成人女性でこんなに蚊に刺される人を見たことがない、というほど虫に好かれる私。
夏~秋の夕方は恐ろしくてしょうがない。だから虫よけグッズもコレクターのようにある。
その中でも「本当に!?」とビックリしたのが、金鳥さんが出している「蚊がいなくなるスプレー」。部屋の中央に向けてスプレーすると殺虫効果が12時間持続するというもの(部屋の広さに応じて、プッシュ回数が変わる)。
金鳥さんはすごい商品を開発するな…、学生時代に採用試験受ければよかったと後悔。受からなかったと思うが(笑)
でも、今回取材したのは「ゴキブリ用殺虫剤」。その名も『ゴキブリムエンダー』。こんなに「蚊」に対してのアンテナを張っている私が、なぜ「ゴキブリ」を選んだかというとある調査結果が理由だ。
それが、インテージ集計のデータで、ゴキブリ用殺虫剤の市場規模はハエ・蚊用の3割超(2019年)に過ぎないが、殺虫剤全体に占めるゴキブリ用の構成比が上がっているという報告があったからだ。
ゴキブリ用殺虫剤もたくさんあるが、「蚊いなくなるスプレー」同様、部屋の中央で宙に向けてプッシュするだけという画期的な商品「ゴキブリムエンダー(2020年2月発売)」が大ヒットしているということで、大日本除虫菊株式会社(金鳥)のマーケティング部課長・奥平さんと宣伝部・笹岡さんにお話を伺った。
ちなみに、私はゴキブリも怖い。幸いマンションに住んでからは見かけていないが、実家の一軒家に住んでいた時は、夜になるとご対面することが多く、明かりをつけるのが怖かった。
ゴキブリってなぜか「嫌いな人」が遭遇しやすい(持論)。早速、「ゴキブリムエンダー」をもって実家へ。これで安心して夜も帰れるかな?
(編集部・若林)
この記事の目次
開発に10年以上~“煙がでない”“空間にプッシュするだけ”の手軽さから想定を上回る販売数に
―「ゴキブリムエンダー」は無煙処方で人にも優しく、くん煙剤では必要な事前準備や事後の掃除なども必要ない商品ということですが、開発に10年以上かかったそうですね。この商品を発売するに至った経緯を教えていただけますか。
奥平さん:私が入社した2001年頃は、くん煙剤が最大市場となっていたのですが、社会環境の変化もあり、年々市場が縮小傾向にありました。「空間にプッシュするだけで、簡単手軽に、空間まるごと駆除出来たら便利だな」という想いで研究所での商品開発が始まりました。
―これまで様々な害虫駆除剤を発売されていますが、それらと比べ「ゴキブリムエンダー」の売上の初動はいかがでしょうか。
奥平さん:初動は非常に良かったです。想定を超えるかたちで推移したので、当初の計画数を何度も見直し、増産していきました。その要因は、殺虫剤については、成熟した市場と言える中で
・コンセプトが分かりやすい
・(ゴキブリのイラストは描かれていない)シンプルなパッケージ
といった点が受け入れてもらいやすかったのではないかと思っています。ゴキブリに対しては、本当に嫌いな人が多いので、商品を選ぶ際、裏面までしっかり読み込んで購入いただけていると推測しています。パッケージを見ていただければ、“煙が出ない”、“部屋の広さに合わせて、空間にプッシュするだけ”、“部屋から出ていく必要がない”と、新しい商品だということを感じていただけると思います。
また、「ゴキブリムエンダー」の購入者は、30~40代の方が多いという結果がでているのですが、30~40代の若い方は、虫をあまりみたことがない方も多く、パッケージにゴキブリの絵が描かれているのも嫌と思われる方もいるようです。今回、パッケージにはゴキブリのイラストも入れていないので、そういった方にも受け入れてもらいやすかったのではないかと思っています。
研究所が商品開発にかけた熱い想いを全社で共有
―御社では、発売前にマーケティング部から販売部門に対し、プレゼンを行うとのことですが、「ゴキブリムエンダー」は通常より2か月前倒しでプレゼンテーション資料を作成されたそうですね。それはどういった狙いからでしょうか。
奥平さん:研究所の熱い想いが凝縮された商品だったので、それを営業の皆にも知識としてしっかり根付かせたいという想いがありました。ゴキブリムエンダーは通常より2ヶ月早くプレゼンのためだけの時間を確保してもらい、丸一日かけてしっかりと説明しました。
―御社は、マーケティング部が市場調査等を踏まえ、こういった商品を開発してほしいと開発部に依頼されるのではなく、開発部が主体となって新たな商品を開発することが多いのですか?
奥平さん:どちらもあります。ただ、マーケティング部で市場データを分析して商品化するものより、研究所の「技術」や「想い」から発展した商品(今回の「ゴキブリムエンダー」や「虫コナーズ」等)のほうが、データだけでは“想定できない”今までにない新しい商品の誕生につながることが多いかもしれません。
今までにないが故、計画数量の割り出しに苦悩
―ヒットに至るまでに一番苦労されたことはどんなことでしょうか。
奥平さん:計画数量を割り出すことが一番難しかったです。というのも、基本的には、過去の数値から計画数量を割り出すことが多いのですが、「ゴキブリムエンダー」は全く新しい商品だったので、過去の数値からの算出はどうしても難しい面がありました。一部、商品供給でご迷惑をおかけする事もあり、反省しています。
こういった今までにはない新しい商品の計画数をどう算出するかというのは今後の課題だと感じています。
時流を上手く取り入れた新聞広告がSNS上でも話題に
―発売は2月で広告出稿は4月頃と少し開きがあるんですね。
奥平さん:ゴキブリは、気温が15度前後くらいになる3月半ば頃から活動期に入ってくるので、販売店さんは2月中旬から売り場を立ち上げるんですね。そのため、殺虫剤は2月発売が多くなっています。
笹岡さん:ゴキブリ殺虫剤の広告出稿に関しては、発売時ではなく、毎年売れ行きが伸びはじめる4月頃から出稿しています。私たち宣伝部もマーケティング部のプレゼンに同席して理解を深め、年内からCM出稿の準備は始めていました。新聞に関しては3月末頃よりどういった紙面にするかの検討を始めたのですが、新型コロナのこともあり、一時は出稿自体辞めた方がいいのではないかという話もあがりました。そのため、最終的に新聞広告の方向性が決まったのも4月中旬頃でした。
―「ゴキブリムエンダー」の『もうどう広告したらいいかわからないので。』という、コロナの状況に応じた6パターンの広告にQRコードから飛べる新聞広告がすごく話題になっていましたね。どれくらい反響がありましたか?
笹岡さん:通常は、新聞広告で完結してしまうことが多いのですが、今回は紙面からWEBに誘導していく、という施策にチャレンジしました。ありがたいことに、SNSで好意的な書き込みが増えたり、多くの方がWEBにアクセスしてくださって、一時はアクセスが集中しすぎてサーバーがつながりにくくなるほどでした。
個人的な見解ですが、WEBで情報が拡散されたことで、これまで弊社と接点の少なかった方も弊社のHPにアクセスしてくださったりと、認知を広げるきっかけにもなったのではないかと思っています。