企業広報だからこそ「想い」を重視した広報を社内外で展開!-「CAMPFIRE」広報・三春桜子さん

今回は、フォーマットに合わせて入力するだけで誰でも無料でカンタンにプロジェクトを掲載できる、国内最大級クラファン『CAMPFIRE』を展開する、株式会社CAMPFIREの三春桜子さんに、広報・PRパーソンならではのリアルな企業広報のお話を伺った。
(インタビュー:編集長)

「発信力」を強みに広報へジョブチェンジ

編集長:以前から、CAMPFIREさんを取材したいなと思っていて、それきっかけで三春さんのTwitterもフォローし拝見していました。会社としても広報に注力されていて、プレスリリースなどにもこだわりを持たれているということで、是非お話を聞かせていただきたいと思い、今回取材依頼しました。

三春さん :色々見ていただいて、ありがとうございます!

編集長:早速ですが、2021年の秋にCAMPFIREに入社されるまでのキャリアを伺えますか?

三春さん:大学では家政学部で被服を学んだ流れから、卒業後アパレルメーカーに就職しました。販売から商品のバイイング、イベント企画など、約6年間で幅広い業務に従事しその後、コワーキングスペースを運営している会社に転職し秘書業務や企画営業などに携わりました。コワーキングスペースには、個人事業主やスタートアップ企業が多く入居されていて、資金繰りの大変さを目の当たりのしたこともあり、当時、株式投資型クラウドファンディングを立ち上げていたCAMPFIREにひかれました。スタートアップ支援ができ、かつ子育てと両立できる環境であると感じ、ご縁あって入社しました。最初は子会社の採用広報として入社し、今は親会社である株式会社CAMPFIREに移り、コーポレート広報を担当しています。

編集長:前職で、広報に関連しそうなお話はありませんでしたが、広報の経験もあったのですか?

三春さん: 広報PRという職種に就いたことはないです。対外的に発信する経験といえば、アパレル時代のカタログ制作や新商品の紹介をSNSでする程度です。ただ、モノづくりに強いこだわりのあるデザイナーズブランドだったので、「想い」を伝えられるようなメッセージへの強い意識はこの時に培われたのかもしれません。

編集長:今はどのような体制で広報に取り組まれているのでしょうか。

三春さん: CEO直下で私と広報アシスタント1名の2名体制です。
着任時は子会社での経験を活かし、私は採用広報や社内広報に注力していたのですが、今は全般的な広報業務を対応しています。
とはいえ、リソースが限られているので、現在比重はコーポレート広報に置いており、採用広報はHRと、サービス広報はマーケティングチームとも連携して進めています。

「正しい理解」のために、ネガティブ切り口の取材も積極的に受ける

編集長:業務が多岐にわたることは今のお話からも想像できるのですが、広報としては、何を実現すべく動かれているのですか?ミッション部分について教えてください。

三春さん: 当社の場合、経営陣の広報への理解が深いと感じており、単純にメディア露出量で広報の取り組みを判断するということがありません。そういった前提のもと、一つは、CAMPFIREの確固たるミッションや想いを社内外にブラさず、きちんと浸透させていくということです。もう一つが経営陣と社員の距離を縮めるということを広報のミッションと捉えています。

編集長:大きく2つのミッションを掲げられているということですね。順番に詳しく聞かせてください。
CAMPFIREは「一人でも多く一円でも多く、想いとお金がめぐる世界をつくる。」をミッションに掲げられていますよね。このミッションを社内外に広く知ってもらうという理解であっていますか?

三春さん:ミッションの浸透ももちろんですが、クラウドファンディング自体に対する「正しい認知」もです。以前に比べるとクラウドファンディングの認知は高まってきていると思いますが、ネガティブな印象を持たれている方もまだいらっしゃると思います。
そのため、我々としては、ネガティブな切り口の取材も積極的に受けています。こういった取材にも丁寧に対応することで、クラウドファンディングに対する我々の想いを知っていただきたいと考えています。

編集長:具体的にはどういうことでしょうか?

三春さん:例えば、クラウドファンディング利用や認知が広がる一方で、返礼品の不履行といったトラブルや炎上が起きることもゼロではなく、過去には、その点にフォーカスした取材が入ることもありました。
こういった取材においても、我々がなぜクラウドファンディングを事業として行っているかという「想い」の部分や社会貢献になるプロジェクトもたくさんある事実などを交えつつ、表面化しているトラブルの実態やそれに対する弊社の対策(例えば保証制度など)、リスク面なども合わせてお話させていただいています。
CAMPFIREの想いを伝えるとともに、クラウドファンディングの正しい情報を知っていただいた上で、プロジェクトオーナー・支援者になっていただきたいと考えているからです。

ウェブ社内報を構築~広報がハブとなり経営陣と社員の距離感を縮める

編集長:もう一つの経営陣と社員の距離を埋めるという点についても詳しく聞かせてください。

三春さん:私が入社する少し前から、社員数も大幅に増えています。かつフルリモート体制ですので、経営陣の想いを新しく入ってきた社員にも知ってもらうために、そして他部署の動きや功績を共有できる取り組みは意識的に行っています。

編集長:具体的にはどういったことをされているのでしょうか?

三春さん:まずは社内報を始めようと、Googleサイトで会社の情報をまとめた1つのホームページのようなものを作りました。全社の情報はSlackにストックされているので、そこからネタを拾ってきて、時にはより詳細を聞くためにメンバーから直接話を聞いていました。そこから社員インタビューへの重要性を感じ、当時HRメンバー主導であったnoteの運用にも携わるようになりました。

様々な部署の情報を発信するとともに、社内報で広報経由での掲載情報なども共有していました。全社員が参加する全体会議でも経営陣から社員に「想い」や「考え」は伝えていますが、メディアという第三者を通すことで、よりフラットに経営陣の想いを理解することができるのではないかと思っています。

個人Twitterも大切な情報発信の場~Twitter経由で取材が入ることも

編集長:今回取材を依頼したきっかけの一つでもある三春さんのX(旧Twitter)ですが、どういったお考えのもと運用されているのでしょうか。

三春さん: 最初子会社に在籍していた時は、CAMPFIREより認知が低かったので、とにかく発信量を増やさなくては…、お金をかけずできることは何でもやろうと、Twitterを始めました。そこからnoteもはじめるなど、自分からの発信量を増やしていました。
広報は発信が全てではないですが、そこからリレーションを広げていくのも大事なのではと考え、今でも広報の立場としてTwitterを積極的に活用しています。
内容は会社の状況やクラウドファンディングのプロジェクトについて、私の目線でのクラウドファンディングに対する想い、CAMPFIREでの働き方等を主に発信しています。

今回もですが、Twitterを介して取材を打診いただくこともあるので、意味ある取り組みと感じています。また、クラウドファンディングの挑戦者や支援者の方とメッセージをやり取りする場面もあり、直接ユーザーの方と触れ合える貴重な場だと思っています。

プレスリリースはターゲットにより、同じ切り口でもカスタマイズし配信

編集長:御社の状況として、積極的にメディアリレーションをしなくても、Twitter経由やプレスリリース経由で取材が入ってきたりしますか。

三春さん: 正直、他社の広報さんがどのくらいされているのかわからないので、メディアリレーション量が多いかどうかわからないのですが…プレスリリースは、送りっぱなしではメディアの方に気づいてもらえないので、自分からも動きます。

一方で、過去のプレスリリースや、クラウドファンディングのプロジェクトページから取材につながることも多いです。

編集長: プレスリリースについてもこだわりをお持ちと過去の掲載記事で読みました。
このあたりを改めてお聞かせください。

三春さん:例えば、クラウドファンディングはサービスの特性上SNSとのつながりが非常に強いこともあるので、プレスリリース配信サービスの活用においては、メディア露出を狙うというよりSNSでステークホルダーに届くような作りを意識しています。そのため、クリエイティブもweb上で拡散されることを想定し、インパクトのある画像や分かりやすい図表を使うようにしています。

プレスリリース配信サービスに掲載されるプレスリリースは一般の方が見てもわかりやすい内容に、メディア向けのプレスリリースはメデイアの方に刺さりそうな切り口で、端的に事実を伝える内容にと少し内容を変えています。

広報として客観的な目線は大事~でも企業広報だからこそ「主観」も大切に

編集長:現在、広報としてどのようなことに注力されていますか。

三春さん:広報は、社員みんなが頑張って取り組んだ結果(企画や新規事業など)を発信していて、それにメディアが興味を持ってくれ、露出に繋がっていきます。そういった意味でも全部署、社員全員にいい影響を与える広報活動をしたいという思いが強くあります。

広報に客観的な視点が必要なのはその通りなのですが、コーポレート広報という立ち位置は、あくまで会社の中にあるので、会社に対する想いが大きくなるのはしょうがないと思っていますし、私は会社目線も大切にしていきたいと思っています。
なので、対外的な情報発信も大事ですが、社内にも還元できるものを作っていけるような働きや仕事がしたいと思っています。

編集長: それは例えばどういう取り組みでしょうか。

三春さん:例えば、社員をもっと前面に出していきたいと思っています。CAMPFIREは創業者である代表の家入のイメージが強いと思うのですが、サービスや社風については社員を通すことでより伝わると考えています。

また、社員にフォーカスする露出を増やすことで、自分以外の社員がどのような取り組みをしていて、どれだけ頑張っているのかお互いが知る機会にもなり、社内のエンゲージメントを高められると思っています。一般的に広報は、会社として打ち出していくキーパーソンを数名決め、取材等ではテーマに合った人物を紹介していくケースが多いと思うのですが、CAMPFIREの場合は幅広くいろんな部署からメンバーを出せるようにしていきたいと考えています。
実際に今年は役員以外にも、経理、情シス、キュレーター、HR、PMなどの方々が露出しました。これは幅広い切り口で取材いただけた結果でもあり、多角的に会社について広報できているとも思います。

ロゴリニューアルは多方面からの情報発信で、キャッチアップできないくらいの反響が…!

編集長:最近、反響のあったPR施策等があれば、教えてください。

三春さん:ロゴリニューアルがよい事例かもしれません。
2022年9月に、CAMPFIREのロゴをリニューアルしました。その際、プレスリリースと同時にnoteと特設サイトを公開することにしました。

プレスリリースではメディア向けに簡潔に書き、noteでは代表やデザインマネージャーたちがロゴに込めた想いを、そしてランディングページではロゴの歴史からカラーコードの選定理由など多岐にわたり発信しました。

編集長: 特設サイトなど拝見しました!多くの企業で当然ロゴマークには想いが込められていますが、ロゴタイプのカラーコードを創業年月日(2011年1月14日)の「#110114」にしているところなど、遊び心もあっていいですね!読んでいて面白かったです。
ちなみに、こういた取り組みを通じ、結果的にどんな反響を得られましたか。

三春さん: 一番わかりやすかったのはTwitterです。とにかくたくさんツイートしてもらえ、リツイートも多く追いかけられないほどでした。ロゴに対しての感想を直に感じられたのは大きかったですね。

noteの閲覧数も過去一番でした。noteに関しては、代表の家入とプロジェクトマネージャー勝又、そしてロゴをデザインしてくださったタカヤさんとの対談を掲載したことも大きかったと思います。

また、これをきっかけにデザイナーのイベント登壇が増えたり、ロゴに関する専門書へ見本としてロゴが掲載されることへと繋がりました。

ロゴリニューアルという同じテーマに関して、プレスリリース・note・LPから情報発信したことで、いろんな角度から注目してもらえたPR施策になったと思います。

サービスについて広く、そして企業の想いについて深く発信できる広報でありたい

編集長:今後の広報PRとしての目標を教えてください。

三春さん:クラウドファンディングについて例えば、インターネットに縁が無いような方々にも知っていただくという意味では、テレビや新聞といったメディアを通して情報を伝えていくことが重要だと考えています。
キー局や全国メディアだけではなく、地方メディアにも注力していきたいですね。

編集長:地方メディアに注力したいというのは、地方の中小企業などにもクラウドファンディングを積極的に活用してもらいたいという思いからでしょうか。

三春さん:はい、そうですね。先日、全国の地域おこし協力隊に特化したクラウドファンディングサービスもリリースもしましたし、中小企業や地域での活用は今後さらに増やしていきたいと考えています。
最近では、MBCニュースで『「クラファン」ビジネス挑戦後押し 25歳次期社長は1か月120万円 17歳学生は2週間で40万円集め鹿児島から挑戦』という内容で、事業継承としてのクラウドファンディング利用事例を取材いただけました。クラウドファンディング挑戦者のインタビューと共に、スタジオでは基本的なCAMPFIREやクラウドファンディングの仕組みを説明してくださり、そして具体的な地域での活用事例について社員へのインタビューを交え丁寧に紹介いただけました。

一時的な話題で終わらないように、こういったサービス理解を浸透させられる露出を定期的に作っていきたいと思っています

一方で、コーポレート広報としては経営陣やメンバー自らの言葉を引き出し、ぶれない想いを持ってミッションに忠実にサービスを展開していることを継続的に発信し続けることにも重きを置いています。会社の考えや方向性を正確に全ステークホルダーへ伝えられる広報でありたいです。

編集長:色々な角度からお話を聞かせていただき、ありがとうございました!

PRマガジン編集部の「編集後記」

編集後記:編集長

―「知っている」から「利用したことがある」にどうつなげるか?

「クラウドファンディング」という言葉の認知はだいぶ高まってきているのではないだろうか。当然わたしも知っていたが、支援者側にもプロジェクトオーナーにもなったことがない。

(プロジェクトオーナーになる未来はあまりみえていないが…)様々な案件をみていると、「こんな商品あったらいいよね~」とか「これめっちゃいい!あ、クラウドファンディングで商品化したんだ」ということが多々ある。

でも、支援者にまだなったことがない理由を考えてみると、まだよくわかっていないもの(自分の理解が足りていないもの)に対し、足を一歩踏み出せていないといったところだと思う。
そういう方は私以外にも多いのではないだろうか?
だからこそ、三春さんがおっしゃっていた「ネガティブな切り口の取材も積極的に対応する」というのは、広報としてとても重要だと思う。

金額こそプロジェクトにより様々だが、自分のお金を出して応援するわけなので、クラウドファンディングの面白さや意義だけではなく、利用者が気を付けるべきことも発信することで、クラウドファンディングについて理解し、一歩足を踏み出せるのだと思う。
さらに、そういった姿勢で情報を出すことは、その企業の誠実さや事業に対する想いもより伝わる。

―「企業広報だからこそ『内向きの目』を大切にする」に納得!

広報PRは「客観的な目線」が大切。

このセリフを先輩広報やPR会社に言われたことがある広報も多いはず。
これは間違いではない。会社や事業、商品が世の中からどうみられているかという目線は広報には欠かせない。

でも、三春さんの「企業広報なんだから会社目線の比重が重くなって当然」という言葉はその通りだ。

企業広報が会社の想いを熱く伝えないで誰が伝える!?
企業広報が社員にもっと会社を知ってほしい、会社を好きになってもらいたいと思って何が悪い?

真っ当なご意見だ。

“だって企業広報なんだもの”

今回のPRパーソン紹介

三春 桜子(みはる・さくらこ)

家政学部卒業後、アパレルメーカーやコワーキングスペース運営会社を経て、CAMPFIREの子会社に入社。採用広報に従事したのち、株式会社CAMPFIREへ転籍。現在は、CEO室に所属し、コーポレート広報を担う。

株式会社CAMPFIRE(https://campfire.co.jp/

2011年01月設立。“一人でも多く一円でも多く、想いとお金がめぐる世界をつくる。”をミッションにクラウドファンディング事業の企画・開発・運営。国内最大級のクラウドファンディング「CAMPFIRE」以外に、ミュージシャンやアーティスト、イラストレーター、アスリートなど、様々な分野で活躍しているクリエイターをサポートする「CAMPFIRE community」、寄付で社会課題の解決を支える「CAMPFIRE for Social Good」、クリエイターのデザインアイデアを元に、商品化を目指す「CAMPFIRE Creation」などを展開する。