないかなと感じます。本当にこれは取材してもらいたい!というのは、直接リリースを送付して、電話をしたり訪問させていただいてりしています。その方が取材や掲載につながる確度は高いですね。

若林:やっぱり、リリースを出しただけじゃなくて、そのあとにお電話とかもされてるということですね。

亀田さん:まだまだ小さい会社ですので、受け身じゃもう全然ダメですね。

月岡さん:そういった意味では、先ほど、ファンとのTwitterでのコミュニケーションの話をしましたが、メディアに対しても、ファンになってもらう!という心得でやっています。やはり、関係は1日にしては築けないので、ニュースがある時だけ話にいくのではなく、日頃の小さなコミュニケーションも意識しています。たとえば新聞記者さんでしたら、「この記事読みました、面白かったです」というコミュニケーションを自分から取りにいくことで、関係性を少しずつ築いています。そういう積み重ねを亀田がやってきたからこそ、私が広報を引き継いで、コロナ禍というピンチになっても、テレビなどでご紹介いただける機会もあったのではないかと感じてます。

若林:メディアをもファンにするっていうのは、すごく良いお話ですね! しかも、メディアのアクションに対して反応するというのは、メディアにしても全然悪い気はしないですし、思い出すきっかけになりますもんね。

月岡さん:戦略的にというより、いろいろお話して情報交換するのはこちらも本当に楽しいなと思っていますので、友達ではないですけども、気軽にコミュニケーションをとれる存在になりたいというのは意識しています。

若林:すごいですね、聞けば聞くほど、時間がいくらあっても足りなさそうですね。

月岡さん:やりたいことは本当に山積みなので、その中で優先順位を決めて、今できることをやってきています。

若林:ちなみに、先ほどプレスリリースの配信はお客様向け、とおっしゃっていましたよね。一昔前はその名の通り、プレスに発信するための資料だったと思いますが、今は、WEBサイトが充実したり、プレスリリース配信サービスなどもあり、一般の方もリリースを手軽に入手できる時代になりましたよね。広報の方たちも、一般の方の目に触れても大丈夫なように書いているなと感じています。一方で、一般の方ってどれくらいプレスリリースを見ているのだろうと気になりまして、実感としていかがでしょうか。

月岡さん:実際にどのくらいの方が見てるかというデータはとれていませんが、確実に見てもらえているとは感じています。リリースやWEB記事など、いろんな情報が山ほど発信されていますが、ファンの方は、船橋屋の情報を探して見つけにきてくださっています。コミュニケーションを重視し、愛着をもってもらえると、新しいニュースを出すと見つけてくれるという、いい循環を感じています。あと結構、学生さんが「船橋屋を受けるにあたって、プレスリリースを見ました」と言ってくれて、実は広報が書いてるんですよと会話のネタになっていたりもします。

お客様像をイメージしながら、「くず餅」の正しい情報と新しい発見、そして愛をお届け

BE:SIDEは発酵や乳酸菌をテーマにした新しい業態で表参道にオープンした。

「BE:SIDE」は発酵や乳酸菌をテーマにした新しい業態で表参道にオープンした。

若林:今年の3月に発酵や乳酸菌をテーマにした、新しい業態の「BE:SIDE」を表参道にオープンされてましたね。最近、メディアやお客様からすごく反応がよかった広報PR事例があれば教えていただきたいです。

月岡さん:そうですね、BE:SIDEは、WEBニュースはもちろんですが、テレビも3件(取材時)ご紹介いただいてます。乳酸菌商品というジャンルは正直ありふれていますが、その中で、船橋屋という歴史ある企業の新業態であることや、添加物や砂糖を使わず、本当にからだにいいものにこだわっていること、船橋屋だからできたこだわりを伝えていただけたのが大きいと思います。
BE:SIDEでは、わらび餅みたいなぷるぷるの「みずくずもち」を店舗限定で出してるんですね。くず餅をベースにしながら新しい商品を出したことで、若い方が、揺らして撮ってみたり、ぷるぷる食感を食べたいなど、いろいろな想いでご来店くださるので、メディアやSNSの流入も増えてきて、だんだん形になってきている状況です。

若林:最近のメディア露出やSNSを拝見すると、やっぱり、若い方にも関心を持ってもらいやすい切り口の露出が増えている印象があります。私は若い方ではないですけど(笑)、乳酸菌にめっちゃ興味があって。マクロファージが活性化するみたいな研究結果って大好きなんですよ。御社のリリースにそういった内容が書かれていて、「へええ!」と思いました。 

月岡さん:若い方も食に対し、健康意識を持たれてる方もいれば、ファッション感覚の方もいるので、お客さま像を想像しながら情報発信するということを心がけています。

若林:そうか、くず餅と一言で言っても、商品やコンセプトによって、響く層もちょっとずつ違ったりしますもんね。その辺を意識して、メディアへの情報提供の仕方も変えていらっしゃるということですね。

月岡さん:まさにそうです。くず餅のさまざまな切り口を用意し、メディアに合わせたアプローチを意識しています。

「BE:SIDE」店内の様子。すごくおしゃれな内装だ。

「BE:SIDE」店内の様子。すごくおしゃれな内装だ。

若林:個人的には、オーソドックスなくず餅って、毎日食べるという感覚ではないんですね。でも、『飲むくず餅乳酸菌』は、こういう機能性があるなら毎日ちょっとずつ飲むのもいいかもな~って思えるような商品で、より、ファンが増えたのではと思いました。そのあたり、広報として何か実感されることってありますか。

月岡さん:そうですね。広報からの色々な発信は、結局はお客様の反応や、お客様へ届けることを意識していますので、InstagramやTwitterの投稿を見て、こういう風に届いていたんだなって発見できる部分はあります。その中で、『飲むくず餅乳酸菌』は、まさに今仰っていたように、毎日飲むことで弊社との接点強化にもつながったと思います。
何より、くず餅を購入してくださった方に、くず餅を毎日食べてくださいとか、その後にあんみつもおすすめですよというコミュニケーションは、ちょっと違うなと感じますが、『飲むくず餅乳酸菌』は生活に取り入れていただくことで、お客様のQOLにもつながるので、そういった視点でのコミュニケーションも取れると感じています。
以前から「くず餅乳酸菌カプセル」というサプリメントを販売していたのですが、弊社は食品会社ですので、せっかくなら美味しく食べたり飲んだりできて、それが体にいい方がいいよねという発想で、何年もかけて開発したのが『飲むくず餅乳酸菌』です。それが今、お客様との接点づくりになっているというのは、ありがたいなと感じています。

若林:広報として、今後の目標をお伺いできますか。

月岡さん:ベースにあるのは、くず餅の認知度、それもいろんな角度から広く深く見ていくということがミッションということは変わりません。先日、改めて亀田とも話したのですが、私たちの会社はBtoCなので、お客様に正しく深く届けられる広報活動をより意識していきたい、それが何よりの目標と行動指針だと思っています。今後はより、お客様の声を参考にさせていただきながら広報活動を展開していきたいと思っています。

亀田さんとお子さんの写真。絶賛子育て中!

亀田さんとお子さんのプライベート写真。絶賛子育て中!

若林:ありがとうございます! ちなみに、プライベートはどう過ごされてますか。

亀田さん:私は出産してライフスタイルががらっと変わりまして、こどもの世話をしています。

月岡さん:亀田さんは甘いもの好きですよね、もともと食べている印象があって。うちの社員はみんな、食べることや甘いものが好きなんです。

亀田さん:確かに!ネットサーフィンして、気になるお店をブックマークして実際行ってみるのは勉強になるし、自分も幸せになりますね。

若林:お子さんがまだ小さいから、それがまた自由にできるまで、もう少し時間がかかるかもしれませんね。(笑)

月岡さん:私は、アウトドアな部分では旅行ですが、今は行けないのでお散歩とか。インドアでは読書、世界観にひたるとか、学びとか。

月岡さんはプライベートでは旅行が趣味だが、今は行けないのでお散歩や読書を!

月岡さんは習い事でフラダンスをしている!

若林:ちなみに、くず餅は毎日食べているんですか?

月岡さん:出勤時は食べていますね。365日のうち、半分以上は食べてます。

若林さん:いろんなお話を通して、おふたりのくず餅への愛をすごく感じました。

月岡さん:今後、誰かに広報を任せるときにも、そこが一番大事と思っています!

亀田さん:私の後任を決める時も、月岡のくず餅愛がすごかったのでお願いしたというのがあります。

若林:広報は愛がないとできないですもんね!

PRマガジン編集部の「編集後記」

編集後記:編集部 若林

文化二年創業の会社がベンチャーマインド!?

とても仲が良いお二人。

とても仲が良いお二人。

広報界隈では、ちょこちょこ耳にしていた「船橋屋の広報」さん。 なぜ、他社の企業広報が老舗和菓子屋さんの広報にそれほど注目しているのか!?と、実は1年前からずっと取材を申し込むタイミングをうかがっていた。そして、このコロナ禍。船橋屋では、宅配専用の「くず餅乳酸菌®入りかき氷」の販売など、様々な企画を展開されていた他、Twitterのフォロワー数もコロナ前は5,000名程度だったのが、今では5万人以上に。

今しかない!と思い取材させてもらったのだが、そこで分かったことがある。

船橋屋HPのメディア情報ページをご覧いただくとお分かりいただけると思うが、テレビ・WEB、雑誌とかなりの露出実績が掲載されている。 船橋屋さんは新商品の企画力もあるため、リリースを流せば取材が入る…ということなのだろうか?と思ったら違った。これだけの実績を出せている背景には、船橋屋、そして広報のお二人にある「ベンチャーマインド」だ。

古くからある「くず餅」。でも知らない人はまだまだいるという前提で、メディアと話すときも、まずは「くず餅を知ってもらうところから始める」し「メディアにもファンになってもらえるよう、日々のコミュニケーションを意識している」とおっしゃっていた。やはり、受け身の姿勢でこれほどの取材を獲得できるわけはないのだ。

広報のミッションは「正しく『くず餅』を広めること」

老舗企業は特に、広報にも「攻め」と「守り」が要求される。船橋屋の場合もそうだ。商品展開もそうだし、Twitter活用においても、昔から守り続けてきた「くず餅」のイメージを壊してはいけないというのが根底にあるという。それは、昔から船橋屋を愛してくれているお客様を裏切ることになるからだ。

しかし、守るだけでは購入層が狭まってしまう。
若者にも刺さる発信をしていかなくてはいけない。

その絶妙な塩梅をコントロールしながら、ファンを増やしている広報のお二人のお話は、老舗企業はもちろん、多くの広報にとっても学びが多いのではないだろうか。

今回のPRパーソン紹介

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株式会社船橋屋広報、亀田優奈さん

亀田 優奈(かめだ・ゆうな)

2013年入社。その後、販売部で店長経験などを経て、2016年に広報へ異動。メディアには「会ってなんぼ」精神で積極的なメディアリレーションを展開し、幅広いメディアでの露出獲得に貢献。 現在は、広報室室長として広報戦略の企画やメディアリレーションを担当。
株式会社船橋屋広報、月岡紋萌さん

株式会社船橋屋広報、月岡紋萌さん

月岡 紋萌(つきおか・あやめ)

2019年入社。 販売の経験を経て、2020年1月に広報へ異動。2020年5月から担当したTwitterの運用手腕にメディアからも注目が集まっている。現在は、メディアリレーションや取材対応などの広報のほか、ブランディングの一環としてSNS運用や新卒採用に従事。

株式会社船橋屋 (https://www.funabashiya.co.jp/

文化二年創業。発酵和菓子「くず餅」の老舗。近年は、くず餅が和菓子では唯一の発酵食品であることに注目し、「くず餅乳酸菌®」を培養して作り上げたバイオジェニックスドリンク『飲むくず餅乳酸菌』の販売を開始する他、発酵の力で体の内外から美しさを提案する新業態「BE:SIDE」を表参道にオープン。