メディアと繋がる!記者クラブ「正しい投げ込み」の鉄則とは

「プレスリリースを記者クラブに投げ込んだのに、一件も問い合わせが来なかった」

そんな経験をしたことはないでしょうか。あるいは、上司から「記者クラブに持っていきなさい」と言われ、とりあえず持参したものの、その後何も起きなかった──という担当者も多いのではないでしょうか。

記者クラブへの「投げ込み」は、広報活動における伝統的なアプローチのひとつです。しかし、その仕組みや正しい使い方を十分に理解しないまま活用しようとすると、効果が出ないどころか、知らないうちに機会を逃してしまうことになります。

今回は、意外と教わる機会のない「記者クラブの実務」を、現場の経験も交えながら整理します。

そもそも「記者クラブ」とは何か

記者クラブとは、官公庁・業界団体・経済団体などに設置された、新聞・テレビ・通信社などの記者が加盟する組織です。各クラブには加盟各社の記者が常駐(または定期的に訪問)しており、その場所から担当分野のニュースを取材・発信しています。

重要なのは、「クラブごとに取材担当の分野がまったく異なる」という点です。

金融・経済関連であれば、日本銀行内に設置された「日銀金融記者クラブ」が代表的な投げ込み先です。農林水産省内の「農政クラブ」には農業・食品担当の記者が常駐しており、東京商工会議所にある「東商記者クラブ」は流通・サービス・食品業界を取材する拠点です。鉄鋼会館内の「重工業研究会」には、名称から鉄鋼専門と思われがちですが、鉄鋼・化学・製薬・化粧品・日用品など非常に幅広い業界を担当する記者が所属しています。また、自動車業界については、日本自動車工業会内に設置された「自動車産業記者会(自工会)」という独立したクラブがあり、他の経済系クラブとは別組織として機能しています。

「記者クラブに投げたのに反応がない」という場合、そもそも自社の情報と関係のないクラブに持ち込んでいた、というケースが少なくありません。まずは「自社の情報は、どのクラブの記者の担当領域か」を把握することが、投げ込みの大前提です。

投げ込みには「公益性」と「事前の段取り」が必要

記者クラブへの投げ込みで広報担当者が最初に直面するのが、「どんな内容でも受け付けてもらえるわけではない」という現実です。

記者クラブは官公庁や業界団体に設置された公的な性格の強い組織です。そのため、投げ込みが認められる情報には、社会性・公共性が求められます。自社サービスの新機能追加や採用告知など、あくまで企業利益を目的とした内容は、原則として投げ込みに適していません。逆に言えば、業界全体に関わる調査結果の発表、社会課題への取り組み、地域貢献に関する発表などは、記者クラブとの相性がよいコンテンツです。

そして、もうひとつ見落とされがちなのが「事前確認と段取り」の重要性です。記者クラブの投げ込みルールは、クラブごとにまったく異なります。受け付け可能な日時、必要な部数、申し込みの手順、担当窓口──これらはクラブによって独自に定められており、一律ではありません。

まず電話で対象クラブに連絡を取り、ルールを丁寧に確認した上で、その段取り通りに動くことが大原則です。事前確認なしに訪問したり、指定の方法と異なる形で持ち込もうとすると、受け入れを断られることもあります。「投げ込みさえすれば届く」ではなく、「正しい手順で届けてはじめて意味がある」という意識を持つことが大切です。

地方の記者クラブこそ、使いこなせれば強い

「記者クラブは東京の話」と思っている担当者も少なくありませんが、実は地方こそ記者クラブを積極的に活用できる場面があります。

地域で開催するイベントの告知や、地元企業の新サービスローンチ、地域に根ざした社会的取り組みの発信──こうした情報は、全国配信サービスよりも地元の記者クラブへの投げ込みのほうが、はるかに取り上げられやすいケースがあります。地方紙やローカルテレビは「地元のネタ」を常に求めており、記者クラブはその情報をキャッチする重要な窓口になっているからです。全国規模では小さなニュースに見えても、地域メディアにとっては一面候補になり得る情報は多くあります。

一方で注意が必要なのは、クラブごとの常駐状況にばらつきがある点です。県庁所在地の主要クラブでは各社の記者が常駐していることが多い一方、規模の小さい市区町村の記者室では記者が常駐しておらず、定期的にリリースを回収しに来るだけ、というケースもあります。投げ込む前に、対象クラブの運用実態を電話で確認しておくことがここでも大切です。

プレスリリースだけじゃない──ニュースレターという選択肢

記者クラブに投函できるのは、プレスリリースや記者発表イベントの案内だけではありません。私が担当した企業のケースでは、「ニュースレター」の投函が想定以上の効果を生んだことがありました。

ただし、ここで強調しておきたいのが、ニュースレターの「中身」についてです。自社の製品紹介や事業案内など、企業の宣伝に特化した内容では、記者クラブへの投函には適しません。記者が求めているのは、取材や記事化の「参考資料」になり得る情報です。

具体的には、業界全体の市場動向や消費者アンケートの統計結果、実験・調査に基づく客観的なデータ、市場推移を示すグラフといった、エビデンスに裏打ちされた情報が有効です。さらに、大学教授や研究機関の専門家による第三者視点のコメントや解説が添えられていると、記者にとっての信頼性と活用度が大きく上がります。自社の主観や宣伝意図が前面に出るのではなく、「この業界では今こういうことが起きている」という客観的な事実の提供者として位置づけることが重要です。

また、ニュースレターであっても、新規性やニュース性のない内容は記者クラブへの投函には当てはまりません。記者クラブへ投函するニュースレターに求められる条件を一言で言えば、「即時性」と「客観性」の二つです。即時性とは、「なぜ今、この情報が必要なのか」という時事性の軸であり、社会的な関心が高まっているタイミングや、業界に変化が起きている局面でこそ意味を持ちます。客観性とは、自社の都合や主観を排し、データや第三者の見解に基づいた情報であることです。この二つがそろってはじめて、ニュースレターは記者にとって「使える資料」になります。

私が担当した企業では、こうした条件を満たしたニュースレターを継続的に届け続けました。最初のうちはとくに反応はありませんでしたが、数ヶ月後に担当記者から「以前送ってもらっていた調査データの件、もう少し詳しく聞けますか」と連絡が入ったのです。「情報源として信頼できる会社」という認知が、じわじわと積み上がっていた結果でした。

「その都度の発信」であるプレスリリースと、「客観的な情報を継続的に届ける」ニュースレター。この二つを組み合わせることで、記者クラブへのアプローチは格段に厚みが増します。

投げ込みを「接点づくりの入口」として使う

記者クラブへの投げ込みには、もうひとつ見逃されがちなメリットがあります。それは、「普段なら接点を持つことが難しい記者と、直接顔を合わせられる機会になる」という点です。

プレスリリースを配信サービス経由で送るだけでは、記者との関係はどこまでも一方通行です。投げ込みに行けば、窓口に来た記者と直接言葉を交わすことができます。「このリリースの背景として、実はこんなデータもあって……」と一言補足するだけで、記者の興味を引き出せることがあります。

もちろん、記者クラブ内でいきなり長々と話しかけるのはマナー違反です。あくまで簡潔に、かつ誠実に接することが前提です。しかし、そうした積み重ねが「あの企業の担当者は信頼できる」という認識につながり、次の取材機会を生み出していきます。

記者クラブへの投げ込みは、「情報を届ける手段」であると同時に、「メディアリレーションを育てる場」でもあります。配布して終わりにせず、そこから関係を築く意識を持てるかどうかで、中長期的な広報の成果は大きく変わってきます。

記者クラブは、正しく理解して使えば、メディアとの信頼関係を育てる強力な接点になります。投げ込み、ニュースレター、そして直接の接点づくり──これらを組み合わせることで、記者クラブは単なる「配布の窓口」から「継続的なリレーションの起点」へと変わります。

仕組みを知らないまま「とりあえず投げ込む」を繰り返すだけでは、せっかくの機会を活かせません。自社の情報に合ったクラブを選び、事前にルールを確認し、段取り通りに動く。そしてそこから生まれた接点を、丁寧に育てていく。それが、記者クラブを本当の意味で広報活動に活かす第一歩です。

常に商品取材が舞い込む大創産業が、それでも企画を打ち続ける理由とは?

2023年11月16日
1

「車椅子」のパーセプションチェンジに挑む!ポイントは『新ワードの浸透』と『第3者の巻き込み』ー「WHILL」広報・新免那月さん

2022年7月28日

コロナ禍の新たな食品販売方法として注目~なぜ冷凍自販機「ど冷えもん」はあらゆるテレビ番組からオファーが舞い込むのか?

2022年2月3日
株式会社コミュニケーションデザイン PRコンサルタント

【ニックネーム】カープマニア
【これまで担当した業界】IT、自動車、食品メーカー、飲料メーカー、自治体、
            医療、家電メーカー、レジャー施設、金融、教育、他多数
【趣味】高校野球、広島カープ、川崎フロンターレ、ハワイ
【プチ自慢】両利き。お箸も野球もサッカーも、手足を左右同レベルで扱えます

お知らせ
【課題別】PRノウハウやテクニックを無料公開
多くご相談いただく内容とその解決方法をホワイトペーパーにまとめました。
PR切り口の考え方|メディアリレーション方法|広報KPIの考え方【無料ホワイトペーパー】

当社では新たなメンバーを募集しています!
PRコンサルタントとして活躍したい方はぜひご応募ください。
採用情報|PRの力で「社会問題」を解決する