「選択」と「集中」でひとり広報でも広範囲の業務をカバーし、成果も出す!-「キャディ」広報・浅野麻妃さん

今回は、製造業の受発注プラットフォーム「CADDi(キャディ)」を運営、「モノづくり産業のポテンシャルを解放する」をミッションに、テクノロジーによる製造業の改革を目指す、キャディ株式会社の浅野麻妃さんに、広報・PRパーソンならではのリアルな企業広報のお話を伺った。
(インタビュー:編集長)

キャリアの軸は「好きと強みで成り立つ社会の実現」に寄与すること

編集長:今回、複数の方から「会社に必要と思われることだったら何でもやる広報」として、浅野さんを紹介いただき、お声がけさせていただきました。さっそく、これまでのご経歴を伺えますか。

浅野さん:最初は大阪で塾の先生をしていました。その後、以前PRマガジンさんでも取材されていたWEBマーケティング会社のベーシックに入社しました。

編集長:そうでしたか!

浅野さん:人事が長かったのですが、兼務で社長秘書も5年弱担当していました。その後広報の立ち上げにアサインされ、1年ほど携わったのが、広報のキャリアの始まりです。キャディには2018年11月に入社したので現在3年半くらいになります。

編集長:キャディに入社しようと思われたきっかけは何だったのですか。

浅野さん:前職のベーシックに入社するきっかけになった日本の飲食事業の海外展開を支援するという事業を、2017年末に売却することになりました。当時ベーシックにとっても大きな転換期だったのですが、自分としても一区切りついた感があり、転職先を決める前に退職を決めました。
その際に、自分の人生の軸になるライフミッションをちゃんと言語化しようと思ったんです。それで、「好きと強みで成り立つ社会の実現」に寄与できることに携わりたい、というところに立ち返りました。
キャディのミッションは「モノづくり産業のポテンシャルを解放する」ことでして、製造業で長く続いている多重下請構造から、町工場一社一社が持っている強みをベースにフラットにつなぎ替えていくことを目指しています。
それが、私のキャリアの軸にも沿っていたため、キャディへの入社を決めました。

編集長:転職前の2018年当時に、キャディを知っていたのですか。

浅野さん:全然知らなかったです(笑)。
当時はコーポレートサイトすらなく、かろうじてウォンテッドリーに、何も書いてない会社ページがあるくらいでしたので、自力で知るのはほぼ不可能だったと思います。たまたま、前職の上司と、弊社代表の加藤との間に共通の知り合いがいて、紹介してもらったのがキャディでした。

編集長:現在、キャディではおひとりで広報を担当されてるのですか。

浅野さん:社員は私ひとりで、業務委託の方が2名です。

編集長:一時は5人くらい業務委託の方が入っていたそうですね?

浅野さん:はい。当時は、ひとり編集部のような感じで、コンテンツを量産していた時ですね。

編集長:時期がちょうど、加藤社長の記事が増えてるタイミングだったので、メディアリレーションに注力するために業務委託の方が入っていたのかと思っていたのですが、そういうわけじゃないんですね。

浅野さん:逆にその時期は、ほとんどメディアリレーションはしていなかったです。ジョインしてから1年ほどは認知獲得のためにメディアリレーション強化に注力していましたが、その後は時期によって採用広報の比重が増えたり、時にはコミュニティマネージャーを務めたり、さまざまですね。パブリシティの獲得にずっと注力していたわけではなく、その時々の会社のフェーズ、注力領域に沿って広報の役割もダイナミックに変えてきた感じです。

編集長:浅野さんとしては、経営に資する広報というところが一番大きいから、その時々で広報のあり方を変えてきているということですね。

浅野さん:そうですね、広報であることにそんなに強い思い入れは個人的になくて(笑)。何のためにやっているのか、会社の方向性への共感を何よりも重視しています。その中で自分が、その時の布陣で価値が一番発揮されやすい場所であれば、何をやってもいいのではないかという考えが根本にあります。

入社後取り組んだのは、「黒船」感を出さずに、業界から受け入れられるためのブランド戦略

キャディのミッション

キャディのミッション

編集長:キャディでの広報のミッションは、その時その時で変わってきているのでしょうか。

浅野さん:抽象度を上げれば、「経営課題の解決」が一貫したミッションです。特に、スタートアップにおける広報の役割でいうと、そこに尽きるのではないかと思っています。

編集長:経営課題の解決って、本当に重要なことだと思うのですが、広報として経営課題にどう対峙するかって、どう決めているのでしょうか。

浅野さん:そこは結構単純です。弊社ではOKR(Objectives and Key Results)を導入していて、3ヶ月おきに全社として目指すところが決まるのですが、そこに沿う形で、広報は何をやるべきかを決めています。

編集長:広報として取り組むスパンで3ヶ月って結構短いような気がしますが。

浅野さん:仰る通りです。ただ、何だかんだで、3ヶ月で終えたことはあまりなく、少なくも半年は継続して取り組んでいることが多いです。また、全社の1年、3年計画もあるので、それにアラインする形でPRのあるべき姿のアウトラインも引くようにしていました。

編集長:入社後、まず始めたことは何だったのでしょうか。

浅野さん:私は15人目の社員なのですが、コーポレート部門の一人目で人事よりも先に広報として入社しました。なので、最初は人事や採用、総務的なことも担当していました。
広報としては、キャディという会社を世の中にどう認知してもらうか、その方向性を決めるというところにまず取り組みました。代表の加藤としても経営戦略上、広報がすごく大事だという意識があったのですが、起業当時は加藤が26歳と非常に若く、“東大卒の外資コンサルティングファーム出身で26歳が起業したスタートアップ”という情報だけだと黒船感が出てしまい、伝統的な産業である製造業の方々からは敬遠されてしまうのではないかという懸念がありました。

キャディは「モノづくり産業のポテンシャルを解放する」というミッションを遂行する上で、業界をディスラプト(破壊)するというつもりは1ミリもなく、業界のプレイヤーにあたる、モノづくりのメーカーさんや現場が力を最大限発揮できるような後ろ盾になったり仕組みを整える“(ゴルフの)キャディ的な存在”を目指しているので打ち出し方も気をつけなくてはいけないと考えていました。

編集長:具体的には、どういった取り組みにより黒船感を出さずに、業界に貢献する存在として出していったのでしょうか。

浅野さん:最初に取り組んだのはキーメッセージの策定です。経営陣と丸2日くらいかけディスカッションしました。認知が全くないところからのスタートだったので、どういう認知をとっていきたいかから考えました。最終的に7つのキーワードにまとめましたが、その中の一つが「NOTキラキラ」です。スタートアップは、キラキラしているイメージが強い傾向にありますが、それとは真逆の泥臭いイメージや現場に寄り添ってるイメージを伝えていこうと決めました。
そのため、初期の頃はメディアの取材時や登壇の際には、代表に作業着を着てもらったり、オフィスの場所が渋谷や六本木ではなく「下町」に位置していることを冠したイベントを企画したりなど、キラキラ感を払拭し現場に寄り添うイメージを訴求していきました。

編集長:最初の1年くらいはメディアリレーションに注力していたとのことですが、代表に作業着を着てもらうということ以外に、世の中に対しキャディ像を創っていく上で、意識していたことはありますか。

浅野さん:他にはミッションをきちんと謳うということも意識していました。歴史があり伝統的なやり方が根付く製造業のやり方をアップデートしていくというのは、先ほども話したように、ともすると敵対視されかねません。そのため、どういう想いを持ち、製造業の課題を解決しようとしているのかという部分は、社内外で繰り返し発信していました。
結果、弊社のミッションである“ポテンシャル解放”というワードは、社内でも普段使いされていますし、今では私たちのパートナーである町工場の方々も口にしてくださるまで浸透しています。ミッションや企業理念は、絵に描いた餅ではないですが、社内でも定着しないことも少なくないと思います。でも、キャディの場合は、事業のOKRを決める際や事業戦略を考える場合も、ミッションに立ち返ることができており、そこが強みだと思っています。

採用の自然応募を増やすために60営業日で55コンテンツを発信!そこからわかったコンテンツの役割とは

採用広報に注力していた3ヶ月の自然応募数推移

採用広報に注力していた3ヶ月の自然応募数推移

編集長:2021年の後半から、影響力のある媒体に次々と露出されていらっしゃいますね。

浅野さん:80億円の調達の影響が大きかったと思います。あとは、日経の「NEXTユニコーン調査」の成長率ランキングで1位を取るなど、わかりやすい出来事が続いたので、“報道の連鎖”が起こったという認識でいます。

編集長:資金調達時に、広報として工夫したことや仕掛けたことは何かあったのですか。

浅野さん: 80億という金額のインパクトもありましたが、キャディが進む新たなステージの構想と挑戦の大きさを伝えていくことが重要だと思っていました。採用チームと連携しイベントやLPの作成、note発信の設計も行い、全社でメッセージ強化に努めました。また、資金使徒として新規事業と海外展開を挙げていたので、海外向けのプレスリリースの作成にも初めて挑戦しました。書き方のお作法が全く異なったり、FAQを英語でも用意したりと結構骨が折れましたね。

編集長:海外向けのリリースは、配信サービスを利用してですか。

浅野さん:いえ、海外向けは今回配信サービスは利用せず、VC経由で海外のPRエージェンシーさんとやりとりをして、メディアリレーションを行いました。結果、「TechCrunch(テッククランチ)」のアメリカ本家の方にも初めて取り上げていただけました。今までにやったことがない取り組みも多く、手探りでチャレンジングでしたが反響も大きかったのでやってよかったです。

編集長:メディアリレーションに注力していた以外の期間は、どういったことに取り組まれていたのでしょうか。

浅野さん:採用広報やコミュニティマネージャーをしていました。2020年までは、ほぼひとりだったのですが、2021年の頭から、はじめてアウトソースという手段を得て、今に至るという感じです。

編集長:採用広報では、どのようなことを行われたのですか。

浅野さん:色々ありますが、たとえば自然応募を増やすためにコンテンツを量産するということをしていました。さきほどお話した業務委託の方に協力いただいていた時の活動がこれです。60営業日で55コンテンツを発信したので、ほぼ毎日何かしら公開していました。メディア運営を本業としてる方や編集者さんにも、驚かれるくらいでした(笑)。その甲斐もあり、ウォンテッドリーでランキング1位をとれたり、応募エントリー数も2倍になったり、一定成果が出たといえる取り組みだったと思います。その他でいうと、リファラル採用のプロジェクトリーダーもしていましたね。

編集長:業務委託の方にサポートしてもらうとはいえ、55も何のコンテンツを出していくのか考えるのも大変ですよね。

浅野さん:大変でしたね(笑)。ただ、コンテンツに困らなかったとはいいませんが、ちゃんと採用課題を棚卸すると出すべき内容は多々ありました。
たとえば、福利厚生の紹介やイベントのレポート記事、社員のTwitterアカウントまとめ、直近で入社した社員の前職の統計など、候補者さんが気になるポイントを網羅するように心がけていました。

編集長:これまでの取材した企業の中にもウォンテッドリーを頑張っている企業さんは結構いて、一位や上位を獲得していらしたので、頑張れば結構いいところまでいけるメディアなのかな!?と楽観的に考えていたのですが(笑)。どうですか、55という、短期間にかなりのコンテンツを出したことがやっぱり結果に結びついているのでしょうか。

浅野さん:限界を知るという点においては良かったなと思いますが、コンテンツ数に比例して応募数が増えるというものではないという学びもありました。たとえば、コンテンツの発信数でいうと昨クオーター比で10倍以上なのですが、自然応募数が10倍になったわけではありません。どちらかというと興味を持ってもらうきっかけを作ったり、ファン化を促進する役割が強いという気付きがありました。
候補者さんは、エージェント、自然応募、スカウト、リファラルと様々な流入経路がありますが、どの流用経路であっても、自社コンテンツにひとつも触れずに内定承諾に至る方はいません。自分が入社するかもしれない会社のことについて、知りたいと思うのは当然ですし、どの候補者さんのジャーニーの中にもその接点は存在します。つまり、採用広報の成果は自然応募数だけでは測れず、間接的に全ての採用CV率を底上げすることに寄与する、ということです。

編集長:自然応募の母数を増やすためにどういうサイト作りが必要か、どういったイベントを企画するかということを人事と一緒にやっていきつつ、他経路も含め集まってきた人たちの志望度が高まるように、自社のコンテンツを用意し、面接遷移率や内定承諾率を上げるような環境を整えていったということですね。

浅野さん:そうですね、テキストコンテンツだけではなく動画も作りました。温かみや人柄を伝えるには動画の活用も有効だと思いまして。ただ、動画は大変なので、たくさんは作れませんが。

編集長:コンテンツ55本に加えて動画も!?びっくりです。これ、3ヶ月の話ですよね?

浅野さん:そうですね。カメラを買って、撮影して、編集のみアウトソースしました。

編集長:カメラを買うところからはじまったんですね(笑)。

浅野さん:カメラが詳しい社員に、どれを買ったらいいかヒアリングして、使い方をYouTubeで勉強しました。字幕の書き起こしも自分でやって、本当に地味で大変な作業でしたね。

編集長:いやあ、字幕の文章考えるって、結構大変ですよね! 短いワードでうまく伝えるには、話し言葉と同じような文章ではダメですし。
でも、そういうスキルって、広報は持ってるかもしれないですね。プレスリリースのタイトルとかで鍛えられているのではないかと。

KPI設定が難しいコミュニティ~「新規参加者率」と「アクティブ率」を意識した運営に

コミュニティ運営時の要素整理

コミュニティ運営時の要素整理

編集長:コミュニティマネージャーをされていたのは、2020年4月から半年くらいですか。

浅野さん:そうです。この時期から新型コロナウイルスにより、それまでマーケ施策のメインだった展示会などのイベントが軒並み中止になってしまいました。限定的な接点の中でサプライパートナーの方々とのコミュニケーションをどう強化していくかという課題があったので、ファン化を促進するコミュニティの立ち上げを行おうと決まりました。カスタマーサクセスが担当する会社も多いと思いますが、広義にはステークホルダーとのコミュニケーション設計であることに変わりはないので、私の方でまず始めてみました。

編集長:マネージャーってことは、コミュニティの企画から運営までということですよね。具体的にどのようなことをされたのですか。

浅野さん:もちろん経験もなく、「コミュニティって何だろう」というところからのスタートだったので、他社でコミュニティマネージャーをされている方5人くらいにヒアリングさせてもらいました。そこで、KPIの立て方や運営のポイントを聞かせてもらい、自社における行動目標を作っていきました。

編集長:実際、どのようなコミュニティ活動をされていたのですか。

浅野さん:時期的にオンラインでしかできなかったのですが、ミートアップや勉強会を開き、その時々で、参加者同士の横の繋がりを作っていきました。また、回ごとにテーマを決め、たとえば「採用」であれば、採用がうまくいっている町工場の方に具体的な採用成功事例を共有いただいたりもしました。経営者限定のコミュニティにしていたので、自分事として聞いていただける方が多く、一定満足度も高かったです。

編集長:今、コミュニティはどうなっているのですか。

浅野さん:マーケティング部ができ人数も増えたので、今はそちらが主体となって動いています。現在は発注様側をメインの活動としており、「メーカーズコミュニティ」と銘打って業界全体を盛り上げていくことを目的に活動しています。

編集長:浅野さんが運営されてた時は、どのくらいの頻度で勉強会を開催されてたのですか。

浅野さん:月に1〜2回です。コミュニケーションのプラットフォームとしては、当時FacebookとLINEどっちも使ってました。

編集長:2つのSNSを管理するとなると、かなり大変そうですね。

浅野さん:そうですね。どちらもイベントを立てて、コメントできるようにしていましたし、当日使った資料は後日そこで展開したり、イベントレポートを書いて共有するといったこともしていました。

編集長:なんか、浅野さんがやってきたことを聞くと、全部工数が多いというか、すごい大変そうだなと。

浅野さん:華やかなことってほとんどなく、地味にコツコツと…といった感じですね。

編集長:ちなみに、コミュニティって、KPIを立てるのは結構難しいと思うんですよね。浅野さんは、どんなKPIを立てられていたのですか。

浅野さん:新しく加入した人が入りづらい空気感が出てしまうのはよくないので、一定の新陳代謝は起こしたいと考えていました。そこで、イベントを開催するごとに、新規に参加いただく方の比率を50%くらいにはしたいというのがひとつ。あとは、アクティブ率です。アクティブの定義を直近3ヶ月以内にイベントに参加したこととして、休眠する人や、加盟はしてるけど活動してない人の割合を下げることを目標にし、その数字を追っていました。

編集長:アクティブ率はわかりやすいですよね。新規参加率は、新しく参加してもらう人を増やしていく取り組みがセットだと思うのですが、それも浅野さんがされてたということですか。

浅野さん:はい、そうです。定期的に開催していたパートナー説明会の最後でコミュニティに関して告知し、その後、メールをお送りしていました。それだけでは、参加率が上がらないので「この前送ったメールは見ていただけましたか?」とお電話もしていました。

編集長:まるっきり、営業じゃないですか(笑)!

浅野さん:完全に営業ですね。「今度こういうイベントがあるんですけど、どうですか」とかお話する中で、初回の参加ハードルって想像以上に高いということがわかったんです。特にミートアップをオンラインでやることに、当時皆さん全然慣れていなかったので、「少人数の会なので、全然緊張しなくて大丈夫です。当日私もいるのでぜひ遊びに来てください」とハードルを下げることを意識し、地道に電話をしていました。

リファラル採用に社員の協力は不可欠~noteの活用を促し活性化

【キャディ公式note】社員が書いたnoteの数は175本

【キャディ公式note】社員が書いたnoteの数は175本

編集長:御社は上場を視野に入れていらっしゃるのですよね。

浅野さん:それを目的にはしていないですが、どこかのタイミングですることにはなると思います。

編集長:そこに向けて広報で取り組まれていることは何かありますか。

浅野さん:上場に向けてというのはありませんが、現在社員数が400人を超え、今まで会社の認知獲得や採用広報というどちらかというと攻めの広報活動を行ってきましたが、これからはリスク管理の重要性が高まっていると感じています。その比重を高めてきたのがこの半年くらいです。

編集長:社員のSNS利用に関してのガイドラインを考えるとか、そういうことですか。

浅野さん:そうです。SNS利用のガイドラインを作ったり、弊社は個人noteの発信がすごく多い会社なので、noteにおける発信のガイドラインを策定するといったことを進めています。

編集長: noteはある程度、文字量も必要だと思うのですが、社員の皆さんの発信率が高いというのはすごいですね。

浅野さん:そうですね、noteに関してはリファラル採用プロジェクトがきっかけになっています。採用のプロセスで、キャディを好きだと思ってくれる人の輪を広げるというところに重きを置いていて、そこに関連する活動はすべてリファラル活動と定義していました。なので、noteの発信も、身の回りの人にキャディを好きになってもらう取り組みの一つとして、社内で広めていきました。仰る通り、noteを書くのはそんなに簡単なことではないので、最初は全然広まりませんでした。そこで、最初はnoteを書いてくれそうな社員に個別に声をかけたり、管理部のメンバーは書くことをノルマにしたりしていましたね。待っていても書いてはくれないので、書くイメージを持ってもらうためにも、火付けのポイントを抑えるということが重要だと思います。

編集長:リファラル採用は、社員を巻き込まないと成功しないけど、どう巻き込むかがすごく大変だというのは感じています。火付けのポイントというのは確かにその通りですよね。誰を巻き込むかによって、あとは自然発火していくのか鎮火で終わるのかが決まるかもしれませんね。そのあたりも、採用広報においては工夫されたということですね。

浅野さん:はい、当時はまだコロナ禍ではなかったので、会社でメンバーとすれ違った時に「この前、Slackに書かれていたあの話、すごいおもしろかったです。これについて今度note書いてみませんか」というように、ただ「書いてください」ではなく、具体的な期待をかけるのが重要かなと思っています。

ひとりで効率的に広報業務を回すコツは「“やらないこと”を決める」こと

経営課題と広報業務の変遷

経営課題と広報業務の変遷

編集長:最後に、2020年12月までひとり広報だったということで、スタートアップや中小企業のひとり広報の方に向け、うまくやるコツみたいなものがあったら、ぜひ教えて欲しいです。

浅野さん:コツはひとつですね。「フォーカスする」、つまり「捨てることを決める」ということです。広報って、やろうと思えば無限にやることがありますよね。でも、基本的にリソースがないので、やらないことを決めるのがすごく重要だと思います。

編集長:確かに、浅野さんの変遷を見てても、そうなんだなって思います。ただ、捨てるとはいえ、パブリシティとかは短いスパンであらためて取り組まれていますよね。

浅野さん:結果的にはそうですね。フォーカスするといっても、採用に注力している時にインバウンドの取材や登壇を受けたりすることもありますし。そういった対応はしつつなので、一切やらないというわけではありませんが、やるラインとやらないラインを決めるという感じですね。

編集長:これは、ひとり広報さんはうなずく方も多いかもですね。本日はお話を聞かせていただき、ありがとうございました!

PRマガジン編集部の「編集後記」

編集後記:編集長

―複数の広報から「会社のためなら何でもやる広報」と評価

Zoom取材中。

Zoom取材中。

もはや広報の仕事をメディア露出に限定している企業は少数かもしれない。

広報は企業活動のあらゆるシーン、あらゆる部署に関わっているため、やろうと思えばかなり広範囲におよぶ業務に関与することができる。
ただ、「広報視点で」あらゆる業務に関わるというのが広報としてのミッションだろう。

しかし、浅野さんは「広報であることに強い思い入れはない」と発言されていたように、「広報だから」に全く縛られず、会社にとって必要なことを遂行するために、必要な役割になりきり対応されているのが印象的だった。

カメレオン広報?上手い表現が見つからないが、自分の役割や立ち位置を超柔軟に変えながら、会社に貢献していることは間違いないだろう。

―何でもできる人。けど「選択」と「集中」で器用貧乏にならない、ひとり広報のお手本

前職も現職においても、新しいことを始める際は浅野さんに、という流れが生まれるようだ。
何でもできるというのはすごいことだ。でも、何でも引き受け過ぎてしまうと、どれも中途半端な結果しかだせないということもある。ひとり広報はこの罠にはまりやすいのではないだろうか?

そこで浅野さんに学ぶべきは「捨てる勇気」だろう。ただ、捨てるとはいっても、完全にやらないというわけではないし、キャディにおいては短期スパンで業務のサイクルを回しているから、一時捨てたことによる致命傷を負わないのだ。

マンパワーが限られている企業では有効な取り組み方かもしれない。

今回のPRパーソン紹介

浅野 麻妃(あさの・まき)

塾講師、株式会社ベーシックでの営業・採用・広報を経て、2018年11月、広報としてキャディに入社。「好きと強みで成り立つ社会の実現」をキャリアの軸とし、同社にてパブリシティ活動や採用広報、コミュニティマネージャーを務める。

キャディ株式会社(https://corp.caddi.jp/

2017年11月設立。製造業の受発注プラットフォーム「CADDi(キャディ)」を運営。「モノづくり産業のポテンシャルを解放する」をミッションに、テクノロジーによる製造業の改革を目指す。