PRマガジンとしては、二度目のZoom取材となった今回。
毎年ゴールデンウィーク前後がネモフィラの開花時期なのだが、今年は新型コロナウイルスで休園になった、国営ひたち海浜公園。
だが、4月下旬より多くのメディアでネモフィラ畑の様子が取り上げられていた。
その映像の中でインタビューに対応していた広報の星さんを見たのが、今回PRマガジンが国営ひたち海浜公園に取材を依頼したきっかけだ。
星さんのお話を聞いていくと、公園という長閑な雰囲気からは想像もできないくらい、迅速な対応かつ最新トレンドをおさえた施策を展開していることに驚いたのだった。
今回は、ネモフィラ畑が有名で毎年ゴールデンウィークには多くの観光客が訪れる、茨城県ひたちなか市の国営公園、国営ひたち海浜公園の星みきさんに、広報・PRパーソンならではのリアルな広報のお話を伺った。
(インタビュー:編集部 若林)
この記事の目次
- 民間企業の広告デザイナーから、公園財団へ入団し広報に
- SNS発信の転機となった、お客様からの言葉
- 悲しい過去を持つ地から「死ぬまでに行きたい世界の絶景」へ
- スピーディな取り組みと新たな発信手法の採用で、公園の魅力を全国にお届け
- 最初から、できないというのは言いたくない。メディアを引きつける柔軟な対応と新しい挑戦
- 時にはパペットも自作!クリエイティブ力を余すとこなく発揮し新たな広報施策にもチャレンジ
- 限られた資源の中から、世の中に求められるニュース性を見出していく
- クリエイティブトーンを意識したSNS運用
- プライベートでは美術館巡りも。作る感覚をずっと持ち続けながら創造意欲を高めたい
- PRマガジン編集部の「編集後記」
- メディアでインタビューに対応していた星さんを見た
- 最新トレンドをおさえた施策を展開していることに驚いた
- 今回のPRパーソン紹介
民間企業の広告デザイナーから、公園財団へ入団し広報に
若林:いきなりですが、このネモフィラの背景画像、ステキですよね。この前私も、会社の会議の時にひとりだけバックをこちらに切り替え、華やかにして参加しました!
星さん:わあ、ありがとうございます!
若林:私にとってネモフィラ畑は、ずーっと行ってみたい場所のひとつだったんです。ただ、ニュースですごい人出なのを見てまして、行くタイミングを逃してしまっていて…。今年はお花畑も、職員の方たちが撮影してお届けされているという感じですよね。
星さん:そうですね、残念ながら休園で直接見ていただけないので、写真等でお届けしています。
若林:自粛生活も長くなってきて、どうしてもストレスが溜まり、私は近くの公園で緑を見るだけでもだいぶんリフレッシュできるので、国営ひたち海浜公園さんは理想的な職場ではと思います。入社されたのはどういう経緯だったんですか?
星さん:大学卒業後、総合広告会社のデザイナーとして地元で働き、2018年12月に一般財団法人公園財団に入団しました。その配属先という形で、国営ひたち海浜公園の広報係に着任しています。
若林:デザイナーさんからの転職とは、すごいユニークな経緯ですね! なぜ、転職しようと思われたんですか?
星さん:もともと自然やお花が好きで、公園というフィールドで情報発信をする時に、デザイナーとして培ったアウトプット力を生かせるのではと思ったことと、もっと企画段階から携わってみたいという想いがあり、いろいろな経験ができるチャンスになるんじゃないかと決意しました。
ですが、自分なりに意気込みを持って入りましたが、「広告」と「広報」は、名前は似ていますが全く別物でした。広告の時は、クライアントの意向を汲み取って課題解決を提案していき、その中でもデザイナーの役割は仕上げの部分の担当で、受け身になることが多かったように思います。
広報では、情報を整理して発信したり、人と関わり合いながら調整や交渉をしたり、文章を書いたりと一連のことをすべてこなしながら、さらに随所で積極性が求められます。そこが前職とは大きく違い、私自身、今はいちから頑張るといいますか、壁にぶつかりながら悪戦苦闘しているような状況です。
若林:入団されてから広報に配属というのは、ご自身で希望を出したわけではなく、「あなたここに行ってね」という感じで言われたんですか?
星さん:そうですね。面接の時に、広報の場面で挑戦できればとは話しましたが、この公園に配属されたのは人事上の理由となります。
ちなみに、国営公園と公園財団の関わりですが、国営公園は国土交通省が設置する都市公園です。公園財団はおもに国営公園や都市公園の管理運営を行う団体であり、国営公園の場合、国土交通省から業務を受けて管理運営をしています。
若林:ありがとうございます。現在、国営ひたち海浜公園では、星さんを含めて、広報の方は何名いらっしゃるんですか?
星さん:私が広報係員という立場になり、広報係長と、地域スタッフの3名体制でやっております。
若林:星さんだけが担っている役割などは、何かあったりするんですか?
星さん:今は休園期間中のため通常業務ではありませんが、普段は毎週発信するプレスリリースの作成や、取材対応などを係長と分担しながらやっております。SNSの発信もしていますが、公園の仕事はシフト勤務ですので、私だけというわけではなく分担してやっていますね。
あとは、公園の季刊紙「そよかぜ通信」という、季節ごとにお花の情報やイベント情報をお知らせする印刷物も制作しています。その他、公園ガイドマップなどのデザインも手がけていますね。
若林:業務内容が結構広いですよね!それを3名でされているということですものね。お花だけじゃなくて、地域のお子さんなどを呼んだイベントなども年間通してされてますもんね。
星さん:そうですね、かなりの数のイベントがありますね。
若林:広報はどういった広報目標を掲げていらっしゃるんですか?
星さん:もともと非営利型の組織ですので、通常の企業とは異なり、収益は利用者に還元するというところが特徴です。硬い文章になるのですが、公園の基本理念は大きく3点あります。
・首都圏における増大かつ多様化するレクリエーション需要へ対応する。
・広大な自然環境の中に体験と活動の場を提供し、国民の資質の向上に資する。
・地方の文化を生かし、その振興に寄与する。
それに則り、公園の認知度の向上や、利用促進に向けた情報発信、茨城県やひたちなか市など地方自治体およびJRなどの公共交通機関と連携した観光誘客、などがあります。
そのほかには、希少な動植物の生息状況や保全の取り組みの紹介、地域の風土・文化の魅力の継承と発信も広報が担っている部分で大きいかと思います。
根っこにあるのは、「公園のファンを増やしたい」という想いですね。
若林:以前、干し芋を作るというイベントがあったじゃないですか、めちゃくちゃ参加したかったです! 干し芋大好きで、その地域からわざわざ取り寄せたりもしているので、自分でも作れたらいいなと思ってたら、ちょうどそちらの公園でやっていて、「こんな講座もあるんだ!」と思いました。
星さん:あのイベントは、お客様にもすごく楽しんでいただけたようで、美味しかったと好評でした。ふかし芋の皮をむき、裁断機で切って、おうちで干して美味しく食べていただきました。茨城県の特産品である干し芋づくりをとおして地域の文化を学べるイベントでしたね。
若林:干し芋の裁断機、欲しいなと思いました! やっぱり、地域の方が多く出席されたんでしょうか。
星さん:この地域では裁断機をお持ちのご家庭も結構あるみたいで、すごい文化だなと感じました。参加してくださった方も、お子さま連れの近隣の方が多いという印象です。
若林:あの企画も広報発信なんですか?
星さん:イベントの企画に関しては、別の係が担当しています。広報はそれをブログやチラシ、ホームページなどでより多くの人にお伝えして、参加者を募集するサポートをしたり、時にはプレスリリースを使ってメディアに発信したりという関わり方で協力をしております。
SNS発信の転機となった、お客様からの言葉
若林: SNSやスタッフブログは、広報のみなさんが主体となって運営されているんですか?星さん:はい、私たちで行っております。SNSでは特に写真が重要になります。昔から写真は好きだったのでいろいろチャレンジはしているものの、ユーザーからの期待値がかなり高く、反応もすぐあるので、自分の力量とのギャップに悩みながら、いろいろトライ&エラーを繰り返している感じです。
ブログは文章が主体になってきますので、いかにコピーで想いを伝えるかとか、短い文章の中でいかに伝えるかという練習もしながらやっております。
若林:お写真はもともと好きということでしたが、今、背景で使わせていただいているネモフィラの画像も星さんが撮影されたんですか?
星さん:壁紙のネモフィラは係長が撮影したものです。私が撮ったものは、チューリップなどになります。
若林:めちゃくちゃ、うまいですよね!外注されてプロのカメラマンの方に撮ってもらったのかと思いました。
星さん:ありがとうございます、係長にも伝えておきますね(笑)。
若林:ちなみに、SNSやブログの更新頻度は決めていらっしゃるんですか?
星さん:Twitter「休園中の花日記」は毎日投稿し、ホームページにコンテンツをアップした時に追加で更新通知を投稿することもあります。Facebookは週1回、Instagramは週1〜2回で計画しています。ブログの方は休園でちょっと状況も変わっていますが、基本的にはだいたい週1回ずつ更新を行っていました。
若林:これだけ写真映えするスポットが点在していますし、四季折々の花とか、見所や、イベントも開催されているので、投稿する内容ってネタ切れはないのかなと思うんですけど、そのあたりっていかがですか?
星さん:意外と、難しい時もあったりします。この休園期間中、お客様からもネモフィラを見たいというリアクションをいただくのですが、その中で、心にすごく引っかかって自分の中で転機になったのが「いろんな方のお写真を楽しみにしてたのに、今年は見られなくて残念」というコメントでした。
それを見て、いろいろなお客様がそれぞれの視点で見たような風景をお届けしたいと思うようになりました。ネモフィラというひとつのテーマが決まっていても、撮り方で全然や印象や見せ方が変わりますよね。
あと、お天気によっても違って、晴れていればベストコンディションのものが撮れますが、曇っていると、空が白くなりネモフィラとの一体感がなくなりますので、そういう時は寄りで撮ったり、裏側から横に撮ってみたり、いろいろ試行錯誤しています。難しいですが、その分やりがいがあります。
若林:確かに、いろいろな方の目線を数人のスタッフで表現するというのは、すごく難しい課題ですよね。すごい余談ですけど、お話を聞いていると一日の歩く歩数って、すごいんじゃないですか?
星さん:そうですね。園内も結構広くて、約215ヘクタール…東京ドームで46個分ありますし、花畑もシーズンによってお花が咲く位置が点在しているので、すごく歩く日ですと17000とか20000歩近く歩いたりします。意外と運動になってますよね。
若林:デザイナーと全然運動量が違うんじゃないんですか?(笑)
ちなみにSNSやブログは、もともとのファンの方にお花の見頃をお知らせするほか、来れない方にファンになってもらうというような意味合いで、運営されてらっしゃるんでしょうか。
星さん:そうですね。今まで見てくださった方にはもちろんですが、今年は特に休園があって、多くの方に発信しようと思っていたので、初めて見る方でもわかりやすいように文章や写真の構成を考えながら投稿していました。
悲しい過去を持つ地から「死ぬまでに行きたい世界の絶景」へ
若林:ちなみに、私たちも知らない間に、「ネモフィラといえば、国営ひたち海浜公園!」って思っていたんですけど、いつからそういう風に思うようになったのか記憶になくって、いろいろ調べていったら『死ぬまでに行きたい世界の絶景』(詩歩・三才ブックス)で、2013年の夏にランキング11位になっていたようなのですが、そのあたりは大きいんですかね。いつくらいから、「ネモフィラといえば」みたいな認知が高まったのでしょうか。
星さん:ネモフィラの花修景は平成14年の2002年に始まったんですけど、いろいろな経緯があります。そもそも、この場所は戦後、アメリカ軍が爆撃を練習する射爆撃場として使っていたんです。無数の爆弾や銃弾が撃ち込まれた悲しい歴史を持つ場所に、過去を忘れるような美しい風景を創ろうとしたことから始まりました。ネモフィラの花自体も花壇の脇役に使われていた花で、最初から今のように、多くの人に知られていたわけではなかったのですが少しずつPRを進めてきました。
また、平成5年(1992年)からスイセン、平成12年(2000年)からチューリップと、大規模な花修景を展開し、「花の公園」として徐々に認知されるようになりました。加えて、北関東の道路の延伸にあわせ、大洗水族館等の周辺観光施設と連携した「ひたち花海道」というチラシを沿線上に配ったり、公共交通機関や地域と連携して、周遊できるような観光をすすめたりたという地道なPRも行ってきました。
その結果、本にとりあげていただけるようになったほか、SNSもどんどん普及してきたというのもあって、徐々にみなさまに知ってもらえるようになってきた感じですかね。
若林:なるほど、わっと広がったわけではなくて、かなり地道な努力の積み重ねなんですね。しかも、その射爆撃場のお話は初めて知りました。今こんなステキな場所になって、みなさんが一度は行ってみたい場所のひとつになっているというのがすごいですよね。
星さん:ありがたいですよね…本当に…。
若林:しかも、今年はネモフィラの植栽面積を20%も拡大して、4.2ヘクタール、530万本と過去最大になっていたんですよね。
星さん:そうなんですよ。今年は見応えのある風景をご覧いただけるはずだったんですけど休園になってしまい、そういうこともあって、ちょっとでも公園の風景を見てもらいたいというのがありました。
スピーディな取り組みと新たな発信手法の採用で、公園の魅力を全国にお届け
若林:さきほどお話されていた、季節のイベントですが、年に何回くらい実施されているんですか?星さん:年間を通していろいろ行っていまして、春の「フラワリング」が終わると、今年は休園しているので状況は違うのですが、「茨城バラまつり」となります。夏は、自由研究に良さそうな工作体験等を実施する「とびっきり! 夏フェア!」と夜間開園「コキアライトアップ」。秋は、徐々にコキアが紅葉していく様子を楽しめる「きてみてさわって コキアカーニバル」。冬になると「ぽっかぽか 冬フェア」など、1年を通して大型イベントが繋がっているという感じです。
若林:休む暇なく、広報することがたくさんあるんですね。新型コロナウィルス対策についてもお伺いしたいんですけど、本来ならこのゴールデンウィークは、ネモフィラやチューリップを楽しみにされている方がたくさんお越しになるタイミングだったと思うのですが、そのかわりに、4K動画や360度バーチャルツアー、背景画像ダウンロードなど、さまざまな施策を展開されていますよね。どのタイミングからこういう企画を考え実施しはじめたのでしょうか。
星さん:休園の発表は4月2日だったんですけど、その時点では、暖冬の影響でかなりネモフィラの開花が早く、次週には見頃の7分咲きとなると予測されていました。4月4日から休園となり、告知のためのスタッフブログを公開しまして、その段階で広報係の中では、今後の動きについて共有を図っていました。そこで、休園期間中のホームページでどういう風にコンテンツを展開していくかとか、いろいろなアイデアを出し合って少しずつ準備し、4月8日から「休園中の花日記」がスタート、4月9日から「360度バーチャルツアー」の第一弾を公開しました。
若林:なるほど、360度バーチャルツアー、私も疑似体験させていただいたんですけども、あれも広報の方たちで撮影されたんですか?
星さん:そうですね、広報で撮影しています。
若林:めちゃくちゃ早い対応じゃないですか。4月2日に休園されて、9日に第一弾を公開されているんですよね。もともと360度撮影の経験があったんですか?
星さん:これまでにもやっていたのですが、古民家や展示室、カフェの店内など、屋内の狭い範囲が対象でした。今回はじめて屋外の広い花畑にチャレンジした感じになります。
若林:すごいですね! 新しい試みをこのタイミングですぐ着手できるというのは、日々の広報活動のたまものですね!
星さん:常にアンテナを張り、ネタというかアイデアをストックしておくように心がけています。ネモフィラが見頃の時期は、取材がいっぱい入っていましたので、タイミングを逃さず撮るのが難しかったですけど、撮れて良かったです。
いろいろな反響をいただきましたが、直接お手紙をくださった方がいたり、Twitterを見てくださった方から、すごく癒やされたとか、励まされたという言葉もいただき、頑張って続けていこうとこちらもすごく言葉が沁みました。
あとは、休園とネモフィラの時期が重なったことで、テレビでもいろいろ連鎖的に紹介していただけて、ホームページのコンテンツやSNSで注目された写真も取り上げていただいたことでPV数が結構増えたりという反響もありました。
若林: ゴールデンウィーク前後って、私もテレビとかで何度となく目にしていて、過去の映像を使っていたものもあれば、今回の取り組みに関して取材されていたのもあって、それもあって、今回ぜひお話したいなって思ったんですよね。
星さん:ありがとうございます。通常ですと、この時期はお客様がたいへん多い時期なので、このような形でホームページにコンテンツを出すのはかなりイレギュラーなのですが、今年だからできている取り組みということもあったので、取材いただけすごくありがたいです。
最初から、できないというのは言いたくない。メディアを引きつける柔軟な対応と新しい挑戦
若林:テレビ取材への対応が非常に多いですよね。見所もたくさんありますし、周ろうとするとすごい時間がかかるじゃないですか。そういった意味で、テレビ取材の時とかに広報として工夫している点とか気をつけている点があれば、ぜひ伺いたいです。星さん:公の施設ということで結構固い部分もありしまして、ご要望にもしかすると対応できないかなと思う企画もあったりするのですが、最初からできないというのは言いたくないので、ディレクターさんと打ち合わせする中で、どういうイメージでアウトプットするのがいいかと調整するのが、国営公園の広報スタッフとしての腕の見せ所と感じています。
たとえば、去年の春ですと、その時期の名物として丸く盛ったごはんの上に青いカレーをかけ、みはらしの丘をイメージした「ネモフィラカレー」があるんですけど、通常でしたらレストランで提供しているものを、ビジュアル的に衝撃が強いので、ネモフィラが満開の「みはらしの丘」で食レポできるよう段取りしたり、そういった柔軟な対応をするよう心掛けています。
若林:なるべくメディアの意向をくみ取って、できる範囲で寄り添った対応をしていくのが、一番ポイントにされてるとこなんですね。広大な敷地ですけど、だいたいテレビだと何分くらい撮影していかれるんですか。遠くの県からも取材に来たりしますか?
星さん:番組や企画にもよりますが、こだわるほど時間がかかると思います。茨城はNHKを除きローカル放送局がないので、首都圏からいらしていただくことが多いですね。
時にはパペットも自作!クリエイティブ力を余すとこなく発揮し新たな広報施策にもチャレンジ
若林:その他に直近で、反響のあったPR事例はどういうものがありますでしょう。星さん:今回、外出自粛にあたってバーチャルツアーや、自然音の聞ける動画のコンテンツとか、パペット人形を使ったフラワーガイドツアーなどライブ感のあるコンテンツが、かなりメディアの方に注目していただけました。
あと写真では、5月の頭くらいに、太陽の周りに虹色の輪ができるハロという珍しい気象現象があり、花日記にお花とセットで投稿したところ、後日、某番組の天気コーナーでご紹介いただけることとなりありがたかったですね。
若林:やっぱり、その写真とかも広報さんの技術のたまものですよね。いい写真じゃないと使われないのですものね。
星さん:私自身も、よりいいものを撮れるようになろうと日々精進しております!
若林:パペットツアーも観ました! この声、もしかして星さんなのかなって思いながら観ていたんです。
星さん:パペットは、実は花ちゃんの方は、広報係のもうひとりのスタッフがやっていまして、海くんは私がやらせてもらいました。
若林:そうなんですね、すごい! 声優さんの仕事までするんですね! ちなみに、パペットを縫ったりはしてないですよね~~?(期待を込めて)
星さん:はい、縫ったりしました(笑)。
これも初期の段階で、今後どういうことができるかという話をした時に、裏ガイドツアーの企画を考え、最初はもともとあった公園マスコットキャラクターの着ぐるみを使おうとしたのですが、かなり大きく動きにくさもあったので、バーチャルYouTuberみたいな感じで親しめるキャラクターがいれば楽しめるんじゃないかという意見が出て、じゃあパペットだったら親しみもあって、お子さんとかも観てくれるかもしれないね!と、すぐに布を買って作りました。
若林:すごーい! 何名で作られたんでしょう。もともと器用なんですか?
星さん:最初に花ちゃんを制作してみてコツがつかめてからスタッフに手伝ってもらったので、海くんの方が少しクオリティが上がっています(笑)。もともと、物を作るのが好きで、前職もそれ系でしたので、だいたいのものは頑張ればなんとか作れると思っています。
若林:今回、「これは外注されているのかな?」と思ったものが、ほぼ広報の方の自作で感動しました!
パペットは絶対に初めてと思いますが、YouTuber的な動画のシナリオを書いて進めていくというのはやったことあったんですか?
星さん:いや、もう、全部初めてなんですよ。前担当から引き継いだものもあったので、絵コンテなど過去のものを参考にしてやってみたんですけど、やっぱりプロのクオリティには及ばないので、手づくり感を意識して試行錯誤の中で作ったものという感じでした。
若林:表現が悪いかもですが、公園って、ある意味、古き良き文化があって 新しいものを取り入れるまでかなり時間がかかりそうなイメージがあったんですけど、スピードも速いですし、新しいものを積極的に取り入れる文化がこちらにはあるんですか?
星さん:そうですね、こちらの公園はお客様の利用が多く、ホームページも見てもらえることが多いですし、ネモフィラやコキアの大規模花修景を始めたように、いろいろ新しいことを挑戦していくというのが根付いているかもしれません。
限られた資源の中から、世の中に求められるニュース性を見出していく
若林:でもまさか、ご自身が入団した時に、パペットを作るとは思ってなかったですよね?もしかしたら今後、販売もされてるかもしれませんね。こどもたちに人気出そうだなって!いろいろ新しいことに取り組まれていたり、新型コロナということで対策をとられていると思いますが、公園の広報として継続的に課題として感じていることや注力されていることはありますか?
星さん:やっぱり、ネモフィアとコキアは、うちの公園で特に注目されて露出が多いのですが、そのほかの見所や自然、文化、お花の種まきからの作業過程のような舞台裏などにも、いろいろスポットを当てて紹介していきたいですね。
たとえば、2月に行いました「ニホンアカガエルの卵をさがそう」というイベントは、いちはやく春の気配を感じられると、メディアの方に注目していただきました。これからですと、園内に自生しているオオウメガサソウという植物がありまして、こちらは茨城県のレッドデータブックで絶滅危惧IA類に指定されていたり、環境省では準絶滅危惧種に指定されていたりいう希少な植物です。
あと、公園内の古民家で開催された年中行事など、文化を伝承をしていくというのも公園の役割のひとつなので、そういったPRにも注力したいです。
公園の季刊紙の「そよかぜ通信」では、去年に「冬の公園の楽しみ方」という企画をしたのですが、園内のカフェや、サイクリング、ディスクゴルフなどのスポーツ、遊園地のプレジャーガーデンなど、公園の資源がお花以外にもいろいろあるので、冬はお花が少ないですがこういう楽しみができますよというのをチャート形式で紹介しました。
「そよかぜ通信」の企画はホームページとも連動しているので、紙面とは異なるWebならではの見せ方にもこだわり、選択肢を選んでいくとおすすめの楽しみ方に出会えるよう工夫しました。今回は「初夏の生き物ずかん」の企画をやっておりまして、レア度などを設定することでワクワクしながら公園の自然に興味を持ってもらえたらいいなと、いろいろアイデアを出し合いながらやっています。
若林:公園は、ある意味、資源はたくさんあるけど、そんなに毎年大きくは変わらないという中で、ニュースを見出してメディアに伝えてもらったり、SNSで拡散してもらう工夫は、すごく難しさがあるんだなと感じました。
星さん:いかに切り口を見つけられるかが広報に求められていると思うので、日々、ニュースやネット、本や雑誌などを見ながら、今、世の中的にどういうものが注目されているのかアンテナを高く張っています。
季刊紙の「そよかぜ通信」を定期的に発行しているので、そのタイミングでこれからの時期に何ができるのか、準備を始めています。
クリエイティブトーンを意識したSNS運用
若林:今まではテレビなどの影響力が大きかったと思うのですが、最近はSNSの影響力がすごく高まってると感じられることはありますか?星さん:逆に「テレビでネモフィラ観た」とTwitterでつぶやく方もいるくらい、世の中にすぐに拡散するというのもあるので、SNSの影響力の大きさは日々感じるところです。
いただいたコメントなどを参考にして見せ方とかを変えていくと、すぐにリアクションしていただけるので、画面の向こうでお客様が、感じて受け止めてくださっていることを実感することができますね。
若林: Twitter、Instagram、Facebookなど、それぞれに合わせて、投稿内容を少し変えてみたりというような工夫もされてるんですか?
星さん:媒体ごとに年齢層はこのくらいというのは設定していて、それに合わせてクリエイティブトーンを決めながら言葉を選んで投稿しています。Instagramは特に、20〜30代の女性層や、ファミリー層をイメージして投稿しています。
お花の写真のリアクションはやはりすごく多くて、結構多めに投稿していたんですけど、最近は、アクティビティやスポーツ、飲食などを、ちょっとずつ配信するようにしています。今は休園中で投稿の内容がお花に偏っていますが、開園しましたら増やしていき、いろいろ試行錯誤しながら進めていきたいと考えています。
若林:クリエイティブトーンってお話いいですね。どんなことを考えていらっしゃるんですか?
星さん:SNS毎にガイドラインを定めており、それにあわせて撮影するようにしています。特にInstagramでは、写真を真っ先に見て「いいね!」って思ってもらえるかで決まると思うんですね。なので、ネモフィラですと、50枚撮ったとしてもいいのが一枚だったりする時もあるので、撮る数は無限に撮れるんですけど、広報の中でかなり厳選してます。
プライベートでは美術館巡りも。作る感覚をずっと持ち続けながら創造意欲を高めたい
若林:なるほど、プライベートでも、写真は撮られてるんですか?星さん:そうですね、写真は昔から撮るのが好きだったので、秋だと紅葉狩りですとか、少しでもうまく撮る方法はないかなって、日々、練習してる部分はあります。
若林:そのほかに、プライベートでお好きなものは。
星さん:今は移動できないですけど、美術館巡りが好きで、作品を観るのもフライヤーを集めるのも好きです。半分は趣味の部分もあるんですけど、自分のアンテナを広げたり感度を高めるのに役立っています。発信する側の意識も必要ですし、受け取る側の感覚も高めておかなきゃということもあり、理想としては作る感覚をずっと持ち続けながら、日々、広報を勉強し、機会があればちょっとでも自分の中の創造意欲を高めたいなと思ったりしています。
なので雑誌とかも、自分と年齢層の違うものも読んでいます。若い子向けの雑誌ですと、攻めた手法で写真を使ったり文字を入れたりしていて、すごく格好いいなと思いますし、ご年配向けの雑誌もすごくデザイントーンが変わってくるので刺激になります。プライベートは作る方に寄りがちですね。
若林:それが全部お仕事に生きてますもんね!季刊紙の制作やパペット作ったりとか、お仕事に繋がってますもんね。羨ましいですね!
星さん:少なからず、繋がっていて良かったです!
PRマガジン編集部の「編集後記」
メディアでインタビューに対応していた星さんを見た
ずっと行きたいと思っていた「ネモフィラ畑」。いつかいつかと思いながらもう2~3年は経ってしまった。。毎年ゴールデンウィーク前後がネモフィラの開花時期で、昨年は10連休ということもあり、ニュースでもその賑わいぶりを見た方も多いのではないだろうか。しかし、今年は新型コロナウイルスで休園に。なのに4月下旬より多くのメディアでネモフィラ畑の様子が取り上げられていた。そこでインタビューに対応していた星さんを見たのが今回取材を依頼したきっかけだ。
HPを見てみると、満開の花々を楽しみにしている方たちのために様々な施策を展開していた。写真や360度バーチャルツアー、4K動画、フラワーガイドツアー… 素晴らしい!でもこんなに大変だし、こんなに迅速にできないし、絶対外注しているよね…?と思い話を伺ったら、まさかの全てご自身たちで対応されたとの回答!
最新トレンドをおさえた施策を展開していることに驚いた
公園という長閑な雰囲気からは想像もできないくらい、迅速な対応かつ最新トレンドをおさえた施策を展開していることに驚いた。オンライン会議にも活用できる背景画像も提供されているが 、それもプロが撮ったかのようなクオリティ。
気分が上がらない日や会議の空気感が悪くなった時に、是非活用してもらいたい。
(私も社内会議で突然ネモフィラ畑に切り替えてみたが、社長含めまさかの全員ノーリアクション…笑 でも、自分のモチベーションはかなり上がったから問題なし( *´艸`))
新しいことにどんどんチャレンジしていく雰囲気が組織の中にあることが、話の端々から伺えた。
このPRマガジンの取材を快諾いただけたのも、そういったチャレンジ精神からだったのかな?
とにもかくにも素晴らしい公園であることは言うまでもないが、それにあぐらをかくことなく、利用者やファンに対し、情報を届けるため新しいチャレンジをしつづける国営ひたち海浜公園のファンになってしまった。
コキアに狙いを定めて遊びに行きたいな…。そこでばったり星さんに会えることを願って★